エヴァの記憶だけ吹っ飛ばされた人がエヴァ世界に飛ばされた話 作:フィアネン
今回はR-15要素あり。
アークから衛星映像で捉えられた使徒を見る。
「このデカい目玉が使徒本体ですか。こいつ、一発で確実にここに来れるようにわざわざ誤差修正までやってる。随分利口なヤツですね。」
[新型NN航空爆雷も、まるで効果がありません。その後の消息は使徒による電波撹乱のため不明です。]
[来るわね、たぶん。]
[次はここに、本体ごとね。]
[南極の碇指令は?]
[使徒の放つ強力なジャミングのため、依然連絡不能です。]
[エイジ君、エヴァはどう?]
「配置完了、待機状態で充電中。今回は現場判断できるようなレベルじゃないんで、俺は黙って見てますよ。葛城三佐とMAGIに全投げさせてもらいます。」
[了解。]
[どうしましたァ?有能な指揮官様。そんな臆病になってしまってェ。]
「俺がミサトの原案に対して何も文句も代案も思い付かなかったんだよ。あーゆう規格外のヤツに対しては俺もなかなか素人だからね。」
[左様で御座いますか!ふん!]
アスカもまだまだ子供だな。自分の期待した答えがこなかっただけで不機嫌になりやがって。
「シンジ、大丈夫か?シンクロ率が不安定だけど。」
[な、何でもないよ。]
「どうせまた悩みごとだろ。終わったら俺にでも相談しろ。まーたそうやって一人で抱え込もうとすんのはシンジの悪い癖だぞ。も少し俺らを信頼してくれ。」
[わかってるよ!わかってるけど…]
「まァ今は使徒を倒すことが先決だ、3人とも、頑張れよ。今日の俺は完全に蚊帳の外だからな。」
[エヴァ全機、スタート!!]
エヴァが全力でポイントに走り出す。これは、初号機が一番乗りだな。
初号機が途方もない大きさの使徒をATフィールドで受け止める。あの質量をあの一点から発せられるフィールドで防げるとは、斥力はフィールド全範囲に発生しているのだろうか。巨大で厚さほぼ0の剛体板を持ち上げているような状態かな?
レイ、アスカの順で使徒にたどり着き、使徒を押し上げる。
アスカが敵のフィールドを裂き、レイがそれを広げ、締めはアスカのナイフの一突きで使徒は殲滅された。
アークから降り、パイロットを迎えに行こうとすると、突然電気が切れる。…おかしい、復旧しない?こんな地下にある巨大な基地が、予備電源を持っていないなんてありえない。異常だ。
発令所に…あれ、また視力落ちたかな…何も見えねぇや。
かれこれ20分経ったが、未だに復旧しそうにない。空調も全部止まっており、暑い。スーツの上を脱いでもあんま変わらない。視力最悪の状態だと非常に危険だから、アークの部屋の扉近くで座っている。
スーツが妙に暑いのは、俺だけプラグスーツが変更されたからだ。配色は今まで通りグレーで、素体は今までと同じなんだが、胸部の装甲のような場所が少し大型になっている。また、左脇には防水仕様のホルスターがつき、非常時も銃を持ち歩けるようになった。頭部のインターフェースは、ファフナーのシナジェティックスーツのヘッドセットのようなものに変更。シンクロ安定化の他に、精神汚染を抑制する効果があるらしい。デザインは俺が提出した。胸の文字も[TEST]から[ARK]に変わり、背面も[T]から[A]へと変更。よりアーク専属パイロットらしさが出たデザインになっている。
足音がする…工作員かもしれない。銃を取り出し、コッキングする。
「そんな物騒な人じゃないわよ。」
「何だ、レイか。驚かせないでくれよほんと。」
「エイジ君が過敏なのよ、最近物騒なことばかり起きてるから。メガネ、無くしてるわよ。」
「え?あ、ほんとだ。にしても過敏かァ。そうだな…確かに、そうかもしれない。」
「ねぇ、エイジ君。」
「なんだ?レイ。」
「この間の続き、しない?」
「こないだって、いつだっけ…。」
「もう。また疲れて脳が止まってるの?」
「そうかもしれ―」
突然、レイが唇を重ねてくる。俺もレイの肩を抱き、目を閉じた。
幸せだ。この時間が、永遠に続けばいいのに―
電源が復旧する。目を開け、唇を離すとレイも目を開ける。俺はプラグ内を漁り、やっとのことで眼鏡を見つけた。
「落とし物も見つけたし、シャワー浴びてくるよ。」
「私も一緒に行きたい。」
「えぇ?それこそ誤解されっぞ?」
「いーの。」
互いに背を向きながらシャワーを浴びている。俺にはレイに手を出す勇気は無い。幾ら14の体であっても、それだけは、最速でも中学が終わるまでは絶対にしないと誓っている。んでも、やっぱレイが真後ろにいるのが音で伝わってくる。あ~、頼むからさっさと終わってくれよ…?ひっ、な、何だぁ?せ、背中から抱きつかれてんのかこれ…。む、胸の感触が…。レイの手が、俺の心臓のあたりに…。
「エイジ君、ドキドキしてる。」
「レイだって…ドキドキしてるじゃないか。」
「暖かい。」
「レイも。」
ちっと積極的なところがあるけど、素を見れば普通の女の子だ。こんな子が以前はプラントで身体だけ製造され、魂を移し替えていた道具にされていたとは最早誰もわからないだろう。あの機械のような冷たかった目がこれほど変わったんだ。アスカやシンジも、変われるはず。
そういった希望の他にも、疑問も浮かぶ。E計画、人類補完計画とは何なんだ?ダミーを作って、裏で何をしようってんだ?
「出よっか。」
「うん。」
聞くしかない。
シャワールームを出ると、アスカにばったり会った。何で俺はこう運がねぇんだ?
俺らが同時に出てきたのを見て、口を鯉みたくパクパクしている。俺らが無視してどっか行こうとしても、手を伸ばすだけで何も言ってこなかった。余程ショックだったんかな。
自宅。聞きたいことをレイから全て聞こう。俺は何が起きているのかを知りたい。
「レイ、今いいか?」
「いつでもいいわよ。何?」
「ドグマの巨人について知りたい。」
「……本当にいいの?」
「聞かせてくれ。何が起こってるのか、知りたい。」
「わかった。地下の巨人はリリス。第二の使徒。碇指令は、リリス、私、初号機を使って、碇ユイに会おうとしている。」
「どうやって…?」
「リリスとアダムを融合させて、人類の魂をひとつにまとめる。その中で指令は、初号機と融合して碇ユイに会おうとしているの。」
「人類の魂をまとめるつっても、そんなことができるのか?人間には個性っていうデカい壁があると思うんだけど。」
「アダムとリリスが融合し、サードインパクトを起こせばその個性の壁…”A.T.フィールド”が人類から無くなる。そうすれば個体の生物はL.C.L.になり、魂が肉体から解放される。あとは1つにまとめれば、完全な生命体…”神”になれるのよ。」
「待て、それだと何でレイが必要なんだ?レイを介さなきゃならない理由って?」
「私の魂は、リリス。」
「な…」
「実質的な使徒なの、私。」
「………」
「怖く…なった?」
「いいや、これは恐怖じゃなくて困惑だよ。ただ、なんて表現をすればいいのかがわからない…。」
「そう…。」
「でも…でも魂が使徒であっても、俺の目の前にいるのは人間のレイだ。それに間違いはないよ。」
「嬉しい!」
「あっちょっテーブル越しに飛び付いてくるなアだぁっ!!」
「あ、ごめん!大丈夫!?」
「はは、やっぱレイはレイだね。それを再確認できた、それでよかったよ。」
「ありがとう、エイジ。」
話題には上がらないがわかったことがある。今まで、シンクロ、クロッシング時に感じたエヴァ側からの抵抗は、エヴァの中にいる人の魂が影響している。だからエヴァによって個性があるし、搭乗できるパイロットも限られているんだろう。零号機はわからないが、初号機にはシンジの母親:碇ユイが入っており、弐号機にはアスカの母親が入っているのだろう。…でも、だとすれば何故俺はそんなエヴァとシンクロ”できてしまっている”んだ?
指令に”駄々をこねて”、アークからレイの作業を見守る。南極から持ち出したと言われる「ロンギヌスの槍」。この槍、嫌な感じがする。見た目は好みなんだが、実物の雰囲気が言葉で表現しづらいオーラみたいなものを放っている。レイは器用に槍をあつかい、リリスに突き刺す。
たったこれだけの作業なのに、とても不穏な感じがするのは何故だろうか…。だいたいこんな物騒な機体に
-碇ゲンドウの目-
試作型のダミープラグが天井から吊るされており、それを1組の男女が見上げる。
「試作のダミーはどうだ。」
「やっとデータが復元でき、もう少し調整すれば最終段階です。しかし、量産は難しいかと思われます。これとアークの基礎理論を融合させれば、更に高精度な無人コントロールが期待できます。しかし、アークに関してはMAGIシステムを使わなければならないので作戦展開範囲に支障が出てしまいます。これからはダミー単体の更なる研究が必要になると思われます。」
「構わん、エヴァが動けばそれでいい。…肩の具合はどうだ?」
「問題ありません。完治しました。」
「そうか。…レイとアークの子供にしてやられるとはな。」
「親離れするとは思ってもいなかったのですか?」
「レイの真実を知れば、自ずと彼から離れていくと思っていた。人間は現実から目を背けることで生きている。だが、現実を直視しないと前には進めない。次の手は打つ。
ところで参号機だが、週末には届くだろう。あとは君の方でやってくれ。」
「はい。調整ならびに起動実験は松代で行います。」
(…レイ自身が、指令から離れていくとは思ってなかった癖に。)
最早誰も入ることの無い空っぽの管を碇ゲンドウはみつめる。
「こいつは…」
俺も大人たちと共に、アメリカ第2支部が消滅する映像を確認する。
「手がかりは静止衛星からの映像のみで、後は形跡も残っていません。」
「エヴァンゲリオン四号機並びに半径49km以内の関連研究施設は全て消滅しました。タイムスケジュールから推測して、ドイツで修復していたS²機関の搭載実験中の事故と思われます。」
「予想する原因は材質の強度不足から設計初期段階のミスまで32768通り。妨害工作の線も考えられます。」
「でも、爆発じゃなくて消滅なんでしょ?つまり消えたと…。」
「S²機関の搭載実験中の”ただの事故”ならここまで大規模なものになるんかな。こないだの使徒爆弾ですら、コアの破壊時にあの程度の爆発で済んでたのに…。明らかに質量に対して釣り合わない規模だ。」
「よくわからないモノを無理して使うからよ。」
俺、ミサト、赤木博士の3人でエスカレータを降りる。
「これで折角直したS²機関もパーね。」
「そうね、夢は潰えたわ。」
「基地一ヶ所もそうだけど、エヴァ一機に予備パーツがまるまる消えたのもだいぶ痛いですね。敵はこっちの都合なんてお構い無しだっつーのに。」
ミサトが溜め息混じりに頷く。
「ホントよ。で?残った参号機はどうすんの?」
「ここで引き取ることになったわ。米国政府も、第一支部までは失いたくないみたいね。」
「まるで忌み子のような扱いだ。んなくらいならさっさと俺に寄越してくれりゃよかったのにさ。2機より3機。3機より4機でしょう?」
「今更危ないとこだけうちに押し付けるだなんてムシのいい話ね。」
「あの惨劇の後じゃ誰だって弱気になるわ。数千の人間が巻き添えになったのよ?」
「…で、参号機の起動実験はどうすんの?エイジ君?それともダミー?」
「エイジ君は最早エヴァパイロットの予備じゃなくなったわ。アークを動かしてもらわなくてはならないもの。」
「その件で。赤木博士、これからいいですか?」
「…いいわよ。ついてらっしゃい。」
(気を付けてね。)
(はい。)
「…それで、話とは何かしら?今度は私の頭部に弾丸を埋め込もうっていうの?」
「んな物騒な話はもうしたくありませんね。『E計画』の話、レイから聞きましたよ。随分おっかないモノを
「…そう、聞いたのね。それはE計画ではなく、碇指令の計画よ。それをどうする気なの?」
「あんなことさせませんよ。それ目的で話に来たんですから。」
「どういうことかしら?」
「エントリープラグ周辺及び、エヴァの素体の構造を知りたいんですよ。今後、エヴァが何かしらの手段でジャックされた場合を想定して。」
「それなら簡単よ。人間と同じ所を狙えばエヴァも活動を停止するわ。ヒトが乗っている場合、エヴァはプラグを引き抜けば活動を停止する。ダミーも同様。肉体そのものを操られている場合はその肉体を殺すしかないわね。」
「後者の場合、シンクロが継続していることも有り得ますか?」
「残念ながら有り得るわ。」
「…そうですか。ありがとうございました。」
「待って。これからのあなたの予定を伝えるわ。」
「え?」
学校。今は図書室に本を借りてきた。カミュの「異邦人」。久々に読むと、また面白いんだなこれが。階段を上ろうとすると、洞木さんの声が聞こえる。
「ス ズ ハ ラ~~~~~!!!」
階段で騒がないでくれ、おっかない…。
「今日という今日は許さないんだから!!!」
「わーーっ!!よりによって一番危険なパンツ見てもうた!助けろシンジ!」
「待ちなさいコラッ!!」
「わっ、ちょっと!!!」
トウジがシンジを盾にしようとするが、その時勢い余って足を踏み外してしまう。
「危ねぇ!」
シンジとトウジが階段から落ちそうになった。俺は右手で手すりをしっかり掴み、迷わずシンジを助ける。トウジは階段から転げ落ちていた。あー痛そう。
「いてっ!!え、エイジ君!」
「あだだだだ…何やエイジ、そないなったらワシも助けてくれよ!」
シンジを引き上げる。
「危なかったな。トウジ、それはお前の勉強代だ!しっかり痛がっとけ!」
「だ、大丈夫?」
「全身打撲やないかなぁ。」
「そ、そう!じゃああんたはさっさと掃除しなさい!」
ほんと、洞木さんはトウジのこと好きなんだなぁ、よくわかるよ。
屋上で独りで本を読んでいる。今日は訓練も休みだから、たまには独りで過ごしたい。数ページ読み進めると、ミサトから電話がかかってくる。
「ミサト、どうしたん?わざわざ電話してくるって事ァ、参号機の…」
『
「え…?よりによって、トウジなんですか…?」
無言の時間。突然の強風で、左手に持っている本のページが勢いよく捲られる。あんなバカやってるヤツがどうして…。
「決定事項…なんですか?」
『残念ながらそうよ。スケジュールはリツコから聞いてるわよね。』
「はい、聞きました。起動実験に関しては松代のアーク2号機で俺も参加することになってます。」
『聞いてるのならいいわ。明日、正式に彼にパイロット依頼をすることになってる。よろしく頼むわよ。』
「……はい。」
本を閉じ、空を見上げる。
よくない方向に向かってる気がする。
「センセ!頼む、数学の宿題見せてんか!!」
「…またやってこなかったの?最近、僕の宿題アテにしてない?」
「堅いこと言わんと早ぉ見せてえや。…こうこう、たまには間違った答え書いとかんとな。」
アレ以降、自分のなかで整理がつかず、レイ以外の誰にも話せてない。レイにも口止めさせてる。こういう平和なやりとりを見ていると、どうしても「お前はエヴァパイロットになって使徒と戦え!」なんて言い出せる訳がない。俺が乗れればそれでよかったのに…。
あ、まーたトウジが洞木さんに喧嘩売ってる。お前ら一生そうやってろ。その方がこれからより何万倍も幸せだ。
「エイジ、まだ整理つかないの?」
「レイ…、俺はあーゆうのを見てると、どうしても踏ん切りがつかなくてさ…。洞木さんまで巻き込むんだぜ?俺にそんな…」
「鈴原!鈴原トウジはいるか?影嶋君と一緒に、至急校長室まで来なさい。」
「アンタ、なんかやったの?それにエイジ君とって?」
「アホ、心当たりないわ。エイジ!行こう…や。…どした?」
動揺が顔に出ていたようだ。頭を振り、いつもの顔で向き直す。
「おう、さっさと行ってこよーぜ。」
「お前、この話知っとるんやろ?教えてくれや。」
「…エヴァンゲリオン参号機のパイロット推薦だ…。」
「ワシがか?」
「ああ。…この仕事は厚待遇だが、つまりそれは危険と隣り合わせということに等しい。それに、今NERVは人材を欲している。言い方は悪いが、お前の妹をダシにしてでも引き入れようとすると思う。…自分の意思で、答えてくれ。これ以上俺は口出しはしない。」
「失礼します。」
「失礼します、パイロット候補生を連れてきました。」
「ありがとうエイジ君。下がっていいわ。」
「…はい。失礼します。」
校長室を出る。あとはトウジの判断が全てだ。
ふらふらと屋上に行くと、シンジ、アスカ、洞木さんの3人が何やら喋っている。俺は運が最高に悪いのかな。こんな時にこのメンツと出会ってしまうなんて。
「あ、バ影嶋!ちょうどいいとこに来た、アンタも考えなさい!」
「もっと説明してくれ。来たばっかで何もわからねぇよ。」
「どうしたらヒカリとあの熱血バカがラブラブになれるかよ!シンジは手作り弁当がいいって言ってるけど、アンタはどう?」
「熱血バカって、まさか…」
嫌だ、本当に聞きたくない、こんな現実があってたまるか…。
「あんたバカァ?鈴原の事に決まってんじゃん。」
固まってしまった。いや、思考を放棄しかけた。…でも、ここでしか言えないことなのかもしれない。覚悟を求められるなんて。
「ちょっと、どうしたのよ。」
「いえ、いいんです。私…」
「ダメよそんなん!今のうちに伝えておかなきゃ、何が起こるかわからないんだから。」
「今のうちに」か。自分の両頬を叩き、覚悟を決める。言おう。
「真面目に聞いてくれ。」
「なに、やーっと決まったのね?言ってみなさい!」
「いい夜景が見られる所がある。少し遠いけど、第3新東京市の美しい夜景が見れる場所。今夜、加持さんに連絡とって明日の夜に二人を送迎させる。待ち合わせ場所は適当に決めてほしい、俺から加持さんに連絡する。」
「あら、意外とロマンチックなのを知ってるじゃない。」
「でも、明日の夜ですか?そんなすぐに…」
「いいじゃない、『善は急げ』よ、ヒカリ。」
「いいや、どうしてもその日じゃないといけないんだ。俺らは明後日から4日ほど、松代に行く。」
「『俺ら』ってどういうことよ影嶋。」
「それに松代って…」
「トウジが、エヴァンゲリオン参号機のパイロットに推薦された。恐らく彼は妹のこともあるから引き受けるだろう。」
沈黙。だが、いずれ言わなければならない真実であった。
俺は洞木さんの所へ行き、両肩に手を置いて、目線を合わせて言う。
「今、彼に必要なのは心の支えだ。それは俺らじゃなくて、洞木さんにしかできない。…トウジに会って、笑顔で松代に送ってくれ。互いに後悔のないように、な。」
「そんな、まるで鈴原が死にに行くような…」
「絶対に死なせはしない!絶対にだ…!そのために俺がサポートをするんだから…!」
洞木さんから離れ、俺はそのまま立ち去ろうとする。
「待てバ影嶋!どうして引き留めなかったのよ!パイロットの神聖さが…」
「そうだ、トウジにまで、こんな思いを…!」
「あいつが決めたんだ!自分で!」
振り向き直し、尚も言う。
「あいつが、お前らのように『自分の意思で』エヴァに乗ると言ったのなら、俺が何かを言えるわけがない!俺はちゃんとリスクと裏話もした!それでもアイツが乗るって言うなら、誰が止められるんだよ…。」
この場にいる誰もが反論できなかった。俺は踵を返し、その場から立ち去る。扉を閉めると、レイが立っていた。
「意地が悪いな、立ち聞きなんて。」
「エイジの覚悟を聞きに来たの。」
「…そうか。」
「泣いてるの?」
「え?…ほんとだ、何でだろうな…。」
「加持さん、明日の夜暇ですよね?」
『最近は忙しい方だが、なんとか時間作れるぞ。どうした?』
「そいつは失礼しました。友人二人を、こないだの夜景が見れる場所へ送ってほしいんですよ。待ち合わせ場所は鈴原トウジが住んでいるマンションの前、といえばわかりますか?」
『何だ、今日の君はやけに強引じゃないか。どうしたんだ?』
「トウジを好きな子が、想いを伝えたいと。」
『へえ、それで君が恋のキューピットになるっていうのか。君もやるようになったな。』
「そんな御大層なものじゃないんですよ。ただ、ずっと嫌な予感がしてるんですよ。参号機の起動実験に。」
『どうした、何か情報でも掴んだのか?』
「いいえ、『指揮官の勘』とでも言うべきものですかね。」
『…そうか。松代の起動実験、気を付けろよ。
(加・持・さん!)
悪い、アスカだ。また連絡するよ。
(誰としゃ―)』
「切られたというより、切らざるを得なかった、の方が正しいか…。」
起動実験の日。俺は今日までトウジと何も喋っていない。
[MAGI2号機とアーク2号機、接続]
[LCL電荷]
[各戦闘指揮システム、アークにリンク完了]
「ようトウジ、これからだな、頑張れよ。」
[ああ。……ありがとうな。]
「うまく行ったんだな。これからも上手くやってけよ。」
[言われんともそうするつもりや。]
[二人とも、いいかしら?]
[はい。]
「俺ならいつでも。」
[エントリープラグ、固定完了]
[第一次接続開始]
[パルス正常]
[グラフ正常位置]
[リスト1350までクリア]
[初期コンタクト問題なし]
[了解、作業をPhase2へ移行!]
[オールナーブリンク問題なし]
[リスト2550までクリア]
[ハーモニクス、全て正常位置]
[絶対境界線、突破します]
今回も問題なさそうだ、杞憂だった―
アラート!?何故!?
[どうしたの!?]
[中枢神経に異常発生!]
[実験中止、回路切断!]
「参号機のコントロールジャック用意!」
[無茶よ!]
「誰かが止めにゃならんでしょう!」
[体内に高エネルギー反応!]
[まさか!]
[使徒!?]
「何でこんな時に!!!」
[コントロールジャック!]
その瞬間、使徒の意思に晒された。
補完計画発動も、使徒騒ぎの後のごたごたもない本当の大団円endを読みたいですか?
-
はい
-
いいえ