エヴァの記憶だけ吹っ飛ばされた人がエヴァ世界に飛ばされた話   作:フィアネン

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どこかでS2機関を取り込んだエヴァが発生するか初号機が覚醒しないと計画が…(ゼーレ並感)


St.12:命

強い悪意。頭が内側から吹き飛びそうな痛みが俺を襲う。何が起きてんだ!?それを考える間もなく、俺はそれに押し潰されて意識を失った。

ああ、これだったらレイを連れて―

 

 

 

 

-碇シンジの目-

 

珍しくケンスケと屋上で昼食をした。四号機の消滅…僕はミサトさんからも、エイジ君からも一切聞いていない。僕が知る必要はないのか、それとも…。多分、エイジ君は気をつかって伝えなかったんだろう。エイジ君って僕らよりとても『大人』だし、僕らと同じ年とは思えないことを言ってきたりするから。

 

「トウジとエイジ君、上手くいったかな…。」

 

「え?あいつら何かやってるの?」

 

「え?ち、ちょっとね。」

 

適当にごまかそうとすると、電話が鳴る。誰からだろう?

 

「はい?」

 

『シンジ君!?今すぐレイとアスカと一緒に本部へ戻って!!大変なことが起こったの!!!』

 

「え、どうしたんですか!?」

 

『松代での起動実験中、爆発事故が…』

 

「松代で事故!?じゃあ、ミサトさん達は!?」

 

『まだ連絡は取れてないわ。とにかくすぐに来て!事故現場に未確認移動物体を発見したわ、恐らく使徒よ!!』

 

「ごめんケンスケ、行かなきゃ!!」

 

ミサトさん!リツコさん!エイジ君!トウジ!!

 

 

 

[エヴァ全機発進!!]

 

上に押し付けられる感覚。発進の声がエイジ君じゃないことが、とても違和感に感じる。

 

「ねえ、僕らエイジ君がいなくて大丈夫かな…?」

 

[シンジ、そんな事言ってられないのよ!?そ・れ・に、アイツ不在でも、私だけでやってやれるってアピールできるチャンスじゃない!]

 

[アスカ、余裕ね。]

 

[あったり前じゃない!いつものうるさい声聞かずにすんでせいせいしてるわ!]

 

嘘だ。エイジ君の指揮にいち早く行動してるのは、いつもアスカな癖に。

 

[エヴァ各機は迎撃地点にて待機!]

 

どうか、誰も死なないでくれ…!

 

 

敵の足音が聞こえてくる。来る…!

 

[目標接近!!全機、地上戦用意!]

 

な、目標って…!

 

「目標…目標ってこれなのか!?だってこれは…エヴァじゃないか!!」

 

[シンジ、これはもうエヴァじゃない。『使徒』だ。]

 

[そんな、使徒に乗っ取られるなんて…!]

 

トウジは!?トウジはどうなんだ!?

 

「パイロットは乗ってるのか!?アスカ!!」

 

[ここからじゃわからないわ…。でも、乗ってたらなんとか助けなきゃ…!]

 

足音が止まった!?

 

[キャアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!]

 

「アスカ!?」

 

[エヴァ弐号機、完全に沈黙!!パイロットは脱出、回収班向かいます!!]

[目標移動!!零号機に接近!!]

 

綾波の所に行かなきゃ!!

 

「綾波!!足止めしてくれ!!僕がプラグを…!」

[了解!足を狙えば…!]

 

零号機は足に向けてライフルを撃つが、効果がない。

零号機に気付いた参号機は上半身を曲げ、大きく跳躍する。そして、零号機の上にのしかかり、その装甲から滴るものが零号機の腕へ侵食する。

 

[あっ!?あ…ああううう…!]

 

[零号機左腕に使徒侵入!神経節が侵されていきます!!]

[零号機、左腕部を切断!]

[しかし、神経接続を解除しないと!]

[構わん、切断だ!]

 

零号機の左腕が根本から弾け飛ぶ。

 

[きゃああああああああ!!!!!]

 

「綾波!!!!!」

 

[零号機中破!パイロット負傷!]

 

[回収班急いで!]

[シンジ、聞こえるか。もう残っているのはお前だけだ。お前が倒せ!]

 

動けない。トウジとの思い出が頭をよぎる。目の前に暴走している参号機がいるのに、攻撃できない。エイジ君…エイジ君だったら、こんなときどうするの!?教えてよ…!

 

[どうした、何を突っ立っている!]

 

ハッとしたとき、既に参号機は動いていた。大きく跳躍し、僕にドロップキックをしてくる。ライフルで防ごうとするけど、それは簡単に突破され、僕は倒れこむ。

なんとか上半身を起こすと、参号機は獣のように両手を地面について構える。その時。背面に『まだ刺さっているエントリープラグ』を見てしまった。

 

「トウジ!トウジ答えてよ!無事だったら返事してくれ!何とかして助けるから!!」

 

それに参号機は答えることなく、地面に右腕を突き刺す。何をしてくるんだ!?考える間もなく、地面から突き出てきた右腕に、首を絞められる。

 

「ぐぐ…と、トウジ…!」

 

参号機は埋めた腕を引き摺りあげ、両手で首を絞めてくる。苦しい…助けて、エイジ君…

 

[シンジ!何故戦わない!]

 

「僕には、できない…!僕には戦えない!友達が乗ってるんだ!戦えるわけないじゃないか!」

 

そうだ、僕にはアスカのような運動神経も、エイジ君のような頭のよさもない。助ける手段を思い付けない。だったら、僕が死んだ方が、よっぽど…

 

[お前が死ぬぞ!]

 

「友達を殺すよりはいい!!」

 

このまま死ぬのか…そう思った瞬間、エヴァとの接続が切れる。咳き込む自分。何が起こっているんだ…?

うわっ、勝手に動いてる!?何を…

 

「何をしたんだよ父さん!!!」

 

[……役立たずのパイロットは座って見てろ。]

 

そんな、これじゃトウジが…!

 

 

 

 

―暗い……。

―何の音もない……。

―………。

 

人の気配がする。

 

―レイ?

 

-うふふ。-

 

違う。

 

―誰だ?

 

-私と、ひとつにならない?-

 

―何だと?どこにいる?

 

-ここ、ここ。-

 

ある一点にコアが浮かんでいる。それと対峙し、訊ねる。

 

―誰だ、お前は。

 

-『使徒』と呼ばれているもの。-

 

そう言うと、『使徒』はトウジの形を投影してくる。

 

―トウジ?どうしてお前が…

 

-今、私はこの肉体を依り代に、アダムを動かしている。-

 

―アダム?エヴァの間違いだろう?

 

-いいえ。これはアダムよ。正確にはアダムのコピー。-

 

―…なるほどね。こっちがE計画っつーことか。何故、お前らは俺らを攻撃してくる?

 

-生き残るため。-

 

―その感じ、共存はできねぇな?

 

-ええ、そうよ。-

 

「じゃあお前らが消えろ!勝手な都合を押し付けにくるな!!お前らの命を犠牲に、俺らは生き残る!!!」

 

目を見開くと、参号機の視界が投影される。周囲の確認をしなければ…!?何だ!?俺の首を、初号機が…!初号機の目が赤い!?どうなって―

 

「まさか、ダミー…!」

 

あのマッドサイエンティスト(赤木博士)、造ってやがったのか。試作機か?いや、それよりまずはこの状況を打破しなければ。参号機にはトウジがまだ乗ってるんだぞ!?

初号機の手を剥ぎ取り、引き倒して関節を極める。

 

「ゼエ、ゼエ…おいシンジ!どうなってんだこれは!」

 

[エイジ君!?よくわからないんだ!勝手に初号機が…!]

 

やはりダミーか!

 

「本部、使徒反応は!?まだ残ってんのか!?」

 

[現在、参号機が使徒に汚染させられて―]

 

「馬鹿野郎、んなもんコレに乗ってんだから知ってんだよ!反応があるのかどうかだけ教えやがれ!」

 

[な、エイジ君が参号機を動かしているのか!?]

 

「ああそうだよ、素人の子供がこんな極め技できるか!!!さっさと教えろ時間が無いんだ!!!!」

 

[ああ、まだパターン青は残っている!]

[アークパイロット。参号機との接続を―]

 

「黙れボンクラ!人ひとり助けられずに何指揮官気取ってやがる!おい、他に動けるエヴァは無いのか!?」

 

[零号機、弐号機共に戦線を離脱、残ってるのは初号機だけです!]

 

「使えねぇ奴らだ!誰が最初にやられた!」

 

[弐号機です!]

 

「俺が初号機をそのポイントに投げつけるからダミーを解除しろ!シンジ!お前はそこで追加バッテリーを換装、戦線復帰だ!暴れんなよユ、初号機!」

 

[な…おい、何をしている。]

[人命が優先です!ダミーシステム、解除!]

 

[コントロールが…!あだだだだ!!!!]

 

「よし戻ったな!弐号機の座標は!?」

 

[転送完了!]

 

「シンジ、電源が切れない内にさっさと換装しろよ、時間がねぇんだ!!!」

 

[う、うわああああ!!!!!!!]

 

シンジを弐号機の所へ投げつける。ひっどい格好だが、何とか届いたようだ。

再度、使徒からの精神汚染が始まる。頭痛がヤバい。既に操縦桿を握っていられないレベルだ。多分、外から見たら参号機が頭を押さえて苦しんでもがいてる様子が映っているだろう。俺がそうなってるからな。

 

[換装やったよ!]

「わかった、ここまで来い!とりあえず汚染部分を避けてプラグを引き抜け!」

 

まだだ、気を失うわけにはいかない。プログナイフを引き抜き、参号機自身の手の甲に突き刺す。柄が地面にまで貫通し、めり込む程に。

 

「があああああああっ!!!!!!!!!」

 

[エイジ君!!今引き抜くよ!]

 

「頼む!!」

 

突如としてシンクロが切断される。この感じ、プラグを引き抜いてくれたようだ。負傷はしてるが、まだ居眠りするには時間が早い。

 

「MAGI2号機、本部のMAGIとリンクして初号機のクロッシング開始!」

 

[了解!MAGI2号機、本部MAGIとの双方向通信開始!]

[システムリンク、5%、20、35、50、78、93、100%!システムリンク!]

[クロッシング開始!]

 

精神汚染から解放される。この不快感は、間違いなく初号機のものだ。

 

「…シンジ、俺がわかるか?」

[うん、大丈夫。]

「これからプラグにこびりついた使徒の削り取りを行う。俺がイメージを送るから、その通りにやってくれ。俺側からも援護する。」

「…もし、失敗したら?」

[トウジは原型を留めずにズタズタにされる。極めて慎重にやるぞ。]

「わかった。」

 

プログナイフを引き抜き、そっとプラグ表面に当てる。そのまま全く力をかけずに真横にスライドさせる。金属が擦れる耳障りな音が聞こえるが、こうでもしないと中身を残したまま使徒を剥がすのは厳しいだろう。

 

「このまま全部の面を時間内に削り取るぞ。」

[わかった。]

 

まっさか前世でプラモ造ってたときにやった”かんながけ”がこんなことで役に立つとは思ってもいなかった。ほんと、人生何があるかわからねぇもんだ。最後の面を削り取る。安全のためプラグナイフをしまい、連絡する。

 

「表層部は削りましたが…どうです?」

 

[し、使徒の反応、消滅!]

 

既に精神が限界まできてる。今の集中でだいぶもってかれた。

 

「彼の精神汚染が心配だ…。救護班を、送って―」

[エイジ君、参号機が!!!!ぐあああああっ!!!]

「うぐぅ、し、シンジ!初号機をジャックしろ!!」

 

[ですが、2号機経由だとタイムラグが!それに、あなたの負傷も…]

 

「やれ!!!」

 

[了解!]

 

数秒経ち、再度首を絞められる感覚。右手だけだっつーのに、滅茶苦茶な握力だ。

 

「大人しくゥ、しやがれェ!!!」

 

参号機の顔面を殴りつけ、顔面から地面にキスをさせる。プログナイフを取り出し、参号機を仰向けに引き摺りあげてからもう一度顔面を、今度はナイフの柄で殴り付ける。

右手のナイフを逆手に持ち、参号機の首もとに突き刺そうとするが、当然敵の右腕が妨害をしてくる。左手を右手に添え、一気に力をかけ、首を貫く。ここまでしてやっと使徒は完全に殲滅された。

最早声が出てこない、でも、必死に声を絞り出す。

 

「パイロット救出、使徒殲滅……皆様、お疲れさまでし………」

 

 

 

 

 

ここは、セントラルドグマ?リリスの前に、レイが立っている。リリスにはロンギヌスの槍が刺さっておらず、足も生えている。

 

「レイ?こんなところで何やってるんだ?」

 

「行かなきゃ。」

 

「何処にだ?」

 

「エヴァで悲しむ人の元へ。」

 

そう言うと、レイは浮遊しリリスの元へ行く。手を伸ばし止めようとするが、それは叶わない。レイがリリスの胸元へ行くと、リリスはレイを取り込み、磔状態から自由になる。

仮面が剥がれ落ち、その顔は―

 

「レイの、顔……」

 

そのまま天井等の物理的な障害をすり抜け、上昇していく。俺は呆然と見ていることしかできなかった。

 

「レイ…」

 

そう言うのと同時に、俺の体が崩れ落ちる。

 

 

 

 

 

 

目を見開き、荒く息をする。…この感じ、また悪い夢を見ていたようだ。やっぱり思い出せない。

過呼吸なまま、目だけを動かしてどこかを確認したい…が、やっぱり何もはっきり見えない。だが、音とかぼやけた輪郭で病室にいることはわかる。頭を少し右にズラすと、レイらしき輪郭がこちらを向いている。わざとらしく笑いながら、声を出す。

 

「よォ、レイ。久しぶりだな…、何ヵ月ぶりだろう?」

 

「エ…エイジ~!!!!!」

 

レイが泣きながら俺に抱きついてくる。腕をなんとか動かし、レイの背中に回す。

 

「レイ、苦しい。」

「よかった…、生きてて…!よかった…!あ、痛い痛い!!そんな強く抱かないで!」

「え、わ、悪いな…。」

 

 

レイにベッドの角度を調整してもらい、近況報告をしてもらう。使徒殲滅から5日。参号機の汚染は解決し、零号機よりも早く戦線復帰できるそうだ。んでも、パイロット―トウジは精神汚染が激しく、エヴァにはもう乗れないとのこと。実生活に支障がないってのが本当に幸いだったが、NERVとしては戦力外通告に等しい。他、ミサトと赤木博士は無事のようだ。加持さんが教えてくれた。

他、シンジとアスカは無傷、レイは左腕負傷の状態。

 

「というと、俺が一番の重傷者か。なんか、笑えるなァ。」

「こっちは笑い事じゃなかったのよ!」

「ごめんごめん。…いや、本当に傷を負ってるのはトウジかもしれねぇな。」

 

「いいえ、そんなことはないわ。これは伝言よ。

『また助けられてもうたな。迷惑かけてばっかでスマン、エイジ。』

だそうよ。」

 

「はは、ホントだよ…。ホント、生きててよかった…。」

 

 

 

今回、仮に俺が指揮をしていたらどうなっていたのだろうか、と思うことがある。でも、そういうたられば話ってのは無意味だ。だって、既に起きてしまったことなのだから。

そんなことより、俺がやらなければならないのは戦闘記録を見直し、良かったところは誉め、悪かったところは叱るという単純なもの。

彼らはまだ14歳。そんな年齢で難しい話を聞け、という方が酷というものだ。例えば、昔のミサトがシンジに叱ってたときのような言い方とか。

 

次のケア対象は、アスカだ。彼女、ここ最近戦績が奮ってないのは事実だが、それが大きなコンプレックスになっている、そんな気がする。

 




ゼルエル君にはとあるエヴァで無惨な敗北を味わってもらいます。

補完計画発動も、使徒騒ぎの後のごたごたもない本当の大団円endを読みたいですか?

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