エヴァの記憶だけ吹っ飛ばされた人がエヴァ世界に飛ばされた話   作:フィアネン

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これを書いている最中にアークシステムの全貌の設定を思い付きました。



St.16:自分の中の無自覚な恐怖

優柔不断というか何というか、正直疲れる。最近なんかシンジに距離置かれてる感じあるし、彼の初号機も活躍する場面がない。本当に他意はないんだけど、いつも狙撃はレイがしてるし、アスカが前衛をしてるからそれで完結しちゃうんだよ。そんでもって二人は俺が贔屓にしてるって感じて張り切ってるわ初号機は毎回留守番だわ参号機も使いどころが無いわで、ほんと戦力を余らせてしまっている。不安があるとすれば対エヴァ戦だが、本気でそんなことをしてくるのだろうか?幾ら人類補完計画と碇指令の計画が違うからって、完璧に叩き潰しに来るのか?…いや、それは来るか。

 

使徒だって、寄生型が来たと思ったらゴリ押し火力ガン振りマンになったり、その次は精神攻撃をしてくる鳥が出てきた。挙げ句の果てに「渚カヲル」の存在だ。次の使徒の予想もクソもねぇ。こんなてんでばらばらな形で出てくるとなると対策なんてできたもんじゃない。第3使徒とか、初期の頃はだいぶ戦いやすかったのに……敵も学習してんだろなこれ。

てか、常に何か考えて、脳を動かしてないと倒れそうだ……。

 

 

 

最近、2時間くらいしか寝れていない。最近はアスカだけでなく、レイからも求められるようになった。俺はどうにかこうにか上手く言いくるめて逃げてきたけど、もうそろそろ彼女らも限界だろう。いつ本気で襲ってくるかわかったもんじゃない。

 

彼女らが寝てるベッドを背にして、俺は机で両手を額に押し当てて、毎日のように全く整理のつかない自分の気持ちの整理をつけようとしていた。 彼女らと体を重ねることに最初から抵抗があったのは知ってたけど、自分にはその理由がわからなかった。この、自分の中に沸き上がるよくわからない「抵抗感」がずっと燻り続け、ある日から”それ”が始まった。

 

(こんな、こんなので!!!)

 

銃を取り出し、安全装置を外して机に叩きつけた左手の甲に撃とうとする。…もちろんそれより前に自制がきき、今度は銃を逆に持って銃床で同じところを殴り付けようとする。結局

それも出来ずじまいに、両手を握り締め、右拳を机に叩きつける。

 

(また、今日もだ…!何で…何でこんな気持ちになるんだ…!何でなんだよ……!)

 

衝動的な自傷欲が襲ってくるんだよ。最近になって、多分こうだろうって結論が出た。多分、俺は「彼女らを穢したくない」と思ってるんじゃないかな。そういう恐怖が根底にあるんだと思う。トウジらの品のない言動に強い嫌悪感を感じたのもそれが元だろうね。それは当然自分に対しても向いてる。独善的な考えってのはわかってる。でも、そんなことを言われても―

 

「どう整理をつけりゃいいんだよ…。」

 

「ふふふ…」なんかみたくネタにするのとじゃあワケが違いすぎる。ずっと歯を食い縛っていた。また、気付けば外が薄ら明るくなっている。…また寝れなかったか。

 

 

 

[ねえエイちゃん、最近どうしたの?あまり眠れてないようだけど。]

 

「……え?そうですかね……?」

 

[その感覚が無くなっていくのは危険信号よ。くれぐれも気を付けて。]

 

[そうですね………。]

 

[シンクロ率もだいぶ落ちちゃったわね。大丈夫かしら、エイジ君。]

[彼、たまーにあるのよね。]

[何が?ミサト。]

[自分一人で全部抱え込もうとするとこ。他の子にはそういうことするなって言ってるのにさ。]

[多分、彼自身も無自覚なのよ。この年であれだけの重責を任されてしまったら無理もないわ。]

 

「でも、そんなことは言ってられないんですよ。俺だって、やらにゃならん仕事がありますからね…。」

 

[エイジ君、たまには休息も必要よ。シンジ君から聞いたことがあるの。あなた、『戦うべき相手がいないときは、そこから離れてもいい』って言ったらしいじゃない。その言葉、今のあなたにそっくり返すわ。]

 

「それは俺がそうだと思ったから言ったんですよ。実践するかどうかは本人次第です。そうじゃないですか?」

 

[それはへ―]

「”屁理屈だ”―そう言いたいんですか?俺の言葉に強制力がないっていうのに、よく筋が通ってないって言いきれますね。俺の言い方は筋が通ってますよ。葛城三佐、もうこの話は終わりに―」

 

[総員、第一種戦闘配置!]

 

「こんなときに使徒……。」

 

[エイジ君、今日は休みなさい。私が指揮を執るわ。]

 

「いいえ、自分も参加します。俺一人だけ後ろで構えてるっつーのに、休めるわけないですよ。」

 

 

 

 

「状況報告。」

 

[目標は現在大涌谷上空まで接近。定点回転を続けています。]

 

「了解。エヴァ初号機を前衛、参号機を後衛でスタンバイ。虎の子の試用をしてみますよ。」

 

[わかったわ。何マガジン欲しい?]

 

「とりあえず2個で。そこまでバカスカ撃つもんじゃないですしね。他2マガジン分はAPでお願いします。」

 

[ねえ、エイジ君本当に大丈夫?なんか最近つか―]

 

「……エヴァ発進。」

 

 

 

目標がいる森林地帯にたどり着く。そいつの形状はまるでDNAの二重螺旋だ。

 

「作戦を説明する。これより俺は後方1km地点での狙撃をする。初号機はこの間、敵の撹乱を頼む。攻撃を当てる必要も、傷をつける必要もない。参号機の時のような侵食タイプだと厄介だからな。いいか?」

 

[…わかった。でも、これだけは言わせて。]

 

「なんだ?」

 

[死にに行くようなことだけはやめてね。]

 

「そらそうだ。俺は死なない。絶対に死ねない…!」

 

エヴァがそれぞれ配置につく。敵は未だ攻撃を仕掛けてこない。

 

[膠着状態ですね。まず、敵の攻撃手段が読めないことには…。]

[青からオレンジへ、パターンが周期的に変化しています。]

[どういうこと?]

[MAGIは回答不能を提示しています。]

[答えを導くにはデータ不足というわけね。ただ、あの形が固定形でないことは確かだわ。]

[先に手は出せない…か。]

 

「シンジ、敵が仕掛けてからが本番だ。気を緩めるなよ。」

 

[わかった。…来る!]

 

それと同時に、二重螺旋をしていた使徒の体が一本の紐になり、初号機を襲う。

初号機はパレットライフルを先端部に射撃しながら、敵を引き付ける。

俺はそれを注意深く観察しながら、照準をする。先端部より少しだけ後ろに当たるように…

 

「ファイア。」

 

試製長距離狙撃用ライフルが火を吹く。発射された虎の子―AATFS(アンチA.T.フィールド弾)―が使徒の体を貫き、悲鳴と共に血飛沫をあげる。この弾、革命だ。遠距離からATフィールドを中和せずにぶち抜ける。

続いて2発目……。これも先ほどの傷の少し後ろに直撃する。今度は先端部が千切れ、その部分は消滅した。

倒せはするが、このままでは非効率だ。

 

[敵、初号機に攻撃集中!両端を使っての攻撃へと移行しました!]

 

「させるか…!片方はこっちを見やがれ!」

 

わざと体を晒し、敵に向けて2発発砲。両方とも命中し、更に長さを削ることができた。残り1発。だが、これは結果的に悪手だった。敵が唐突にこちらにタゲ変更してきたんだ。

 

「な!?」

 

イレギュラーと思考能力の低下でまともに避けれず、先端部を複数の触手へと変貌させた敵は参号機の四肢を、胴体を侵食し始める。

 

「があっ…シンジ!これだけ受け取って撤退だ!」

 

そう言って、俺は初号機に虎の子の未使用マガジン1つを投げ渡す。初号機はこれを掴んだが、俺のライフルを取り返そうとしていた。

 

「シンジ、バカなことを考えるのはよせ!撤退だ!」

 

[そんな、それじゃエイジ君が!]

 

「エヴァを一度に二機失う方がよっぽど損害が出るんだ!行け!」

 

この感覚…またお前らかよ。

 

 

 

 

{またお前らか、とは随分なご挨拶じゃないか、君。}

 

「また使徒と会話するハメになるとは思っちゃないからな。今度は俺に化けて何の用だ?」

 

{君の存在が消えようとしている。心が痛むだろう?}

 

「…へえ。そうなのか。」

 

{どうした?人間というのは、自分の存在が消滅するときは恐怖にかられるんじゃないのか?}

 

「それなら、俺はもう人間をやめてるな。」

 

突如として意識空間に表示される真っ赤なタイマー。30秒のカウントが始まる。

 

{そんなことしても、あたしらが悲しむだけよ。}

{そうよ。}

 

今度はアスカとレイの姿に化ける。また精神攻撃か。

 

「お前らほんと懲りないな。また精神攻撃を―」

 

{アンタ、あたしたちと一つになりたいんでしょう?知ってるのよ?}

{でも、あなたの心の奥底にある恐怖…そのせいで、自分自身を傷つけてしまっているのね。}

 

二人はゆっくり近づいてくる。

 

{ねえ、あたし達には心を開いてよ。}

{そうすれば、あなたの恐怖もなくなるわ。}

{{いいでしょ?エイジ。}}

 

「な…!?違う!これは俺の願望だ!彼女らの心じゃない!」

 

{いいえ。アンタも、もうわかってるはずよ。}

{そうよね、エイジ。}

 

「やめろ、来ないでくれ、くるな…。」

 

{もう、怯えることはないのよ。ずっと前から、アンタはあたしたちの心も、自分の心も知ってたくせに。}

{嬉しかったのよ?初めて碇指令以外に心を開けて。}

 

残り10秒のタイマーをアスカが止める。

 

「違う…これは現実じゃない…敵の見せてる幻覚…幻なのに―」

 

{もう、たった一人で頑張るのも、疲れたでしょ?あたしみたいな脆い心を持っているのね。}

{私らと一つになれば、もう疲れることはないのよ。}

 

二人はそれぞれ俺の半身に抱きつき、耳元で囁く。

 

{{そうでしょ?影嶋エイジ君。}}

 

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!

俺の心を穢すなあああああああああああああああああ!!!!!!!

DNA野郎お前ええええええええ!!!!!」

 

必死で二人の影を振りほどく。再び俺の姿に戻った敵は、尚も俺を追い詰めていく。

 

{憎しみの心だけで戦ってっと、心身がもたねぇぞ。それは俺自身がよく知ってる癖にさァ。}

 

「俺を真似るな!俺は俺自身だけだ!人の中に土足で入ってきやがって!!」

 

俺はタイマーに手を伸ばす。

 

{いいンか?んな事したら、あの二人を悲しませることになっぞ。}

 

一瞬躊躇ってしまう。敵の言ってることはもっともだ。だけど、この感じ、多分…。

 

「悲しむ?いいや、俺は死なない。俺の魂も、肉体も消えない。かかったな?正確には"俺はここには居ない"からな。いつでも俺は逃げれるんだよ。」

 

躊躇いなくタイマーをスタートさせる。

 

{な…!?お前、何故そんなことができる!?ここから逃げれる確証も、魂が残るとは限らないんだぞ!?他の人間のことを考えはしないのか!?}

 

「ああ、しない。残念だったな。そんな心理攻撃、もう無意味だ。相手を考えるべきだったな。」

 

{キサマ、そんな事を…何!?俺の体がアダムに引っ張られる!?何をしている!!}

 

「俺は拒絶するのもそうだけど、受け入れるってのもできるんでね。道連れさ。相手が悪かったな、お前。」

 

{殺される!?俺が!?い、嫌だ!}

 

「人間の心を知って恐怖したか。…憐れよなァ。」

 

突如として敵の感覚が完全に無くなり、俺はタイマーを止めた。0.005秒…これ以上遅かったら自爆していたのか。

相手を恐怖させる作戦だった。途中からトレースするのは余りにも出来すぎてる感情を敵が発してきていた。つまり、感情を学習していたんだ。俺の心をつかって。それに、使徒は追い詰められると自死を選ぶことにも例があった。

……完全に運ゲーのみで渡った、作戦もクソもない危険極まりない綱渡りだった。

 

「……使徒の反応は?」

 

[しょ、消滅しました……。]

 

「戦闘終了。お疲れさまでした。……え?零号機に弐号機?何でお前らが…?」

 

[[エイジ~~~!!!!!]]

 

「おわっ!?エヴァで人間の真似事しないでくれ!ちょ、ちょ、このライフル高級品なんだぞ!?壊れる壊れる!!!葛城三佐、こいつらのコントロール権俺に寄越してくれ!活動限界までこんなことすっ気かよ!?」

 

[あら、いいじゃない?影嶋指揮官殿。彼女ら、本気であなたを心配してたのよ?これくらいさ、大目に見てやりなさいよ。]

 

「そんなんでいいのかミサト!自分が見たいだけじゃ―」

 

[ごめんねエイジ、私、エイジのこと何も…!]

「……まさか視たのか?俺の心を―」

[視たわ!アンタこそ、もっとあたしたちを信用してよ…!話してよ…!わからないじゃない…このバカ……!]

 

そっか…ずっと、自分自身のことを後回しにしてたんだな、俺。

 

「ごめんな、二人とも。」

 

 

 

 

俺だけ先に帰って寝た。正直もう心身共に限界だったし、横になった瞬間意識がなくなってく感覚があった。ここまで安心するのもいつぶりだろう……。

 

 

 

 

……う…うん?なんか重いし、口が濡れてる感覚が…?何だ?ボヤける目を開けると、目の前には真っ赤な瞳がある。

 

「はあっ…レイか。俺の上着脱がせてたのもお前だな?」

「エイジの体温、また感じたかったから。にしても~、アスカと先に舌使ったでしょ?」

「そらアスカが迫って来たんだって…。」

「む~、アスカズルい。…でも、エイジのこと、私ら知っちゃったから。」

「え?」

 

「ねえ、私と一つにならない?」

 

それを耳元で囁かれた瞬間、背筋がゾクゾクした。

 

「ひっ…ひ、卑怯だぞそれ。使徒の攻撃まんまじゃねぇかよ。」

「ねえ、エイジの言葉で聞かせて。」

「明日平日だぞ?」

「もー、そーいうところはいつも通り真面目なんだから。いいじゃん、仕事した次の日くらい。」

 

横目で机の方を見ると、近くに椅子が寄ってるし、その上にゃ箱が置いてある。用意いいなほんと。

 

「たまにはハメを外すのも悪かァないかな…。」

「やった、エイジ好き。」

 

 

 

 

携帯が鳴ってる。回らない頭を動かし、手でベッドの上をまさぐって、携帯を手に取る。もう12時過ぎか…。

 

「はい、影嶋ですが……」

 

『あー!やーっと電話に出てくれた!どうしたのエイジ君!?どこか具合でも悪い?』

 

「どうしたのさミサト、そんな慌てた声だして…。」

 

『エイちゃんが朝起きないのを不思議がってシンジ君が見に行っても、それ以降顔赤くしてなにも言ってくれないのよ?心配にもなるわ!』

 

「俺は平気ですよ?だいた―っ!?!?」

 

『どうしたの?やっぱどこか悪い?』

 

「……はい、今日は全部休みます。赤木博士との会議も明日の同じ時間にお願いと言っといてください。んじゃ。」

 

強引に電話を切る。目の前にアスカの体があったらビビるよそりゃ。わざわざレイとの間に滑り込んできてるっぽい。あんたらほんと仲いいな?

ん?右腕にサインペンか何かで殴り書きされてる。何だろ?

 

“Ich werde dich nicht alleine lassen.”

 

…これドイツ語だよな?読めねぇよアスカ。せめて英語にしてくれ―

 

疲労からか、二度寝してしまった。

 




機械翻訳ドイツ語ユルシテ…ユルシテ…

補完計画発動も、使徒騒ぎの後のごたごたもない本当の大団円endを読みたいですか?

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