エヴァの記憶だけ吹っ飛ばされた人がエヴァ世界に飛ばされた話 作:フィアネン
St.18-2:応戦、そして― [分岐2]
「現在残っているNERV職員に通達します。現在、地上での攻撃が開始されています。職員の安全確保のため、下層への退避を開始してください。また、主要通路、他移動可能区域は特殊ベークライトで全て封鎖します。各方角を一本道にし、そこで敵を迎撃してください。300秒後に表層部から開始します。パイロットは全員速やかにエヴァに搭乗、ケイジにて待機。参号機はプラグのみ挿入、待機。」
ここまでは初期抵抗だ。こっから先、どんな風に敵が来るかがわからない。どうする?
俺のとれる手段は二つ。
あくまでNERVの保護に走り、全体指揮を執るか―
それとも、ドグマに行き指令の計画を阻止するか―
俺は………
「アーク、基地内の制圧状況及び職員ID情報を視覚化できるか?」
-これでいい?-
画面には基地内の経路図、ベークライト注入状況、職員のID、制圧状況が表示される。
「ありがとう。これより抵抗作戦を開始する。この部屋周囲にもベークライト注入。」
この部屋周囲が赤く表示される。恐らく問題なく機能した。にしても、ベークライトを注入し経路を絞っているっつーのに防衛より侵攻の方が早いとは。流石、世界最強の軍隊を謳っているだけはある。既に第2層を突破された。
「第3層まで後退、応戦。ベークライト注入スピードを300秒から160秒へセット。」
[今指揮をしているのはエイジ君なの!?]
「そうですよ。どうしました葛城三佐?」
[どうしましたじゃないわ!もうこのブロックは破棄されるのよ!?]
「部屋の周囲はベークライトで固めてあります。エヴァで無理矢理脱出すれば問題ないですよ。それより俺はここで指揮しなきゃならないんで。じゃ!」
[あ、待ち―]
もうケイジにまで敵が侵攻してきてる。ここを押さえられたらコントロールジャックをいちいちしなきゃならない、そんな悠長なことはしてられない。
「格納ケイジの職員は速やかに退避!エヴァ零号機・初号機・弐号機はジオフロント外縁部へ射出!」
-参号機は?-
「待機だ。俺を助けるのが居なくなっちゃ困るからな。」
突如、激しい振動。
「何だ!?状況報告!」
-NN兵器。第3新東京市ごとジオフロント外壁を破壊されたわ。-
滅茶苦茶しやがって戦自の奴ら…。それに続いて連鎖的な爆発音。これはミサイルの飽和攻撃だろう。やることがハードすぎるな、ほんと。
「エヴァ全機、聞こえるか?これから天井の穴から敵がわらわら来ることが予想される。各員、ライフル等銃火器で応戦!ケーブルを守りながら戦え!零号機、付近の生きてる兵装ビルに俺が使ったライフルを出す、それで応戦してくれ。弾はHEに設定してある、虎の子はしばらくは使わないでいいからな。」
[それよりもこのミサイルの雨の方がよっぽど厄介よ!]
[了解。まだ来ない…]
[こ、怖い…。]
「誰だって人間同士で殺り合うのは怖いさ。後悔するのは終わってからだ。…来た!攻撃開始!初号機にクロッシング!」
シンジらは所持したライフルを使って応戦している。通常兵器ならば、ケーブルさえ守れば後はどうにでもなる。問題はエヴァを投入してきた際…。あいつらはダミーですらATフィールドを使える。ダミーの試作は完成していた。もし、それが敵の手に渡っていたら…?可能性は否定できない。常に最悪の方向へ考えろ。
ある程度戦車に航空機が撃破された頃、妙に静かになる。この嫌な感覚、間違いなく来る。
「零号機、虎の子を受け取れ。多分来る。」
[来るって…何が?]
「もう来やがったか。空を見ろ。」
[何、あいつら…!]
[エヴァシリーズ…?]
[完成していたのね…。]
9体の真っ白なエヴァが翼を広げ、本部上空を旋回している。その手には諸刃の剣が装備され、いかにも「殺しに来ました」と言わんばかりの出で立ち。奴らは着地すると、その巨大な翼を背中に格納する。うわ何だこのウナギ頭、グロ過ぎるだろ…。
「AATFSは受領したか?」
[受領したわ。]
[戦力差はちょうど3倍…。]
[逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ…!]
「アスカ、付近のコンテナにソニックグレイブを出しとく、余裕があったら拾ってくれ。シンジ、アスカを守ってやれ。シンジはいつも通りリベロだ。レイ、味方にだけは絶対に当てるなよ?…戦闘開始!」
[[[了解!]]]
俺もうかうかしちゃいられねぇな。
「アーク、参号機をコントロールジャック!」
-わかった。-
ここに来い、参号機。
激しい振動、壁が崩れる音。アークのプラグから出ると、参号機の腕が目にはいる。…ありがとう、アーク。参号機の掌に乗り、そのまま搭乗する。
「ケイジを経由してから地上へ出るぞ。」
ケイジの壁内部には試製ライフルとAATFS等の弾丸が埋められている。有事に備えて、赤木博士に頼んでおいた。壁を破壊し、装備一式を取り出す。
「このままリニアレールで射出させる。アーク、頼むぜ。」
-わかった。-
久しぶりに感じる上昇によるG。初出撃以来か?地上に出ると、劣勢になった味方3機がいる。
[こいつら、どれだけ倒してもすぐ復活するけど!]
[何なんだこいつら!?]
[もーインチキよインチキ!]
「狼狽えるな!コアをちゃんと破壊しろ!」
その言葉と同時に、一番近くの敵コアを狙い撃つ。きちんと2発叩き込み、敵の活動は止まった。その瞬間、まるで「待ってました」と言わんばかりに量産型全てがこちらに対して視線を向ける。あいや、目がねぇのにどうやって視線を送るんだよ。6体の敵が剣を一斉にこちらに投げてくる。俺は参号機のATフィールドによって防御する…が、それは意外な形で裏切られた。
敵の剣が槍へと変化する。この形状、まさか
「ロンギヌスの槍!?何故!!!」
参号機のATフィールドを突き破り、俺の四肢と胸二ヶ所を貫かれ、地面に固定される。
「があああああああああああ!!!!!!!!!!」
[[[エイジ(君)!!!]]]
「が…く…!しょ、初号機にコント…ロール、ジャックしろ…アーク!」
-わかった。-
―があっ、はー、はー…やっと何とかシンクロできた…。ここは?戦闘はどうなった?
[ふぇ?あなた…たしか綾波レイさんの次に、私の中に入ってきた…。]
―あ、どうも碇ユイさん。またお邪魔してますよ。
[影嶋エイジ君よね。よくシンジが意識してた友達だもの、知ってるわ。]
―それはどうも。にしても、こんな状況ではありますが始めて私に接触してきてくれましたね。ありがとうございます。
[あ、それは…シンジが来るまでは眠ってたようなものだし、その後も戦いが無いと、眠くなっちゃって…。ごめんね。]
―そ、そうだったんですか。
ええ……な、なんつーマイペース。まァ嫌われてる訳じゃなかったからいいや。
―それより、今、ユイさんの力をお借りしたいと思うんです。いいですか?
[ゼーレの、補完計画ですか?]
―残念ながら。止めきることができませんでした。
[そう…。でも大丈夫。シンジは正しい判断をするわ。]
―ええ、私もそう思いますよ。アイツ、割と度胸ありますしね。
[そうね。それじゃあ、私はゲンドウ君の所に行ってくるから。]
―…はい。
一面が、LCLの海の世界。俺以外の、何も存在を感じれない。…いや、俺自身もこの空間―ヒトの魂の渦の中に溶け込みかかってるようだな。俺の魂のイメージは、普段はあまり着れてない私服のようだ。どうやらこの世界、「自分自身」を認識できないと形がなくなるようだ。…にしても、たまに俺の中に侵入しようとするバカが多いな。何なんだよ一体。
ん?あそこにいるのは―
「レイ?それにシンジ?」
いや、レイじゃないのか?髪の色が色が違うし、何より幼い。もしかして…
「アークか?」
「そう。私はアークのコアだった存在。碇シンジの願いを叶えるためにここに来た。」
「ヘェ。これがシンジの求めた世界か。例によって、ATフィールドがない世界か?」
「え…どうしてそれを…?」
「カヲルが言ってたろ?シンジの考えそうなことだ。」
「……でもね、今はそうは思ってないんだ。今まで色々な人と出会って、色んなことを知った。ここには誰もいない、そんなところに幸せなんてないよ。」
「……」
「悪いこともないけど、いいこともない。これじゃ、死んでるのと同じだ。」
「また、傷つけ合いが発生するぞ?他人っつー恐怖が始まる。それでもいいのか?」
「そうよ。ここなら、それは発生しないのよ?」
「いいんだ。父さんは、前にこう言ってたんだ。『人と人が完全に解り合うことなんてできない』って。でも、僕はそれを確かめていない。確かめたいんだ、この体で。例えそれで、結局ダメだったって解ったとしてもね。」
「だいぶ成長したな、シンジ。そう思うだろ?アスカ、レイ。」
「ええ、ホントよ。最初に会った頃のナヨナヨしてたのとは大違いだわ。」
「エイジ君と会って、自分を見つめることができたのね。」
「うん。だからさ、みんな、手を繋ごうよ。」
「繋ぐというより、こっちの方がいいんじゃないか?」
俺は手を前に差し出す。意図をわかってくれたのか、レイ、アスカ、シンジの順で手を重ねていく。
「な?他人っつーのも悪かァないだろ。今のシンジなら、俺が前に話したことも理解できるんじゃないか?」
「『人ってのは正多面体でできてて、色んな面の見せ合いがコミュニケーション』だっけ?」
「アンタ、随分数学的な見方をするのね。」
「私も、この言葉は今は理解できる。」
「だろ?じゃ、帰ろ…って、そうそう、カヲル!」
「やあ、呼ばれたから来たよ。君は不思議な存在だ。リリンだというのに、この世界で形を保っている。」
「そら、俺って個が強いってことだろうな。お前も一緒に来い。知りたいんだろ?色々さ。」
「そうだね、僕もお供させてもらおう。」
「んじゃ、今度こそ、この世界にも用はなくなったかな。じゃあな、頑張れよ、みんな。」
京都大学校内。
「ねえ、昨日発表された新しいブランド知ってる?」
「ええ。少し高いけど、私アレ好き。」
「あ、おはよ二人とも。今日は早いね?」
「おはよ。そうね、少し早く出たから。」
「おはよう、碇君。」
「あれ?そういえばエイジ君は?」
「アイツならどうせまだ寝てるわよ。」
「エイ君昨日、徹夜で何かやってたみたいだしね。」
「そいつは随分なご挨拶じゃねぇか、一緒に住んでるってのによ?」
アスカとレイの間に割って入り、二人の肩に手を回して寄せるエイジ。
「ゲ!もう追ってきたよこのバカ。」
「おはよう、エイ君。よく寝た?」
「エイジ君おはよう。どうしたのさ一体。」
「皆様、おはようございます。昨日の夜は明後日の遺跡探索の工程の復習と、近くの美味いモン探し、あとはレポートしてたんだよ。やっとまともに完成しそうだったから寝るの忘れててさ。」
「もっと計画的にやろーよ、エイジ君。」
「あーら、いつも計画的にやってる癖に今回に限ってギリギリなのね?エイジ。」
「エイ君、そういうところいつもルーズなんだから。」
「いーだろ?落単してねぇんだからさ。それより、この近くのラーメンめっちゃ美味いらしいぜ?探索終わったら食いに行かねぇか?」
そう言って右手に持ったスマホの画面を開き、アスカに見せる。
「あ、ここ知ってる!だいぶ有名になったわよね~。」
「ここのニンニクラーメン美味しいって評判なのよ。」
「へぇー、こんな店あったんだ。」
「シンジ、ラーメンなんてこーゆうときにしか食えねぇんだからちゃんと調べとけ?」
「お早う、みんな。今日も仲がいいねぇ。」
「ようカヲル。今さ、明後日の遺跡探索が終わったらラーメン食いに行こうって話してたんだけどさ、お前もどうだ?」
「いいねぇ、僕も付き合わせて貰うよ。」
「にしても、あの遺跡って結局何なんだろなァ。」
「1万年以上前のものなんでしょ?何の目的があってあんなモノを作ったのかしら。」
「モアイとかストーンヘンジとかもそうだけど、よくわからないわよねぇ。あーんなバカでかいのを石で作っちゃうなんて。」
「古代人の不可思議を解くのもまた面白いものさ。それが謎に包まれていればいるほどね。」
「カヲル君って、なんか哲学的だよね…。」
「それよりもさ!最近、ネットで話題になってるオカルトって知ってる?」
「あー、あれ?割と読んでみるとなかなか上手くできてて面白いんだよなァ。」
「知らないわね。」
「ああ、アレでしょ?社会を裏から操ってる…名前なんだっけ。ぜ、ぜ…」
「ゼーレの噂かい?あんなものがあったところで、今までに何かが起こったわけじゃないからね。」
「まァでも、古代の超文明が起こした、人類の存続をかけた強大な敵との生存競争~ってのはロマンがある。ンでもロマン以上にはならないけどね。」
自宅。
「ねえアスカ。たまには甘えてもいーい?」
「何?どうしたのよ。」
「膝枕して。」
「もう、しょうがないわね。…どうぞ。」
「わぁい、アスカ好き。今日はけっこうキツかったからね、このまま寝れそうな…」
「ただいま。あれ、エイ君は?」
「寝ちゃった。」
「あら、ホントだ。…寝顔、カワイイ。」
これからはシンジ君らの補完に入ります。
補完計画発動も、使徒騒ぎの後のごたごたもない本当の大団円endを読みたいですか?
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はい
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いいえ