エヴァの記憶だけ吹っ飛ばされた人がエヴァ世界に飛ばされた話   作:フィアネン

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どうにかこうにかしてこれだけは書きました。


St.17A:未だに複雑な心情

今日は一睡もできなかった代わりに、朝食と弁当だけ先に作って逃げるようにして家を出た。ほんと、どんな顔をしてレイと接すればいいのかが全くわからず、顔を合わせたくもなかった。

ずっと、「俺がレイを穢そうとした」って事実が頭から離れない。そんなことをしようとした自分が嫌いだ。教室も、レイの真後ろの席ってのが、今日ばかりはどうしてもつらすぎた。教室の扉を開こうとする手まで止まる。ここにいれば、嫌でもレイと、みんなと顔を合わせてしまう。手が震えてくるようだ。急速に来る不安の感情の中立ち尽くしていると、唐突に目の前のドアが開く。いつもの俺なら反応できただろうけど、今日は何も気が回らずに出てきた人に派手にぶつかってしまう。

 

「うわっ!?」

「きゃっ!?ちょっと、どこみて―影嶋君。ごめん、大丈夫?」

「え?ああ、大丈夫だけど。」

「そう、よかった。あ!あのさ、こないだは…ありがとう。」

「…そう。」

「どうしたの影嶋君、どこか具合でも悪い?」

「いや…特に。失礼するよ。」

「あ、ちょっと…。」

 

早々に話を切り上げて洞木さんと教室から離れた。屋上行こう、そこなら誰もいないはず。

 

 

 

屋上のドアの真裏は日陰で涼しいんだが、風景は微妙だし面積も狭いから人気はない。それに、ここにわざわざ来る物好きってのもいないはずだ。

昼過ぎまでそこで空を見ていたが、一向に考えがまとまることはなかった。

 

「やあ、エイジ君。」

 

「…カヲルか?どうしたんだ?こんな辺鄙な場所にさ。」

 

「今朝のが気になってね。いつもの飄々とした態度がどこにも見当たらなかったけどさ。」

 

「…何でわざわざ俺に会いに来たんだ?」

 

「君に興味が湧いてね。話、聞かせてよ。」

 

「……自分の恋人に、初めて激しく拒絶をしたんだ。しかもレイの反応が怖くて今日は一切顔を合わせれてない。」

 

「なら、綾波レイに素直に謝ればいいじゃないか。何をそんなに怯えているんだい?」

 

「は、そんな単純ならどれだけよかったか。…俺はレイを穢そうとしたんだぜ?そんなヤツが、どんな顔をして会えばいいんだよ。」

 

「穢す、ねぇ…。別に性欲ってのは人間誰しもが持っているものなんじゃないのかい?その欲求をわざわざ自分自身で押さえつけているってのが、僕には理解できないよ。」

 

「んな単純なモンじゃないんだよ。俺にはその欲求ってのが怖くて仕方ないね。」

 

「何故だい?」

 

「……まだ、わからない。ただ、漠然とした恐怖が俺を遅い続けるんだ。多分、潜在的な恐怖なんだろうね、この嫌悪感の元ってのは。」

 

「リリンは不思議だ。どうして他人のために怒ったり、慌てたり、思い詰めたりするのかな。」

 

「それが人間だからだな。自分の存在ってのは他人にも入り込んでんのさ。」

 

「ふーん…。」

 

「あーもう、アンタって本当に戦闘以外は意気地無しねぇ!これが自爆しようとしてたヤツとは思えないわ!」

 

「へぁ!?何だお前ら、立ち聞きたぁ御大層なことをしてくれるじゃないかよ。」

 

影からアスカ、レイ、シンジが出てくる。こいつら、カヲルをダシにして盗み聞きしてやがったな?

 

「アンタがあたしらを避けるからでしょ!?」

「エイ君、その、昨日はごめん。無理に迫ったりしちゃって…。」

 

「いや、レイは悪くな―」

 

立ち上がり、その場から逃走しようと―あれ、立ち眩みが…

 

(エイジ君!?大丈夫!?)

(保……つへ……、シン…、手を……)

 

急速に意識が無くなっていく感覚が俺を襲っていった。

 

 

 

 

目が覚めると、また俺はベッドの上だった。でも、周囲にゃ幕があるし、これは保健室か?はぁー、一度も世話になったことのないとこに来ちったのか。この感じ、睡眠不足で体力限界でぶっ倒れたか、はたまた脳がキャパオーバーしたか。なんか、大学入って深夜まで遊んでた時を思い出すような思い出さないような…。上半身を起き上がらせると、やっぱ頭痛がする。何か飲みたい…あ、近くに鞄置いてくれてる。

ん?今何時だ?15時過ぎ……

 

赤木博士すみませんね。毎度毎度迷惑かけて。とりあえず電話だけはしとくか…。

 

「もしもし、影嶋です。」

 

『あら、エイジ君?その話ならもう聞いたわよ。最近疲れてたらしいし、今日くらいゆっくりしたらどうかしら。』

 

「……大変申し訳ございません。」

 

『いいのよ。誰でも休息というものは必要よ。それじゃ、明日の同じ時間ということで。じゃあね。』

 

はァ~、赤木博士優しい…。とりあえず水筒の中身を二口ほど飲むと、少しだけ頭痛が落ち着いたような気がした。ラップトップを取り出し、予定を少し書き換えていると幕を避けてレイが顔を出してくる。

 

「あ…起きてたんだ。てか、起きて早々もう仕事?赤木博士の話聞いてたの?」

 

「おはようレイ、今度は何か月ぶりかな、もしかして年単位?」

 

「その感じ、いつも通りのエイ君だ。」

 

「ぶっ倒れて寝て、少しはすっきりしたからかな。」

 

「よかった。…昨日の夜はごめんね。」

 

「俺もちゃんと言うべきだったよ、ごめんレイ。

とにかくさ、アレに関してはもっと大人になったらいっくらでも付き合ってやるから、今は我慢してくれよ。」

 

「わかった。もうしつこくは言わない。でも聞かせて。あのとき…何であんなに怖がってたの?」

 

「そいつは…俺が手を出す側に回りかけたからって言う他ないかな。それ以上は何も言えない。」

 

「そっか…わかった。」

 

正直、これは大嘘だ。そりゃあ、大人が子供に手を出すなんて憚れるに決まってるだろ。んでも今の体じゃあそれを言うには説得力が欠ける。とりあえず表面のことを言っとくしかない。他の伝え方が俺にはわからねぇな。

 

「落ち着いてきたし、帰るか…おっとと…」

「もう、無理して立とうとしないの。」

「悪ィね、レイ。」

 

 

 

 

「今日からパイロットに加わる、渚カヲル君です。みんな、仲良くしてね。」

「皆はもう知ってるよね。よろしく。」

 

「「「何で[お前/君/あんた/あなた]がパイロットになってるの????」」」

 

「やだなぁ、前にいったじゃないか。僕はフィフスだって。」

 

「面識はあるようだから、これ以上は自己紹介は無くてもいいわよね。それじゃ。」

 

ミサトはこのまま仕事に戻ろうとする。流石に納得がいかないから、後を追って追求をする。

 

「待ってくださいよ、何で今さらフィフスが?参号機なら俺が操作できるじゃないですか。」

 

「エイジ君、あなたの負担を減らすためでもあるのよ。たとえ委員会が直に送り込んできた子だとしても、ね。この後の訓練、彼のことちゃんと見といて。」

 

「……わかりました。」

 

 

 

今日も定期のシンクロテストが行われる。

俺は例によってアーク内でそれを見守っていたのだが、カヲルの成績は妙なものだった。

最初は8割まで上がったと思ったら、その次は6割台にまで落ち込んでいる。瞬間的なものだったらまだしも、それらの数値が持続していることが異常だ。

 

「伊吹さん。見ましたね、彼のシンクロ率。」

 

[ええ、でもこんなこと…システム上あり得ないわ。コアの書き換えなしに参号機とシンクロするなんて…。]

[でも事実よ。まず事実を受け止めてから、原因を探ってみて。]

 

無茶苦茶な事実だ。やっぱまともな人間じゃないな、カヲルって。

 

 

 

 

シャワーを浴びながら、俺は一人で考える。委員会…つまりゼーレの差し金ってことだろう。…やはりレイに似てる。コアの書き換えこそあっても、レイは全てのエヴァとシンクロが可能だ。カヲルも同じタイプであるなら辻褄が合う。でも、このセキュリティをどうやって突破する気だ?幾らエヴァを動かせたとしても、無理矢理をするには限度がある。稼働時間は5分という限界がある。それをどうする気だ?

 

「ねえ。」

 

「ふっ!?!?びっくりした。どした?」

 

「石鹸貸して。こっちの小さくて使えないんだよ。」

 

「はいよ。…なあ、ちっとばかし近すぎないか?もう2歩くらい後ろに下がってくれ。」

 

「君らって妙だ。掴みかかってくることがあるくせに、一定距離に他人が入るのを嫌う。矛盾してないかい?」

 

「ここ出たら話すよ。裸で立ち話ってのもアレだろ?」

 

 

 

俺らはロッカーで着替えた後、そのままそこで話している。

 

「で?結局アレはどういう意味なんだい?」

 

「人っつーのはパーソナルスペースってのがあるんだよ。そこに他人が入り込むってのは拒絶反応を起こす。

んでも他人を攻撃するのには、それに侵攻して近付くわけだ。

一見矛盾してるこれは、実は矛盾してない。要はどの視点から見ているか、ってわけだからな。ATフィールドに似たようなものだね。」

 

「ATフィールドか…。君はそれを正しく理解しているようだね。」

 

「正しく?それはどういう…。」

 

「君らだって持ってるじゃないか。心の壁…ATフィールドを。」

 

「…なあ、何で使徒はここのリリスを求めるんだ?何のためにサードを起こそうとする?」

 

「生存競争だよ。僕ら使徒はアダムより生まれしもの、君ら人間(リリン)はリリスより生まれしもの。ひとつの星に、二つの起源の生命は同時に存在できない。単純な話だ。」

 

「なるほどねぇ…。そりゃあ、対立するわけだ。でも、99.89%同じ遺伝子で構成されてるのが共存できないとも思えないけどなァ。」

 

「君、真面目に聞いてたのかい?」

 

「もち。だって、カヲルは最早人間じゃん。俺らときちんと対話して、自分の考えってのをもってる。端から見りゃさ、ちっとだけ特殊な人間にしか見えねぇよ。」

 

「そんな単純なものじゃないんだけどねぇ…。」

 

 

(ねぇ、さっきから二人は何の話してるの?)

(あーダメ、全然わからない…。)

(あんたらバカぁ?使徒と人間の話をしてんのよ!こんな程度もわからないなんて、あんたらちゃんとあの資料読んだの?)

((全然。))

「信っじられない…。」

 

 

「何だー、盗み聞きか~?んなことするくらいなら普通に聞きに来りゃいいたろ?」

 

「「「げ、聞こえてた?」」」

 

「アスカがでかい声出すんが悪い。」

「やっぱ、リリンはよくわからないよ…。失礼。」

 

カヲルは俺らを置いてこの部屋から出ていく。なんか結局、掴み所がないような感じがした。

俺が彼のことを理解できる日は来るのかな…。

 




正直な話をしますと、完全に詰まりました。
なんか、今までノリで書けてたのが唐突に情景もキャラも、何も動かなくなっちゃいました、はい。
今までどうにかこうにかライブ感もどきでどうにかやってきたんですが、こっちはもう完全にストップします。
というわけで、全ての決着は再編版の『ヱヴァンゲリヲン RE:LIVE』でつけさせてください。ユーザーページから飛べます。
勝手な休止の仕方ですが、お許しください。

全てはゼーレのシナリオ通りに…。

補完計画発動も、使徒騒ぎの後のごたごたもない本当の大団円endを読みたいですか?

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