エヴァの記憶だけ吹っ飛ばされた人がエヴァ世界に飛ばされた話 作:フィアネン
それから数日。やーっと肩の固定が取れた俺は、ミサトさんが手引きした教官に放課後訓練をしてもらっている。当の教官は「子供に殺しを教えるなんて…」なんて溢していたが、正直テレビを見ていても情勢が不安定っていうことが伝わってくる。何が起こっても不思議ではない、そう思っていた。それに、こういう機会でもないと銃やナイフ術なんて教われないしね!(本音)
本音としては好奇心8割、不安2割って感じ。訓練はつらいけど、前世のような平和()な時勢じゃあ知る由もなかったものに触れることができて、とても楽しい。
んで今日。いつも通り、屋上で筋トレをする。だいぶ楽になってきたから、明日から両方を+10回にしてみようかな。
立ち上がって飯にしようとすると、柵によっかかってぼーっとしている碇君に、後ろから声をかけるトウジとケンスケ。またお前か。一発殴ってやるか?
「また君たちか…。何か用?」
「ドアホ!誰がお前に用があるっちゅーねん!」
「へぇ、よほど暇してるんだね。」
碇君にも一発殴るか。いちいち人を煽るなよマジで。これで酷い怪我させられたらしょうもないぞ?
「用はあらへんけどなァ、ワシはなー、お前がど~~~しても気に入らへんのや!その偉そうな態度といいすっとぼけた態度といい~」
「僕の態度が気に入らないなら謝るよ。でも悪いけど、今はいちいち君のこと気に掛ける余裕なんてないんだ。じゃ。」
「おい、待てや!」
「なに?今度は僕を殴ろうとする気?それじゃ、本気でやってよ!殺す気で!」
「バッカ何いってんだお前!」
「エイジ!?」
「おっしゃ、やってやろうやないか!後悔す アだぁ!!!!!」
トウジは歯止めが利かなそうだったから殴らせてもらった。悪く思うなよ。
ついでに碇君にも平手で頬をぶつ。不服そうな顔をしてるけど、流石に今までの動きが悪すぎるから、これくらいは受けてもらうからな。
「碇君、お前人を煽ってないと気が済まねぇのか!?怪我すりゃ乗らずに済むなんて思ってんならこの仕事はやめろ!」
やべぇ、どストレートに言いすぎた。俺もアツくなると短絡的になる悪い傾向があるのは自覚してるんだが、例によっておさえ込めれた記憶が一切無い。悲しいなぁ…
「そう言うのも、僕をずっと見てるのも、ミサトさんから言われた仕事なの?」
「いいや、そういう体ではあるけど基本的には俺の『お節介』だ。悪ぃね。」
「やっぱり、君も―」
「二人とも。」
外野からの声。その方向を向くと、レイが立っている。
「非常召集。先、行くから。」
「あいよ。行くぞ、碇君。」
「う、うん。」
俺らが走り去る中、トウジとケンスケはぼけーっと突っ立ってるだけだった。
「目標を光学で捕捉!領海内に侵入しました!」
「総員、第一種戦闘用意!」
発令所は慌ただしくなっている。第四の使徒。前回の黒い奴と違って、体は赤いし、なんかカブトガニっぽいなァ。俺は発令所でもう一度日向さん、ミサトさんと作戦、配置を確認している。結局、俺は現場指揮の真似事をすることになった。大まかな作戦はミサトさん、現場の判断は俺って感じ。いつでも交代できるように、プラグスーツとインターフェースを装着している。
「碇君、用意はいいか?」
[……]
「はァ、まだ拗ねてんのか?アレは悪かったよほんと。終わったらちゃんと謝るし、殴られるからさ。」
「え?エイジ君、シンジ君と学校で何かあったの?」
「失礼ミサトさん、その報告は終わったらで。んで、大丈夫?」
[そんな大きな声出さなくても、ちゃんと聞こえてるよ。]
「そいつはよかった。碇君は別命あるまで待機。」
「にしても、碇指令の留守中に使徒の襲来…」
「それに、前回は15年前、今回は3週間ですか。」
「こっちの都合はお構いなし。女性に嫌われるタイプだわ。」
オペの面々のしょうもない愚痴を聞き流しながら、敵の動きを見る。外では国連の兵器が弾をばら撒いてるけど、ダメージ以前に足止めにすらなってねぇ。
「しょうもないですねこの光景。総火演の真似事以下じゃないですか?」
「税金の無駄遣いだとしても、世の中には弾を消費しないと困る人たちがいるのよ。」
「葛城一尉、日本政府からエヴァンゲリオンの出動要請が来ています!」
「うるさい奴らね。言われなくても出撃させるわよ。エイジ君、よろしく。」
「あい了解。…碇君、これからエヴァを出撃させる。作戦通り、拘束ワイヤの兵装ビル群付近に君を射出させる。出たらそこでガトリングを受領してほしい。そのあと、そこへ使徒をおびき寄せる。ルートはこちらで随時指定するから気にしないでいいよ。ワイヤに敵が引っかかったら攻撃開始。弾切れしたらガトリングを捨てて一時退避。指定ポイントでライフル受領。あとはアドリブかな。」
[多分、わかった。]
「オーケー、その場でも指示はするから、落ち着いて行動してね。それじゃ、発進!」
エヴァが射出される。ガトリングを受領し、敵に姿を晒す。さて、敵は喰いつくか…?
敵が初号機に気付き、体勢を変化させ、両腕のような場所から光る鞭を出す。モンテーロのジャベリンかな?そんなことを考えていると、敵はゆっくり初号機へと向かってくる。
「ミサトさん、あの鞭どう見ますか?」
「どこまでの攻撃力があるかわからない以上、無暗に近づくのは危ないわね。元の作戦通りにいきましょう。」
「俺も同意です。碇君聞こえる?」
[何?]
「作戦通りワイヤまで誘導して。絶対走らないように。」
[わかった。]
初号機は敵に銃口を向けたままゆっくり誘導している。第四使徒は鞭を動かして威嚇しながら初号機へ向かう。ポイントまで、あと少し…
「目標、指定ポイントに到達!」
「了解!兵装ビル起動!初号機、攻撃開始!」
俺の合図と共にビルからワイヤが射出され、敵が拘束される。次の瞬間、初号機はガトリングを敵に向けて射撃し、数十秒後に撃ち切った。
「よし、ガトリングを捨てて後退!」
その瞬間、着弾煙の中から敵の鞭が飛んできて、ガトリングと周囲のビルをなぎ倒す。
今の攻撃によって、初号機は倒れ込んでしまった。
「大丈夫か!?作戦通り後退!全力でポイントまで移動、ライフルを受領してくれ!」
初号機は引け腰になりながら初号機は指定ポイントまで逃げる。その後を敵の鞭が襲い、次々にビルがなぎ倒される。思った以上の破壊力だなこれ。呑気にみていると、初号機の背面ケーブルを切断される。ついでに来た攻撃で初号機はコケて尻餅をつく。正直、こういうデカいのが人間っぽい行動するのって可愛いかったりみっともなかったりするよね。あ、これ人造人間だったわ。
「アンビリカルケーブル断線!エヴァ、内臓電源に切り替わりました!」
「何ですって!?」
「ルート221でB-05電源を使ってケーブル復帰だ!ルート転送!碇君、一回撤収!分が悪い!」
[わ、わか―うわぁ!!!]
「碇君!!」
「シンジ君!!」
初号機の足に鞭が絡み、投げ飛ばされる。落下地点は近くに神社がある山。まだ土地には明るくないから名前がわからないけど。敵の鞭が飛んでくるが、初号機は上体だけを起こし、それを掴むだけで他にアクションを起こさない。
「碇君、そいつを遠ざけてA-13電源、ポイント062の兵装ビルで戦線復帰!ルート転送!」
「シンジ君、残り時間3分50秒よ!早く倒さないと!」
「初号機、接触面融解!」
「ミサトさん急かすな!碇君、何で動かないんだ!」
「トウジと、ケンスケが…!」
「「は!?」」
この瞬間だけミサトさんとのシンクロ率が100%だったと思う。
ディスプレイにトウジとケンスケのIDが表示される。マジで近くにいるらしい。
「あっのバカ共が!シンジ君、プラグ内に二人を収容して離脱しろ!」
「バカ、私の指示無しに民間人をプラグに―」
「現場指揮は俺だ!碇君、絶対にその二人を殺すなよ!」
[わ、わかったよ!]
ここで見捨てたら一生後悔するハメになりそうだ。どんな違反であっても、絶対に殺させる訳にゃいかねぇ!
「神経系統に異常発生!2つも異物が入ったから、ノイズが混じってるんだわ!」
「エイジ君、何で勝手にそんなことを!」
口論の中、初号機はやっと動けると言わんばかりに足蹴りをし、敵を遠ざける。初号機の手は、人造人間の名の通り生身の手が露出している。
「この状況ならエヴァの中が一番安全だ!んな事くらいわかってんだろ!ルート162でジオフロントに撤収!最短距離だ、取りつかれるなよ!」
[……]
「碇君!?大丈夫か!?」
[……]
「碇君!!」
「初号機、プログレッシブナイフ装備!」
「な!?碇君!この状況での戦闘は危ない!自分の命を投げ捨てる気か!二人まで殺すことになるぞ!」
「シンジ君!?エイジ君の命令を聞きなさい!!」
[うわあああああああ!!!!!!!!]
初号機は絶叫する碇君と共に敵に突撃する。稚拙な突撃だったため、使徒の鞭で腹2ヶ所を突き刺される。
「こんの野郎…!帰ったら今度は一発グーだ…!」
「初号機、活動限界まであと60秒!」
[くそおおおおおおおおお!!!!!!!]
腹に鞭を刺されたまま、初号機は敵のコアにナイフを差し、更に押し込む。
「活動限界まであと30秒!」
「碇君…?」
[うおおおおおおお!!!!!!!]
「活動限界まで、あと10秒!」
「9、8、7、6、5、4、3、2、1、0!」
活動停止と共に、敵のコアに亀裂が走り、敵も活動を停止した。
「初号機、活動停止!目標、完全に沈黙しました!」
俺はというと、無い髭を触るように、右手を口付近にかざし、指を動かしていた。ミサトさんも隣で苦い顔をしていた。ふと思い立ったのだが、流石にケアをサボり過ぎたかもしれない。
「どうしてエイジ君の命令を無視したの?」
相変わらず怒るのは大人だ。俺は黙っている。正直、この臆病さは克服しなければならないとは思っている。だが、人間そんなに急激に変われるもんでもない。
「もしあそこで使徒を倒せなかったらどうするつもりだったの?」
「すみません…。」
「『すみません』で済む問題じゃないわ!私はあなたの作戦責任者なのよ!それで、エイジ君は私との同意の上で作戦指揮をやってる。あなたは、私たちの命令に従う“義務”があるの!わかる!?」
「これは碇君の責任だ。ミサトさんが言っていることは筋が通ってる。」
「わかります。ミサトさんたちにとって、僕はただの部下で、ただのパイロットですものね。」
「何ですって!?」
「……」
「最初はただ同情されてるだけだと思ってたけど…。」
「ちょっと、シンジ君!?」
「もういいじゃないですか!勝ったんですから!」
その言葉と共に、ミサトさんからの強烈な平手打ち。なかなかいい音が鳴ったな。
「あなた、自分の任務を何だと思って―」
ミサトさんは言葉を止める。
「もういいわ。家に帰って休みなさい。」
「はい。」
俺の横を通り抜けていこうとするが、俺が肩を掴んで引き留める。碇君は無視して振りほどこうとする。それに更に抵抗して、俺は強引に彼を振り向かせる。
「何だよ、エイジ君…。」
「碇君がどう思おうが、んなもん俺にはわからない。でもな、お前はひとつ誤解してるから言っておく。
俺は君を道具だと思ったことは一度もない。ましてや、都合のいい駒ともね。俺も一度パイロットをやったから、その恐怖はよくわかる。だから、君を生かしたい、殺したくないと思い続けてる。これは俺の本心だ。誰からの命令も受けていない、純粋な心。」
碇君は決して自分と目を合わせようとしない。
「そう。でも君がやったほうが、みんなにとって都合がいいよ。それなのに何で僕を引き留めるの?」
「昼言った通り、これも俺の『お節介』だ。昼はごめん、シンジ君。」
言い終わると、シンジ君は肩に置いた手を振り払い、部屋を出ていった。
それを見届けると、今度はミサトさんと対面する。
「幾らなんでもキツ過ぎますよ、言い方が。」
「エイジ君?」
「今のビンタだって、パイロットの有用性が無くなりそうだから、引き留めようとしたんじゃないんですか?」
「え、エイジ君?どうしたのいきなり。」
これだけは押さえられねぇ。一発グーで行かせてもらうからな。
スッと近づき、左頬をグーパンする。
「わからないんですか!!彼はミサトさんの、手駒にするために引き込もうとするような言葉が嫌なんですよ!」
「え…」
ミサトさんは座りこんだままこちらを見つめる。
無自覚だったらしい、動揺した目をしている。
「ミサトさんが言ってることは、それらしい言葉を並べて俺らのとこに引き込もうとしているだけにしか伝わりません!わかりやすく言えば、ミサトさんの思いを強要させてるんですよ!もっとも、俺も彼のケアをサボったから、そのツケが回ってきてるんですけどね。彼は俺がどうにかします。それじゃ、俺も上がらせてもらいます。今日はお疲れさまでした。」
「どうも、赤木博士。」
「あら、エイジ君じゃない。どうしたの?」
「俺らの監視って、どこに行っても問題なく機能しますか?」
「ええ。それがどうかしたの?」
「俺がシンジ君の位置を把握できるように、15分毎くらいに俺の携帯に彼の位置を送ってほしいんです。」
「わかった、上に交渉するわ。でもなんでミサトに言わないの?」
「ミサトさんにはあの態度を自分で改めてもらわないといけませんからね。それじゃ、明日18時からお願いします。」
「すぐでなくていいのかしら?」
「彼も考える時間が必要だと思います。あと、シンジ君と俺の動向はミサトさんには絶対に漏らさないようにとお願いしといてください。」
「用意周到ね。わかったわ。それと、こないだ言ってたことなんだけど、もしかしたらできるかもしれないわよ。」
「え、本当ですか?」
「ええ。今新しく研究しているモノがあるの。それを応用すれば、外部からのシンクロとサポートが期待できるわ。また伝えられるようになったら教えてあげる。」
「ありがとうございます。それでは、失礼します。」
家に帰ると、案の定シンジくんは居なかった。机の上には置き手紙があり、内容は
「もう僕はあんな怖い思いをしてまでエヴァに乗りたくない。」
ぶっちゃけこんな程度だった。甘く考えれば苦痛に耐えれない。厳しく考えればうわべだけの感情でここから逃げているだけだ。でも、彼にはこの問題は悩み抜いて、自分で結論をだしてもらわなければならない。そのためには、誰からも邪魔されない時間ってのも必要だ。
悪ぃミサトさん、今日はコンビニ弁にさせてくれ。色々疲れきった。
次の日。
「な、なあエイジ。転校生知らんか?」
近くを通ると、窓を開いて座っているトウジから訊かれる。
「え、シンジ君?知らないね。」
「そんなバッサリ切らなくてもいいじゃん。」
「それとも、まだ俺に怒っとるんか?」
俺は近くの机に座り、答える。
「いンや?知らないから知らないつっただけよ?」
「そ、そうか。悪かったな。」
「俺にも動向はわからないからね。心配だよ。」
横から視線がずっと来ていた。
昼。いつも通り筋トレをしていると、近くにレイが来る。
「お、ようレイ。怪我、だいぶよくなってきたんだね。よかったよかった。」
「何で嘘を言ったの?」
「何のことだ?シンジ君の動向は俺も知らねぇよ?」
「いいえ。博士から聞いたわ。」
「ああ…シンジ君には時間が必要なんだよ。一人で、静かに考える時間が。だからシラを切った。」
「よく…わからない。」
「ま、レイもそのうちわかるんじゃないかな。」
レイはキョトンとしていた。
「あ、今日は飯買い忘れてたな。レイ、一緒に買いに行かない?たまにゃ何か食わないと持たないぞ?」
「いい。平気。」
「そっか。んじゃ、失礼させてもらうよ。」
いつもの対人訓練を終え、ちょうど18時になる。
「どうも、影嶋です。赤木博士から連絡ありましたよね?」
『連絡は受けています。サードは現在、郊外の草原を進んでいます。場所を転送するので、確認してください。』
「ありがとうございます。えーと、名前は…」
『剣崎です。』
「ありがとうございます。それでは、これからよろしくお願いします、剣崎さん。」
諜報部との連絡終わり。地図を確認して、経路を調べる。うっわ、これは終電ギリギリでなんとかレベルか。遅くなるのは確定だから、次はミサトさんに電話。
『あらエイちゃん、どうしたの?』
「ミサトさん、今日は遅くなります。二日連続コンビニ弁で申し訳ありません。」
『いいのよエイちゃん。あの後、私なりに色々考えたんだけどね、やっぱ、面と向かってシンジ君に謝りたいの。私の…態度のせいで、シンジ君を追い詰めてしまったから。』
「そうですか。わかりました、もし会ったら、彼にそう伝えます。それでは、失礼します。」
メールを確認すると、シンジ君はまだそこから動いていないようだ。至急向かわねぇと。
駅に向かおうとすると、黒い車が近くで停車し、扉が開く。
「剣崎です。今からならこちらの方が早いですよ。」
「わざわざありがとうございます。」
剣崎さんの車に乗り込み、目的地まで向かう。
「俺、すっげー羨ましいよ。なんてったって、あんな格好いいロボットを操縦できるんだもんな。俺も一度でいいからさ、思いのままにエヴァンゲリオンを操ってみたいよ。」
「僕も、そんなふうに思えたらいいんだけどな。」
「思えないの?」
「まあ、ね…。」
ケンスケ、あんな思いをしてもまだあんなこと言えるとはなァ。まるで二次大戦で戦車戦を経験したヤツに対して、「一度でいいから戦車に乗ってみたい!」って言ってるようだ。もちろん経験者役は俺ら。そういうことを言われる側の気持ちがよく分かる。
「いいです?大人しい内は絶対に手を出さないでください。万一ヒス起こして逃走を図った場合に取り押さえてくださいね。」
「わかった、チームで情報を共有しよう。」
「ありがとうございます、剣崎さん。」
さて、意を決して…3、2、1、GO!
「やあ、ケンスケにシンジ君。近くに立ち木が一本だけってとこにキャンプは雷が危ないよ?」
「え、エイジ!?」
「エイジ君、どうしてここが…。」
「んまァ、裏技使ってね。」
そう言って、シンジ君の横にある石の上に座る。
ケンスケが不機嫌そうに言ってくる。
「飯ならもう無いぞ。」
「ひつよーないね。」
ウ○ダーの容器を前にかざし、軽く振る。ケンスケはケッて感じをしてる、これを言語化するの難しいんだって。まあ、案の定シンジ君は俺が来た瞬間また
「どう?シンジ君。あの後考えはまとまった?」
「まだ、わからない。」
「そっか。…ねえ、聞かせてよ、シンジ君の本心。」
「え?」
「聞きたいんだよ。言ったろ?
シンジ君は目を少し開き、俺を見つめる。またすぐ俯いて、少し経つとぽつりぽつりと喋り始める。
「…僕ってさ、どこ行ったって中途半端でなにも出来ないんだよ。だから、こんな僕を必要としてる人なんて誰も居ない。父さんも、ミサトさんも、必要なのはパイロットとしての僕で、僕自身じゃないんだ。」
「へぇ。だから自分は必要ない、と。んー、そいつは少し違うんじゃないかなァ。」
「え?それはどういう…」
「まずさ、中途半端って…逃げてること?」
「え?そ、そうだけど。」
「だったら君は逃げてはいないよ。」
「何で?僕はこの状況から逃げ出してる。その最中なのに…」
「2回も使徒と戦って、両方とも逃げずに立ち向かった。戦いを放棄しようとしなかった。それは逃げてるとは言わないよ。
それにさ、今は使徒、つまり戦うべき相手に遭遇してない。そんな時くらい、息が詰まるところから離れてもいいんだよ。ずっと息を詰めてると、そのうち酸欠になって息切れしちゃうからさ。」
シンジ君は考え込んでしまった。まだ納得がいかないようだ。
「んー、それじゃもう一個。どして『パイロットの自分』と『自分自身』を切り分けてンの?」
「え、どういうこと?」
「これは俺の勝手な考えなんだけど、肩書きってのは全部自分自身からの派生だと思うんだよね。
わかりやすいかはわからないけど、人ってのは球みたいなもんなんだよ。
正確には、ほぼ球に近い正多面体。
例えば俺なら、一面一面が、
『エヴァパイロットの予備としての俺』
『ミサトさん、シンジ君と同棲してる俺』
『現場指揮官』
『料理ができる』
『ミサトさんの部下』
『ケンスケやシンジ君とか、学校の友人』
とか、まあ列挙すればキリがないかな。これらが組み合って構成されてる多面体そのものが俺自身。
これらを、人や状況によって見せる面と組み合わせを選択するってのが人付き合いだと思うんだよ。でも、見せてもらう面ってのがたった1つだけってのは、その人を理解したとは到底言えないよな。だから、多くの面を見なければならない。そのためにはどうするか?コミュニケーションだ。会話で、多くの面を見る。
これは逆も一緒で、自分を理解してほしいのなら、他人に自分の面を見てもらわなければならない。そのためのコミュニケーションつーのも重要。
そういうやつのが積み重ねが大事なんじゃないかな。」
「難しいね。僕にはわからないや。」
「もっと悩み抜けば、その先で理解できるようになるよ。それでさ、重要なことを訊きたい。
これから先、使徒と戦うか、それとも戦いをやめるのか。」
「逃げるとは、言わないんだね。」
「そりゃあね。自分の確固たる意思で決めたのなら、誰も文句は言えないからさ。」
「…まだちゃんとは決めてない。」
「そっか。時間もだいぶ遅いしさ、シンジ君行こうか。」
「え、どこに…」
「いいからいいから。んじゃ、じゃーなケンスケ。」
「お、おーう。」
人の気持ちというのは、外部からの圧力で一時的に屈服させることはできても、本心まではねじ曲げることはできない。だが、彼はそもそも外の要因を通して自分を成立させるような立ち回りをしている。うーん、言い方は難しいけど、求められているからやっているだけで、自分の意思じゃやってないと言えばいいのかな。悪く言えば、言いなりになることで自分の存在を確立している。
俺は、彼がそんな思考から抜け出して、自分の意思でものを決めれる人になってほしいと、そう思う。
非常に疲れました。
補完計画発動も、使徒騒ぎの後のごたごたもない本当の大団円endを読みたいですか?
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はい
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いいえ