エヴァの記憶だけ吹っ飛ばされた人がエヴァ世界に飛ばされた話   作:フィアネン

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自分の欲望を余すことなくつぎ込みました。


St.6:無知な子が色々吹き込まれるとめちゃくちゃ可愛い生物に進化することがよくわかった

俺らは剣崎さんの車で、中心部付近―つまりNERVにいつでも行ける場所のホテルへと向かう。その間はまあもう本っ当に静かだった。俺は言いたいこと言い切ったし、シンジ君はあの後ずっと自分について考えてるっぽいし、剣崎さんは必要以上の会話をしないからね。

 

ホテルに着き、適当な部屋を取る。鍵を渡し、俺はシンジ君にもう一度言う。

 

「んじゃ、明日…いや、もう今日か。今日まるまる使って考えてみて。ま、覚悟が決まったらいつでも連絡よこしてちょうだい。そうそう、ミサトさんが会えたら話がしたいってさ。」

 

「ミサトさんが?」

 

「そ。まー会えたら話してみてよ。んじゃ、俺はこれで。念は押しておくけど、今度は都市の外へ逃げれないからね?」

 

「もう逃げないよ。ありがとう、エイジ君。」

 

「おう、おやすみ。」

 

シンジ君はエレベータに乗る。さて、俺も帰りますか。

 

「剣崎さん、今日はありがとうございました。」

 

「いえ、仕事なので。よろしかったら、家までお送りしましょうか?ここからだとマンションまでやや距離があります。」

 

「それじゃ、お言葉に甘えて。」

 

 

例によって、会話はほとんど無いまま家についた。現在時刻、24:30。中学生の体にはなかなか堪える時間だ。

 

「ふぁあ~、今日はこき使ってしまってごめんなさい。ありがとうございました。」

 

「礼には及びません、これも仕事なので。」

 

 

扉を開くと、まだ電気が付いている。もしやミサトさん、まだ起きて…いや、酔い潰れてるだけだこりゃ。この缶の量、シンジ君が居なくなってヤケ酒でもしたんか?ほんと酒癖だけは治らねぇなァマジで。せめて掛け布団くらいはと思って近づくと、寝言が聞こえる。

 

「…ンジ君…ごめ……たし、ずっと……」

 

やっぱ監視とかそれ以前に保護者として心配だよなぁ。明日はちゃんと教えてあげよう。

 

 

 

「あ…おはようエイちゃん…。」

 

「おはようございます。次の日が平日なのに酔い潰れてテーブルで寝るとはなかなかですね?」

 

「やめてよ…意地悪。」

 

「それはそうと、シンジ君に会いたくないですか?」

 

「え…?シンジ君に!?どこにいるの?」

 

「まずは朝食から。いつも通りトーストとハムエッグですが。」

 

「ありがとう。あなた昨日も遅かったわよね。それなのに…ほんとごめんね。」

 

「やだなぁミサトさんらしくない。そんでもって場所ですけど、NERV本部近くのホテルに泊まってます。諜報部の方に聞けば一発ですよ。」

 

「ありがとう。それじゃ、朝イチで行くわね。」

 

「あと、俺経由で彼がどうするかは連絡します。それまではお待ちください。彼にも、それなりに考える時間ってのが必要ですからね。ミサトさんみたいに。」

 

 

 

ミサトさんが家を出た後、俺も追って登校した。ちと出るのが早かったかな、ま、それならそれで寝れてない分教室で寝たいけど…お?あそこにいるのは

 

「よ、レイ。おはよう。」

 

「おはよう。」

 

「いつもこれくらいの時間なん?」

 

「そうよ。」

 

こいつぁいい情報を聞いた。ラッキー。

 

「碇君、どうしたの?」

 

「え、シンジ君?今は――考えてるんじゃないかなァ。」

 

「何を?」

 

「NERVに残るか否か。」

 

「そう。」

 

「何だ?同僚だってのにやけにあっさりしてるじゃんか。」

 

「私かあなたでも、初号機は動かせるわ。」

 

「そらそうだけどさ、人ってのはそんな論理だけで動けるもんじゃないよ。」

 

「…やっぱり、わからない。」

 

「レイってさ、実は他人に全く興味が無かったり?」

 

「いいえ。」

 

「俺はレイの考えてることがわからねぇや。それはそうとさ、レイは何でここで働いてんの?」

 

「絆。」

 

「誰との?」

 

「エヴァと、関わっている人との。私には、他に何も無いもの―」

 

シンジ君より重症患者を引き当ててしまった感じだ。地雷では無さそうなのがこれまたね。

 

「あなたは?」

 

「へぇ?」

 

「あなたは、どうしてエヴァに乗っているの?」

 

「最近俺はあんま乗れてないけどね。そうだなァ、何て言ったらいいんだろう。実はね、そんな大層な理由なんてないんだよ。最初は好奇心。使徒が来てからは、本当に人を守りたい、って思った。能力があるのに、遠くで黙って指を咥えてるだけってのは性に合わないし。」

 

本当に、今まで生きてた中でこんな、夢のような体験ができるという喜びと好奇心が大きなウェイトを占めていた。そして、現実に起こっている使徒の襲来。それが来てからは、俺自身がより前線で戦いたいと強く願っていた。

 

「…わからないわ。」

 

「これはわからなくてもいいさ。理由なんて人それぞれなんだからさ。」

 

パシャッ。パシャッ。

 

…え?嫌~な音が聞こえた。足を止め、ぎこちなく振り返る。

 

「おお、これは大スクープ!いつも寡黙な綾波レイと、大人びた性格の影嶋エイジの楽しそうな会話!」

「何や、お前らそういう関係やったのか?知らんかったわ。な~エイジ?デキてんなら教えてくれてもよかったんちゃうか?」

 

俺、今顔がクッソ赤くなってる。血の動きがそうだって訴えてるもん、間違いない。

 

「も…申し訳ないが、これが始めてだ…っ!!!」

 

「どうしたの影嶋君。顔、赤いわ―

 

「頼むレイ、解説しないでくれ!」

 

「やっぱデキとるんやないかい。エイジ、そんな頑なになることやないで?なぁケンスケ。」

「そうそう!楽しんでね~」

 

顔を真っ赤にした俺と隣でキョトンとしているレイをそのままにして、トウジとケンスケは学校に向かった。俺は立ち止まったまま、額に両手を当ててしゃがみ込み、レイも俺の顔を覗き込むようにして一緒にしゃがんだ。ああ、こんな、たとえ友人でも、そんな非道が許されるはずがねぇ~!!!!!!!!

 

今日は教室でも一生冷やかされた。休み時間も、屋上で筋トレしに行っただけなのに何故か出入り口にめちゃくちゃ人が集まっている。“耳をすませば”かな?俺、この先学校生活やっていけるか不安になってきたよほんと。

いつも以上に疲労がたまった筋トレだった。柄にもなく寝転んで空を見つめる。あ、また飯買い忘れてやんの。なーにやってんだ。起き上がって、飯を買いにいこうとする。

 

「お、ようレイ。…さっき、ぶりだな。」

 

「影嶋君、これ。」

 

差し出された手には、購買の弁当が2つ。

 

「え?2つって、どうしたの?」

 

(え~、性格は大人っぽいのにニブいんだ~。)

(お、これもまた意外な一面!撮ってやろ。)パシャ

 

「るせぇぞ外野!もっと聞こえないようにする努力とかしねぇのか!!」

 

右手を額に当て、髪をぐしゃぐしゃ揺らす。そういうことかよ。お前らの差し金か。

 

「お弁当、食べましょ。次の授業になってしまうわ。」

 

「あー、ああ、そうだね。食うか。」

 

今日の飯は購買の弁当。うわ、肉あんま入ってない。野菜ばっかなのはそれはそれで味気ないというかなんと言うか。まあ、美味いんだけどさ。

 

「んでさ、どーゆう風の吹き回し?綾波が俺に弁当買って、んで一緒に食お?だなんて。」

 

「クラスの女子が、そうするのがいいって。」

 

「あいつら調子乗りやがって~。」

 

「でも、何だか楽しい…ような気がする。」

 

「え?」

 

「私、今までこんなことしたことなかったから。」

 

「それはどういう…」

 

「いつも食事は錠剤で済ませてた。だから、食事っていうのが、こんなに楽しいものだとは知らなかった。」

 

どんな環境で育ってきたんだ?それってネグレクトじゃねぇの?レイのことが無茶苦茶心配になってきた。そんなことを考えてると、“それ”は唐突に起こった。

 

「影嶋君。」

 

「え?むぐっ!?」

 

と、唐突に半開きの口に弁当の肉を突っ込まれた。え?何吹き込んだんだあいつら?飲み込んでから返事する。

 

「れ、レイ今のは一体…。」

 

「女子が、『男子はあーんをしてもらうと喜ぶ』って言ってた。どう、…美味しい?」

 

こ、これは…!多少強引だけど、かっ、可愛い過ぎるっ…!アッ、また顔が真っ赤になる感触っ…!

 

「ごちそうさまでした。もうそろそろ時間よ。行きましょ?」

 

「は、はひ…。ごちそうさまでした…。」

 

ま、まあ聞いてくれよ。ごく一般的なオタク趣味を持つ一般ピーポー(だった人間)がこんなことをされてさ、正常でいられる方がおかしいと思う。そうだよね?(同調圧力)

 

まあ、案の定今日の俺らの一連の写真がクラスにバラまかれた。俺なんてのはずっと冷やかされてばっかだから一日中顔が赤いままだった。

というか放課後も続いた。もう疲れたよ。机に突っ伏して、話を適当に流す。

 

「なんならさエイジ、綾波のために弁当でも作ってやったら?料理できるんでしょ?」

 

「ゲぇ!昨日の聞いてやがったな!?」

 

「おーおー、エイジってほんま何でも出来るんやなぁ。勉強に家事、料理に、エヴァの操縦!あー、こんな完璧超人なら、多くの女子に人気なんやろなぁ~」

 

「56すぞマジで」

 

「そうカッカすんなよ。お前だって綾波一本だろー?」

 

「バラ撒いたヤツが喋るなァー!!!!!」

 

「やっべ、トウジ逃げるぞ、今度はマジで殺りに来るかも知れないぞ?」

「そうやな。んじゃ、またなエイジ~。」

 

「覚えてやがれ!!!!!」

 

彼らを睨みながら中指を立てていた。F**K!!!!!

 

 

 

 

「…どうも。」

 

「あ、あれ、今日は遅かったじゃないか…。なにかあったか?」

 

「それはもう、散々でしたよ…。」

 

「き、今日は休むか。いいよ、いつも頑張ってるし。ね?」

 

「大変申し訳ございません…。」

 

対人訓練もこの有り様だ。気を遣ってもらってしまった。あーあ、これから先俺はどうなるんだ…。ん?これもしかして、俺ハメられてね?これで明日レイに弁当持って行かなかったらそれはそれでよくない方のネタに…。ああ、終わった。本当なら人と触れ合いながらゆっくり育む、健全な恋をしたかったのに…。とぼとぼスーパーへ向かう途中、携帯が鳴る。この着メロにしたETERNAL WIND、今日は呪いの曲に聴こえる…って、シンジ君からか。よかったよかった。こんなところでもテロされたらたまったもんじゃない。

 

「よぉ、シンジ君…はぁー。」

 

『え、エイジ君ごめん、後でかけ直すよ。』

 

「いや、大丈夫、大丈夫だから。それで、覚悟はできた?」

 

『…うん、残ることにした。ミサトさんとも話したんだ。みんな、必死になって人類を守ろうとしている。そんな中、真っ向から立ち向かえる僕が逃げちゃダメだ、って思った。だから僕はエヴァに乗る。みんなを、守るために。』

 

「そうか。よかったなシンジ君、自分で理由を見つけれて。それだけで大きな成長だよ。」

 

『エイジ君も、こんな僕と向き合ってくれてありがとう。』

 

「どういたしまして。…ところで話は全く変わるんだけどさ、うちの弁当箱って一箱余ってたりしない?」

 

『え?弁当箱?あー、たしか2箱くらい余ってたと思うよ。どうしたの?』

 

「明日学校来ればわかるよ…。それじゃ、帰るのを待ってる。」

 

はァー、何にしようか…。

 

 

 

次の日は、はい、もう言わなくてもわかるでしょう。もうそれはそれは教室が一丸となって俺を冷やかしに来ました。ヤバかったです、ほんと。レイはわかってないようだから、結果的にダメージは俺だけに来るんですね。どーすんだこれほんと。

でも、レイが弁当を受け取ったときの笑顔の「ありがとう。」はマジで効いた。クッソ可愛いんだもん。

 

まあでも午後は先日倒した使徒をバラして卸してるとこの見学ができるらしいから、俺はそれに学校から逃げるように向かった。

 

 

「これが、僕が倒した使徒…」

 

「思ったより腐食って感じはしないな。あくまでも劣化って言うのがよくわ…シンジ君?」

 

「え、どうしたのエイジ君。」

 

「メットつけてるのに顎ヒモをちゃんと付けないのは感心しないな。」

 

「え?でもミサトさんも外してたよ?」

 

「あのアル中が…いいかシンジ君。メットってのはアクセサリーじゃないんだよ。ちゃんと顎ヒモをつけとかないと正常にメットとしての機能を果たしてくれない。だからつけるんだ。怪我はしたくないだろ?」

 

「わ、わかったよ…。」

 

渋々顎ヒモをつけ直す。それでいい。君も危険な状態で「ヨシ!(現場猫)」はしたくないだろう?

そうだ、あのアル中も叱ってやらねぇと。年長者でこういうとこにも行きそうな人が一番ガサツってのが許せねぇ。

 

 

 

「何これ?」

 

「解析不能を示すコードナンバー…。」

 

「つまり、ワケわかんないものってこと?」

 

「そう。でも、1つだけわかったわ。『使徒』の固有波形パターンが、構成素材の違いはあっても人間の遺伝子と酷似していることが。99.89%ね。」

 

「へぇ、それじゃ僅かな遺伝子の違いでこんな差があるんですか。ほんと、どうなってんですかねこいつら。」

 

「エイちゃん!?」

 

「あら、エイジ君もこういうのに興味があるの?」

 

「専攻するかは別としてでなら。にしてもミサトさん?メットの被り方すら知らないとは言わせませんよ?」

 

「え?何のこと?」

 

「顎ヒモつけることくらいわかっとけ!!!」

 

「ごめんなさい!!!!!!」

 

 

 

シンジ君は影から指令らを見ている。恐らく、彼は自分の親父を見ているのだろう。何も言わない父親を。俺も一緒に覗いてみる。にしても、指令の手、火傷をしている。

 

「お二人さん、何見てんの?」

 

「わぁっ!!」

「指令の手、火傷あるんですね。何かあったんです?」

 

「指令の火傷?ねぇリツコ、何か知らない?」

 

「零号機の起動実験のこと、聞いたことあるでしょ。そのとき指令が、レイを助けたのよ。過熱したハッチを素手でこじ開けてね。」

 

「へぇ、指令ってそんなことするんすね。」

 

俺には、あの人付き合いがクッソ悪そうなあの指令がそんなことをするとは思ってもいなかった。ちょくちょくレイといるとこも見るし、なんかありそうな気がする。

 

 

 

次の日、体育の時間。男子と女子で分けられてるとか、これまた前時代的だ。俺が生きてきた一生の中で、そんなことは全くなかった記憶がある。俺らというと、コンクリの階段で休んでいる。多くの男子は、高さがあるプールをぼーっと見上げてる。俺?興味ないね。(変態魔晄中毒者) そもそも俺は暑さに弱い方だ。近くに水筒を置き、帽子を被って横に寝そべってる。だいたい、こんな日陰もねぇとこに居たら熱中症で死ぬけど。

帽子を目元に深く被り、目を閉じて静かにしてるとバカ二人が近づいてくる。今度は何だよ。

 

「何やエイジ?お前はプールにいる女子に興味わかへんのか?」

「トウジ、こいつには綾波が居るだろ?他の女子を見ないようにしてんじゃない?」

 

「は?何言ってんだお前ら…。」

 

「何が『は?』やこのムッツリが。欲望には忠実になった方がええで?」

「そうそう、お、あの子のおっぱい大きいなぁ。」

 

「俺はお前らのようなエロガキじゃねぇんだよ。一緒にすんな。」

 

「かーっ、エイジお前ほんと愛想悪いなァ。」

「ねえ、ほんとに興味ないの?」

 

「だいたい2015年なのにこんな前時代的なことやってる方がおかしいんだよ。何で分ける必要がある?」

 

「え!?」

「な!?」

「うん?」

 

「な!?お、お前そういう考えだったんか!?こ、これは知らんかったわ…。」

「あ、ああ…。時代を先取りしてるよこいつ…。」

 

「え?何言ってんだお前ら。そんな90年代のような考えしてるのかよ。」

 

「こ、これは失礼したわ。ほな…。行こう、ケンスケ。」

「う、うん。」

 

そう言って今度はシンジ君に絡みに行った。あっのエロガキ…。

 

 

「ぎゃはははははははは!!!!!!」

「やだ~、見てぇ~鈴原のあの顔~!!!」

「サルよサル!!」

「碇君たら意外とお茶目~!!!」

 

水筒に口をつけて、また寝ようとすると女子のバカ騒ぎが聞こえる。何だ何だ?

起き上がって見て見ると、トウジがシンジ君に変なポーズさせられてた。

 

「ぶっ、あはははははははは!!!!!いいザマだなトウジ!こっ、このっ、はははははは!!!!!よくやったシンジ君!!!!!!!」

 

ほほえてやはれへひひ(覚えてやがれエイジ)!!!!!」

 

「ぐっ、くくくく!!!!!最っ高だわ!!」

 

んでも、碇君はあんまり満足な顔をしてなかった。何したかったんだ?俺にはわからねぇや。

 

 

 

 

午後はシンクロテストと、俺だけまた別の実験があるらしい、もしかして…。

 

例によって、いつも通りプラグだけの訓練を挟んでから、今日はエヴァとのシンクロテストもした。そういえば、俺はまだ零号機には乗ったことなかったな。どんなもんなんだろうか。

 

レイの後、俺も交換されたプラグに入り零号機とのテストを始める。初号機と違って、思ったよりエヴァからの抵抗がなかった。この差は何なんだろう。しかも初号機と違って、シンクロ率は30%くらいをキープしていた。どういうこっちゃ。

 

その後、赤木博士に呼ばれた。しかもプラグスーツのままでいいって、何があるんだ?指定の場所へ行くと、その部屋には半分埋まったプラグと、コードが大量に繋がれている機器。もしかして…。しかも、この場所ってさらに外側に水か何かが入るのか?ここの壁だけ異様に厚い。

 

「赤木博士、これってまさか…」

 

「こないだ言っていた、外部とのシンクロによってサポートするシステム、『アークシステム』。それの試作機よ。」

 

「まさか本当に造っちゃうとは思いもしませんでしたよ…。」

 

「私にも科学者としての好奇心があるのよ。

それでは、システム概要を説明します。エイジ君はこのプラグ内に入り、エヴァとクロッシングしてもらいます。クロッシングとシンクロとの違いは、完全にエヴァとの波長を合わせるのではなく、その名の通りエヴァとパイロットの思考の中を横切って情報を引き抜き、擬似的なシンクロをすることにあります。直接シンクロと違ってフィードバックが少ない代わり、若干のラグが生じる可能性もあります。基本的なところはこのくらいね。」

 

まんまファフナーじゃねぇか。ただ、ダメージフィードバックが小さい代わりにラグがある。なんか、扱いがだいぶ難しいものになっていそうだ。あとは、本当に求めている機能があるかを訊く。

 

「ここから、エヴァに直接シンクロすることってできます?パイロット暴走の保険として欲しい機能なのですが。」

 

「理論上はすることができるわ。それをこれから確認するのよ。さ、入ってちょうだい。」

 

「わかりました。」

 

なるほど、ここで人柱になれと。まァ上等だ。やってやろうじゃねぇか!

 

 

 

[これより、アークシステムと新型エントリープラグの運用テストを開始します。シンジ君、エイジ君、用意はよろしくて?]

 

[はい。]

 

「いつでもどうぞ。」

 

とりあえず、シンクロする時と同じように集中する。

 

[アークシステム起動!]

[LCL電荷!]

[初号機、起動確認!]

[クロッシングスタート!]

[MAGI・メルキオールとシステム直結!リンクスタート!]

[システム、オールグリーン!クロッシング成功!]

 

前ほどの初号機からの抵抗は無い。でも、何か雑音が聴こえるような、そんな感じがある。エヴァから直接送られるのではなく、MAGI経由でデータを見ているからだろうか。ゆっくり目を開けると、初号機の視点、武装情報が表示される。パレットライフルとは、ど安定な武装での試験。流石に新規武装の試験も同時にやることはないか。

 

[どう?シンジ君、エイジ君。違和感とか、そういうのはない?]

 

[特に、何も。]

 

「俺は少しノイズが走るような感覚があります。今のところは許容範囲かと。」

 

[結構。それでは、アークシステムによる操縦権の移行をテストします。シンジ君、これが成功すると、あなたは一時的に初号機を動かせなくなるわ。心配しないでね。]

 

[わかりました。]

 

[コントロールジャック開始!]

[初号機、シンクロカット!]

 

げぇ!?ま、まんま過ぎる名前だ。不吉ぅ…。

 

[アークシステムとのシンクロ開始!]

[初号機、アークシステムと接続!]

[MAGI・カスパーと接続!]

[カスパー、アーク経由でヘルムスマンとシンクロ!]

[コントロールジャック!]

 

これは、初めてシンクロしたときと同じ不快感。恐らく、シンクロできた。目を開けると、画面には変わらず初号機の目が捉えた映像が見える。左手を持ち上げ、軽くグーパーする。俺の動作とほぼ同じタイミングだ。その後、操縦桿を握り、初号機は銃を構える。

 

[シンクロ率、29.4%!]

[MAGIのサポートのお陰でシンクロ率も高くなっているわね。どう?違和感はない?]

 

「いいえ、特に何もありません。初めてシンクロしたときと同じ不快感があったので、ほぼ完璧にトレースできていると思います。」

 

[そう。他に要望はある?]

 

「インダクションモードお願いします。」

 

[了解。モードチェンジ。]

 

画面が初号機の視覚情報からバーチャル空間へと変化する。トリガーを引くと、銃を構えた初号機は発砲。思った以上にタイムラグはない。

さらにプログナイフを装備し、バーチャル使徒に格闘戦を仕掛ける。対人訓練で覚えた極め技なんかを試してみても、そこまでラグを感じることはない。思った以上の性能だ。

 

「凄いですね、このシステム。MAGI経由だからかシンクロ、動作もほぼ完璧じゃないですか?」

 

[これでもコンマ01秒くらいのラグがあるのよ。そこまでやっと短くした、とも言えるわね。]

 

「そりゃあ遠回りしてるから0にもっと近づけるのは大変でしょう。お疲れさまでした。」

 

[科学者冥利に尽きるわね。そうそうエイジ君。]

 

「はい?うわぁ!?!?!?」

 

バーチャル空間が解けると同時に、眼前に鉄球が飛んでくる。驚いたが、ATフィールドで弾くことができた。え?外部シンクロでATフィールド!?

 

「赤木博士、流石の技術力ですね…。」

 

[これで全てのテストは終了よ。二人とも、お疲れさま。]

 

[はい、お疲れさまでした。]

 

「お疲れさまでした。」

 

 

 

 

家に帰ると、シンジ君が夕食の準備をしている。

 

「へぇ、今日はカレーなの。」

 

「うわぁ!?なんだエイジ君、帰ってたのか。お帰り。」

 

「あ、こいつは失礼、ただいま。今日はお疲れさま、シンジ君。」

 

「エイジ君こそ。凄いや、エヴァで格闘戦するなんて。」

 

「俺は結局、後ろでサポートすることしかできないからね。そのために、リアルでの露払いくらいはしたいのよ。」

 

「やっぱ強いなぁ、エイジ君は。」

 

「あらエイちゃん、お帰り。今日はお疲れさま。」

 

「ただいま、ミサトさん。これでやっと戦闘に直接関われますよ、ほんと。」

 

「ずっと言ってたものね、『参号機寄越せー!』って。」

 

「ええ、ほんと。アークシステムをこんな短期間で造っちゃうとか、赤木博士ほんと凄いですよ。あ、テーブルくらいは拭くよ。」

 

「え、参号機なんてあったんですか?どうぞミサトさん。」

 

「ありがと、シンジ君」

「エヴァは今ん所四号機まであってさ、零・初号機が日本、弐号機はドイツ、参・四号機がアメリカにあるんだってさ。ありがとシンジ君。」

 

「へぇ~、知らなかった。」

 

「「「いただきます。」」」

 

「国の利権ってのはほんと迷惑だよねぇ。創作なんかでの統一国家ができねぇのも納得だわ。」

 

「そ、そうだね…。」

 

「世の中、そんな単純なモンでもないのヨ。あ、そうだ2人にこれ渡しとくね。」

 

「これは?」

「正式なIDですか。」

 

「そ、やっと発行されたのよ。最近は使徒の攻撃で忙しかったしね。あと、レイのIDよろしくね、エイちゃん。」

 

「え?俺なんです?」

 

「にひひ~、私も学校で起きたことは知ってんのヨ。」

 

そう言って一枚の写真を見せる。う゛っ゛!!それは

 

「まさか…」

 

シンジ君の方を見る。

 

「し、仕方ないじゃん。凄い剣幕で迫られたら、ね…。」

 

「ミサトさん!!!!!!!またビール禁止にしてやろうか!!!」

 

「あっら~、そんなこと言っていいのかしら~?そんな事言っちゃうと、シンジ君に届けさせちゃうわよ~!」

 

「ひっ、卑怯な手を…!ぐぐぐ…!」

 

「いいじゃないの~。まっさか、エイちゃんがレイのコレだとは思わなかったし。」

 

ミサトさんが写真をピラピラ揺らしてると、ナチュラルにそれをぶん取ったシンジ君がまじまじと写真を見る。

 

「にしてもさ。僕、この写真で初めて綾波が笑ってる顔見たよ…。」

 

「わかる。あのとき俺も初めて見た。」

 

「というわけで、よろしくね、エイちゃん。頑張ってね?」

 

「…はい。」

 

 

 

 

アークシステム。赤木博士が何の意図をもって方舟の名前をつけたのかはわからない。でも、これによってシンジ君らのサポートとブレーキ役になることができる。文字通りhelmsman(操舵手)のように。それだけで少しだけ、彼らとより近い位置での仕事ができると、そう感じていた。

あと、綾波との関係は頑張って維持しようと思う。これも確固たる意思をもって、そう思っていた。

 




いつになったら完結するんだろう…。

補完計画発動も、使徒騒ぎの後のごたごたもない本当の大団円endを読みたいですか?

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