エヴァの記憶だけ吹っ飛ばされた人がエヴァ世界に飛ばされた話 作:フィアネン
朝。いつもどおり起きて、顔洗って、ゴミをまとめる。今日はゴミ出しの日だからね。そんでもって手を洗って、シンジ君に作ってもらった朝食を食う。やっぱうめぇなぁ。朝食をシンジ君と食いながら、今日の昼だとか、夕食の話題。これ中学生がする話題なのかよ。そんで食ってる途中でだいたいミサトさんが起きてくる。
んで、俺はこの後更にやることがある。…レイへの弁当作りだ。シンジ君が気を遣って、ある程度朝食と食材被せてくれるのがマジで有り難い。あの後毎日弁当を渡し続けて、どうやらベジタリアンっぽいことがわかった。いや、肉を食う回数が極端に少なすぎて、味を知らないって言った方が正しいのかなァ。
ミサトさん、今日はほぼ入れ替わりだったな。俺は色々用事があるから、着替えてすぐ家を出る。
「あれ、今日は妙に早いじゃん。」
「昨日のアレもあるからさ…。先に行かせてもらうよ。」
「ああ、そっか。いってらっしゃい。」
「いってらー」
「行ってきます。」
レイの家…というか住んでいる団地は、都市の外れにあった。まるで廃マンションのような、人の気配が全く無い静かな空間。402号室に着く。なんか、不自然なんだよなァ。この時間帯なら、だれかしら人間と会っていいはず。何で誰とも会わねぇんだろ?
インターホンを押す。…音が鳴らねぇタイプか?少し待ってから、もう一度押す。……こいつぁ、壊れてるな?それなら、ドアを2回ノックして呼び掛ける。どうせ誰も住んでねぇんだろ。バカでかい声だしていいはずだ。
「レイいるか?影嶋だ。」
…もう一度。
「レイ?」
ドアノブに手を掛け、ゆっくり回す。げぇ、鍵がかかってねぇ!これ、レイが危ない目に遭ってないといいけど。姿勢を低くして、静かに入る。土足のまま上がったが、床に足跡が多くあるということはそれでいいのだろう。静かに、部屋へと進む。横でシャワーの音がするということは、レイはそこにいると踏んだ。まさかとは思うが、殺されてるとか気絶してるってのは無いと信じたい。
奥へと行き、隠れてそうな部屋の角を調べ、ベッドの下にも敵がいないことを確認する。はァ、杞憂だった。しょうもない心配したなこれ。なんか逆に俺が不審者じゃね?これさ。
にしても、部屋に何も無さすぎる。ベッド、椅子。引き出し、小さい冷蔵庫とその上にあるビーカー、錠剤。こいつはこないだ言ってたやつか。後は何があるかわからない台所。最低限生きるための道具セットだなこりゃ。レイの親の顔を見てみたい。10発くらいフルパワーで殴れる自信がある。
ん?引き出しの上にある眼鏡って何だ?この変形の仕方、踏み潰したんじゃ再現できないよな。何か熱が加わったような…眼鏡を外してそれのレンズを覗き込む。あ、この気持ち悪い感じ、老眼鏡だな?老眼鏡、熱、レイ…指令のものか。助けて貰ったから、大事にしてるとかかな。
「影嶋君?」
「あ、ごめんレイ、勝手にあがっ!?!?あっ、あがらせて、もらってるわ。」
「そう。」
「じゃあ俺は、着替え終わるまで外で待ってる。」
「わかった。」
もう必死に顔を背けた。何てったって裸で突っ立ってたんだからさ。顔は赤くなるというより、青くなった。だって、だってさぁ。この年頃の子がさ、無抵抗に男子に対して裸を晒すってどう考えても異常だよ。やっぱ親を殴る回数は100回にしよう。そいつが死ぬ?関係ないね。
部屋を出て扉を閉めると、一体どうしたものかと考えざるを得ない。
レイの家が想像以上だったからね。アレを「健康で文化的な最低限度の生活」とは到底思えねぇよ。レイもこの国の人間な以上、その権利はあるはずだ。仮にそれを必要ないって言う奴は同罪だから100発殴る。俺は一応家事全部できるし、これなら実質保護者になってもいいんじゃないかな?んでも住むところの問題がある。ミサトさんとこに一緒に住もうとしても、これで計4人だ。キャパ限界じゃないか?仮にそこから増えたらキャパオーバーする。ミサトさんとこにゃシンジ君もいるし、彼にミサトさんを押し付けてもいいかも。そんなこんな考えていると、レイが部屋から出てきた。
「お待たせ。」
「いンや、そこまででも。んじゃ行くか。」
通学路。
「レイ、これだけは頼みたいんだけど、部屋の鍵くらいは閉めてくれ。マジでおっかなかったんだぞ?」
「どうして?」
「いくらNERVの監視があったとしてもさ、いつ誰が入ってくるかもわからない。誰に何をされるかわからねぇんだよ。だから、その自衛。」
「…わかったわ。」
「ありがと。ところでさ、レイがいいならその…家に言って料理作ってやろうか?」
「え?」
「だってさ、レイっていつも昼以外まともなもん食ってないだろ?それなら俺が作ってやるよ。台所は使えそうだしさ。」
「どうして?」
「うん?」
「どうしてそこまでしてくれるの?」
「俺は『お節介』が好きだから、ってことにしといてくれ。」
「…ありがとう。」
「何や、朝から惚気話か~?ほんまいい夫婦やなぁ。」
「そうそう、最近はお前らの惚気写真、人気なんだぞ?」
「はァ、お前ら今の話どこまで聞いてた?」
「え?」
「そりゃあ、『俺が綾波の料理作ったる!』言うたとこやな。」
「そこしか聞いてねぇのか?」
「何が言いたいんだよ、エイジ。」
「せやせや、もっと分かりやすぅ言え!」
「いいよ。お前らバカ二人にはこの深刻さはわからねぇだろうからな。」
「んだとエイジお前!」
「よせよ、またぶっとばされるぞ?」
流石に数日同じことされ続けると慣れるってもんだ。扱い方がわかればこんなもん。
時間は飛んで昼。例によって屋上で筋トレと昼食。最近は最初からレイがついてくるようになった。前より裏手引きする奴らも減ったし、レイが自分の意思で来てるんだろな。ケンスケだけはずっといるのがわかる、シャッター音駄々漏れだし。
「そいやレイ、今日は零号機の再起動実験だっけか。」
「そうよ。」
「頑張ってな。俺は零号機とのアークシステム連動試験があるから直接には見てあげれない。でも、システムを通じて会いには行けるから。」
「何だか、少し…寂しい。」
「大丈夫。上手く行くよ。」
「ありがとう、影嶋君。」
[これより、零号機再起動実験及びアークシステム連動試験を行う。]
[レイ、準備はいいな?]
[はい。]
[エイジ君もいいわね?]
[俺はいつでも。]
[第一次接続開始]
[主電源コンタクト]
俺が初号機の起動実験をやったときと同じ流れだ。違うところといえば、シンクロが一発で上手く行っていること。ま、大丈夫。今度は上手くいくよ、レイ。
[0.3、0.2、0.1、ボーダーラインクリア!]
[零号機起動!]
[引き続きアークシステムとの連動試験開始!]
[LCL電荷!]
来た。リラックスさせていた意識を今度は集中させる。
[クロッシングスタート!]
[MAGI・メルキオールとシステム直結!リンクスタート!]
[システム、オールグリーン!クロッシング成功!]
目を開くと、零号機の視覚情報がプラグ内に映し出される。監視塔には指令、副指令、赤木博士、シンジ君ほかオペレーターがいる。
このままジャック試験かと思いきや、指令が突然叫ぶ。
[総員、第一種警戒体制!初号機を出撃させろ。]
使徒か。
「待った、すぐにエヴァを出すのは危険ですよ。」
[何?]
「指令は、前回の作戦の失敗原因が何かをご存じですか?」
[初号機パイロットの命令違反だろう。]
「いいえ、それはアドリブの範囲です。彼は初期の作戦は忠実に従っていました。」
[私らはお喋りをするためにここに居るのではない。]
「黙って聞けよ。んなんだから毎回毎回施設をむやみやたらにぶっ壊されんだぞ。」
[言い方を考えなさい、エイジ君。]
「これは失礼、赤木博士。じゃあ結論だけ言います。敵のスペックがわからないのに盲目にエヴァを上に出すのは危険です。通常兵器で動向を見るべきですよ。」
[ふむ、彼の言葉にも一理ある。どうかね碇。]
[…たまたま2回上手くいっただけの子供に何がわかる。]
「それで出して初号機壊されても知りませんよ?その責任を俺に擦り付けないでくださいね?」
零号機を通して指令を見る。「初号機」というワードを出したとき、指令の眉が動いた。初号機には何かあるらしい。
[…わかった、好きにしろ。]
「ありがとうございます。それじゃ、全体の指揮は俺じゃなくてミサトさんに頼んでください。そういう組み立てはミサトさんの管轄なので。」
[わかった。君も作戦発動したら、前線指揮を頼む。]
「了解。赤木博士、とりあえずコントロールジャックだけ確かめておきましょ。」
[あんなことを言っておきながら呑気ねぇ。すぐ終わらせるわよ。]
「あい了解。」
事実、前回の作戦に関しては冷静に分析をしたことがある。え?いつやってたかって?授業中だよ。ダルいんだもんあの人の隙自語。それで第四使徒戦を客観的に見たときの感想でも言っておくか。
まず、大まかな作戦は合っていたと思う。ある程度リーチがある攻撃方法ってのは第三使徒にもあったし、それを見越してのガトリング掃射からの退避は正解。民間人二人を回収するためにも、地面落としでの回収も正解だった。
逆に、ガトリングが効いていないことを瞬時に判断できずに、ライフルを持たせようとしたのは悪手。更に、ヤツは敵…つまり初号機が出現してから鞭を出してきた。これも攻撃能力を隠されていたことになる。
体型が人間とかの生物から遠ざかるほど、攻撃方法はわからなくなっていく。そのためにも、スペックを調べるための通常兵器というのは重要だ。
さて、尺稼ぎできたかな。ジャックテストも問題なく終わった。そんでもって、俺はシャワーを浴びて、一度着替えてから発令所へ向かう。
「あら~、有能な前線指揮官様は重役出勤ですの?ご苦労様です。」
「こういうときにふざけるのはよくないですよミサトさん。んで、状況はどうです?」
「今色々やって、あいつのことが結構わかってきたわよ。」
話を要約すると、
1.敵は本部直上で静止、ドリルを出して穴堀り中。10時間後に全装甲板を破られる。
2.敵の主要な攻撃方法は荷粒子砲。
3.敵は攻撃意思をもったものに対して極めて正確な当て返しをする。
「こいつはなかなか強敵ですね。荷粒子砲の精密射撃とは、近づくことは不可能ですねこりゃ。フィールド中和の攻撃方法はまず無くなる。ドリル側に攻撃方法があるかが不明だから真下からの狙撃も危険。うーん、今NERVにある武装じゃ無理じゃないですか?」
「ええ。状況はかなりこちらが不利ね。零号機はどう?」
「クロッシング、コントロールジャック共に問題なし。命令があれば、いつでもアークに入れますよ。」
「実戦は何とかできそうね。問題は攻撃方法…。」
「どうします?白旗でもあげますか?」
「意志疎通が出来ない相手に白旗たぁ面白いっすね。」
「ナイスアイデア。でもその前に、やれることはやっとかなきゃね。戦自行くわよ。」
「戦自ですか?何があるんです?」
「うちの諜報部のリークでね、面白いモン開発してんのよ。」
戦自…正確に言えば戦自研で見たものは好奇心をそそられたが、思った以上にゴリ押しな作戦だった。正直、俺のアシストがあっても一発で成功するかどうか。でも、日本全体を巻き込んで行うこの作戦は、使徒に勝つための唯一の作戦だった。
名称は"ヤシマ作戦"。シンジ君に那須与一になれって言ってんのかこれ。
本部に戻り、控え室に入る。中では、プラグスーツ姿のレイとシンジ君が白い机の前に座っている。
「よォ、レイにシンジ君。待機してるのも疲れるだろ。これは俺の奢りだ、受け取ってくれ。」
「エイジ君!?今までどうしてたの!?」
「ちっとミサトさんに連れられてね。外をほっつき歩いてた。」
そう言ってホットココア2本をそれぞれレイとシンジ君に渡す。
「ありがとう。」
「ありがと、エイジ君。」
シンジ君は軽く振って飲むが、レイは飲もうとしない。
「ん?もしかして飲めなかったか?」
「いいえ、開け方がわからないの。」
「そっか。こうして開けるんだよ。爪気を付けてね。」
レイの横に座り、缶をよく振ってから、プルタブを開ける。レイもそれを真似て缶を開き、ココアを飲む。
「…おいしい。」
「そいつはよかった。」
俺はココアを一気飲みし、立ち上がって作戦内容を伝える。
「よし、それじゃあヤシマ作戦の作戦説明だ!今回の作戦概要は、あの青い半透明の正八面体を超遠距離から狙撃すること。敵の当て返しが想定されるため、狙撃、防御の役割分担がある。狙撃役はシンジ君、防御役はレイだ。」
「根拠は?」
「ぼ、僕今まで狙撃なんて一度もやったことないよ?できるかな…。」
「まずは根拠からだ。シンジ君は初号機とのシンクロ率が高く、機体操作に不安定が無いことが狙撃役の理由。レイに関しては、零号機がそもそも起動したてでまともに調整をしていないというのが理由だ。両者とも、必要なタイミングでアークシステムの補助をつける。
そんでもってシンジ君、ここからは君の重要な立ち回りだ。」
シンジ君の顔が険しくなる。
「今回使う武器ってのは陽電子ライフル。こいつが曲者で、敵の攻撃の干渉や地球の自転や重力なんかでこちらの弾がまっすぐ飛ばないことがある。それだから、確実に一撃で仕留めるっつーのはだいぶ難しい。照準後の誤差修正とかはMAGIに全投げして、チャージと照準が終わったらトリガーを引けばいい。弾は暫く銃口から出続けるらしいから、照射が終わったらすぐ移動してくれ。ポイントは逐次こちらで知らせる。」
「何となくわかったよ。要は準備できたら撃って、撃ち終わったらすぐ移動すればいいんだね。」
「そんだけわかりゃ十分だね。お次はレイ!」
彼女の顔が少し強ばる。
「防御に使うシールドなんだが、理論上は敵の攻撃に対して17秒間もちこたえられる。だけど陽電子ライフルはチャージに最短で20秒かかる。仮にチャージと同時に防御する場合、3秒間だけ無防備な時間が発生しちゃうんだ。そのリスクを知っておいてくれ。」
「わかったわ。」
「よし、お次はスケジュールだ!一度しか言わねぇからよく記録させとけよ?
作戦開始時間は、明日午前0時から。
本日17時30分に両パイロットはケイジに集合。
18時00分にエヴァ零号機、初号機起動。
同5分に二子山仮設基地に向かい、30分に到着。以降は待機だ。
んで、明朝日付変更と同時に作戦開始。
二人ともオーケー?」
「わかった。」
「了解。」
「俺はシステムの都合上、ここに残らなきゃならない。戦場からは遠くにいるけど、エヴァの中ならいつでも傍にいる。頑張れよ。」
「うん。」
「ええ。」
「それじゃ、行ってらっしゃい。」
現在時刻18:45。アークシステムに搭乗、起動させミサトさんと連絡を取る。
「ミサトさん、設営どうです?」
『だいぶ順調よ。ありがとうね、作戦概要の説明までエイちゃんに投げちゃって。』
「これも前線指揮官の仕事ですからね。彼らとの位置はだいぶ遠いですけど。」
『上手いわよ、エイちゃん。エイジ君、あなたのお陰でだいぶ指揮もスムーズに行ってるわ。本当にありがとう。それじゃ、こちら側の作戦も説明するわ。
これから冷却装置と送電システムの最終チェックを行うわ。その後、作戦開始と同時にMAGIによる照準修正を開始。仮に敵がこちらを察知できても、先に撃てれば問題ないわ。それで確実に仕留める。』
「作戦というか狙撃の手順まんまですね。それなら、なるべく気づかれないよう時間稼ぎが必要ですね。…アークシステムに周囲の山中にある兵装ビルの操作権限を寄越してもらえませんか?後は俺が導きます。」
『なるほど、多くの弾をバラまいて、敵の気を引こうって作戦ね。いいわ、指令と交渉する。』
「ありがとうございます。なるべく”万一”ってのは減らしたいですしね。」
『そうね。』
「それじゃ、こちらとの通信終わり。そちらも頑張ってください。」
『エイジ君も、サポートよろしく。』
通信終わり。お次は…お二人と少し会話していくか。あんまりイタズラはしたくないけどね。
零号機をジャックして、
「よっ」
って感じにジェスチャーさせる。レイもシンジ君も驚いてこちらを向いている。はは、面白。
「二人と話したいからさ。悪いね。」
[め、めっちゃ驚いた…。]
[……。]
「ごめんて。これで少しは緊張は和らいだ?」
[え?うーん、どうだろう。]
[わからない。]
「ま、考える余裕があるのなら平気だな。…今回の作戦、俺のサポートがどこまで効くかは正直未知数だ。それにそもそもがゴリ押しのような作戦。こんなものでも付き合ってくれて…本当にありがとう。」
[やだな、エイジ君らしくない。]
[それほど厳しいってこと?]
「残念ながらそうだ。でも、俺は絶対に諦めない。…もうそろそろ時間だ。ジャックを切るよ。」
[エイジ君も頑張って。僕らも頑張るから。]
[誰も死なせないわ。]
通信終了。
「ありがとう。」
[時間です。]
[ヤシマ作戦開始。]
[第一次接続開始!]
「兵装ビル、ミサイル7番から20番、解放次第発射!」
ディスプレイに表示される地形図と、ライブ映像を確認しながらこちらも時間稼ぎの指揮を執る。結局、操作は発令所に残ったオペさん経由になった。
「砲台6番から25番まで展開、射撃開始!」
指示を飛ばした所から順番に撃墜され、兵装ビルが破壊されていく。お構い無しに間髪入れずに次々に指示を飛ばす。狙撃ポイントが勘づかれたら終わりだ。
[撃鉄起こせ!]
「よし、このまま絶対に攻撃間隔を空けるなよ!アーク、初号機とクロッシング開始!」
画面が移り、今度は初号機…正確には初号機が覗いているスコープの画面が投影される。
「シンジ君、準備はいい?」
[大丈夫だよ。]
次の狙撃ポイントはここから1.3km東に移動したポイントだ。MAGIに位置座標を転送する。これで誤差修正もある程度早くなるだろう。こうしている間にもカウントは進められていく。
[5、4、3、2、1]
[撃てッ!!]
ミサトさんの号令と共に放たれた初号機の射撃は、正確に敵のコアを貫いた―ように見えた。
[やったかッ!?]
バカ!ミサトさんそれはフラグってもんだ!
[砲身冷却、再チャージ開始!]
「初号機、零号機!次の狙撃ポイントを転送する、各自指定座標へ移動!敵がやられたかの確認ができない以上油断するなよ!零号機とクロッシング開始!」
[了解!]
[了解。]
第一射は恐らくハズレだ。ということは、ここに弾が飛んでくる可能性が極めて高い。素早く移動できたが、果たして―
[目標内部に、高エネルギー反応!!]
マズい、移動が間に合わない!!!!
「レイ!」
[わかってる。]
零号機は盾で初号機を庇う。こちらにもそこそこフィードバックが来ており、体表が熱くなっている感覚がある。
[綾波!]
[碇君、行って!]
「シンジ君行け!今なら狙撃ポイントに行ける!」
[わ、わかった!]
「再チャージまでどれくらいだ!」
[残り10秒!]
まずい、既にこの盾で10秒は受けた。間違いなく間に合わない。…レイを殺すわけにはいかない!
「零号機にコントロールジャック開始!」
[え!?]
[影嶋君!?]
「オペさんやってくれ!」
[…了解!]
[待って!]
数秒後、俺は零号機とシンクロした。
突如としてプラグ内を照らす青白い閃光。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああああっ!!!!!」
「AT…フィールド…全開ぃい!!!!」
物凄いフィードバックが来る。体全体が焼き尽くされそうだ。それでも、この痛みを、レイに受けさせるわけには…ッ!!
[…まよ、撃っ…]
何か聴こえたが、理解できなかった。この苦しみに耐えることしか、今はできない。数秒後、閃光から解放されたようだが、よくわからない。でも、これはわかる。作戦は、成功…だ…。
ここは…?朦朧とする意識。なんか近くで規則的な音を鳴らしてるものがある。あと、口の周りに何かを当てられている。手を何とか動かして見ると、呼吸器のようだ。ああ、病院か。手にも管が…こいつは点滴か。
まだ意識がはっきりとせず、眼鏡もないから周囲の輪郭しか把握ができない。ん?誰か座ってる?青い髪…。
「…れい?」
掠れた声しか出ない。それでも、俺の声に反応して起きたレイは、こちらを見ている…ようだ。顔がわからねぇや。
「影嶋…君…?」
「ごめん、目が、わるくてさ…。レイのかおが、よく…。」
言い切る前にレイが凄い勢いで俺に顔を近づけてくる。うん、これならはっきり見える。
「影嶋君…私、泣いてるの?どうして…?」
「俺が生きてたよろこびか、むちゃくちゃをした俺にたいする怒り…そのどっちかだ。」
「私、私は…」
顔を背けて泣き続けるレイを優しく抱く。彼女の体は一瞬ビクっとしていた。
「ありがとう、レイ。」
見舞いに来てくれたシンジ君は、これを見てしまい入室できなかったようだ。俺は結局、戦線復帰するまで3週間はかかるとか。
その間に色んな人から怒られたな。ミサトさんからは泣きながら怒られたよ。「無茶すんな!!」ってさ。学校復帰してからは、トウジからも「幾ら綾波を庇った言うても死んだら終わりやぞ!」って言われたよ。
でも、こんな終わった世界でも俺のことを心配してくれる人がこんなにもいる。その人たちを守ることができた。それが一番の喜びだった。
序、終劇。
補完計画発動も、使徒騒ぎの後のごたごたもない本当の大団円endを読みたいですか?
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はい
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いいえ