エヴァの記憶だけ吹っ飛ばされた人がエヴァ世界に飛ばされた話 作:フィアネン
なんか凄い伸び方をしていて驚いています。読んでくださる方々へ。ありがとうございます。
新横須賀沖での対使徒戦闘記録。水中を移動する使徒に対し、真っ赤なエヴァが空母を使って見事な八艘飛びを披露し、使徒の体表をプログナイフで深く切りつける。その後、戦艦2隻がその傷目掛けて主砲の接射を行い、使徒は殲滅された。
「見事な八艘飛びですね。対応能力も素晴らしいです。でもこれじゃ生き残る方が逆じゃないですか?」
「え?どういうこと?」
「シンジお前、日本史の授業聞いてねぇのか?八艘飛びは源平合戦での伝説で、その合戦の勝者は白旗の源氏、敗者は紅旗の平家だ。使徒とエヴァの色を掛けた比喩だよ。」
「エイちゃん縁起でもないことサラッと言うわね~ほんと。」
「八艘飛びを知っていれば、かなりわかりやすい比喩ね。それにしても、本当に噂以上の実力ね、セカンドは。」
「でも何故使徒があんなところに…?」
「確かに不自然ですね。それにアレの体型、ここに来ることを想定したつくりになってませんよね。どう見ても魚ですし。」
「輸送中で無防備だと思われる弐号機を狙ったとも考えられるわね。」
「その弐号機は今どうしてんの?」
「第5ケージに冷却保管中。アスカはホテルで休ませているわ。」
「アスカって名前なんですね。」
「そうよ。惣流・アスカ・ラングレー。セカンドチルドレンの名前よ。」
「へぇ。」
「どんな人なんですか?惣流さんて。」
「あら、エイちゃんとは違ってシンちゃんは気になるのね。」
「そりゃあ、仲間としてこれから一緒に戦うワケですし。」
「エイジ君に似て、とても聡明な子よ。14歳でもうドイツの大学出てるしね。」
「え!?大学!?」
「へぇ~そういう天才系の子って実在してるんですね。漫画だけの世界かと思いましたよ。」
「あんたたちの中じゃ一番マトモかもね。」
「どういう意図で言ってるんです?」
「どういう意味です?それ。」
「ま、明日正式に手続きが終わったら紹介するわ。楽しみにしててね。学校終わったら、すぐ本部来るのよ?」
「はい。」
「はい。」
「あい了解。」
俺ら子供は外に出ようとするが、俺だけ赤木博士に引き留められる。
「どうしました?」
「アスカ、クロッシングとジャックに強い抵抗をするかもしれないわ。くれぐれも気を付けてね。」
「ああ、もしかしてそういう…わかりました。俺も無理強いする気は無いんで。ジャック以外はね。」
「よろしく頼むわ。」
「影嶋君?」
「あ、ごめんレイ。終わったから向かうよ。悪ィね。」
エレベータ。
「ねぇ、エイジ君は気にならないの?惣流さんのこと。」
「え?どうだかなァ。人聞きの前情報ってのは信頼に欠けるとだけ言っとくわ。」
次の日の放課後。
だいぶ冷やかしも沈静化した。んでも未だに数名が絡んでくる。例えば―
「おーおー、お前らは相も変わらず仲良しよのォ、エイジに綾波。」
「お前ら、ほんっと飽きないな。もういい加減僻むのもやめたらどうだ?」
「誰が僻んどるんや!!!」
「いい加減にしなよトウジ。」
「なあ、シンジは悔しゅうないんか?」
「え?何が?」
「何がって、綾波とエイジがくっついとることや。シンジも綾波に惚れとったんやろ?」
「そんなんじゃないよ。それにエイジ君らはずっとくっついてた…っぽい…し。」
「「え。」」
「初見の時ならアレは誤解だぞ?」
「ええ。」
「は?何やお前、そない昔から綾波と…」
「ちくしょ~~~~~~!いいなー碇とエイジは。ミサトさんや綾波のような美人と一緒に暮らしてんだからさ~~~~~~!」
「今の聞いたらワシまで悔しゅうなってきたわ!シンジ!何か奢れ!」
「んでそーなるんだよ!?」
「あ!おい、見ろよトウジ!」
ケンスケの視線の先には、俺らと同じくらいの年齢の子がゲーセンでクレーンゲームをやっている。彼女の服装は丈の短いワンピ。つまりそういうことだ。
「うっお~、激マブ!」
「ちょー好み!」
「あ、ほんとアイドルみたい。」
「碇、お前は見んな!」
「あああ、何でだよ!」
「けっ、どーせ作った顔だろ。あんな絵に描いたような美女が実在するかっつーの。行こうぜレイ。」
「ええ。」
歩き去る俺ら。ってあのエロガキ共、覗きなんてしようとしてんのか。
「ごめん待ってて、一発殴ってくる。」
レイは首肯だけすると、電柱近くで待つ。
だらしねぇ顔してるバカの頭頂に一発かませば大人しくなるだろう。
近くまで行くと、どうやら女子は景品を落としたことに悲鳴を上げ、何かの言語と共に筐体を蹴り飛ばす。あーあー、し~らね。それを見てか、覗こうとしてた二人もさすがに絶句してしまったようだ。
「あかん、ごっつ性格悪そーや。」
「ミサトさんよりヤバそう…。」
まあ、現行犯ということでトウジ・ケンスケの頭を殴り、撤収しようとする。
「エロガキ共が、行くぞ。」
「相変わらずお前のゲンコツは加減ちゅうもんを知らんのか?」
「ああ、一度でいいからあんな子に命令されてみてぇ~~!」
ええ…。あ、んな事言うから俺らが捕捉されちったじゃねぇかよ。
「ちょっとォ、あんたたちさっきから何見てんのよ!?」
「「「え」」」
女子が俺らに詰め寄ってくる。
「100円ちょーだい。」
「へ?100円?」
「カツアゲとかしょうもねぇ…。」
「見物料よ!あたしのパンツ見たでしょ!?」
「まっ、まだ見てへんわい!」
よく観察してたな、さっきまでクレーンゲームに夢中だったのに。
「あ~ら、だっさい格好して100円も持ってないの~?使えないわねぇ~。」
「お前、ちょっとカワイイからっチョーシこいてんやないぞ!」
「ちょっと、気安く触らないでよ!」
「バカトウジがマジで!」
鉄拳制裁。トウジを殴り飛ばし、女子を客の迷惑にならないように引き剥がす。
「あだァーッ!!!!!」
「あんたもあんたよ!ほんと、気安く!」
やっぱ口より手が先に出るタイプだよな。パンチを回避し、トウジを回収してゲーセンから離れる。みんな、少し離れていたレイのところに集結する。
「みんな、撤収するぞ。あんなヤバいのに絡まれたら命がいくつあっても足りねぇや。」
全員が同時に首肯すると、一斉に走って逃げる。
「あ、こら待て眼鏡ヤロー!!」
「あっ!!罵倒もいい!!」
「ケンスケ、アレは俺に対する言葉だよ…。」
全員、息が上がりながらも何とかあのおっかねぇ女を撒くことができた。全員、顔が真っ青だ。あいや、レイはいつも通りだったけど。
「こ、ここまで来れば大丈夫だろ…。」
「酷い目に遭った…。」
「ああ、もう一度会ってみたい…!」
「やめとけケンスケ、殺されても知らねぇぞ。」
とりあえず、ケンスケとトウジはここで離脱。俺らは本部へ向かう。全員疲れきってか、一っ言も喋らない。ゲート近くに来ると、何かを足蹴りするような音が聞こえる。まさか、まさかとは思うけどさ…。
「何よこの機械、壊れてんじゃない!?」
ジーザス!!!どうしてこんなことになるんだ!!!!!
「おっ前…!」
「ちょっと、どうなってんのよこの機械、作ったばっかのカードなのに…って、あんたは!!!」
あの後レイから聞いたとこによると、俺と惣流さんの目線が合ってバチバチ火花をあげる幻視が見えたそうだ。どういうことだよ…。
「紹介するわ。惣流・アスカ・ラングレーさん。今日から弐号機で参戦してくれます。」
「よろしく。」
「よろしく。」
「よ、よろしく。」
「凄まじい顔の使い分けだ…。」
「何だってんのよあんた!」
「よろしくお願いいたします、惣流・アスカ・ラングレーさん。」
「かーっ、ムカつく奴ねあんた!」
一行は食堂に向かう。
「何でも好きなもん頼んじゃって。」
俺は軽めでいいからサンドイッチとジュースでいっか。シンジも同じようなもん、アスカはジュースのみ、レイはカレーを選んでた。なら夜は軽めでいっかな。
「ミサトさん、朝ビール昼ビールですか?太りますよ?」
「一本なんて飲んだうちに入らないのヨ。」
「ええ…。」
全員が席に着くと、ミサトさんから話を切り出す。
「第六使徒との戦いぶり、録画で観させてもらったわよ。流石、噂に聞く”セカンドチルドレン”ね。新米のシンちゃんとは実力が違うわ。エイジ君より腕あるんじゃない?」
「そんなァ、それほどでもないですぅ。あたしなんかまだまだで~、」
「そうだな、特に、口より先に手が出るところとかな。」
「何なのよあんた!さっきから横槍ばっかしてきちゃって!」
「俺にグーパン避けられた奴の言うことかァ?」
「むっかつく~!!だいたいパイロットでもないあんたがどうしてここに居んのよ!」
「アークシステム聞いてない?それに乗ってんの。」
「かーっ、エヴァにすら乗ってないのによく自慢できるわねぇ!」
「俺だって『どうせ使わねぇんだから参号機寄越せ』って無限に言ってるよ。それにまるで戦いを遊びみたいな言い方しやがって。」
「そんなこと―!」
「はいはい、ケンカはもうおしまいよ。もう、この後クロッシングとジャックのテストがあるのにいっ!?!?」
突如として現れ、ミサトさんに後ろから抱きつく無精髭を生やした男。
「なっ、誰よ、やめて!」
「加持さん!」
「え!?」
「相変わらず昼間っからビールか…。腹、出っ張るぜ?」
イケメンだ。イケボで顔が整ってて、長髪を後ろで束ねてる。その顔に生えている無精髭がちょうどいい感じに雰囲気を出してるんだよね。格好いい~。
「ななななな、なんであんたがここにいんのよっ!」
「ごあいさつだな、久しぶりに会ったのにさ。アスカの随伴だよ。」
「それははるばる遠くからご苦労様!用が済んだんならさっさと帰りなさいよ!」
「残念でした、当分帰る予定はないよ。」
「あっそ…」
なんかミサトさん、クッソ不機嫌だな。加持さんて昔の男だったり?
加持さんはシンジの方をみつめる。
「碇シンジ君って、君かい?」
「え?はい。どうして、僕の名前を?」
「そら知ってるさ。この世界じゃあ有名だからね。『何の訓練もなしにエヴァを実戦で動かし、これまでに3体もの使徒を倒しているサードチルドレン』てね。」
「へぇ~、すごいわねぇ。でも、4体目は私が倒したけどね。」
「そんな、僕なんてまだ…ただの、偶然ですよ。」
加持さんは、今度はこちらを見る。
「偶然も実力の内さ。君の才能なんだよ。それにその才能を引き出す、影の功労者。戦闘の現場指揮、零・初号機ともシンクロ可能で、パイロットたちのブレーキ役。いざとなれば自分の身を呈してパイロットを守る、アークシステムの搭乗者。影嶋エイジ君も、俺らの中じゃだいぶ有名だ。」
「それはどうも。」
「え!?指揮ぃ!?ミサトがやってるんじゃないの!?」
「エイジ君の指揮、凄いわよ~?私の作戦の穴を見つけて、それを埋めてくれるもの。」
「たしか、第5使徒でやった兵装ビルの飽和攻撃に狙撃ポイント指定なんかも、君の指揮だったな。」
「そうですね。あのときはそれが一番妥当だと思ったので。」
「へェ~…」
レイは自分だけ話に入れないのが不服なのか、少しムッとした顔をして加持さんを見ている。
「おっと、もちろんレイも知ってるよ。何せこの写真が有名だからね。」
そう言って一枚の写真を見せる。あ゛あ~!!ミサトさんが俺らを盗撮しやがった写真!!!!!
「は、はァ~!?!?何で加持さんまで持ってるんですかそれ!」
「にしし、ザマみろエイちゃん。」
惣流さんは加持さんの手から写真を奪い、まじまじと見る。
「何ぃ?予備にファーストの写真…こいつら付き合ってんの!?」
「最近同棲までしちゃってさ~。」
「ミサトさん!?!?!?」
「へぇ。あんた、なかなかやるじゃない。」
「ところでシンジ君、君は葛城と同居してるんだって?」
「ええ、ちょっと前まではエイジ君も一緒でした。」
「こいつ寝相悪いだろ?」
加持さんの笑顔から発せられる爆弾発言。レイはわからなかったようで無反応だったが、俺はもう笑うしかなかった。他の女二人は真っ青だったけどね。
「ええ、毎朝僕かエイジ君が起こしてんですけどそりゃもう…。」
「ぶっははははははははははは!!!!!!!!ザマぁみろミサトさん!!!!」
「なななな何言ってんのよ~~~~~!!!!!子供の前でェ~~~!!!!!」
「え?どうして子供の前だとダメなんですか?」
シンジのナチュラルな質問にミサトさんの顔がさらに険しくなる。面白すぎる。
「もう、あっちへ行きやがれ!」
「じゃ、またな。」
「影嶋君、今の話、何が面白いの?」
「ああレイ、それはね…」
「おいエイジ!あぁあ~、悪夢だわ~…」
ダメだ、面白すぎるけど説明ができねぇ…あはははは!
[ちょっと~、何でこいつに私の弐号機を明け渡さないといけないのよ~。私一人が居れば十分よ~?]
「いや、3人での作戦行動ってのは重要だよ。それだけで被害も減らせるし、時間短縮にもなる。敵のスペック予測ができない以上、敵の能力を割るためにもこれはマジで重要だ。」
[だーかーらー、そんなことしなくたって私がいればいいのよ!それに今のは私の弐号機を使わせたくないってことよ、バ影嶋!]
「ひっでぇ、なんだそりゃ。」
[そう言わないの、アスカ。これも作戦行動に必要なことよ。アーク、弐号機とのクロッシング開始!]
今回は不快感を感じない。かと言って強い拒絶もない。なんか、零号機とのシンクロに近いものを感じる。問題なくクロッシングができてしまった。
[どう?エイジ君。]
「何か、幾らなんでもエヴァ側の抵抗が無さすぎるように感じるんですよね。それがとても違和感に感じます。動作に問題は感じません。」
[アスカはどう?]
[特に何も感じないわ。]
[わかったわ。次はコントロールジャックね。接続実験開始!]
弐号機とシンクロしようとすると、今度は滅茶苦茶強い抵抗を感じる。とにかく俺は受け入れようとするが、どうしても不快感が消えてくれない。どうなってんだ?尚も受け入れようとするが、それ以上に弐号機からの抵抗が大きい。これ以上は無理だ。
「あ゛あっ!ダメだ、弐号機が俺を拒絶する!!」
[実験中止、アスカのシンクロを復活させてちょうだい。]
またクロッシング状態に戻る。
[ふんっ、何が有能な前線指揮官よ。弐号機とはシンクロできないじゃない。]
「いや、たぶん弐号機が受け入れてくれんのは惣流さんだけって話だと思うよこれ。俺めっちゃ抵抗されたもん。」
「はァ?あんた何言ってんの?弐号機が受け入れる?バカねぇ、エヴァに心なんてないわよ?」
「じゃあ何で惣流さんは弐号機とシンクロできてんだ?それが不思議でしょうがないけど。」
[そりゃあ、私がこの弐号機に選ばれたエヴァパイロットだからよ。]
「それだと俺が零号機と初号機にシンクロできる理由がわからない。本当にどうなってんだ?このシンクロってシステムは…。」
[エイジ君大丈夫?落ち着いた?]
「ええ、もう大丈夫です。クロッシングは抵抗されないのにどういうことなんですかね。」
[こちらでも調べてみるわ。今日はお疲れさま。]
学校。
「ぬぁにいいいいいいいい!?!?!?!?」
「あの女がエヴァのパイロットやと~!?」
うるせぇよトウジ。まァ俺も嘘だろって思ったけどさ。レイに向き直って話の続きをする。
「んでさ、今日の夕飯何にする?」
「…ハンバーグがいい。」
「普通の?それとも豆腐?」
「普通の、食べてみたい。」
「あいよ。今日はそれを軸にするわ。」
話をしてると扉が開く音と同時に、トウジがまた悲鳴をあげる。おいおい、今度は何だ…
「え。」
「あら、あなたたち3人とも同じクラスだったの?(サイテー!)」
小声だったが、しっかり聞こえた。ジーザス…。
「あ~ら、バカップルも一緒のクラスなの。やだやだ。」
「勝手なことを…」
とりあえず中指立てて抗議した。
「惣流・アスカ・ラングレーです。よろしくお願いします。」
相変わらず二面性がやべぇな。クラス中がざわめく。そらうわべだけ見たら美人だから人気は出るだろな。内面知ったらここの男子泣くぜ?
本部通路。
「はあ…眠…」
「ねえ、アスカのこと、どう思うの?」
「へ?どしたんだ藪から棒に。」
「いつも絡んでるから。」
「ああ…アレはただのイヤミだよ。ああいうの俺苦手でさ。俺はああいうのと仲良くする方法がわからねぇんだわ。」
「そう。」
「そういえばさ、話全く変わるし今更なんだけどセカンドインパクトって何?南極で何かあったってのはわかるんだけど、そんな都合よく隕石が落ちるもんかな?」
「セカンドインパクトは、南極の使徒が起こしたものよ。」
「使徒?俺らが戦ってる奴らの親玉って感じ?」
「……」
これ以上の詮索はやめよう。目の前では惣流さんとシンジが話をしている。てか通路のど真ん中で突っ立ってんじゃねぇ。
「悪いけど、そこ通してくれる?」
「え…悪ぃな、レイ。」
「ちょっと、待ちなさいよファースト!」
レイは惣流さんの方を向く。
「何か用?」
「あなた、碇指令のお気に入りなんですってねぇ。大した実績もないくせにどうしてかしらぁ。」
「そんなことを聞いてどうするの?行きましょ、影嶋君。」
「おう。」
惣流さんはレイの肩をつかみ、引き留める。
「待ちなさい!ひいきにされてっからって舐めんじゃないわよ!」
「やめろ。」
レイをつかまえている惣流さんの手首を掴み、それを引き剥がす。
「何なのアンタ!?カノジョの前だからカッコいいとこ見せようっての!?」
「表層だけ見てレイをわかった気になってんじゃないよ。」
「なんですって!?」
「お前、レイの何かを知ろうとしたか?」
完全にブーメランだ。俺も惣流さんのことを最初から嫌って理解しようとはしちゃいない。つきあい方を知らないってのが正確な評論だろう。
俺の手を無理矢理振り払い、捨て台詞を吐く。
「ミサトといい、あんたたちといい…やってらんないわ!サイテー!!」
惣流さんは走り去ってしまった。苦い顔をしているのが自分でもよくわかる。
「僕ら、あの子とうまくやっていけるのかな…。」
「互いをわかれば、今よりかはマシになるよ。俺はそう信じる。」
「そんな上手くいくかな…。」
「んなワケないじゃん。俺とレイだってそうだった。」
「え?」
「そうね。」
唐突に警告音が鳴り響く。使徒か。
「行こう。」
「うん。」
「ええ。」
アークに搭乗してまず連絡を取るのは、必ずミサトさんとだ。
ミサトさんの作戦立案能力は本当に優秀だからなァ。
「現在の迎撃システムの復旧率はどんなもんです?」
[今送ったとおりよ。復旧率26%、ほとんど使い物にならないわ。したがって、今回の作戦が上陸直前の目標を水際で迎え撃ち、一気に叩く!]
「初号機と弐号機での近接戦闘…。フォーメーションもクソもないと思いますけどねぇ、今の訓練状況じゃ。」
[そこはあなたの腕にかかってるわ。]
「責任重大、か。ミサイル車とかは大丈夫ですか?」
[ええ、計10両が向かっているわ。お好きなように使ってちょうだい。]
「それなら、使徒迎撃予定ポイントを中心に半径1km範囲に等間隔に車を配備してください。タイミングはこちらが指示します。時間が惜しいから通信終わり!
シンジ、惣流さん、聞こえる?」
[大丈夫!]
[”アスカ”でいいわよ、バ影嶋!]
「相変わらずひっでぇなぁ。まあ、それでもお言葉に甘えさせていただく。
まず両機体共、地上に出たら電源ケーブルを接続。その後はアスカを前衛、シンジを後衛に戦闘開始。アスカは敵との近接戦をしつつ背後をとり、コアを無防備にさせる。その状態でシンジはパレットライフルの射撃若しくはナイフでコアを攻撃、敵を撃破する。近接に関してはアスカの方が上手いから現場判断は任せる。初期クロッシングは弐号機だ。」
[了解。]
[あら、思ったより真面目な作戦ね。それに、私に華を持たせようっての?]
「あー、そうとも見えちゃうか。二人のスタイルと能力を考えて適当に作っただけなんだけどね。」
[…聞かなきゃよかった。]
「そう不機嫌になるなよ。あと10秒で地上だ。ケーブルを両機がつなぎ、武器を装備した瞬間作戦開始。」
[わかったわ。お手並み拝見ね。]
[了解。]
[碇君、聞きなさい?ほんとは私ひとりで十分なのよ。くれぐれも足引っ張るなよボケナス。]
[何なんだほんと…]
「弐号機とクロッシングしてるの忘れたか?秘密回線を使うくらいならさっさと武器持ってくれ。」
[はいはい、わかってますよ~。]
軽口は言っているものの、緊張が伝わってくる。俺も画面と地形図を確認しながら行動予想をする。とにかく、安全且つ確実にだ。
初号機、弐号機共に武装を構え、配置につく。
「作戦開始。初号機、海面にライフルを撃ってあぶり出せ。ポイントは送る。」
[了解。]
初号機が指定ポイントに射撃する。すると、海面から突然水柱が上がり、敵が浮上してきた。
「弐号機。」
[わかってる!]
「背後をとってくれればどんな動きしてくれても構わない。初号機にクロッシング変更。」
弐号機が大きく跳躍した瞬間、初号機の視点に切り替わる。コアが…二つ!?
「初号機前進!ライフルとナイフ同時装備!アスカ、コアの位置を転送するから裏から貫け!シンジは下側のコアをナイフで刺せ!」
[[了解!]]
弐号機には上側のコアの位置だけを送る。初号機はライフルを捨て、両手で下側のコアを貫く。どうだ…?
いや、敵はまだ動いている。死んじゃいない!
「まさか!」
[効いてないのォ!?]
[そんな!!]
「全機退避!ミサイル部隊攻撃開始!」
弐号機、初号機はその場から退避する。その数秒後、大量のミサイルが使徒に着弾する。これは足止めだ。
「弐号機、武装の状態を報告!初号機、パレットライフル受領!」
[これはまだ使えるわ!]
[わかった!]
「弐号機了解!初号機は後衛を続行!」
さて、敵はどう出てくる…?煙が晴れると、そこには敵が「2体」いた。あんのインチキやろ~!!コア二つってそういうことかよ!…いや待て、俺はさっき二個ともコアを壊したよな?じゃあ何で敵は生きてるんだ!?
[何あのインチキ~!]
[ど、どうなってんだ!?]
「落ち着け!常に2on1を意識しろ!弐号機、攻撃する個体の指定は任せる、初号機は必ず隙をつかれないように動け!アスカの動きに合わせて行動を決める!」
[わかってるわよ!やってみなさい!]
[わかった!]
「ミサイル発射準備!爆撃範囲を指定するからそこに照準、以降命令あるまで待機!
初号機!弐号機の位置に合わせて初号機を動かす、しっかりついてこい!」
[やってみる!]
弐号機は敵の片方をコアごと切り裂くが、瞬く間に再生される。今度は斬撃に合わせてライフル射撃を加えるが、これも尚再生され、全く歯が立たない。各個撃破は許してくれないようだ。
…完璧に同時にコアを破壊しなければならないのなら、この戦闘方法は無意味だ。なら、やることは一つしかない。
「弐号機、初号機、撤退だ!ミサイル発射!!」
[はァ!?私はそんなん認めないわよ!]
[アスカ、爆撃に巻き込まれる!]
初号機、弐号機が後退すると、さっきより広範囲にミサイルが着弾し、使徒の動きを止める。
「ミサトさん、NN爆雷投下を要請してください!」
[本気なの!?]
「このままじゃあ足止めすらできません!」
[…わかったわ。作戦中止!撤退よ。]
[ミサトまで!!]
「アスカ!このままじゃあ使徒は倒せない!今は我慢してくれ!」
[く…くそぉーっ!!]
シャワーを浴び、着替え終えた後、持ち込んだラップトップでさっきの戦闘記録を確認する。
やはり、「コアを2個とも破壊した後に」敵は動き始め、分離した。
そして、その後コア一つの敵に攻撃しても、すぐ再生されてしまい、各個撃破をさせてくれなかった。やはり、2つのコアを同時に破壊するしかないのだろうか。だが、コンマ1秒もズレずに攻撃をする方法を思い付かない。どうすればいいんだろうか…。
「指令から呼ばれたの、聞こえなかったの?」
「ふうっ!?なんだ、ミサトさんか。どーせ老人の小言ですよ?行く価値がありませんね。そんなことより、今回の敗北原因と対策を考える方がよっぽど有意義な時間ですよ。」
.
「それでも規則だから、来てちょうだい。」
「どうも、お二方。」
「エイジ君、あのねぇ…」
「まあ座りたまえ。」
「いえ、どうせしょうもない内容なんで結構です。」
俺らは撤退後の映像を見せられる。新型NN爆雷攻撃により、表面を少しだけ焼いたものの撃破には当然至らない。敵の足止めは成功したが、その間に対策を見つけなければならない。
「終わりました?とりあえず、目論み通り足止めはできましたね。それでは今度はこちらの報告です。指令もご覧になっていってください。俺が『きちんと仕事をしている』ということがよく分かると思うので。」
ラップトップを投影機に接続し、先ほどのエヴァによる戦闘映像を流す。
「これは先程の使徒の初期形態の全体像です。体の中央にコアが2個埋まっていることが確認できます。そして、俺は今までの撃破方法と同様に、コアを両方破壊することをパイロット両名に命令しました。」
動画を進める。
「ここで問題が発生します。ただコアを両方破壊するだけでは使徒に対して効果を得れませんでした。そして、これが分離形態。この形態では、各個撃破ができないことが記録によりわかると思います。現状のままでは殲滅できないと判断し、撤退しました。」
「では打つ手は無いと、そう言いに来たのか?」
「はァ~、よく指令になれましたね。ここからが本題ですよ。
これらの情報から推測される殲滅方法は、「2つのコアを同時に破壊すること」だと思われます。しかし、現状どこまでの誤差を許されるかどうかが不明です。そのため、パイロットには完璧に同時攻撃をしてもらわなければなりません。ですが、そこの訓練方法はまだ決めかねております。以上、報告終了。」
「ほお、一回の戦闘でこれほど…」
「前線指揮官。」
「はい。」
「次はない。」
「でしょうね。」
それだけ言うと指令は出ていった。
完璧な連携。極めて難しい問題だ。しかも、どうやらギスギスしているアスカとシンジ。この二人の動きを完璧にリンクさせるのは困難と言わざるを得ない。何か、いいアイデアは無いだろうか?…まずはコミュニケーションから始めよう。
アスカのムーブがキツい…(小声)
補完計画発動も、使徒騒ぎの後のごたごたもない本当の大団円endを読みたいですか?
-
はい
-
いいえ