ミラージュボヤージュ   作:エリオット・ウィット

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いつか話せる時が来る、こんなことがあったんだぜってな。


ミラージュが強くなった理由

 

 

 

 

 

 

『おいクリプト、後ろを見ろっ!!』

 

 ミラージュの声に気づいたクリプトが素早く後ろを見る。

 

「……なんてな、やる気を出させてやっただけだよ、この被害妄想の変人め」

 

 本当に、クリプトの背後には何もなかった。

 

「狼少年の話を聞いたことがないかウィット? 嘘も続くと真実が嘘になる、デコイも一緒だ、出しすぎるとお前もデコイみたいに、お話にならなくなるぞ?」

 

 クリプトにとってミラージュの嘘は話にならないということが言いたいようだ。

 

 

「そうだ、その話をしたかったんだ、助けてくれ」

 

 APEXロビーの隅っこでドローンの手入れをしていたクリプトにちょっかいをかけたミラージュ。

 

 

 壁側に立っているクリプトを信じ込ませて振り返らせた演技はヒゲモジャの俳優に似ていた。

 

 

「助けだと?」

 

「そうなんだ、デコイがバレちまう、最近は素通りさ、足音なんて鳴っても遠距離は目視だからな」

 

 ホログラム装置の限界かな。ミラージュもそれは理解していた。

 

「そんな装置は捨てた方が早い、俺のドローンなら貸してやってもいい」

 

「そ、それはできねえ! これはゲームをする時に母親から貰ったんだ、エゴってのは分かってるぞ? だがこれのおかげで寂しくないからな」

 

「貰い物か、よくそんなものに命を預けれる」

 

「こいつを悪く言うんじゃない、悪いのは使い方が悪い俺だぜ? 賢いクリプトさんよ、新しい使い方を考えてくれ、俺はまだ死ねないし死にたくない」

 

「口数が多いな、お前は。黙ってくれたら考えてやろう」

 

 ミラージュは本気で口を閉じた。

 

「…………」

 

 

 クリプトの考えが纏まる。

 

「随分と、大切に使ってきたみたいだな」

 

「壊したことがないのは自慢だ、使わないで勝ってきたとかじゃないからな?」

 

「じゃあなしでしばらく戦ってくれ」

 

「えっ……?」

 

「いいから貸せ、本業でもやってこい」

 

 ミラージュのホログラム装置をあっさり奪い去ると少し眺めてからロビーを後にしていた。

 

「俺はお払い箱ってことかよ……?」

 

 

 ホログラム装置を取り上げられたミラージュはバーテンダーを本気で頑張った。

 

 ホログラムの手解きを母親から受けては居たが、実際にマークツーを生み出せるほどではなかった。

 

 しばらく、ミラージュがロビーに顔を出すことはなかった。

 

 

『コーヒーを頼む』

 

「ここは酒を飲む場所なんだが……く、クリプトか!?」

 

「どうせ会えないと思ってな、ついでに味を確かめてやろうと」

 

「戦えないのはお前のせいだぜ」

 

「それはこれからも言えるのか?」

 

 クリプトはカウンターにホログラム装置を置く。

 

「没収しといてそれか? 賢いのは頭だけで相手の気持ちは」

 

「付けて使ってから文句を言うんだな、ウィット」

 

 

 コーヒーの香りを楽しむクリプトを見ながら装置を付ける。

 

 ミラージュが人差し指を前に向けながらデコイを撃ち出す。

 

「何も変わらないぞ? 文句を言いたいな、これは」

 

 

『パフォーマンスを改善して、デコイは一分間存在できるようにした、足音は出せなくなったが、足音の演算は重かったからな。お前の言う通り遠距離では音も要らないだろう』

 

「うお、まだ居るぜ兄弟が!」

 

 

『クロークと称した透明化も広範囲を包めるようにしてやった、これは長い時間使えない、ダウンした友だちとやらをこっそり起こす時に使うんだな』

 

「本当だ、酒瓶が消せる!」

 

 

 ミラージュはホログラム装置の完成度に驚いていた。

 

「デコイが動く! マジで俺みたいだな!」

 

『ドローンの技術を積んで、お前の動きを認識させてみただけだ』

 

「ジャンケンもできるな、アイコだが。クリプトすごいぜ、しばらくは俺の奢りで沢山飲め、鍵も置いていってやる、帰る時は戸締まりしておいてくれよな」

 

 早口でクリプトに店仕舞いを託すとカウンターを軽やかに乗り越える。

 

 

「おい、まだ話は――」

 

「今はAPEXがしたくて仕方ねえ! あとで聞いてやる!」

 

「……これを飲んでみるか」

 

 ミラージュはAPEXロビーに入ると簡単な自慢話をレイスにしてからゲームに挑んだ。

 

 戦いの中で発生する危険と優位。

 

 倒れた仲間を起こすのは彼にとって簡単なこと。

 

 そしてさらなる危険。

 

「うお、敵がやばいな、引いた方が良さそうだ、お前もそう思うよな」

 

 四方八方から撃たれては仕方ない。

 

 

 

 誰もが諦める局面でホログラム装置が青く光る。

 

 

 

『デコイエスケープを使う!』

 

 ミラージュがクローク効果で消える。

 

 

「な、なんだこれ! やべえ!」

 

 クロークはすぐに終わるとデコイを周りに解き放った。

 

「まるでダンスパーティみたいだぜ、ここは元々そうだが。俺が参加者になっているなんてことはないだろうな、全く……」

 

 クローク効果を強化してしまったことで、緊急時に使うエスケープ機能は低負担なデコイパーティライフにカスタムされていた!

 

 

 ただでさえ負担が強くなったクローク機能を連続で使えば壊れかねない。

 

 

 それを危惧したクリプトはエスケープとしてのクロークを最小の一秒に留めることにした。

 

 

 

 

『一瞬の目くらましだけでお前は勝てるだろう、ウィット』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ランパートショッピングネットワーク!かっこいいな!俺がゲストとして招待されるかもしれない、されないって? 夢は本物が良いだろ?

  • 白羽の矢で止まりやがったのか、アミーゴ!
  • 私は大砲よ。シーラよりも優れているわ。
  • これだけは言える……誰かが死ぬ――
  • お! 飲み放題にしてくれるのかー?
  • どうしよう、私も出たい。
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