ミラージュボヤージュ   作:エリオット・ウィット

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アンコール

 

 

 

 

 

 

 

『俺は強い、敵の数が減るほど強い。なぜかって? 順位を見てみろ、簡単なことさえほっえほっ』

 

 ミラージュはスモークの中でもノックスガスでもなく、己の中に潜む不調感に咳き込んでいた。

 

 レイスは特に声を掛ける訳でもない。

 

「さ、さ、最悪だぜ……このミラージュ様が風邪なんてよ」

 

『口は災いの元って言うけれど、災い本人が災いにかかることもあるのね』

 

「いつもに増して辛辣だな、レイス」

 

「あなたの陰口はお見通しよ」

 

「まさか、ワットソンが告げ口したっていうのか!」

 

 違うわと首を振るレイス。

 

 

 

 ミラージュがおばさんだと馬鹿にしていた時、レイスは戦場で敵を踏み台にして範囲に走っていた。

 

『敵に狙われているわ』

 

 虚空の声。

 

『あなた、ミラージュにおばさん呼ばわりされてるわ』

 

 別次元のレイスが教えてくれたのであった。

 

 

 

「どう考えてもワットソンだろ、ひでえぜ」

 

『な、何も言ってないわ! おじさん!』

 

 反論するワットソンは本当に言っていない。

 

「俺は29……いや、30なんだが」

 

 レイスに睨まれたミラージュは本当のことを言うことにした。

 

「若者嫌いなんておじさんで充分!」

 

「それは効く、頼むからやめてくれ」

 

「じゃあレイスはおばさんではないってことね?」

 

「それは別じゃないか?」

 

「おじ、さん」

 

「あ、ああ! レイスはもうおばさんじゃねえ、アウトランズの墓地でデスボックスを予約する必要は未来永劫なくなったぜ! 永遠は嘘だが……」

 

「ありがとう、ミラおじ」

 

 ワットソンは皮肉混じりのお礼を言うと家をフェンスで固め始めた。

 

 ここは皮肉にも沼沢の一軒家。

 

 

「銃声が聞こえるわね、ポータルを引いてみる」

 

「スカルピアサーの音がするな、俺のウイングマンにつけてやりたいと思ってたんだ、頼む」

 

「検討しておくわ」

 

「なんだそりゃあ? 倒す奴に変わりないってのに」

 

 ポータルを敷きに二階のドアから飛び降りたレイス。

 

「ワットソンは何をしてるんだ?」

 

「笑顔の練習よ、ロボットの彼がした方が良いって」

 

「笑顔は俺も得意なんだぜ、スマホで撮って勝負するか? なんてな」

 

「良いわ、勝負しましょ?」

 

 並んでミラージュのスマホでパシャリ。

 

 その写真はワットソンの間に立つ二人のミラージュが笑顔を決めていた。

 

「俺が二人いる、俺の笑顔も二倍ってわけだ、言うまでもなく……圧勝だな」

 

「ズルいわ!」

 

「じょ、冗談さ、アイコでいいだろ? チョキとチョキでダブルピースキーパー!」

 

 Vの字にした両手を見せつけるミラージュ。

 

 

「ちょっと面白いわね」

 

「笑わなかったらピースキーパーで二度と笑えなくしてやろうと思ってた……いや、冗談だ」

 

 それから程なくしてレイスが戻ってきた。

 

「ポータル、繋いだわ」

 

「ま、待って」

 

「早く戦わないとキルポイントが」

 

 ミラージュもワットソンの真似をして引き止める。

 

「まあ待て、ここにアルティメット促進剤がある」

 

 未使用のアルティメットデバイスを受け取ったレイスは起動させて次回のポータルを準備する。

 

「分かったわ、使っておきましょう」

 

 レイスがポータルに入ろうとしないワットソンに気づいた。

 

「なんで入らないの?」

 

「……ポータルが怖くて」

 

「怖い? さっきのダウン中はすぐに入ってきたのに?」

 

 コクコクと頷くワットソン。

 

 

「虚空の寒さは一瞬よ」

 

 デバイスはカチンと音を立てて役目を果たす。

 

 

「では行きましょう、戦場の方が怖いことに気づけるといいわね」

 

 それは酷いんじゃないか?とミラージュ。

 

「そうかしら、戦いに行けないのは足でまといと何も変わらない」

 

「逃げ性能がないならここに居ても良いと俺は思うんだが」

 

 

 ワットソンは思いを声に出す。

 

 

 その為に大きな一歩と右手をレイスへ出す。

 

 

『て、手を繋いでポータルに入りましょ?』

 

 

 精一杯の笑顔。

 

 

「ダメよ、集中砲火の危険がある」

 

「レイス、手を繋いでやれ」

 

「同時に行く必要はあるかしら?」

 

 

『…………』

 

 ワットソンは静かにポータルに入ってしまった。

 

「虚空の声って地獄耳に似てるな、嫌味と敵意しか聞こえないんなら俺の嫌味で耳栓しちまっても問題ないよな?」

 

「何を言ってるの?」

 

「役に立たないパッシブなんて捨てちまえってことさ、おっと! これに他意はないからな、本当だぞ?」

 

「意味が分からないわ、あなたもこの声で射線を切ってるのに」

 

 

『その心の虚空、ワットソンからのプレゼントだぜ』

 

 バーン。そんな銃声の空真似が家に響いた。

 

「もう一回私の真似をしてみなさい、その時は容赦しないわ」

 

 

『アイオブザ……きゃあっ! ダウンしちゃった!』

 

 唐突なワットソンの無線。

 

 

 レイスは耳の装置に人差し指と中指を当てる。

 

「ノックダウンシールドはミラージュと交換させた紫だったかしら?」

 

「うん、物陰にはなんとか行けたけど……ごめんなさい」

 

 

 深刻そうなレイスの顔に気づいたミラージュの目が鋭くなる。

 

「ミラージュ、話は後よ」

 

「なんの事だ? できるだけ大きな声で教えてやってくれ」

 

 

 

『クロークで助けに行って! アンコール(早く)!!』

 

 

 

 レイスはミラージュを掴むとポータルへ強引にバックステップを踏んだ。

 

 

 

 

 

 




同志が増えてきて嬉しいことこの上ない、今なら言えちまう。

ボンヤージュ!
ごきげんよう。

ランパートショッピングネットワーク!かっこいいな!俺がゲストとして招待されるかもしれない、されないって? 夢は本物が良いだろ?

  • 白羽の矢で止まりやがったのか、アミーゴ!
  • 私は大砲よ。シーラよりも優れているわ。
  • これだけは言える……誰かが死ぬ――
  • お! 飲み放題にしてくれるのかー?
  • どうしよう、私も出たい。
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