ミラージュボヤージュ 作:エリオット・ウィット
『ありがと、ベイビー』
『べ、べい? なんだって? この髭が目に入らないのか?』
『私にはみんな赤ちゃんなの、分かってくれる?』
『やめてくれ気色悪い……俺は大人な女なら大歓迎だが』
『ほら、忘れ物でちゅよー?』
ミラージュのウイングマンを手馴れた動きで盗んだローバ・アンドラーデ。
「か、返してくれ」
「もちろん」
帰ってきたウイングマンに細工がされていないか、銃身を縦に開いて眺める。
「扱いにくさはお前もレヴナントと同等だぜ、さっさと終わらせよう」
「あいつと一緒だって!?」
「こわいこわい、俺は何も言っていないさ」
ミラージュはカチンと親指を下に滑らせる。
ウイングマンの開いていた銃身が元に戻った。
「二度と、アレの名前は、出さないで!」
「あ、ああ……」
さっきとは打って変わり、ブラックマーケットのように視覚化できてしまいそうなほどの威圧的態度がミラージュを襲う。
ここはスラムレイクの調査ビーコンがある高い場所。
マジでめんどくせえ。
ローバのアイテム発見センスが人間のサプライボックスに傾いたら、きっとミラージュのそんな声が金色に表示されていたに違いない。
「し、しかし、良い尻をしているな……ははっ」
「はっ?」
「おいおい反応してくれ、へいSiri? 今日の天気は何度だ? 降水量は曇りか?」
ご機嫌取りのつもりが変なことを聞いてしまったと確信したミラージュの会話デコイ術。
『あなたってレディに対する扱いが下手なのね、期待してたのに』
「期待? 俺の何を知ってるんだ」
「ウイングマンは丁寧に扱えるのに、って」
ピクリとミラージュの眉が動く。
「丁寧に扱ってないぞ、スカルピアサーでヘッドショットをキメてたら火薬焼けする前にお役御免になってるんだ。かわい子レディにはしっかりハートを射抜いて、年の数だけレモンを振るんだが、お前には……コレだ」
ミラージュはニヤリと笑って小指をレモンのように振った。
「その程度で怒る女じゃないの」
ローバもお返しと言わんばかりに小指を立て返す。
「な、お前っ!」
「ふふふっ」
男に向けられる小指はミラージュにとって侮辱に映っていた。
「許さねえ、これはマジだからな」
「いいわよ別に? どんな嫌がらせがあるの?」
ミラージュは歩きながらローバを横切る。
「愚直ね」
ローバは隙を晒さないようにミラージュに体をずっと向ける。
「……」
「そんな雰囲気作り? 窓を見て、敵が居て、それから混乱の振り?」
バンと外から重厚な音が鳴る。
予想通り、鉄格子の窓から赤いロングボウの弾がミラージュを貫くと割れた風船のように青い光が漏れて消えていく。
「っ……!」
ローバはありえない現象に混乱した。
『騙されたな!』
ミラージュはローバの背後で透明化を解くと背中の99を奪い取った。
「返しなさいよ!」
「返すぜ、随分とリアクションの振りが上手いなあ? はっはっは、最高だった、アンドロイドのインカメラとデコイで再現してやりたい」
「黙って」
「クリプトのおかげで簡単に再現できる、ローバのあの顔はこれくらいか? 違うな、もっとほうれい線が深くて……」
「しっ、本当に黙って?」
カタカタと聞こえる足音。
ロングボウの持ち主がやってきたんだろう。
「背中はあなたの綺麗なウイングマンに任せても良いのよね?」
「その話だが、このウイングマンは拾ったばかりなだけだったんだ」
「なんですって!?」
ドンッ。
スカルピアサー弾がローバの後ろに入ってきた敵の頭を的確に撃ち抜く。
『騙されたな』
『あなたにブラックマーケットは使わせてあげないんだから!』
ランパートショッピングネットワーク!かっこいいな!俺がゲストとして招待されるかもしれない、されないって? 夢は本物が良いだろ?
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白羽の矢で止まりやがったのか、アミーゴ!
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私は大砲よ。シーラよりも優れているわ。
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これだけは言える……誰かが死ぬ――
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お! 飲み放題にしてくれるのかー?
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どうしよう、私も出たい。