ミラージュボヤージュ 作:エリオット・ウィット
今日も今日とてミラージュはバーでグラスを磨き、ドリンクを作り。
それをデコイへ提供している。
その光景をレイスはミルクティー片手に眺めていた。
『何をしているの?』
『ごっこ遊びさ、いいだろ』
ここはAPEXロビー。
ソファーとテーブルとソファーの一角、パラダイスラウンジにはロイヤルなミルクティーはあるが、タピオカは邪道だと置いていない。
「そろそろ本番なんだけど……」
「それまでには終わらせる、多分な」
ソファーに座るレイスの後ろでワットソンが肩に手を伸ばす。
『電気の力でモミモミしてあげる』
「助かるわ」
バチバチと低刺激なマッサージが始まる。
ゴロゴロのタピオカを残した空のカップがズルズル音を立てる。
「レイスはタピオカを飲むのが下手だな、パラダイスラウンジのミルクティーならここにあるが」
「……アンコール」
「いいぜ」
ミラージュはボトルに入った甘い口溶けミルクティーをタピオカの山に注いだ。
『ねえ、アンコールって何?』
ワットソンの率直な疑問。
ダウンしていた時にミラージュの無線から微かに聞こえていた言葉。
「あなたには関係ないことよ」
「あれはそうだな……」
「言うのね」
「自慢のエピソードだからな」
当然だろ? あの時は静かなワールズエッジだったことを覚えてる。
ミラージュボヤージュの近く……いや、嘘だ。
間欠泉の話だ。
俺とレイスとバンガロールで、バンガロールがダウンした。
その時はレイスと組んだことなんてなかったからな。
『お前は何ができる?』
『あなたこそ何ができるの? 私の邪魔はしないで』
『俺はデコイを出せる』
『私はポータルを出せる』
蘇生は簡単だった。
レイスが運んで俺が起こす! な、簡単だろ?
その先は簡単じゃなかったんだが。
まず別の戦場でレイスがダウンした。
『スモークはもう出せない!』
バンガロールがスモークを使い切っていたが、直前に炊いてくれていたポジションの中にレイスが収まった。
ここで一旦ワットソンの意見を聞きたい、どう思う?
「えっ? 危ない状況だわ、今すぐにでも助けに行きたい」
その通りだ、俺もその意見だった。嘘じゃないぞ?
『待ってろ、助けに行くからな』
『来なくていいわ、順位を上げることが重要よ』
『それはできない、仲間だからな』
バンガロールのカバーと同時にスモークに飛び込んでレイスを寝かせた、薬品装置の力を借りていざ蘇生って時だ。
スモークが晴れる。そんな予感がした。
『こんな状況で蘇生なんて、無理だわ!』
『大丈夫だ、安心しろ。俺のパッシブを見せたことはまだないか? それぐらい危機の回避をお前は毎回してくれたんだ、起こすのは当然だろ?』
『虚空で引けてもあなたが……』
『俺にとってこのゲームは鉛玉の演奏会なのさ、誰もが繰り返しを望んでる、俺だってお前の再演を望んでる、強引にでもしてやるのが俺のパッシブだぜ?』
ミラージュの右手がレイスの胸を強く叩く。
『アンコール! 立ち上がれ!』
スモークが晴れると同時にホログラム装置が起動。
ミラージュの触れる物全てを包み隠し、レイスを起き上がらせた。
「ってな、いい話だろ」
「そんなことがあったのね! それで二人とも仲良くなったの?」
ワットソンは真摯にレイスの活躍を聞いていた。
「いえ、この後にもいくつかトラブルがあったわ」
「例えば?」
「透明化って蘇生する時しか効果ないんだけど……」
ミラージュが『そうだ!』と大きな声を出して話を逸らす。
『こ、こ、この辺に美味しい食べ物屋さんがあるんだ、はっはっ、行ってみないか?』
「あの後、戦場に晒されたミラージュはダウンしてたわ」
「言うんじゃねえ、あのままなら俺の英雄譚だったのに」
「漁夫も沢山いて、シンプルに負けたかしら」
ワットソンは『わあ……』とミラージュに残念そうな眼差しを向ける。
「お、俺が悪いって言いたいのか」
「そうよ! レイスは悪くないもの!」
レイスも確かにと頷く。
「理不尽だな、全く……」
『まあ、嬉しかったのは事実ね』
ポツリと漏れた言葉はミラージュに届かない。
「何か言ったか?」
「別に」
「アンコール!」
「別に。これでいいかしら?」
レイスは分かりきった様子で皮肉的な態度を取った。
ランパートショッピングネットワーク!かっこいいな!俺がゲストとして招待されるかもしれない、されないって? 夢は本物が良いだろ?
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白羽の矢で止まりやがったのか、アミーゴ!
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私は大砲よ。シーラよりも優れているわ。
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これだけは言える……誰かが死ぬ――
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お! 飲み放題にしてくれるのかー?
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どうしよう、私も出たい。