ミラージュボヤージュ 作:エリオット・ウィット
『笑顔のロボットじゃないか』
『また会ったね』
パスファインダーとハイタッチを交わすミラージュ。
「またと言っても、最近は本当に久しぶり、偶然の出会いに近ぇ」
パスファインダーのフレームはいつもより陽に焼けていない様子。
「少し、考え事をしていたんだ」
「考え事? そんなふうには見えねえ……いや、それは失礼か」
「僕にはマスターが居るはずなんだけど、その前に僕がこわれちゃったらどうなるんだろうって」
「お前は壊れないさ、そのグラップルがあればな」
ディスプレイが心配そうな暗い青色を映し出す。
パラダイスラウンジの飲み物を一滴も飲めないパスファインダーが訪ねてきた理由。
「問題があるのか?」
「少し前に、グラップリングフックの射出速度が下がったんだ、故障と言うよりは部品の摩耗だけど……」
「それが分からないくらいにはお前は強かったってことだ、心配する必要はないぞ」
それだけじゃないよと丸い顔が俯く。
「最近は連続で使えないからもっと困ってるんだ」
「そういや、謎のクールダウンを挟んでるのは何か理由が? それとも演出だったり!」
「グラップルはね、射出する時と戻る時に摩擦熱が発生するんだ」
ミラージュはなんとなくいつものパスファインダーを浮かべる。
ワイヤーがパッと出てきて戻る瞬間の速さ。
「お湯が湧かせてもおかしくねえ」
「それを冷まさないとワイヤーが切れたり、故障の原因になって大変! 友達に迷惑はかけたくないからね、だからなるべく外気に晒す設計にしてるでしょ?」
青い肩から剥き出しのグラップルワイヤーに目がいく。
「こりゃ賢い、熱々の夫婦もすぐに冷めちまう」
「15秒もあれば冷えてたのに、今は35秒かかっちゃうんだ」
「それこそ摩耗じゃないか? ワイヤーが熱を貯め込むようになったとかな」
「ワイヤーは使ってない部分にしてみたけど、何も変わらなくて……冷却装置がダメなのかなあ」
不安そうなパスファインダーを見てミラージュも頭を捻るが髪しかうねらない。
「その装置とかって代わりは利くのか?」
「僕はロボットだからね、ミラージュよりは換えが効くんじゃないかな? でもどこにあるのかは分からないから、変えれないんだ」
珍しく楽観主義がしょんぼりしている。
「そ、そんなに落ち込むんじゃない、俺は何もできないが酒くらいなら出せる」
「僕は飲めないよ?」
「マジで何もできないのはつらいな」
いつもがいつもでなくなっている。
ミラージュは調子が出なくなるような気がして、焦っていた。
「な、な、なんとかしてやりたいな、協力はする」
「本当に? ありがとう!」
『当たり前だろ、俺とお前は友達だからな、手伝うのは当然さ』
グラスの代わりに出されたミラージュの拳。
パスファインダーが機械の手を丸めて押し返す。
その時、ディスプレイがピンク色に変わった。
ランパートショッピングネットワーク!かっこいいな!俺がゲストとして招待されるかもしれない、されないって? 夢は本物が良いだろ?
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白羽の矢で止まりやがったのか、アミーゴ!
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私は大砲よ。シーラよりも優れているわ。
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これだけは言える……誰かが死ぬ――
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お! 飲み放題にしてくれるのかー?
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どうしよう、私も出たい。