ミラージュボヤージュ 作:エリオット・ウィット
『どうしてお前らはソリが合って、その、俺とは合わないんだ? どう考えても俺の方がフレンドリーで接しやすい、そうだろ?』
『ボンブロ! 見事なトラップ機構!』
『そのフェンスも悪くはない、合理主義の結晶のようだ』
そうではないらしい。
本来は誰よりも悪夢を生み出しているアレクサンダー・ノックスに、ナタリー・パケットはワットソンとして……ではなく、同志として話しかけていた。
「このトラップは円盤状なのに、置くとどうして膨らむの?」
「風船と同様、空気で膨らむのは分かるだろう」
「だけど、私達が吸ってる酸素をどうやって毒に?」
「毒にはしていない、元々これには有毒物質を封入していて、それを下から汲み上げた酸素で放出している」
「そうなのね」
手のひらを口元に寄せて驚いた素振りをする。
ここは当然ながら戦場。
リパルサーの最も出口に近いワンルーム。
「あー、科学話は嫌いじゃないが……」
「あらミラージュ、お出かけしてたんじゃ?」
「最初から居るぞ、俺だって死にたいわけじゃないんだ」
リングのプロに嫌がらせのプロ、そして黙って騙すプロ。
「負ける理由が一つもないからなあ、慎重に動くのは当然」
あるとすればリングが機嫌を拗ね、嫌がらせのプロが立ち塞がり、プロが無駄なことを喋りだした時。
『あら、リングが遠い』
『あそこに良い被験者が見える、当然ながら私の資産は物質を腐らせることができる、レヴナントとやらに人口の悪夢が誰か教えてやらなくてはならない』
『人口の悪夢には俺も入ってるんだら、だろうな? フェンスに失敗作に成功作! 毒に力を借りるまでもない、比べることは毒だ、比べるまでもなく目前の戦いにドックドク! なんてな』
例えばこんな状況。
「私が失敗作の定義を説くなら、それは規定の致死量をオーバーしたことだろう」
「ちっ、そんな悪魔と一緒ってことが憎いぜ」
ワットソンはトリプルテイクを両手に二人の間を横切り、フェンスに手を伸ばす。
「私も、オーバーで人を殺したことがあるわ」
「マジかよ……電気でバチバチ、ボンって?」
特に否定をするでもなく、話が続く。
『私はそれを、失敗だなんて一つも思ってない。なにもが成功で結果論しか残ってない世界で失敗は恥ずかしいもの』
フェンスにワットソンの手が伸びる。シュンッと音を立てて消えた。
「……変わってるってよく言われないか?」
「変わってる」
「そうだろ? 思想が、狂ってる、俺にはそう見える。失敗がないなんて――」
「フェンスの電圧が変わってるわ、多分なにかの影響を受けてる」
変化。
ミラージュがなんだってと聞き返す。
「例えば? 俺の悪口が指先を腐らせた?」
「ローバの、ブラックマーケットとか」
よく見ると落ちていたヘビーアモがふわふわ浮いている。
静電気ではない。
「これは近い、かなり近いぜ……」
「問題はない」
コースティックの言うように、このガストラップとフェンスは陥落の要素になり得ない。
それはここが陥落しないことを意味する。
「そうか?」
「もちろんだとも」
ガストラップに腰を下ろしていたワットソンが尻もちをつく。
「いたた」
ミラージュは内心どんくさいなと思いつつ、手を貸した。
「
「それは俺の台詞だ、どういたしまして」
「私と手を繋ぎたかったんじゃ?」
「ノーだ、それはない」
コースティックがガストラップを投げる。
そこはワットソンが座っていた場所。
「おいおい、毒で目がやられたのか? ガスはもう必要ねえ」
「必要になった」
ふと周りを見る。
ガストラップが、フェンスの右側が。
青い光に変わって特定の方向に伸びる。
アイオブザストームも目の前で消えていった。
「我々は襲撃に備える時が来たらしい、実験を始めよう」
それぞれが迎撃の構えと三個のガストラップとヘンテコに繋げ直したフェンスに全てをかける。
足音。ドアが蹴破られる。
『ショップを開店、戦況を回転、ここは閉店。良いリズムね、ベイビー』
もしローバが強化されるとしたら?
俺だったらガストラップとアイオブザストームとフェンスをブラックマーケットで持ち出せるようにするぜ。
コースティックのメタがコースティックなんて、信じたくないからな。
ランパートショッピングネットワーク!かっこいいな!俺がゲストとして招待されるかもしれない、されないって? 夢は本物が良いだろ?
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白羽の矢で止まりやがったのか、アミーゴ!
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私は大砲よ。シーラよりも優れているわ。
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これだけは言える……誰かが死ぬ――
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お! 飲み放題にしてくれるのかー?
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どうしよう、私も出たい。