ミラージュボヤージュ 作:エリオット・ウィット
『俺は強い! 仲間がいればもっと強い、当たり前か』
「それ本当?」
ミラージュの一人自慢にワットソンが割り込んできた。
「ああ、本当だが?」
「私も強くなりたいわ! 教えて!」
「どうして? 既にフェンスは需要があるし、そしてなにより、リングに詳しい、もう強いぜ」
「それは技術の……言ってしまえばカンスト、いくら頑張っても静電気に驚くだけ、心の中から私は強くなりたい」
「実際俺は強い、強くなる前から強かった、これは嘘はつけねえな」
ちょっとだけ強がるミラージュに目を背ける。
APEXロビーで実力を証明することはできない。
口先だけで強さは語れない。
誰が強いのか、現時点では誰も分からなければ知らなければ、誰もが弱いと錯覚する。
「その、強さを教えてくれたらいいの」
さっさと教えて。そんな空気がワットソンから溢れる。
「俺の強さか? 教えてやろう、それは男らしさだ」
手と手を空中で組むとパントマイムの領域で肘をつく。
「男らしさ?」
「女はか弱い、お前も弱い、だから俺が守ってる、だから強い、簡単なことだろ?」
「じゃあ私には無理ってこと?」
「そうは言ってない、男らしさって言ったのはそこにある。男のような強い心、少年漫画を読み漁る強い気持ち! それが大切なんだぜ」
組んだ手の上に顎を置いてニヤリと笑ってみせるミラージュ。
「しょうねんまんが? ここにはなさそう」
「比喩だからな!」
「じゃあなにをするの! くどいわ!」
「そうだな、口調から強くなってみたらどうだ」
「口調……」
「俺の言葉を真似てみるといい」
うーんと悩むワットソン。言葉を繋げる。
『俺たちは……ハモンドのためにこんなことを?』
はっはとミラージュは笑ってみせる。
「そんな感じだ、傑作だな」
「俺についてきて! みたいな」
「強いぞワットソン、アーティファクト探しの時は意識しろ、死にたくなければだが」
「がんばるぜよ!」
強気な声に引かれてレイスが二人の空間に迷い込む。
『何をしているの?』
「俺はミラージュに強くなる秘訣を教わっていたの……だ!」
ワットソンは慌てて言い直すが、恥ずかしそうにしていた。
「様子がおかしい」
「こいつが強くなりたいって言ってきたんだ、俺のデコイは強いからな、俺の真似をしたら強くなるって教えてやった」
「言葉だけで強くなれるなら、誰もがそうする、私だってするわ」
ちらりとミラージュを睨むワットソン。
「だ、だ、騙してなんかいないぞ? そうだ、思い出した、言葉には言霊の力があって、言葉を出すとその言葉通りに頭の中も変化する、男らしい言葉を吐けば男の気持ちになって不安が解消するかもしれないって寸法だ、頼むから殴らないでくれ」
ミラージュの口数はマシンガンと言っていいほどの威嚇射撃だった。
「ナタリー、強くなりたいなら私と組む?」
「えっ!」
「手取り足取り教えてあげる、この男はあなたをデコイに仕立てあげようとするホログラム野郎だから、話を聞くだけ無駄」
ミラージュは、よく分かってるじゃないかと相槌を打つ。
「でも……迷惑はあまり」
「行ってこいワットソン、お前は弱すぎてマジで話にならない、レイスに教えて貰った方がいい」
それでも行きたがらないワットソン。
しかし、その胸の内には静電気が渦巻いていることもミラージュは知っている。
「なあレイス、ワットソンを頼めるか? できれば一生。そう、もちろん勝ってもそばに居てやるんだ、こいつが知ってるのは遠慮とリングそれだけ、笑いそうになる」
「今からR-99を撃ちに行くから、リコイルと射線を教えるわ」
「よし、行ってこい!」
ミラージュの右手がワットソンの背中を強く押す。
バチバチと雷のような音が静電気としてミラージュに襲いかかった。
ランパートショッピングネットワーク!かっこいいな!俺がゲストとして招待されるかもしれない、されないって? 夢は本物が良いだろ?
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白羽の矢で止まりやがったのか、アミーゴ!
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私は大砲よ。シーラよりも優れているわ。
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これだけは言える……誰かが死ぬ――
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お! 飲み放題にしてくれるのかー?
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どうしよう、私も出たい。