ミラージュボヤージュ 作:エリオット・ウィット
レイスは不思議な声が聞こえる。
『昨日の晩飯はポークチョップ! ちなみに今日もだ、理由は単純明快、明日も勝つからだ』
ミラージュの長い自慢より聞き覚えがある不思議な声。
(誰かに狙われているわ)
その声の正体は不思議と理解していた。
「ミラージュ、後ろに居るのはわかっているわ」
「なんで分かるんだ……?」
「声が親切に教えてくれた、右手にクラッカーを持ってるって」
レイスが人差し指でミラージュの手を示す。
「今は戦場じゃない、休んだらどうだ? お前もそう思うだろ、パスファインダー」
ここはAPEXゲームのロビー。
羽を広げたドロップシップの行く末を眺めながら、次の羽を休める場所。
そんな場所のソファーで次の機会を探っていたレイスの背後を取ったミラージュ。
『人間なら休んだ方がいいよ』
が、声を掛けた青いロボットはカシャカシャと二人に近づく。
「じゃあ休もうぜ、多数決の結果は俺の勝ちだ」
「なにをするつもり?」
「珍しく乗り気だな、そうだな、ババ抜きなんてどうだ?」
レイスの答えを待つ前に青いロボットのディスプレイが黄色く光る。
「……やりたいみたいだぜ」
「分かったわ」
どこからともなくトランプを取り出したミラージュはシャッフルを始める。
「イカサマがないか、僕がセンサーで見ておくね」
そう言ってカメラのような顔がミラージュの手元を見つめる。
「い、いいぜ?」
ミラージュはパスファインダーに聞こえないように小声でやりにくいなと呟いていた。
いつも笑い調子なミラージュが皮肉にも公平なロボットに苦しめられている。
「ふふ」
不意にレイスは面白く思った。
「……よし、カードは3等分にしたぜ」
「僕はジョーカーがどこにあるか分かってしまったから、最後に選ぶよ」
「やり直そうか? それじゃあ楽しめないぞ」
「大丈夫! 見えないようにシャッフルしてくれたら引くカードも君のイカサマも分からなくなる!」
「そこまで俺は野暮じゃない……はずだ、なあ?」
レイスはさあねと言った。
(ジョーカーは真ん中にあるわ)
カードの中から揃った数字を消して挑むババ抜き。
「僕がミラージュのカードを引けばいいのかな?」
「そうだ」
レイスの耳に不思議な声が響く。
(数字の3はパスファインダーの一番右の手札にあるわ)
黙って。
レイスは声を塞いで左のカードを取る。
「……」
ジョーカーだった。
「さて次は俺が引く番だ! 見せてくれるか、カードを」
「どうぞ」
「なかなかいいカードだ、捨てるのはもったいないぜ」
そう言ってミラージュが手札に加えたのはジョーカー。
「そのカード、貰ってもいい?」
「いいぜ」
ミラージュのカードを受け取ったパスファインダーが気づく。
「酷いよ、ジョーカーだなんて!」
胸のスクリーンが赤くピカピカ光る。
「俺にとって最高だったんだ、そのカードをレイスに渡してみな、最高の気分になる」
「本当かい?」
「本当だ、嘘じゃねえ」
パスファインダーは一枚のカードをレイスに向ける。
「これをあげるよ、受け取って」
レイスが渡されたカードはハートの3。
「本当だ、貰ってくれると最高のカードだね!」
「そうだろ? 見てみろレイスの苦悶の顔を……」
レイスが虚空の声を頼りにパスファインダーのジョーカーを引き抜く。
「あっ、僕のジョーカーが」
「そういうことだったのか」
ウンウンと笑顔のロボットを褒めるミラージュ。
「私も最高の気分になろうかしら」
「どうやってなるんだ? 教えてくれ」
レイスは片手でポータルを作るとその中にジョーカーを投げ捨てた。
「お、おい! 最後のジョーカーなんだぜ、あれは!」
手を伸ばそうとしたポータルがシュンッと消える。
『本当に最高の気分ね』
ランパートショッピングネットワーク!かっこいいな!俺がゲストとして招待されるかもしれない、されないって? 夢は本物が良いだろ?
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白羽の矢で止まりやがったのか、アミーゴ!
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私は大砲よ。シーラよりも優れているわ。
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これだけは言える……誰かが死ぬ――
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お! 飲み放題にしてくれるのかー?
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どうしよう、私も出たい。