ミラージュボヤージュ 作:エリオット・ウィット
な、おいっ、で、で、出会い系の秘匿情報が!
これこそマジで誰が持ってきやがったんだ!?
ファンのみんなは要チェックだ、こいつに削除申請を送ってくれ、頼む!
こんなのがジブラルタルに見られちまったら……
『――ってことがあったんだよ』
『そういうことかブラザー、末っ子らしい悩み事だ』
ここはミラージュもとい、エリオット・ウィットが経営しているバー。
パラダイスラウンジ。
デコイ兄弟にコップを拭く素振りと銀カップの底を鏡替わりに使わせると、本人はカウンターでジブラルタルと愚痴をこぼしていた。
「人間誰しも間違えることはある、それは許してくれたんだろう?」
「二人は優しかったからな、プリン二つで許してくれた」
ライフラインの分を買ったことに不満はないようだ。
「なら、大丈夫だ」
「またやらかしたくはないんだ、もしレヴナントの大ハズレを取ってみろ、父親はもう居ねえが母親が心配だぜ……」
「その時はジブラルタル様に任せろ、真摯に謝れば許してくれる」
「だといいんだが、そんなことより」
ジブラルタルは誰よりも大きな体を持っている。
壁と呼ぶ人間も居れば、一つの要塞と定義できる賢い人間も居る。
実際はどれも間違っている。
武器を持ったジブラルタルは要塞の中でも主砲だからだ。
「いつもは鎧で来てるくせに、今日はファッションスター顔負けじゃないか」
そんなジブラルタルの装備はカジュアルなタキシードで来ていた。
余裕のある黒さから覗ける光沢感は意外なオシャレを醸し出す。
「今日は特別な日だ、一肌脱ぐ価値があって来た」
「そうか? そうか……そうか、そうか」
「どうしたんだブラザー」
「いやあ、はっはっは、俺のニガテな物はドテカボチャとキオナンダケなんだ、見てるのはいいが食うのは好きじゃねえ、あの日の夜から確信してるんだ」
「そういう意味で来たわけじゃない」
ジブラルタルは心外だという表情をしていて、急いで聞き返すミラージュ。
「じゃあなんの日なんだ?」
「この後にパーティがあるんだ、そのパーティで司会をしなければいけない」
「心優しいドテカボチャはみんなの好物だからな、頑張ってくれ」
「アルコールでも取れば緊張がほぐれると思っていたんだがなあ」
逆にドキドキしているよ。ガッハッハッとジブラルタルは笑い飛ばす。
「じゃあ行ってくるよ、遅れたら笑えないからなあ」
「かなり酔ってるぜ? 信号を渡る資格があるとは思えねえ」
要塞の千鳥足は道行く全てをぶっ壊してしまいそうな勢い。
「酔いすぎたな、まあいいか!」
「良くねえだろ! テクシーは心配すぎる、そうだ、あれだ、た、タクシーを使え、呼んでやるし金も出す、それでいいだろ?」
「……頼む」
カウンターに突っ伏したジブラルタルを見ながら電話を掛けて簡単なタクシーを招く。
『すぐ来るってよ! 運が良かったな、苦しい思いは短く済む』
「良くはないさ」
「それもそうだったな、司会なんてできるとは到底思えないが、どこでやるんだ?」
「ソラスシティのコンサート市民ホール、185番の方だ」
「わお、近所で良かったな、車酔いの心配はなくてなによりってところだな、変わってやろうか?」
「大丈夫だ」
ミラージュはジブラルタルの肩を持って外に運ぶと、待っているタクシーの後部座席に投げ込む。
『どちらへ向かいましょうか?』
ジブラルタルは『またなブラザー』とミラージュに言ってドアを閉め、それよりも短い言葉を運転手に呟いた。
「お、おい、金はまだ……」
ガラス越しのミラージュには、要塞がガアガアと寝ているように映る。
『どうやって司会をするつもりなんだ?』
タクシーはブオンと走り去っていった。
そういや竹を英語にするとバンブーだな、ここにちょうどバンブーズルって言葉がある、俺の口癖にぴったりな嘘って意味さ
しかし、ドテカボチャってのは言いすぎたかもしれねえ。
ランパートショッピングネットワーク!かっこいいな!俺がゲストとして招待されるかもしれない、されないって? 夢は本物が良いだろ?
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白羽の矢で止まりやがったのか、アミーゴ!
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私は大砲よ。シーラよりも優れているわ。
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これだけは言える……誰かが死ぬ――
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お! 飲み放題にしてくれるのかー?
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どうしよう、私も出たい。