モンスターハンター ~碧空の証~   作:鷹幸

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そうして、あたしは…… (5)

「ほら! 走って走って!」

 

「……っ、……」

 

 リザにオトモアイルーとして迎えられたあたしは、走り込みをさせられていた。場所は、リザの住んでいる村の平坦なところ。

 

「ハンターも、オトモも、躰が資本なのに変わりはないわ! まずは躰作り!」

 

 リザがそう叫んでいる。想像以上に、リザの指導は厳しい。でも……

 

(なんだか……楽しいみゃ)

 

 新鮮な気持ちで、心地がよかった。役に立てるかどうかとか、不安はまだまだ山積み。でも、こうやって一緒にいられる瞬間がとても楽しかった。

 

 突然、視界が真っ暗になった。

 頭が痛い。転げてしまったみたいだった。

 

「……大丈夫?」

 

 わずかに笑い声を含ませたリザの声が聞こえた。

 

「みゃ……」

 

 あたしは起き上がると、顔をごしごしとこする。

 

「問題ないみゃ!」

 

「怪我だけはしないようにね。無理は禁物よ」

 

 リザは、あたしの目の前で一本指を立てた。

 

「わ、わかったみゃ」

 

「……そうね、走ってばかりも退屈だから、武器の扱いなんかも教えましょうか」

 

「武器!」

 

 背筋がすっと伸びるのをあたしは感じた。

 

「まず、オトモ用の武器には、近接武器、爆弾、それからブーメランがあるわ。別にこれだけに限定してるわけじゃないけど、主なものはこの三つ。オトモはこれを使って、狩りのサポートをするの」

 

 あたしは相槌を打ちながら、その話に耳を傾ける。

 

「近接武器が一番扱いやすいけど、モンスターに近づく分、どうしても危険性が伴うわ。爆弾は威力が高いけれど、扱いが少し難しい。でも、アイルーは一般的には爆弾の扱いに長けているから、問題はないかもしれないわね。あと、ブーメランは威力こそ低いけど、遠距離攻撃だから安全に狩りができるわ」

 

「ふむふむ……みゃ」

 

「どれがいいかしら?」

 

「みゃ……、迷うみゃ」

 

「ずっとその武器じゃいけない、なんてことはないのよ。だから、気楽に選べばいいわ」

 

「じゃあ……、ブーメランでやってみるみゃ」

 

「持ってくるから待っててね」

 

 と言い残して、リザはどこかへ行ってしまった。そしてすぐ、戻ってくる。

 

「お待たせ。ごめんね?」

 

 ……全然待ってないけど、まぁ、いいかな。

 

「はい、これ。ブーメラン」

 

 リザは、あたしに自分の躰の半分はある銀色のブーメランを渡してきた。でも、案外軽い。

 

「軽いでしょ? 超軽量のルミナライト鋼を使ってるから、軽くて頑丈なの。でも、当たるとけっこう痛いわ」

 

 ルミナライト鋼……。あたしの運んでた赤灰色のルミナライト鉱石は、きれいな銀色(でもちょっと白がかってる)になってるんだ……。

 

「ブーメランは、使い方わかるでしょ?」

 

「みゃ。投げたら帰ってくるっていうのは知ってるみゃ」

 

「なら、投げてみなさい」

 

 あたしは、右手のブーメランを力いっぱいに投げ飛ばす。でもそれは、まっすぐ地面に突き刺さってしまった。

 

「……あれ? おかしいみゃ」

 

「ただ投げるだけじゃダメなのよね。角度とか、速さが重要になってくるの……」

 

 リザはそのあと、投げ方を説明してくれた。指導通りにことをすすめると、なんとなくコツを掴めてきた気がした。

 

「うん……、随分と慣れてきたようね」

 

「慣れてきたみゃ」

 

「今度は、狙った部位にブーメランを当てる訓練をしましょうか」

 

 リザは、腰に提げたポーチからリンゴを一つ、取り出した。

 

「リンゴ……みゃ?」

 

「そう。これを……」

 

 リザはあたりを見回してから、すぐ近くにあった木の杭の上にそれを置いた。

 

「ここに置いておくから、狙ってみて?」

 

 なあんだ、簡単簡単。あたしはそう思った。だけど……

 

 ブーメランを投げる。空振り。ブーメランが戻ってくる。

 ブーメランを投げる。空振り。ブーメランが戻ってくる。

 ブーメランを投げる。空振り。ブーメランが戻ってくる。

 ブーメランを投げる。空振り。ブーメランが戻ってくる。

 ブーメランを投げる。空振り。ブーメランが戻ってくる。

 ブーメランを投げる。空振り。ブーメランが戻ってくる……。

 

「当たらないみゃ……!」

 

「最初からうまくいくなんて少ないけど、これはどうも、うまくいってないわね」

 

 リザは腕を組んでちょっと唸っていたけど、「こうするしかないわね」とつぶやくと、杭の上のリンゴを回収した。

 

「も、もう終わりみゃ?」

 

「ううん、こうするのよ」

 

 リザは、リンゴを頭の上に置いた。

 あたしの目が一瞬、点になる。

 

「さぁ、狙ってきなさい」

 

「え、ええぇ?」

 

 確かに、こういう訓練は緊張感が出ていいかもしれないけど……。

 

「どうしたの? 私は気にしなくていいのよ? 動いたりしないから」

 

 気にするな、と言われても……。

 外す分には問題ないけど、リザの躰にブーメランが当たってしまったら大変だ。顔なんかに当たったら、一生ものの傷を作ってしまうかもしれない……。

 でも、鋭くこちらを睨んでいる。これは、投げないと怒られる。

 集中して、確実に、頭の上のリンゴだけを……。

 

(いけっ!)

 

 狙う――!

 そして、弧を描きながら宙を走るブーメランは……

 リンゴだけを捉え、果汁を爆ぜさせた。

 

「……、できるじゃない」

 

「で、できた……みゃ」

 

「本当に危なかったら避けようと思ったけど、その必要はなかったようね。集中力さえあれば問題ないみたい。だから、数撃てば当たる、じゃなくて、しっかりと集中力を高めて投げればいいわ」

 

 そこまで言うと、リザは長い赤髪を掻いた。

 

「うん……。あとは訓練すればなんとかなる。がんばりましょ?」

 

「みゃ!」

 

 そのあとも訓練は続いた。

 

 

 

 

 そして、あたしがリザと出会って二年が過ぎたころ。

 そのころには、あたしも一人のオトモアイルーとして、リザと共に幾多の狩りに出かけるようになっていた。

 そんなときだった。

 

「ナナ、あなたに仕事を任せるわ」

 

「みゃ?」

 

 突然、リザに告げられた言葉。

 

「実は私、旅に出ることにしたの」

 

「旅みゃ?」

 

「えぇ。それで、ナナ。あなたには、弟・レオンのオトモアイルーをしてほしいの」

 

「レオン……?」

 

 あの男か。ちょっと頼りなさそうな奴……。

 

「そう。レオンは危なっかしい子だから。私が旅に出ているあいだ、お願いできないかしら?」

 

「うん……リザ姉の頼みなら……、断れないみゃ」

 

「ごめんね? 面倒な仕事を押し付けちゃって」

 

「ううん、大丈夫みゃ」

 

「それじゃ、()()()()()に、お願いね?」

 

「みゃ」

 

 

 

 それから数日後、リザは発ってしまった。

 これからは、リザの代わりとして、あたしはあの男の監視をしなきゃいけない。

 ま、オトモくらいなら別に大丈夫かな……。

 

「――あ、えっと……よろしく、ナナ」

 

 図体の割には、少しなよなよしてるのが、この男、レオン。

 リザ姉の言いつけどおり、ハンターとしてもまだまだ未熟なこの男を、あたしは見守る義務がある。

 あたしは腕を組んで、()()()()()()、言い放った。

 

「えぇ。よろしく、レオン――」

 

 ……そうして、あたしはレオンのオトモアイルーになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 




 以上、短編『そうして、あたしは……』でした。

 ナナとリザの出会いですね。
 このお話は、本編22話の、



    後ろを歩いていたソラとナナは、楽しそうに会話をしていた。

   「……へぇ、それで、ナナちゃんはリザさんのオトモになったんだね」

   「そうみゃ。あの頃から変わらず、リザはかっこいいみゃあ」



 この部分に通じています。
 いまいち全貌が書けていないような気もしますが、これはこれで置いておきます。
 あとはご想像におまかせします……!(これはひどい)

 一つ言えることは、本編でナナの口調がリザっぽかったのは、ナナが〝リザのように振る舞う〟ことを意識していたからですね。
 あれ……? 本編に同じことを書いたかな?(まぁいいや)



 ……あと、ここだけの話ですけど、この話には、(時間と気力があれば)書くかもしれない続編のネタも少し含んでいます。


 私事ですが、今日また一つ歳をとりました。
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