属性マシマシ悪役TSっ子が頑張る話。   作:働かない段ボール

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にじファン時代にTSという性癖を開発されて約10年(本当は9年)、他の性癖と合体事故を起こしていざ尋常に初投稿です。


プロローグ

 

「私ね。この世界が好き。……好きに、なれたんだ」

 

 

 

 少女が言った。愛らしくもあり、どこか神々しさもあった。

 

「昔は、ただつまらないから、自分が楽しくなるようにすることだけ考えていて……。そんなこと、微塵も思ってなかったんだけどね」

 

 近くに倒れる傷だらけの少年にほほえみながら語りかける。少女と少年は顔立ちが似ていた。

 

「でも、あなたがいたから。私は気がついたの。あなたを、ここを、守りたいって。私は感じていたい。信じていたい。皆が生きているこの世界は、素晴らしいって」

 

「……だからって、お前が犠牲になるなんて、間違ってる!そうでもしないと生きられない、こんな世界、オレはいらない!アイリスがいないのに、オレに生きる価値なんてどこにもない!」

 

 少年が泣き叫んだ。体はとうに限界を迎え、一歩も動くことなどできない。しかし、彼は這ってでも彼女へ近づこうとする。手を伸ばす。少女はその姿を見てしゃがみこみ、膝をついた。少年の手を両手で包み込んで、困ったように笑う。

 

「もう……、泣かないで。犠牲に、だなんて気持ちじゃないよ、私。……確かに心残りはあるけどね」

 

「なら、アイリス、何で…………」

 

 少年も手を握り返そうとするが、力が入らない。するりと彼女の手は抜けていった。

 

「私しか、できないことだから。だから、ただやるだけだよ」

 

 力強い声だった。そして彼女は立ち上がり、少年に背を向けた。

 

「でも、もしあなたが私のこと大切に思ってくれてるなら、私がいなくなったあとも、あと少しだけ頑張ってくれる?」

 

 少年は這って少しだけ進んだ。だが、少女は振り返らない。彼女には届かない。

 

「きっとそれは、あなたにとって、つらい道になるよ?」

 

「なんだってやってやる!だから」

 

 いなくなる、なんて言わないでくれよ。

 

 そう言い終わる前に、

 

「そう……。なら、よかった」

 

「おい、待てよ……、いかないでくれよ」

 

 彼女の名前を呼ぼうとしても、声がかすれてしまう。

 

 背中が遠ざかる。

 

 自分の体は悲鳴をあげていて、視界も霞んでいく。

 

 でも、少しだけ一瞬こちらを振り向いていて。

 

「どうか、あなたは…………」

 

 そこから先の、彼女の最期の言葉は、オレに届かなかった。

 

 あの人は強い人だった。

 

 オレに色々なことを教えてくれた。たくさんの物をくれた。無機質な世界が色づいた。

 

 でも、オレは何も返せなかった。

 

 オレの手はどこにも届かなかった。

 

 もし、願いが叶うのなら、彼女の伝えたかった、あの言葉を―――。

 

 

 




クライマックス感があるのとか、マモレナカッタ…みたいなのも好きです。
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