属性マシマシ悪役TSっ子が頑張る話。   作:働かない段ボール

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おそらく今後いらないであろう設定
・1年は12か月
・会計年度開始は1月
・学校年度開始は9月、ただし軍人学校系は会計年度に合わせて1月
・基本的に季節の移り変わりは現実の北半球と一緒(ちょっと寒い)


2-2

【N.C. 998】

 

とりあえず課長からの物とカギを机の上に置き、言われた通りの引き出しに書類を入れる。

この書類は何月何日に誰が誰に資料をわたしましたよ、と証明するためのものだ。

引き出しの中は同じような書類(渡した側にはウィステ先輩のサインがある)とともに入っていた。

取り出して見てみると日付はどれも最近。そして第二課の引き取り側は大体が『ビオレッタ』というサインであった。

 

「ビオレッタ……?」

 

どこかで聞いたことのあるような。……気のせいか。

 

次に建物の中をじっくり見てみることにする。

 

うん。

やっぱりなんというか、全体的にボロい。

机、椅子、棚が配置されているが、どれも年季が入っている。棚には過去の書類がそこそこ整頓されていた。しかし手に取って簡単に見れる範囲では重要そうなものはない。一つだけ鍵付きの棚があるのでそこに大切なものは閉まっているようだ。二階部分は仮眠室で、簡易ベッドや毛布が置かれていた。そうして、屋内を結構な時間をかけて探索していると、

 

……建物の外に人がいる気配がする。

 

二階の窓を開けて外を見る。

 

「ん?うおぁ!?」

 

両手で大きな袋を抱えて裏手にいるウィステ先輩がいた。

 

「さっき帰ったんじゃないのか……?」

「い、いやー、そのー」

 

なぜか慌てている様子だ。

両手が塞がっていて、表の扉を開けるのは大変そうだ。

 

「今扉開けます」

「あわわわ……」

 

急いで一階に降りて扉を開ける。

なぜか裏手にいたウィステ先輩は中に入って、机の上に袋をおくとボソボソと話し出した。

 

「い、言い訳をするとね。昨日突然課長から新人が来ること言われて準備ができなかったといいますか……」

「どうしたんですか?」

「と・に・か・く!はい!」

 

袋から取り出したものをズイっと押し付けてきた。

受け取るとそれはサンドイッチのようで、

 

「まだ、お昼食べてないかなって、えへへへ……」

 

さらに袋から次から次へと食料やお菓子などを取り出して、空いている机に並べていく。

 

「あああ、もうヤケクソじゃーい!ようこそ第三課へ!」

 

そう言ってウィステ先輩はいつの間にか手に握っていた花びらを、風の魔術で吹き上がらせた。

 

朝挨拶したのに、なんでもう一回やってるんだ?

 

「課長いなくて二人だけだけど、サプライズにならなかったサプライズ歓迎会やります!」

「歓迎会?」

「どうせ仕事もないしね!昼間から飲み食い無礼講よ。フッフッフ」

「はあ」

「アコ後輩、無理に丁寧に話さなくていいよ!私のことを『先輩』と呼んでくれればなんでも許しちゃう!」

 

そんなにオレの丁寧な言葉遣いは無理に喋っているように聞こえたのだろうか。

 

「さあもう食べて食べて!これ全部私の奢りだから!お菓子余ったら今後のおやつだから!」

 

ウィステ先輩に言われて、もらったサンドイッチを食べる。

 

「……うまい」

「そうでしょそれ美味しいでしょ!ビオレッタ、あ、友だちのおすすめなんだよー」

 

そうしてしばらくの間、少し遅いお昼ご飯となったのである。

 

「アコ後輩はどこの課に行きたいとか希望あったの?」

「そうだな、情報課は狙い目だと思ってた」

「おう、なんてこったい。情報課、うん、情報課ねー。あ、いや、私もともと第二課にいたんだけどね、五年くらい前にここに異動になったんだ」

「その頃から人数少なかったのか?」

「まあね、私が入って四人になってしばらくして一人やめて、去年もう一人やめちゃった」

 

去年はそのあと二人体制だったのか。果たしてそれは課と呼んでいいのか。

他にも課長はほとんど来ないことや来ても今日みたいな短い滞在時間だとかで実質オレたち二人だけなどを彼女はずっとしゃべり続けていた。

他にも、お昼ご飯は敷地を出たところに色々売ってるところがあってそこで買ったり、自分で家から持ってきたり、お菓子無限に食べたいなど、話を聞くこと数十分、食べる手は止まりそろそろ片付ける機運になった頃、扉をノックする音がした。

 

「む、誰かが呼ぶ音がする。私出るから」

 

そう言ってウィステ先輩は外に出た。

『げーっ!』だの、『いやみか!』だの、絶叫が聞こえてくる。

しばらくすると両手に書類の束を抱えて戻ってきた。

 

「情報課からまたまたお仕事がやってまいりましたー。最近じわじわ仕事が増える時があるんだよね。第二課と情報課で回せなかったものが来るというか。基本的には暇だけども」

「仕事が増えた?」

「そうそう、なんか嫌な感じ。軍なんて仕事がない方がいいのに」

 

ウィステ先輩は机の上のお菓子をそさくさ片づけて、書類をパラパラと見始めた。

 

「私たちの仕事って、さっきやってもらった通り、情報課から渡された資料を整理して第二課に回したりが大半だよ。たまに課長直々に第一課に直接持ってけ、って渡されるものもある。まあ、わかってると思うけど、扱ってる情報は機密だから外の人に流しちゃだめからねー」

 

はい、と書類の一部が渡され、

 

「こんな感じでヤバイ団体の目撃情報とか怪しげな動きをなげられるのでまとめていきます」

 

午前中の仕事よりかは複雑そうである。

書類には、先週地方のある村でいつもよりも運び込まれる物資が増えていることや、突然他の地域から流入してきた人間が増えたこと、その中に以前からマークしていた者がいることなどが、結構バラバラに書いてある。

 

「こういうのを時間系列順にしたり、地域別にしたりとかすると、どこで何が起きてるのか傾向が見えてくるんだよ。まずは私と一緒にやっていこう。慣れていくと思うから頑張ろうね」

 

かなり慣れた手つきでウィステ先輩は資料を机の上にいくつかの島にして並べていく。

 

「あと大まかにだけど第一課の人たちの所在地も渡されるから、それも合わせてあげます」

 

別の資料を見ながら、メモに名前を走り書きして島に配置していった。

 

「つまり、第二課も情報課もどこに第一課がいるか把握しているのか」

「うーん、そうだね。より現場に近い第二課の方が急な出動とかも把握してるけど。でも情報課も情報課で独自に持ってる情報が多いからどっちもそれぞれ大変よねー」

 

そしてオレもウィステ先輩に指導されながら、書類を並べたりまとめたり。

気がつくと夕暮れになっていた。

 

「はい、じゃあここまでね。普段は朝来て昼帰って良いって課長からも言われてるから。明日は昼帰ろう。すぐ帰ろう」

「……今日みたいに昼過ぎに書類持ってこられたらどうするんだ?」

「私たちの本来いない時間に仕事を持ってくるあいつらが悪い」

「この課はなんで潰されないんだよ」

「……慣習?ほら大きい組織だから」

 

明らかに機密の書類はカギ付の棚に納められる。重要でないものは机の上か普通の棚に置かれた。

 

「棚のカギは今2つしかないの。後で課長が増やすって言ってたから、ちょっと待っててね。……よぉし、帰宅だ!帰る、私は帰るぞぉーっ!!!」

 

 

 

§ § §

 

 

 

「情報課で扱う仕事が増えてきている……。なるほど、なかなかきな臭い」

 

帰宅後、猫に今日の出来事を話すと何か思案し始めた。

 

「もう一度確認するが、『前回』の国家魔術師が殺される事件はいつ頃から起き始めたのだ?ちなみに今は年初めだぞ」

「さすがにオレも、今がいつかは知ってるからな。確か、事件は……」

 

過去の記憶。

かつて関わった、アバドーンの幹部のクソババアの言葉を思い出した。

 

『ちっ、もう今年の半ば頃にはオーキッドは動いていたのよ。それを手土産にアプシントスと手を組むなんて……。やられたわ』

 

「……半年後だったはず」

 

今から半年後に当たる季節、前回の世界では、国家魔術師の一人が頭部を切断され、心臓を抜き取られた死体が見つかる事件が起きた。

 

その後も次々と魔術師、特に第一課のベテランや主力が同様の手口で殺害され、国家魔術師を狙ったものであることが浮上した。

 

戦闘における実力は確かであるはずの魔術師が惨殺され、しかも犯行現場の目撃者もいない。

 

まるで内部しか知り得ない一人一人の個人情報を把握したかのように、計画的に行われた犯行に、内通者を警戒して極秘に対策会議が開かれる。

 

しかし、その極秘だったはずの会議にネフィリムがこの時初めて襲来し、軍の上層部に甚大な被害がでてしまうのである。

 

犯行はアプシントスと、敵対していたはずのアバドーンのある一派、オーキッドらが手を組んでのものだった。

 

オレはオーキッド派と溝の深い派閥のクソババアの元で働かされていたため、詳しい情報を手に入れることはできなかった。

 

わかっていることはただ一つ。

 

『我々のある一人の同志がもたらしてくれたのだよ』

 

『軍内部の相当深いところに、用心深くて優秀な手駒を送り込んだようね』

 

軍のどこかに一人、裏切り者がいた。

 

 

 

現段階ではまだ国家魔術師の誰かが殺害されたというニュースはない。そのため、ネフィリムが早く出てきたものの、この事件発生に関しては年単位で早まっているわけではないと判断している。

 

前回の世界と違って、そもそも内通者がいないなんてことは期待してない。それどころか、一人じゃなく複数だってこともあるかもしれない。

 

「『前回』も軍は裏切り者を探そうと相当注力したであろう。しかし見つけることができなかった。それどころか裏をかかれた」

「一番確実なのは情報を渡しているところを押さえるのだよな……」

「紙などに書いて渡しているのか、口頭なのか、暗号でもあるのか、はたまた殺害事件の実行犯も兼ねていたのか。……『今回』は裏切り者はおらず、きっと事件は起きないだろうとしておくのが一番楽なのだが、それは納得しないのだろう?」

 

猫の言いたいことはわかる。『前回』と『今回』とで違う部分がいくつもある。それなのに、『前回』の出来事を防ごうなど無駄なのではないかと。

 

「それでも、オレはやるんだ」

 




やる気まんまん
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