属性マシマシ悪役TSっ子が頑張る話。   作:働かない段ボール

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本日投稿2つ目(2/3)です。

引き続き『12裏』と同じく、

・三人称
・主人公以外の視点
・次話『2-5』と被るシーンあり

となっております。


2-5裏

先の警告音の後、ネイブに連れ出されてレドは待機室にいた。ほかにも第一課や第二課の面々が慌ただしく部屋を出入りしている。そんな中、ネイブは第二課の女性に声を荒げた。

 

「はあ!?第8地区の奴が別のところに回されてるっ!!!??」

「はい、特別任務とのことです。現在首都にいる他の人員も、ネイブさんと同じく、すでに手が空いていません」

「じゃあもし第8地区でなにかあれば……」

 

部屋に来た通信士から新たな情報が寄せられた。

 

「今入ってきたんですが、第8地区で魔術師による強盗事件が発生。氷の魔術を使用してきており、居合わせた第三課が交戦中。救援要請が来ています」

 

それを聞いたレドは、

 

(第三課って……、もしかしたら、あいつか!?)

 

1人の少女を思い浮かべた。学校時代、たまたま人気のないところにふらりと行くとなぜか会い、実は自分にしか見えていない幽霊かと思っていた彼女だ。しかし、三年目の演習のとき、突如襲ってきた化物を手際よく片付け、通常の身体強化以上の怪力を見せつけられたことで、同期であったことをレドは認知した。

 

ネイブはレドに向き直ると言った。

 

「レド、いいか?今第8地区に行けるのはお前しかいない。いきなりだが、初任務だ。……こんなことになってしまって、すまない」

 

 

 

§ § §

 

 

 

(めちゃくちゃ忙しいとは聞いていたけど、研修明けにいきなり初任務か……)

 

軍の本部は第15地区にあり、第8地区に行くためには第7地区を縦断し、7・8地区間にまたがる橋を渡る必要がある。

人員を運ぶための車両の運転は第二課の仕事だ。第8地区に最短で向かうことのできるルートに近い出入口で、レドは荷台付きの小型車に乗り込む。もちろんすぐに動けるように席ではなく、荷台部分だ。

 

「お願いします」

「OK、新人くん。無事君を第8地区まで送り届けるよ」

 

運転席にはハンドルを握る第二課の職員の姿があった。ハンドルやレバーを通して、エンジンに魔力子を送り込み、ほどなくして車は蒸気を吹き出しながら動き出した。

 

首都内は基本的に馬車か国営のバスしか走行してはいけない。なぜなら、このような緊急車両の通行を妨げないためだ。

レドをのせた車は、かなりの速度を出しながら、第7地区を突っ切った。

そして第8地区へつながる橋を渡るところで、車が急停車する。

その勢いで前に飛びかけたレドは、荷台の縁に捕まることで何とかこらえた。

 

荷台には布を被せた荷物があり、それは前方に転がった。

いや、荷物ではない。人だった。

 

「リーン!?おま、何やってんだ!???」

「あいたたたた……、いったい何が」

 

別室で待機中だったはずのリーンが、荷台に潜んでいたことにレドは驚いていると、運転手の声をかけてくる。

 

「すまない!橋で事故だっ。これじゃ渡れない。ルートを変更するよ!!」

 

前方には橋があった。だが、その橋の通行を遮るかのようにバスが横倒しになっている。すでに救助は始まっているようだが、車体をどかすにはまだまだ時間がかかる様子だ。

 

運転手の言葉にリーンが叫ぶ。

 

「橋を渡ってすぐのところに屋上付きの高い建物があります!そこから最短で行きましょう!」

「ん!?いつの間に君は乗り込んでたんだ!?」

「そんなのはあとでお叱り受けますよ。とにかくレドくんを第7地区の現場へ送り届ければいいんですよね?」

「どうやってだ!?」

「私に考えがあります。こっちです!」

「あ!君たちちょっと!??」

 

運転手の静止を振り切って、レドたちは荷台から飛び降りた。バスを避けて橋を渡った先には、リーンの言う通り比較的高い建物がある。住民の有無を言わせず侵入し、リーン先導のもと、レドはそのまま屋上へかけ上がった。

屋上からは第8地区の様子を一望することができた。

 

「あそこか!」

 

氷の破片がきらきらと飛び散っているのが視界に映る。

視力を強化すると、氷の魔術を使う男とそれに相対する小柄な人影が見えた。

 

「レドくん、準備はいいですか?」

「ちょ、リーン、お前、俺を担いで何を。最短ってまさか」

 

リーンはレドを担ぎ上げた。全身に魔力子を行き渡らせ、特に腕と足腰に身体強化を発動させる。

 

「うおりゃああああああああ!!!!!!!」

 

 

 

§ § §

 

 

 

「どわぁぁぁぁぁああああっ!」

 

偶然にもレドは二人の人間の間に着地した。

すぐさま目の前の男が放とうとしている氷の魔術を打ち消すべく、貰いたての剣に炎をまとわせる。

 

(うおおおお、あぶねえぇぇえええ。風魔術と身体強化のかけ合わせかよ!?俺身体強化使えなかったら死んでたぞっ!)

 

視力をも魔力子によって強化することができるため、投げ飛ばされている途中、氷に足を固められていた者が誰なのかを捉えることができた。

先程の少々情けない叫び声を言い訳するかのように、彼女に向かって呟く。

 

「リーンのやつ、思いっきりぶん投げやがって……」

 

突然レドが上から降ってきたことによって、相手にしなければならない人数が増えた男は距離をとった。

 

「ま、魔術師の一人や二人増えたところで、この俺をどうにかできると思うな!」

「ちょっと待ってろ、今動けるように……あれ?ちょっと待って?移動してる?」

 

男を警戒しつつも後ろを振り返ったレドが見たものは、足を氷で固められて動けないはずの少女、アコが瓦礫を拾っている姿だった。

 

アコは少し誇らしげに言う。

 

「お前が吹っ飛んでくる直前に無理やり足を引っこ抜いた」

「氷魔術の拘束を力業で解決してる人初めてみたんだけど」

 

ただ彼女の姿は服のあちこちが破れており、痛ましかった。さらに片手には、ところどころ氷がついているばかりでなく、皮がはがれて血が滲んでいる。

 

(負傷者が1人いる状態……、しかも空模様が怪しい。急いでかたをつけないと)

 

レドが再び男の方に意識を戻し、相手の出方を見ようとした瞬間、突如顔の横を何かが通る。

 

「うわっ!?」

「うおっ!!」

 

投げられた物はそのまま男にぶつかると思いきや、氷の盾が展開されて防がれてしまう。

後ろにいたアコが異様な速さで瓦礫を投げたことがわかったレドは、溜息のように言葉を漏らした。

 

「後ろから投げるなら、せめて俺に一声かけてくれ……」

 

しかし、彼女はそんなことはどうでもいいらしく、興味深そうに話す。

 

「それよりお前、見たか?あの反応速度」

「え?ああ、めちゃくちゃ展開が速いな」

 

アコは男からは見えにくい位置に立って、瓦礫を投げて当てた。しかし、この男はそれを魔術で防いでいる。どう考えても異常な魔術の発動速度だった。

 

(ってことは、それなりに技術のある魔術師ってことか?それにしてはただのチンピラに見える。だからといって油断していいわけじゃねぇ)

 

横には半壊した建物がある。内部がどうなっているかの情報はない。とにかくレドは目の前の敵をどうにかせねばと意気込んだ。

 

「ここは俺に任せろ。お前は下がって、その手の傷を……」

「よし任せたぞ、レド!オレは建物内見てくる」

「ちょっ!?」

 

アコは上層階が崩れた建物へ走っていく。

その方向へ氷のつぶてを飛ばそうとする男にレドは切りかかった。

男は杖で受け止める。氷と炎で互いの魔術を打ち消し合い、MARGOT同士が接する部分からは氷が昇華したことで発生した水蒸気が、直ちに氷によって冷やされ湯気となる。

しかし次第に湯気は少なくなっていく。炎の火力が氷に勝り始めたためだ。それと同時に身体強化によって拮抗していた物理的な力のせめぎあいも、男は少しずつ押され始めた。

 

「あいにく、俺は炎の魔術が得意なんだ。おとなしく投降した方がいいんじゃないか?」

 

レドがそう呼びかけると、男は青筋を立てて叫んだ。

 

「ふざけるなよ……、クソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがっ!!!!!!アイツからMARGOTもらって、魔術が強くなる薬までもらったんだ!!!」

 

その時だった。ぽつぽつと雨が降り出す。

 

(げーーーっ!マジかよこんな時に!)

 

火に水をかければ消えてしまう。

 

魔術によって発生する炎は通常の火とは燃焼に必要な要素やその現象に異なるところがあるため、完全に消えるということではないが、雨の中であれば威力が減衰してしまう。それに加えて研修の疲労が取り切れていないレドは全力を出せなかった。

 

雨によって、レドの炎はどんどん減衰する。かわりに氷がじわじわと浸食を始めた。

 

(このままだとMARGOTごと凍らされる!)

 

そう判断したレドは一度距離をとった。

 

(それに、その辺のチンピラが出していい魔術の威力じゃない!現に俺の魔術に耐えてみせた。さっきの反応速度といい、どうなってるんだ)

 

いかに魔術師同士と言えど、厳しい訓練を受けてきた国家魔術師と野良の魔術師では技量に差があるはずだった。

 

「形勢逆転だなぁ?炎の魔術師さんよぉ?」

 

魔術で生成された氷だけでなく、その冷気によって雨からさらに氷が形成される。今までの倍の氷のつぶてがレドを襲った。

 

今までの身体強化の魔術を足と目に集中させる。

 

体内に宿る魔力子は無限ではない。全身に常にまんべんなく身体強化を発動させるのは無駄が多い。だから魔術師は皆、無意識のうちに使うところだけに身体強化を発動させている。

しかしそれを意識的に行うことで、より強力にすることができるのである。

 

避けられるものは避け、無理なものは融かして無力化していく。不意をついて切りかかっても、異様な反応速度で氷の盾が生成され防がれてしまう。

 

(まだ他に仲間がいるかもしれないと考えたら、余力を残したほうが……!でも、長引くほど雨が強くなって不利になる。どうにかして屋内に。けど戦って大丈夫な屋内なんて)

 

雨も相まって近くの建物の屋内の様子を知ることができない。もし人がいるところに突入してしまったら危険だった。

 

どんどんジリ貧になっていくレドに上から声がかかった。

 

「おいっ!」

 

アコはある階の大窓を開け放っていた。

男の意識は上の方へ向く。

彼女の意図を組んだレドは動いた。

 

(盾が突破できないなら、盾ごと吹き飛ばせばいいっ。アイツみたいに力技で!!!そうすれば屋内だ!)

 

盾で防がれるのもかまわず剣の腹で思いっきり男を殴り飛ばした。

男はそのまま窓から建物内にぶっ飛ばされる。レドも続いて跳躍して、窓から中へ飛び込む。

 

「雨でも屋内だったら問題ないんだよ!」

 

慌てる男にレドは炎を纏わせた剣を振り下ろした。

 

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