属性マシマシ悪役TSっ子が頑張る話。   作:働かない段ボール

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【N.C 998】

 

首都での強盗事件や火災が同時多発的に起きた後日。

オレはウィステ先輩と一緒に第一課に呼び出されていた。

 

正面には第一課の偉そうなおっさんが座っており、その隣にはビオレッタさんがいる。

 

「君たちが先日遭遇した強盗事件……、もう一度詳しく話を聞きたいと思ってね。先に今わかっていることを説明したい。ビオレッタくん」

「はい、今回の事件群は同一の犯人グループによるものでした。彼らの身元を洗いましたが、ただの不良集団のようです。謎の人物に『魔力子活性剤』という錠剤と違法なMARGOTを渡され、それを利用して金目当てに宝石店などを狙って強盗を計画した、と供述しています」

 

ビオレッタさんは壁に首都の地図とMARGOTの白黒写真を貼った。写真の中の1つに杖型のものがある。

 

「……魔力子活性剤ってなんですか?」

 

おそるおそるウィステ先輩が聞くと、

 

「まだはっきりとはわかっていない。ただ、犯人たちによると、飲めば今までよりも遥かに強力な魔術が使える錠剤とのことだ。現物を手に入れられていないことから、本当にその効果があるのかは不明だ。だが、現場で対応にあたった者たちは、皆一様に犯人たちは強力な魔術師だったと評価していた」

 

魔力子活性剤。使用者の魔力子を増幅させ、魔術の威力を底上げできる薬だ。その副作用には興奮や感覚の変化、依存性が現れてくる。

 

そうか、だからか。

 

「それで、アコくんだったかな。君が犯人と交戦したとき、相手の使う魔術に違和感は感じたかい?」

「はい。死角から攻撃しても防御された……、あ、いや、防御されました。どうみても冷静な状態ではなかったのに、尋常でない速さの反応速度と、大規模な氷魔術を何発も発動させる魔力子……、明らかに異様でした」

 

始めの頃は理性があったんだろう。しかし、副作用が出て興奮状態に陥った。だから計画的に行った強盗を、途中で台無しにするような行動に出てしまったんだ。……でも、オレが知っているのは注射するタイプだ。錠剤タイプは知らない。

 

「なるほど。……他に対応した者も同じようなことを言っていた。やはり、魔力子活性剤なるものを早く押さえなくてはな。次にウィステくん、君はどう感じた?他の地区にも駆け回ってもらったみたいだから、是非君の意見も聞きたい」

「私は、すぐ市民の避難と本部への連絡に回っていたので、犯人たちと直接接した時間は短かったんですが……。今まで見てきた魔術師で、あんな風に大規模な魔術を連続で展開できるのはごくわずかです。ただのチンピラに毛の生えた程度の犯人グループがそれを行っていたのは、どう考えてもおかしいと思います」

 

あの時、ウィステ先輩はいつの間にかいなくなっていたので、どこに行ったんだろうと思っていたが、あちこち連絡係として走り回っていたらしい。

 

「今犯人たちは?」

「現在は首都郊外の刑務所に収容中です。魔術師として秀でているところはない、という報告が上がっています。ただ、時々興奮状態や好戦的な性格になる、と」

「そして今回の一件、一年前のある出来事に共通点があるんだ。そのことも踏まえ、今日はアコくんを呼んだのだよ」

「一年前……、演習中の襲撃事件、ですか」

 

一年前、演習訓練中に襲い掛かってきたネフィリム。ネフィリムもまた、人間を材料にしてできたものだ。

あの時、軍から公表されたのは、アプシントスの手による者だということだけだった。あれを多少なりとも解剖すれば、元は人体と同じであることはわかるはずだが。

 

「ああ、察しがいいな。あの時の化物じみた何か……、今のところはあれ以降現れていないものの、我々は未確認生物兵器と呼称し、足取りを追い続けている」

「確か、アプシントスによるものだったと聞い…、聞きましたけど」

「……これはまだ公表していないことだが、あれは人間であることがわかっている。いや、魔力子や人体のスペックそのものを強化した人間だったモノだな」

 

隣にいるウィステ先輩は若干顔を青ざめさせて、

 

「その話は、私も聞いてよいものなのでしょうか」

「君はローザお抱えの第三課だからね。問題ないよ。さて、今回の事件の犯人と、未確認生物兵器。どちらも人を何らかの手段によって強化したことに共通点がみられる。今回の事件も裏にいるのは、アプシントスか、それに類するものだろう。やつらはネズミのようにあちこちに潜んでいる上に、何を考えているのかわからない。だからこそ早急に対処しなければならないんだが……。いかんせんまだ情報不足だ。両者に対峙したことがあるのはアコくんと第一課の新人1人のみでね。今後どちらかが再び現れた場合、色々と意見を聞かせてもらうことになると思う」

 

そして、第一課の偉そうなおっさんは一息つくと、深刻な声色で言った。

 

「一時的に強力な魔術を使えるようになる上に、使用者を好戦的にする魔力子活性剤。加えて、人体を改造した異常な魔力子と筋力を持ち合わせる生物兵器。もし今後現れるようになれば、非常に危険だ」

 

 

 

その後、いくつかの質問をされて俺たちは解放された。兵舎を出ようとしたところで、ビオレッタさんが駆け寄ってきた。ふわっと良い香りがする。

 

「ウィステ!それにアコさん!」

「あれ?ビオレッタ、どうしたの?」

「私もちょうどこれから休憩だから、ご一緒しようと思って。ほら、この前ウィステが折角声かけてくれたのに、こっちは仕事でダメだったでしょ?」

「ビオレッタ~~~っ」

 

ビオレッタさんにウィステ先輩が抱きついた。というか、ビオレッタさん的にはオレ達は基本休憩している扱いなのか。いや、ほぼほぼ間違っちゃいないけど。こんなので給料貰っていいのかと思うけど。

 

「いよぉしっ、今すぐ第三課へいこう!すぐ行こう!ちょうど美味しいお菓子、買ったばっかなんだ~」

「あ、もしかして第1地区のマカロン?たしかすごく人気よね?」

「そうそう!えへへへ、たまたま買えたんだー」

「オレ、マカロンは思ったよりも食った気がしないから嫌なんだけど」

「アコ後輩はもう少し情緒ってものを身につけなさい、全く」

 

マカロンはサクサクしているのかそうでないのか、謎の色付き生地にクリームを挟んだ珍妙な菓子で、時々ウィステ先輩が『これはどこどこの店のものでうんぬんかんぬん』と言いながら持ってくる。あれよりかはチョコレートの方がいい。

第一課の兵舎入口付近でウィステ先輩とビオレッタがわちゃわちゃ喋っているのを眺めていると、

 

「ビオレッタさん!!!!!」

 

ものすごい勢いで寄ってきた眼鏡の男がいた。

 

「あら、ブレウ」

「お疲れ様です!お姿を拝見したので声を掛けさせていただきました!」

 

ブレウだった。『前回』の世界では嫌味をとばし、幾度となく俺を罠に嵌め、色々あって一時的にアイリスが第一課に保護された時も、オレのことをチビだの子供だの散々挑発するようなことを言ってきたやつだったので、何回か眼鏡割った。

 

しかし、そのクソ野郎がやたらキラキラとした感じでビオレッタさんに話しかけている。

いやみったらしいお前はどこに行った。『今回』の世界では総合訓練評価演習くらいのときしか関わりがないので、そんなことは言えないが。

 

そもそもビオレッタさんとブレウは一体どんな関係なんだ。

オレが彼らを交互に見ていると、ビオレッタさんが言った。

 

「ウィステには昔話したことがあると思うわね。彼はブレウ。家同士での付き合いがあって、歳の離れた幼馴染なの」

「いえそんな、ビオレッタさん。幼馴染だなんて……」

「そう硬くならないで、ブレウ。昔は本当の姉弟みたいに遊んだじゃない」

「本当の、姉弟……っ!」

 

若干動揺するブレウ。ほほう……。

それに追い打ちをかけるようにビオレッタさんは言った。

 

「減給処分にあった、って聞いたから心配だったけれど、元気そうでよかったわ」

「うっ……、それは」

 

減給処分?何やったんだ?

 

「アコさんとは同期よね?仲良くしてる?」

「はい、やっています!」

「はあ?」

 

この眼鏡即答しやがった。

レドやリーンはともかく、お前は今までほとんど関わりなかったぞ。

その瞬間、オレの隣に移動してきたブレウは、ビオレッタさんには聞こえないように小声でコソコソ言う。

 

「僕らが処分を食らったおかげで、君に救援が来たんだ!だから話を合わせなさいっ」

「何言ってんだお前」

 

よくわからないが、まあいいか。

 

「それなりに」

 

それなりに、今は特に仲もない。

それを聞いたビオレッタさんは嬉しそうに微笑む。

 

「そうなの。良かったわ、この子昔から友達が少なかったから……。アコさん、これからもブレウと仲良くしてあげてね」

「アコ後輩、あの女の子以外にも友達いたんだね!折角だしちょっとおしゃべりしてきなよ。私はビオレッタと行くから。じゃっ!」

「あ、ちょっと!?ウィステ引っ張らないで」

 

ウィステ先輩はビオレッタさんを連れて走り去ってしまった。

オレとブレウはその場に取り残されてしまう。さっさとオレもこんなところにいたくないから帰りたい。

 

「……」

「……」

 

ブレウは気まずそうな感じでこちらを見てくる。

オレは一応コイツのこと知ってるけど、こいつはオレのこと直接は知らないんだよな。

 

「……総合訓練評価演習以来ですね。あの時はどうも」

「……こっちも、まあ、あの時は色々ありがとう」

 

思い出したけど缶詰貰ったし。

 

「君のことは非常によく、リーンが話しています」

「あいつは一体何を」

「聞いていて特に中身はありませんね」

「じゃあなんで言った」

 

「……」

「……」

 

「お前、ビオレッタさんのこと好きなの?」

「ぶふっ」

 

あれ、違ったか?この前、感受性を育てろとグレイから押し付けられた小説の登場人物の中で、男に対してブレウと同じような反応した女が出てきて、好き好き連呼してたからそういうのかと思った。

 

「君は、なぜこんなところで、それほど親しくもない人に、こうも直球に聞いてくるんですか……!デリカシーが欠けている!」

「いや、この前小説で読んだやつだと思って」

「習いたての知識をひけらかす小さな子供か!?」

「失礼な奴だな、眼鏡割るぞ」

「失礼なのは君です、うわっ、やめ、眼鏡を奪おうとするな!!!」

 

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