属性マシマシ悪役TSっ子が頑張る話。   作:働かない段ボール

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本日二話目です。


3-5

【N.C. 998】

 

首都に帰るまでの道中は騒がしかった。レドはやたらと気を使ってくるし、リーンはベタベタしてこようとするし、ブレウは怪しいものを見るような視線を向けてくるし、ネロとヴァイスはマイペースだった。そこに第二課のオランジュという男が茶々を入れてくるのでオレの気は休まらなかった。

 

戻ってくるとまず村の襲撃に関する報告をした。ただし俺だけ別室に呼ばれ、そこにいたのはローザ課長一人だった。

 

「お疲れ様。アバドーンとアプシントスの抗争に巻き込まれるなんて、運が悪かったね」

「それはともかく。これを」

 

まず箱をローザ課長に渡す。

 

「ああ、お使いありがとう。オリバーは元気にしていたかい?」

「たぶんボケてるんじゃないですかね」

「ははは、そうか」

 

この人を見ていると誰かに似ているような気がする。その誰かはわからないのだが。

 

「それで、村で君はどのような動きをしたのかな?」

 

落石により、ルートを変更したことや変更した先で止まった村で抗争に鉢合わせたことを順々に話していく。

オレが壁を破壊してアプシントスの拠点に侵入したところなどでは、課長は爆笑していた。

 

「窓も扉もダメならって……、アッハハハ」

 

そして、ルコンと遭遇したことに加えて、ネフィリムの名前を出さずにあの化物が他にもいるらしいことを伝える。

 

「なるほど、その情報は大きいな。もちろんルコンはすでに拘束して尋問中だが、早くにそれがわかったことだけでも収穫だ」

 

 

 

こうして例のお使いから帰還したオレは、ウィステ先輩が帰った後の第三課で一人、まだ一度もちゃんと読んでいない絵本と向き合っていた。

あの食えない課長から渡されたものだ。やはり目は通しておこう。

 

しかし、絵本ね……。

 

何気なく本をひっくり返すと、裏には作者の名前があった。

 

『オリバー』

 

あのジジイかよ!

 

ローザ課長とオリバーは知り合い以上であることは間違いない。しかし、何を考えてあの老人はこんなものを作って課長にあげたんだ。

 

……とりあえず読もう。

 

ページをめくると、ファンシーな絵柄とともに子供向けの文章が並んでいる。

 

 

 

『むかしむかし おほしさま に のって たび に でた かみさま が いました。

 

かみさま は よにん の めしつかい を つれていました。

 

あるひのこと。

 

のっていた おほしさま は べつ の だいち と ぶつかってしまいました。

 

その しょうげき で かみさま の もちもの も のっていたほし も、

 

あちこち へ とんでいってしまいました。

 

めしつかいたち も ほしのかけら の なか で ふかいふかいねむり に ついてしまいます。

 

かみさま は きずついているのに ひとりぼっち に なってしまったのです。』

 

 

 

えええ……、初っ端から事故発生してるんだが。

降ってきた星が地面に突き刺さっているというシュールな絵が描かれている。

 

 

 

『あちこち へ ちらばった かみさま の おとしもの。

 

それ を ひろった もの が いました。

 

かれらは べつ の だいち の ものども でした。

 

ひろいもの で かれら は たくさんたくさん さかえました。

 

たくさんたくさん こわして、 だいち を よごしました。

 

かみさま は とても おこりました。

 

かって に じぶん の もの を つかった うえ、

 

わるい こと にも つかったからです。』

 

 

 

今度は小さい星を拾った人が喜んでいる絵だ。そして『かみさま』とやらが背中から怒りの炎を上げている絵が続く。背中が熱そう。

 

 

 

『おこった かみさま は めしつかいたち を おこそう と しました。

 

でも かれら は なかなか めざめません。

 

しかたがないので おとしもの を うばった ものども の なか で、

 

こえ が とどく もの を あらたな めしつかい に しました。

 

あらたな めしつかい に よって ほし の かけら を あつめさせ、

 

もといた よにん の めしつかい を めざめさせようとしたのです。』

 

 

 

『かみさま』が呼びかけている様子が描かれ、『めしつかい』が増えた。

 

 

 

『ながいながい じかん が たちました。

 

かみさま は よにん の めしつかい を めざめさせました。

 

ついに おとしもの を とりかえすこと も できたし、

 

よごれた だいち も きれい に なりました。

 

これ で もう あんしん です。

 

もう にどと おとすこと の ないように、 だいじに だいじに しまって たび を 

おわらせるのでした。』

 

 

 

最初の方に出てきた『めしつかい』が丸い石の中から出てきて、『かみさま』のところまで走っていく絵や、『おとしもの』である小さな星を集めていく絵、そして、その星を抱えて眠る『神様』の絵でこの本は終わっていた。

 

で、この絵本は何が言いたいんだ?

もう一度始めのページに戻る。

 

オリバーは隕石の上に北東の砦が建てられたとか言っていたり、課長の箱に収められた石は隕石の欠片の一部だったが……。

 

……降ってきた星。

 

これって隕石のことか?

『アプシントス』とのちに名付けられた隕石の落下を境に、人間には魔力子が宿って魔術が使えるようになった。

 

そして絵本。『かみさまのもちもの』を拾って使い、栄えた者達がいた、とある。

『かみさまのもちもの』が魔力子で、それで栄えたのが人間、と解釈できる。

 

じゃあ『かみさま』は何を表しているんだ。それに『めしつかい』も。

 

『アプシントス』って聞くと、隕石よりも先に『主』がなんだのとうるさいテロリスト集団の方が浮かんでしまう。

 

あ、そうか。『かみさま』をアバドーンやアプシントスのいう『主』ってことにすれば、話が見えてくる。『主』が奴らに声を届けて新たな『めしつかい』、つまりは配下にする。

じゃあ元いた四人の『めしつかい』は、『天使』?

『ほしのかけら』は絵では丸い石だ。ということは、オレがローザ課長に渡した隕石の欠片だろうか。

 

この絵本をこの解釈で読み直す。

 

隕石『アプシントス』には、『主』と『天使』がいた。しかし、衝突の衝撃によって、『主』が持っていた魔力子が世界中に散らばり、人間に宿る。人間は魔術が使えるようになって栄えた。自分の力を勝手に使われた『主』は怒って配下の『天使』を起こそうとしたができなかった。だから、条件はわからないが、人間の中から素養のある者を配下にし、そいつらがアプシントスやアバドーンになった。彼らの主張は「隕石によって人間は滅ぶべきだった」とか、「魔力子を還せ」とかだから、絵本の内容ともつじつまが合う。

 

そして最後の方。隕石の欠片を集めることで、そこから四人の『天使』が復活し、魔力子が『主』に戻ってきて人間が死ぬ。

 

『前回』の世界の最後の方で起きた出来事と重なる。

 

まるで予言めいたこの内容を描いたのはオリバーだ。オレにみたいに未来の記憶があるのか?

 

他に考えられることとして、彼は昔魔力子のことを少し研究していた、と言っていた。魔力子が『主』や『天使』由来だとして、そこを調べていくうちに辿り着いたのか?

 

もしこの本が正しいと仮定すると、アプシントスやアバドーンは隕石の欠片を探している。

クリュティエらもオレの知らないうちに探していたのだろうか。

 

隕石の欠片があるとわかれば、奴らを釣る餌になる。課長はそれを見越して、自分の手元に持ってきたのかもしれない。

 

オレに本を渡したのも、北東の砦に行かせたのも、これに気がつかせるため?

 

でもなんで直接言わないんだ?

 

内通者がいるかもしれないから?いや。それはもうわかっている。

 

考えろ、考えるのを止めるな。

 

オレはもう、オレの考えなしの行動のせいで、どうしようもないことになってしまうのは嫌なんだ。

 

 

 

……非常に近いところに、いる?

 

『おぬしは一つ忘れているぞ、第三課もだ』

 

以前猫と話したことが頭をよぎる。

背中に嫌な汗が流れる。

 

 

 

まさかウィステ先輩が疑われているってことなのか。

 

 

 

正直、その可能性は考えたくなかった。

 

 

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