属性マシマシ悪役TSっ子が頑張る話。   作:働かない段ボール

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本日二話目の投稿です。

最初はこんな風にするつもりはなかったんですが、気がついたらこうなっていました。
胸糞注意です。


安息の地

私に逃げる場所なんてなかった。

 

かえるばしょがほしい

 

小さいころ、母に連れられて訪れた大きいお屋敷。

そこで、母から「新しいお父さんだよ」と男の人と会わせられた。

その日から私はその大きいお屋敷で住むことになった。

お稽古やお勉強で毎日が忙しかった。

 

母は私を見てくれなくなった。いや、以前から私のことなんて見ていなかったのかもしれない。

 

毎日毎日、誰かと話すことは事務的なことだけ。

 

使用人が噂しているのを聞いた。

私は連れ子だから跡継ぎのことを考えると、旦那様も対応に困るでしょうね、と。

 

ある日、名前を呼ばれた。

 

『新しいお父さん』に部屋に呼ばれた。

 

どこにもいきたくない

 

母は私を見ていない。私が父を避けても、

 

「あなたとお父さんはもう親子なんですよ?いつまでもわがままを言わないで、家族として接してあげなさい」

 

家族って何?

 

それ以外、母は私とほとんど話すことはなかった。

 

ほんとはここにいたい

 

はやくここから逃げたかった。

 

でも、ここは広いはずなのに狭かった。

 

息ができない。

 

逃げる場所なんてなかった。

 

誰も私を見ていない。

 

『新しいお父さん』は私の名前を言って、時々部屋に呼んだ。

 

私のことを見ているわけではなかった。

 

こえがでない

 

お稽古の中で、私は魔術の素養があると言われた。

軍で働く魔術師にもなれるだろうと。

それを聞いた『新しいお父さん』は私を軍の魔術師を育成する学校に入れた。

体よく追い払うための口実だとわかっていたけれど、ここからいなくなれるならどうでもよかったから、私は受け入れた。

 

わたしをなかまにいれて

 

でも、離れたはずなのに。

 

ずっと息苦しかった。

 

ひとりはさみしい

 

学校では良く話しかけてくる女の子がいた。

いつもいつも幸せそうにしている。楽しそうにしている。

 

どうして?

 

私はこんなに苦しいのに、なんでこの子は幸せそうにしているの。

私と何が違うの。

私をその名前で呼ばないで。

 

わたしをみつけて

 

ある日、たまたまつまずいて転んだ。

誰かから「これがここに置いてあったなんて、運が悪かったですね」と言われた。

 

悪いことに遭ってしまうのは、運が悪かっただけなの?

 

幸福なのか、不幸なのか、いったい誰が決めるの?

 

誰がその運を定めるの?

 

ふつうのしあわせがほしい

 

実家からの便りで、今度弟が生まれるらしい。

長期休みに帰って来なさい、ともあった。

久しぶりのあの場所にいくと、知らない小さな男の子がいた。

『新しいお父さん』の知人の息子だから、相手にしてあげなさいと言われた。

私にはもうすぐ弟が生まれる。

『家族なんだから』という言葉が重くのしかかる。

 

息ができない。

 

うまく接するための練習だと思って会話をした。

彼は先妻の子で、複雑な立場だった。父とうまくいかずにいるらしい。とても不幸そうにしている。

 

私と似ていた。

 

よかった、私は一人じゃない。

 

長期休みの間内心退屈だったが、彼のお遊びに付き合ってあげた。

お友達と仲良くね。

心にもないことも言った。

 

わたしはみにくい

 

学校の、あの女の子は相変わらず私に話しかけてくる。笑顔で私に接してくる。私の名前を呼ぶ。

幸せそうだ。憎い。

でも私を見ている。

 

だからさむくても

 

次の長期休み。

あの場所に再び戻ると弟が生まれていた。

母に『新しいお父さん』、弟で幸せそうにしている。

その中に私はいなかった。部屋に呼ばれることもなかった。話すこともなかった。

 

それでもこの家に私の逃げる場所はない。

息ができない。

苦しい。

 

おうちにはいれない

 

その次の休み。

家同士の付き合いのためのパーティーがあった。

 

「君は軍魔術師学校に行っているそうだね。それでも時々お父上やお母上に顔を見せてあげるんだよ。家族なんだから」

 

知らない人間からそう言われた。

家族を愛せない私は普通じゃないの?

どうして普通を私に押し付けるの?

苦しいよ。

どこにも逃げられない。

 

もういっそ、私が逃げることができないなら、その代わりに皆、いなくなってしまえばいいのに。

 

みんなといっしょにいたい

 

あの小さな男の子は毎年私に会いに来た。

気がつくと、彼は明るくなっていた。家族の一人とうまくいくようになったと喜んで報告してくれた。

なんだ、私とは違って幸せだったんじゃないか。

 

ウソつき。

 

たすけて

 

「あねうえー」

 

弟は歩いて喋るようになっていた。

 

「あなたはこの子のお姉さまなのですから。優しくしてあげてね」

 

穏やかな目で弟を見ている母。

 

「仲が良いのはいいことだ」

 

朗らかに笑う『新しいお父さん』。

 

この頃から、“…えせ、……せ”と何か聞こえるようになっていた。

 

わたしをひとりにしないで

 

学校を出て、国家魔術師になって、しばらく経った。

彼女はここでも一緒だった。少し幸せそうじゃなくなった。

最近、誰かを、あの男を見つめていることが多くなった。

今までずっと私のこと見ててくれたのに。

 

許せない。

 

憎い。

 

わたしのこえはどこにもとどかない

 

あの子は第二課からいなくなった。

第一課の誰かが殉職してその責任を取るため、と言っていた。

長らく見つめていたあの男から、目を逸らして逃げるようになった。

私は私と同じ幸せじゃない彼女を励ました。

彼女は私には会いに来てくれる。私を見てくれる。

 

それでいい。

 

この気持ちはなんだろう。

いつまでも見ていてほしい。

私と一緒にいてほしい。

 

たすけて

 

そうか、これが愛なんだ。

 

だれかたすけて

 

私は彼女を愛してるんだ。

私も誰かを愛せるんだ。

 

わたしはこえのだしかたもわからない

 

久しぶりにあの場所に戻った。

弟はまだまだ子供だが随分成長していた。

母も『新しいお父さん』も、みんなみんな幸せそう。

 

弟から言われた。

 

「なんで、姉上は父上や母上と距離をとっているんですか?家族なんですから、仲良くしましょう?」

 

どうして?

 

なんで家族だからって理由で強制されるの?

 

私の場所はどこにもないのに。

 

かえりたい

 

弟が庭の池に足を滑らした。

水の中でもがいている。空気を求める魚みたいに口をパクパクさせている。

次第に動かなくなって沈んでいった。

 

でも

 

このとき“かえせ、ほろぼせ”とはっきり聞こえるようになっていた。

 

もうかえれない

 

母も『新しいお父さん』も弟がいなくなって悲しんだ。

でも私を見てはいない。

いなくなった弟の部屋にすがりついている。

 

どうして?

 

母が私を見た。

 

「あの子が……、あなたの弟が亡くなったのですよ!?あなたはなんでそんなに冷たいのですか!??!?こんな子に育てたつもりはなかったのに」

 

さむいよ

 

息が止まった。

 

あたたかいおうちにはいりたいよ

 

無意識のうちに知らない場所に私は足を向けていた。

 

「新しい同志ですね」

「どうか『主』に祈りましょう。そして還りましょう」

 

私と同じ人がたくさんいた。みんなあの声が聞こえていた。

私に幸運をくれるのかな。

 

うそ、ここはみんなひとりぼっち

 

久しぶりに部屋に呼ばれた。

 

『新しいお父さん』が死んだ。

 

母も死んだ。

 

とても苦しんでいた。

 

かわいそう。

 

ごめんなさい

 

私はこの場所で初めて息ができた。

 

ああ、もっと幸せになりたい。

 

とうめいなわたしたち

 

彼女の近くに変な女の子がいるようになっていた。

彼女は昔みたいに明るくなって、また、あの男を見るようになっていた。

 

今度はあの男がいなくなればいい。

 

なにもかもすりぬけた

 

あの男がいなくなって彼女は落ち込んでいた。

だからなるべく彼女のそばにいてあげた。

どうか私だけを見ていてほしい。

 

なにもかもとおりぬけた

 

私が同志たちの仲間であることがバレないように、同志の一人に私たちを襲わせた。

彼女はやっぱり私をかばってくれた。嬉しくて涙が出る。

 

彼女は私を見てくれている。私だけを見ていてほしい。

 

他の人間なんて誰もいらない。

 

愛してる。私は彼女を誰よりも、殺したいほど愛してる。

 

ウィステごめんなさい

 

愛しているけれど憎い。

 

うまれてこなければよかった

 

憎いけれど、愛している。

 

 

 

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