属性マシマシ悪役TSっ子が頑張る話。   作:働かない段ボール

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【N.C. 997】

 

 オレは教官から呼び出された。

 

「気がついていると思うが先日の演習の件だ。今後正式に発表があるが、先に当事者には伝えておこうと思ってな」

「はい」

「演習中に現れ、君が倒してくれた化物。あれは『アプシントス』の手の者だということがわかった」

 

 アプシントス。

 

 いくつか存在するテロリスト集団の中でも、特に力を持っているところだ。人が魔術を使えるようになった境の出来事である、隕石落下。この隕石の名前を学者は『アプシントス』と名付けた。それを自分達のグループ名として掲げ、あちこちでテロ行為を起こしている犯罪者集団だ。実のところ、ただ犯罪者集団どころではなく、人類はあの隕石で滅ぶべきであったと主張して、今からでも滅ぼそうと企んでいる、とんでもないグループであるのだが。

 

 教官いわく、未来ある学生を手にかけることで、国に対する揺さぶりを狙っていたらしい。

 

 呼び出しのあと、オレは『前回の世界』での出来事を考えていた。確かに『前回』でもアプシントスは暴れまわっていた。だが現段階では、アプシントスにネフィリムはいなかったはず……。

 

 しかし、俺はこの集団について、あまり情報を持っていない。なぜなら俺は前回の世界で、アプシントスと敵対する犯罪者集団に所属していたためだ。

 

 その名も『アバドーン』。

 

 なぜ俺がそこにいたのかはともかく、アプシントスと並んで力を持っており、人間は魔力子という力を主に還して滅ぶべきだという、これまた危ないグループである。

 

 アバドーン、アプシントスは、どちらも己が神の使いであると言って引かず、非常に仲が悪い。ただし、どちらも人類滅亡を掲げているので迷惑きわまりない。

 

 オレがわかっていることは、こいつらのいう『主』という存在が、理由は知らないが、【N.C. 1000】に世界中の魔力子を人間から取り上げて殺そうとしていることだけである。そして、アバドーン・アプシントスの双方が『主』とやらを支援しており、対抗しようとするこの国の軍と衝突するのだ。

 

 軍内部にはアバドーンの内通者がいる。『前回の世界』でそれが誰かを突き止めることはできなかった。しかし、その内通者のせいで、多大な犠牲が出てしまった。さらにはアプシントスによって、自らを『天使』と名乗る4体の化け物が呼び出されてしまい、戦況が悪化する。

 

もしもアバドーンやアプシントスを早く潰せていたら。

 

もしも軍の内通者がわかっていたら。

 

もしも『天使』が現れなければ。

 

アイリスは―――。

 

 ともかく、オレには情報も使えるコネも時間も何もかも足りない。すでにアバドーンの下位団体には潜入できているものの、学校外での時間でやれることにも限度があるし、未来が知っている通りになっているとも限らない。だから、要所要所を確実に潰す。

 

 そうすることでしか、アイリスには近づけないのだ。

 

 

 

「アコさん!一緒に講義を受けましょう!」

 

 三年になると座学は少なくなってくるが、ゼロというわけではない。講義室は自由席なので、俺は端の方で地味に座っていた。……地味に座っていたのだが、リーンに元気よく話しかけられたことで、せっかく消していた気配が露になってしまった。周りの人間からひそひそと、最近リーンに話しかけられてるアイツは誰だとか、確かアコとかいうたいしたことないやつだとか、噂話が聞こえてくる。

 

「いいよとか言わなくても、すでに隣に座ってんじゃねーか……」

「えへへ」

 

 皆席を一つ開けて座っているのに、この女はピッタリ隣に座ってくる。なんか近い気がする。しかもリーンが来ると、他のやつらも来るのだ。

 

「リーン、君ってやつは……。そちらのアコさんとやらが困ってますよ」

 

 槍型MARGOT(マーゴット)を用いた中近接戦を行い、参謀としての能力も発揮する、ブレウ。

 

「今日もネロはサボりだな。レド、ネロがどこ行ったか知ってるかい?」

 

治癒魔術を得意とし、弓での援護も可能である、ヴァイス。

 

「見てないなあ」

 

 そして、リーダー格の大剣使いのレド。こいつらに加えて、ネロという自由人な大鎌死神女の計五人が同期の中でも特に成績が上位であり、後に国家魔術師第一課期待の新人として活躍することになる。今はまだ学生だが、本当に物騒で目立つ五人である。このうち、演習中ネフィリムを倒したのを目撃したのはリーンとレドだ。他の目撃者は成績上位者ながら彼らほどではない人物である。

 

 リーンに加え、ブレウたちもちゃっかり近くに座った。レドなんかは一瞬こちらを見て、ニヤリと笑ってくる。

隣に座ったリーンはこちらの様子をうかがいながら、おずおずと聞いてきた。

 

「アコさん、私が近くにいると困りますか……?」

 

 リーンに関しては困るっていうか怖いんだけど。

 

 なるべくトラブルを起こさず、距離を取らなければ。

 

「ええと」

「私、アコさんとお友達になれたら嬉しいなって」

「友達?」

「はい」

 

『いい、アコラス?私と一緒ばかりじゃなくて、他に……うーん、そうね、友達くらい作りなさい』

 

 遠い昔に言われた言葉がフラッシュバックする。

 

 友達。

 

 言葉の概念としては知っているが……。

 

「友達作ったことないからよくわからない」

「じゃあ!私が初めてのお友達ということで!」

「はあ」

 

 ハッ。いかんいかん、流されてしまった。何とか訂正しようにも講義が始まってしまって私語は許されず、リーンのお友達発言修正はかなわなかった。

 

 しかし、講義後。そさくさと人に見つからぬよう学舎内を移動していた俺に声をかけてきた者がいた。

 

「おーい」

 

 あの演習時を除いては、今まで人気のない場所で昼食を取っているときにしか話したことのなかったレドであった。

 

「なんだよ」

「いや……、お前って、人と喋ってても全然違うこと考えてるよな。全くこっちのこと見てないっていうか」

「何言ってんだお前」

 

 レドはひとしきり悩んだ後、

 

「そうだな。もうちょっと、周りをちゃんと見たほうがいいと思うよ」

 

 そう一方的に言って去って行った。

 

「なんだったんだ、あいつ?」

 

 世の中わからないことだらけだ。

 




登場人物や設定が増えてきたのでまとめ

・アコ(アコラス)…主人公。少年期からの逆行のため、圧倒的に人生経験不足なシスコンボーイガール。この先生き残れるのか。

・レド…勘がいい。アコ発見機と化した以外今ところ特に何もない。

・リーン…アコの中の少年成分を敏感に感じ取ったショタコン。レズではない。ショタコン。

・ブレウ、ヴァイス、ネロ…新しく出てきた人たち。これからぼちぼちでてくる。

・アバドーン、アプシントス(団体)…頭のおかしいテロリスト集団×2。俺たちこそが神の使い!主は人間嫌ってるからみんな死んじゃえYO!と主張して暴れまくるので迷惑。アバドーンは魔術なんて使うな!その力神に返しなさい753な人たちで、アプシントスは隕石で地上はちゃんと浄化されるべきやったんや…な人たちで若干違うけど大体同じ。

・ネフェリム…人間性なんていらねぇ!人道なんて知らねえ!がコンセプトの改造人間。嬉しくない先行登場。

・アプシントス(隕石)…ある日降ってきてたくさん生物が死んだ。これを境に人間や特定の素材に魔力子と呼ばれる不思議な物が宿るようになって、人間は魔術を使えるようになった。これから約千年後が物語の舞台。

・魔力子…今は人間みんな大なり小なり持ってるはずの不思議なエネルギー。エネルギーなのか物質なのかはっきりしてほしい。保有元から離れると拡散してしまう性質がある。

・魔術…魔力子を元に色々な現象が起こせる。魔術は魔力子の特性から人体付近でしか発動しないので、魔術師は基本的にみんな近接戦闘。

MARGOT(マーゴット)…体表面で魔術が発動したら危ない時もあるので、それを防ぐためのデバイス。魔力子を含有できる材料を用いて出来ている。そこそこ高価。剣や盾など様々な種類がある。
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