属性マシマシ悪役TSっ子が頑張る話。   作:働かない段ボール

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お久しぶりです。
更新が滞り、申し訳ありません。


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【N.C. 999】

 

ネロがつかつかと歩いてくる。やけにその足音が耳に響いた。近づいてくるなら、警戒しないといけない。だから音をだけでもと、肩や四肢に熱さを感じながら耳をすませる。

 

……何かざわざわと聞こえた。

 

“あっちでも大きな音が聞こえたぞ!?”

 

“なんだろう?騒ぎでも起きているのかな?”

 

人の、話し声?

 

目に見える範囲に、そんなことをいっている人はいない。

 

じゃあ、もっと遠くに?

 

そう気づいたとき、ぐらりと世界が切り替わった。

 

「え」

 

暗いはずの視界が異常なほど、はっきりとする。

 

落ちているカード。地面に染み込んでいく誰かの血。

 

たくさんの音が聞こえる。

 

走る音や話し声。

 

地面の冷たさも、口の中の血の味も、どこかの家の暖房の煙の臭いも、はっきりと感じ取れる。

 

頭がぼぅっとする。

 

体のあちこちが痛い。

 

気持ちが悪い。

 

何か大切なものが抜け落ちていく───

 

「…しょう、お師匠!」

「……あ」

 

いつの間にかグレイが近くに来ていた。

 

「大丈夫ですか!?今ぶっ倒れましたけど!」

 

ほんの数秒か数十秒か。意識が飛んでいたみたいだ。その間に、ネロはオレの横を通りすぎ、尻餅をついた状態で座り込んだイルの前に立っている姿など、風景全てが横向きに見えた。起き上がり、ホッと胸をなでおろす。

 

「ひ、久しぶり~。げげげ元気にしてたっすか?」

「死ね」

「いつからそんな物騒な言葉を!?」

「死ね」

「ひえっ」

「死ね」

 

なんだあいつら……。知り合いだったのか?

それにしては、ネロから殺気が伝わってくる。

 

「さっきからあたしに対して、同じ単語しか言ってないっすよ!さては、久しぶりの再会に恥ずかしがっちゃっ!?!??」

 

ネロが片手に持っていた武器を投げる。その軌道は、イルの後方、ネフィリムの頭を貫通していた。オレを無視してどこかにいこうとしていた個体が戻ってきていたのだ。

一撃とかマジかよ……。

 

「鎌は投げる武器じゃないっす!」

「黙れ」

「ひゃい」

 

振り撒かれる殺気は、彼女の印象とはあまりにも異なっていた。感情的になっているのが伝わる。オレもちょっとビビっていると、ネロはやや振り向いてきた。

 

「これの仲間は?」

「そ、そこでぶっ倒れてるやつ」

 

指差した者を見るが、無言・無反応だ。……何か言えよ!怖い女は苦手なんだよ!

逃げようと四つん這いになった後になぜかこちらを見ているイルの頭を、ネロは後ろからつかみ、

 

「あああああああ!そっか、大本命に規格適合外!?!!?あ!?ネネネロロロロ、あわわわわわ、はな、話を」

「今から聞く」

「助けぶふぁ!?」

 

顔面を地面に叩きつけた。

 

「挑発したのはなんで」

「挑発!?なにそげぇ!?」

 

次は無理やり立ち上がらせた後、腹に膝を入れる。

 

「ああも信号をチカチカと」

「んあ!?そういうお茶目心いらなびぃっ!!!」

 

拳を振り上げ、歯が飛んだ。前から思ってたけど容赦ねーな……。

まあ、いい。こちらに注意が向いていない。

 

「あのお姉さん怖───ぐえっ」

 

ひっそり立ち上がる。グレイを抱え、吐瀉物にまみれた(ドーラ)を回収に向かった。

 

「ヒビ……?」

 

あれだけ力を込めても傷一つつかなかった真球には、小さくだがひび割れが入っていた。

 

「鞄貸せ」

「え?」

 

返事を待たずに鞄に手を突っ込み、小さな箱を取り出す。そのまま(ドーラ)を放り込んだ。

そのとき、視界の端に奇妙なものが落ちているのを見つけた。規則的に穴の空いたカードだ。なんとなく無事なほうのポケットに突っ込む。

 

さて、周囲は街灯が壊れ、建物の壁がへこみ、地面のレンガ畳の部分は損壊。この暴れっぷりから、憲兵やらなんやらが来るのは時間の問題だ。しかもそれよりももっと嫌なものが来る気がする。その嫌な予感のせいか、頭が割れるように痛い。流石に体が限界だ。またさっきみたいに意識が飛ぶようなことがあれば、あの女の息の根を止めるよりも、ここに居座るリスクのほうが大きい。さっさと逃げたい。

だが、

 

「ひっ、こんなに殴られたら死んじゃう!死んじゃうからっ!!!」

「死なせない。死んで逃げられると思うな」

 

ネロの言葉に思わず、動きを止めてしまった。

 

「どんなに殴ったとしても、どんなに蹴ったとしても、絶対に殺さない」

「そ、それって」

「お前たちに最大限の苦痛を与えてみせる」

「ひいいいい!ふ、復讐っ、憎しみとかなんにも生まなひっすよ!ひぐぅっ!!!?!?」

「そうね。だから早くケリをつけて、次に進む」

 

また余計なことをしゃべろうとしたイルの口元を窒息させる勢いで抑え、魔術で生成した岩で地面に拘束している。

 

「ねえ」

 

ネロの様子を凝視していたのに、彼女が声をかけてきたことに対して、すぐには反応できなかった。

 

「な、なんだよ」

「あなたもおとなしくしてくれる……?戻ってくれば今なら罪状五割引で特典付き」

「ごわりびき」

「半分」

「そんくらいわかるわ」

かえりたい

突然何言ってんだ。戻るってどこにだよ。

ふるふると首を振ると、ネロは舌打ちした。

 

「面倒」

 

オレに対しても、なんかちょっと怒ってる?

 

「私、あなたのことがよくわからない。あなたは効率的にアバドーンやアプシントスに攻撃を仕掛けている。他に不穏分子の集団なんていくらでもいるのに。あそこまでやるのは、何かが目的?……復讐?」

「お前こそ、復讐かよ」

「もちろん。……こいつが手助けしたせいで、私の大切な人が、みんな酷い目に遭った。村一つ丸ごとダメになった。だから、しっかり復讐する。……でも、いつまでもこんな奴らに精神を捕らわれるのも不愉快だから、さっさと確実に済ませるつもり。あなたもそうなの?」

「そんなのどうでもいいだろ」

「けれど、もしもそうなら、余計にわからない」

 

オレは、こんなにベラベラ喋るネロのほうが、よくわからなかった。

 

「わざわざ脱走する大きなメリットがない。そのまま居座ったほうが、合法的かつ組織的に潰すのに加担できる。ちょっとやり過ぎても、戦闘中の不慮の事故でいくらでもごまかせる」

「今日はよく喋るんだな……」

 

だってこいつは、口数が少なくて、いつも眠たげで、感情的に全然ならなくて、意味わかんないこと言って、怒りとは無縁そうで───、

 

「……?私はいつも通り。……だから、あなたのやっていることは結果的に非効率ではないかと感じ───え」

 

もうこいつやだ。

 

「うるせー……」

 

ネロの驚いた顔が見えた。

 

「お、お師匠」

 

グレイの困惑した声も聞こえてはいた。

 

「うるせー……」

 

しかしオレはそれらに構わず叫ぶ。

 

 

 

「うるせーんだよ!お前も他も全部うるさくて、目障りだっ!!お前なんてっ!お前なんて、知らないっ!!!」

 

やさしかったあのばしょにかえりたい

 

悲しい世界なんて、本当は見たくない。

 

 

 

オレはグレイを、斜め上に向かって高くぶん投げた。

 

 

 

「なぜぇぇぇぇぇええええええっ!?!??」

 

絶叫に反応したネロはすぐさま跳躍しようとする。身体強化は全く防御にまわしていない。何かも隙だらけだった。

 

そんな彼女の横腹を飛び蹴りした。わかっていたのだ、こんな行動取ることくらい。グレイをキャッチしたところで、腹を抑えている姿が見える。相当効いていることだろう。

 

「中途半端なんだよ……」

 

さっき落とした拳銃を拾い上げ、残弾の確認をする。撃ったら煙出ちゃうんだよな、銃って。地形によってはとても目立ってしまう。煙が出ないタイプの火薬とかあればいいのに。

 

「ちょっ、今回はそこまでやらなくても……!?」

 

グレイの声を無視し、うずくまる彼女に銃口を向けた。

 

ああ……。

肝心なとき、いつもこんなふうにしている気がする。

『あの時』も、オレがやらなきゃと思って、誰かともみ合いになって、すごく嫌な気分だった。

 

当たるかな。当たらないかな。でも、下手くそだからな。

 

……オレ、何やってんだろ。

 

 

 

§ § §

 

 

 

無事町を出たオレたちは、そのまま闇夜に紛れ、数時間にわたり移動した。そして、明るくなってしばらくした今は休憩中だ。気持ち悪さは走っているうちに小康状態になっていた。

 

「あんな真っ暗闇の中、よく走れましたよね……。ところで、なんで僕投げたんですか?」

 

手首についたままだった手錠を、バキバキ壊して埋めていると、グレイが不満げに言った。

 

「ふんっ、ビックリするだろ?だって人間は……投げるものじゃないからな」

 

質問にきちんと答えたつもりだったのだが、呆れた顔をされる。

 

「お師匠って、たまに謎の自分ルールがありますよね」

 

……むっ。

 

ネロは基本的には淡々としている。感情込めずに容赦ないところもあったりする。だが、目の前で危機的な人間がいれば、とっさに助けてしまうだろう。中途半端なアイツの行動を考えるに、高めに投げれば足場を作って跳躍し、受け止める可能性が高いと踏んだ。すなわち、ビックリさせて隙をつくる作戦というわけだ。

 

まー、わかってもらいたいわけじゃねーし、言わなくていいや。

 

「ぶしっ」

「ああもうくしゃみして。コートビリビリ肩むき出しでびっくりしましたよ。持ち物ほぼ全部ないですし。一体何があったんですか?」

「中の人が違ったからもういいやと思って、殴ったら反撃にあって痛い目みた」

「さては、真面目に答える気ないですね?」

「ちょっと取っ捕まって、身ぐるみはがされた」

「身ぐるみをはがされるのは、ちょっとではない……」

 

ぐぬぬぬ。

悔し半分恥ずかしさ半分に、帽子を深く被ろうとして、

 

「あだっ!」

 

指を額にぶつけた。

 

「何やってんですか……。あ、帽子もない。お気に入りみたいだったのに」

「別に」

「お金貯めて買った、例のパッと見わからない身長かさ増しブーツは取られなくてよか、いったぁっ!?」

 

からかってきたクソガキを軽くつねって黙らせる。

論争には実力行使で乗り切るのが、オレのやり方だ。覚えておけ。

 

「ほっぺたつねられたぁ……。口論に勝てないからって、すぐ手を上げるんだから」

 

頬をさするグレイはこじんまりと座っている。その姿をみて、ネロに抱えられていた光景が目に浮かんだ。

 

どういう状況で出会ったのか聞いてみると、

 

「ネロ?あのお姉さんのことでしたっけ?あの人なら、道案内上の成り行きで……」

「鞄内はなかなかに揺れて、スリリングな体験であったぞ」

 

よくわからなかったので、ネロと会ってからオレと合流するまでの話をふんふんと聞く。あいつ、どこでも迷子になってんな。

 

「ネロさんとは知り合いだったんですか?」

「まぁな。……ただの顔見知りだ」

「本当ですか?」

「ほんと」

「ごまかしてません?」

「ごまかしてねーよ。しつけーな」

 

探るような目で見られる。……ホントのところ、あのあたりは会いたくない。レドとリーン、ウィステ先輩は特に会いたくない。胃がひっくり返りそうになる。

 

胃酸の代わりに息を吐くと、グレイは突然奇妙なことを言った、

 

「……でも、突然泣いたじゃないですか」

 




これは言い訳ですが、長期間更新できなかった理由の半分は反TS派の友人にレスバトルで敗北したためです。

「TS(男→女)なんて、結婚させたいだけじゃん!?結婚させたいだけじゃん!!!!!」というオンライン越しの叫びの勢いに対して、「てぃ、TSって、必ずしも関係性をみるものだけじゃないし?TSした子にスポットを当てて、その子単体を愛でるっていうのもあるし?」と苦し紛れにしか反論できませんでした。

レスバトルはノリの良い方が勝つのが世の常です。友人にはTSが好きであることを言えていない(TS物の感想欄のメス堕ちコールを見るのが好きとしか言ってない)自分が負けるのも当たり前です。

このような情けない自分にうんざりした私は、今までずっと見続けていたハーメルンを絶食することで、TSジャンルとは今一度何なのかと自分自身に問いかけることにしました。

しかし、わかったのは、TS、ないとつらい……。ハーメルンは閲覧我慢したけどなろうでTS物読んじゃったわ……。生活必需品だったわ……。ていうか精神的GLなら、世界観によっては結婚が目的ではないのでは?それを百合好き反TS派に啓発すればよかったのでは?……自分の脊髄に恥じました。

そもそもTSは、精神的GLも肉体的BLも百合も先天性も後天性も一次も二次も転生も男→女も女→男も「俺は絶対メス堕ちしない(偽)」も「俺は絶対メス堕ちしない(真)」もあります(メスは概念です)。なんてことだ、TSは宇宙だったんだ……。TSは、自由だ……。気がついちゃった……。

今度またレスバトルになったら、反TS派にこのことを啓発したいと思っています。

そして、これだけは声を大にして言いたい。

結婚の何が悪いんだよオオオオオオ!
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