属性マシマシ悪役TSっ子が頑張る話。   作:働かない段ボール

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TSモノを求めて、スコップを片手にサイトの奥に進んだ我々が見たものは、ハーメルン10周年おめでとうパーティー会場だった……。



12-1

夢を見た。

 

今日はいつもよりも、ふわふわしていない。不純物が混ざったような感覚だった。

 

うわ最悪

夢渡りに巻き込まれた

「姉様」

 

「姉様」

 

「どこにいるの、姉様」

 

 

 

一人の少女がさ迷っている。

 

 

 

「お前のせいよ……。お前なんて、死んじゃえばいいのに」

 

 

 

彼女は、憎しみのこもった目を向けた。

 

 

 

「もう二度と、姉様と私に関わらないで」

 

 

 

 

 

 

広くはない借間。そこには二人の人間がいた。

 

一人は10代前半くらい少女だ。

 

「あら、姉様?おでかけですか?」

 

もう一人は、少女とは少し歳の離れた女性。傘を手にしていた。

 

どうやら二人は姉妹のようで、仲良く話をしている。

 

「ええ、ちょっとそこまで行ってくるわねぇ~」

「お気をつけてください。まだ日があるとはいえ、最近は事件が多いですから」

「もちろん。心配してくれてありがとう」

 

出入り口のドアノブに手をかけてから、女性は振り返った。

 

「■■■も一緒に焼き討ちしにいく?」
 
 マイア
                   

「姉様!?」

 

少女は必死になって、突然凶行に走ろうとしている姉を引き留める。

 

「焼き討ちは気軽にするものではありません!!!」

「本場の焼き討ちをみたことあるし、自信はあるわよ~?」

「技術的に可能かどうかを言っているのではないです!」

「あっ、ちょ、■■■ちゃん?ねえ?どうしてお姉ちゃんに関節技をしかけているの?ねえ、あいたたたたたたたたたたた」

 

関節技から解放され、息をゼイゼイとしている女性に向かって、少女は眉をひそめた。

 

「姉様は少し貧弱すぎます。やはり筋肉です。筋肉を鍛えましょう」

 

少女は歳の離れた姉のことが大好きだった。だから、戦闘能力の全くない姉を守るべく、強くなろうとした。その決意の末にたどり着いたのが、

 

「姉様。大事なのは魔力子の量でも、高威力の魔術でもありません。ステゴロです」

 

肉体言語であった。

 

本当にこんな強くなるなんてお姉ちゃんビックリ、と最近妹の将来になんとも言えない気分になっていた姉は困惑する。

 

「えっ。え~?別にそこまで(筋トレ)する必要ないんじゃない?」

「この間こけて、肥溜めに落ちたばかりではありませんか。軽率にこけないために鍛えましょう」

「……肥溜めに落ちないための、策が一つあるわ。肥溜めを爆破するの」

「姉様?」

「そこにあるから、落ちる人間が発生するのよ。そもそもなくなれば良いんだわ。きっといつか誰かが爆破してくれる……!いぇ~い、やっていいよ~」

「ノリで後光を出すのはやめてください」

 

自信満々な顔をして背後を光らせている姉に、少女は眉をひそめる。ごまかされているような気がしたのだ。焼き討ちや肥溜め爆破の野望とは別に、本当の用事があるのではないか、と。

 

妹の不安を感じ取った姉は優しく微笑んだ。

 

「放火も爆破もしないわ。本当は、茶葉を買いに行きたかったの」

「そういえば、そろそろなくなりそうですね。でも今すぐ買いに行かなくても……」

「■■■が淹れてくれる紅茶は美味しいから、一日でも飲めなくなる可能性があるなんて嫌だわ」

「姉様……。そんなふうに言っていただけるなんて、嬉しいです」

 

昔から姉は少女の淹れた紅茶を誉めてくれた。

 

だから、故郷とは風土も水すらも違うこの土地で、少しでも負担が減りますように、喜んでくれますように、と少女は淹れ続けていたのだ。

 

それはそれとして、気になる点があったので、少女は出掛け際の姉に尋ねた。

 

「こんなに晴れているのに、傘を持っていくのですか?」

「ふふふ。今日はね、降るのよ、雨」

 

 

 

石造りの町並みの先。そこで門番をしていた男が顔をあげた。

 

「また君か」

「ふふん。買い物帰りに万年左遷男の顔を見に来てやったの~」

「万年左遷……」

「川なし海なしのこんな北東の町にいるんだからそうでしょ」

「そうだな」

 

雨の音だけが響く。

 

しびれを切らしたように、女性は口を開いた。

 

「……でも、いつも通り雑用をこなしてしばらくしたら、ツキが巡ってくるわ。残念ね~」

「そうか。君が言うなら、そうなのだろう」

 

嫌味を言っても気にもせず、のらりくらりとかわされる。それが女性にとっては少しモヤモヤした。

 

「少しくらい怒ったり疑わしく思いなさいよ」

「君が言うことは当たるからな。その必要はない」

「…………うぐぐっ、今日のところは覚えておきなさい」

「何をだ」

「あとそれから!」

 

女性はビシィッ!と指を差す。

 

「『君』じゃなくて、■■■■■」
 
          エレクトラ
                   

 

初めて男性は表情を変えた。女性はそれを確認し、内心ほくそ笑む。

 

「しかし」

「あなたがそう呼んだのだから、ちゃんと最初から最後まで、その名前で呼びなさい」

 

 

 

幸せな時間が過ぎていく。

 

 

 

「うがぁぁぁあああっ!姉様!この男、人の話を聞きません!」

「あらあら」

「■■■■■、君の妹は元気だな」

「そこが■■■の良いところなのよ~」

 

町の食堂で姉と夕餉をしようとすれば、なぜか同席している嫌いな男。

 

少女は攻撃的な発言もするも、まるで効果がなく、目をさらにつりあげていた。

 

「おやおや、何を騒いでいるかと思えば」

 

すると、騒がしいテーブルに一人近づいてくる者がいた。

 

「やあ、■■■後輩」

 
    トマス
          

 

年齢は席についている三人よりも上だが、どこか軽薄そうな雰囲気を纏う男性だ。

 

「■■■■■くんに■■■くんも、ご機嫌麗しゅう」

「あら、■■■さん。こんばんは」
 
    ローザ
               

 

にこやかに挨拶し返す姉と、しかめっ面で無視する妹。

 

背中から不満と殺意がただ漏れな少女に気圧されることなく、新たに現れた男性は笑った。

 

「ははは、僕の後輩は両手に花で羨ましい限りだ」

 

既に着席済みの男は、珍しく嫌そうな顔をする。

 

「……奥方もご子息もいるのに何言ってんだ、あなたは」

「え、奥さんいるのですか」

 

少女はしかめっ面をやめ、それから、あり得ないものをみる目で男性を見た。

 

「いるとも。仕事の都合で離れて暮らしているけどね。子どもは今年で四歳になる。驚いたかい?」

「認知していない子どもならいそうだとは思っていました」

「■■■くんは結構ひどいことを言うね……」

 

 

 

今までつらいことばかりだったから、きっと神様がご褒美をくれたのだと思っていた。

 

 

 

「几帳面にやるものねぇ」

「ああ、掃除は好きだからな」

「……変なの。誰も見ちゃいないのに」

「?」

「あなたがどれだけ頑張ったところで、誰も見てくれていないじゃない」

「君がいるじゃないか」

「…………バーカ」

 

 

 

これからはもっと良いことが起こると信じていた。

 

 

 

「……今なんと?」

「だーかーらーっ、認めると言ったのです!!!」

「……■■■は、俺のことが嫌いだと思っていたが」

「今だって嫌いです。でも、姉様の気持ちの方が大切だから……」

 

 

 

だから、こんな時間がいつまでも続くことに、少女は疑いを持っていなかったのだ。

 

 

 

血のついた花瓶が床に転がっている。

 

男性が頭から血を流し、ベッドの上で仰向けになっていた。

 

覆い被さるように、女性がその顔を覗き込んでいて───顔近くね?

 

「やっぱりあなたなんて、嫌い。初めて会う前からずっとずっと、大嫌いだった」

 

……うぇ?なんで???え?服、あれ?わ、わわわわわわあばばばばばばばばばばば────、

うわ、『こっち』見た!?

直後、雑音と視界の乱れで何もわからなくなった。

バレたかな?

どのくらい経ったのだろうか。

 

先程と同じ部屋で、女が紙に何か書いている。

 

 

 

『覗き見するな』

 

 

 

§ § §

 

 

 

【N.C.999】

 

「うわあああぁぁぁぁああっ!?」

 

オレは飛び起きた。

 

布団の上で丸くなっていた猫が落っこちたが、それを気にする余裕はなかった。

 

なななななななんださっきの夢!?

 

今日に限ってはやけに生々しく、ひたすらに動揺してしまう。

 

「どうしたの?変な夢で見たのかしら?」

 

声を聞き付けて、クリュティエとメイドさんが部屋に入ってくる。

 

「あら……、少し顔が赤いわよ」

「うっ、それは……、その……これは、えっと、あの」

「熱でもあるのかしら」

 

知識はあったが、や、でも、あんな……!こっ、こっ、こ……、

 

 

 

「交尾!」

 

 

 

叫んだ瞬間、頭が冷静になった。

 

オレは何言ってんだ。

 

 

 

「………………そうねぇ、ええ、お年頃だから」

 

クリュティエはオレの叫びに何かを察したように、スッ、とメイドさんを引きずって部屋を出ていく。

 

むにゃむにゃいっている猫を、オレは枕でペシペシ叩いた。

 

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