機動戦士ガンダムSEED Lucina   作:影尾カヨ

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1歩踏み出せば、そこは道だ。

――『未知の道』(C.E.46年 出版)


第10話 戦闘行動

「敵の戦艦を発見!」

 

 どうやら機関を停止し、宇宙の暗闇に紛れ込んでいたようだ。

 

「小賢しい事をしてくれる」

「隊長の読みが当たりましたな」

「所詮は単調な行動しかできん連中だ。容易いことさ」

 

 クルーゼが言う。既に『ガモフ』と『ヴェサリウス』による挟撃の体勢は整っている。

 

「敵艦、高熱源体を射出。数は2。機動兵器と思われます」

「『エンデュミオンの鷹』と『三つ首』か」

「熱紋から照合。『三つ首』の『メビウス・ゼロ』と『ストライク』です」

 

 クルーゼは仮面の下で眉をひそめる。フラガは出てこないのか?そう考え、彼の機体は武装を全て破壊した事を思い出す。殺すまではいかなかったが、そう易々と再び出てこられては困るというものだ。

 

「『G兵器』を全機発進。ターゲット自ら出てきたのだ。遠慮は要らん。ガモフにもそう伝えろ」

「了解。『イージス』、発進いつでもどうぞ」

 

 赤いG兵器、イージスがスラスターの光を残しながら飛び立った。クルーゼは、そのパイロットと先程した会話を思い出す。

 

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「ほう、『ストライク』のパイロットは君の友人だったか」

「はい。と言っても、幼少の頃に別れたきりですが…」

 

 黒髪の少年、アスラン・ザラが懐かしむように言った。

 

「ならば君を部隊から外そう。かつての友人を撃つというのは心苦しいだろう」

「いえ、彼もコーディネイターです。ともすれば、こちら(ザフト)に来るように説得できるかもしれません」

 

 愚かだ。

 

 クルーゼは口に出さず、そう判断する。戦場で敵兵の説得を試みるなど無意味。上手くいく訳が無い。

 

「ほぅ…。では説得に応じない場合はどうする。君に武器を向けてきた時は?」

「…それは」

「覚悟が無いのなら、やはり出撃させる訳にはいかないな」

 

 言い淀むザラにクルーゼが冷たく告げる。その言葉を聞き、ザラは戸惑う。しかし、やがて顔を上げた。そして、きっぱりと言った。

 

「…いいえ。もしそうなったならば、私が彼を撃ちます」

 

◣◥◣◥◣◥◣◥◣◥◣◥

 

 ガモフから飛び立つ3機のG兵器。『デュエル』『バスター』『ブリッツ』。

 

「フェイズシフト装甲、起動。これより戦闘に突入する」

『手柄は俺が貰っていいんだよな?』

「軽口を叩くな、ディアッカ。相手は三つ首だぞ」

『イザークは心配性だな。ニコルが移ったんじゃないか?』

 

 依然としてふざけた調子のバスターのパイロット、ディアッカ・エルスマン。それに苛立つのはデュエルに乗るイザーク・ジュール。

 

『まあまあ。慎重に行って損はありませんよ』

 

 ブリッツを駆るニコル・アマルフィが、2人を諌める。無駄に意識のリソースを割いている場合ではないのは確かだ。

 そうしている間に、『メビウス・ゼロ』の姿を捉えた。

 

「敵機確認。一番槍は俺が貰う!」

 

 デュエルのビームライフルが、緑の閃光を走らせる。牽制も陽動も無く放たれた一撃は当然通用する訳もなく。青いゼロ式は身を翻して容易く躱した。

 ゼロ式のガンバレルが展開しデュエルを挟む。実弾兵器は防ぐ必要すらないが、無駄に被弾してバッテリーを消耗するのは避けたい。発砲の直前に機体の高度を上げる。

 

 その動きが読まれていた。前方のそう遠くない所に、ゼロ式の主砲がこちらを狙っているのが見えた。

 

「何っ!?」

 

 背筋が凍る。しかしあの主砲は『リニアガン』のはず。直撃しても大した事は――。いや、あの形状はリニアガンではない。

 

『避けろイザーク!あれは『バルルス』だぞ!』

「ッ!?クソッ!」

 

 操縦桿を傾けるのでは間に合わない。シールドで対処する。防いだ後にカウンターを撃とうとするが、既に三つ首は射程圏外まで離脱していた。

 その機動力に、敵ながら感心してしまう。逃すまいと追おうとするが、その行く手をブリッツが塞いだ。

 

『落ち着いてください。このままでは向こうのペースです』

『そうそう。こっちが数で勝ってんだ。ゆっくり行こうぜ』

 

 バスターが2つの砲身を連結させ、『対装甲散弾砲』を放つ。広域制圧に優れるが、弾が広がるよりも先にその範囲外へ逃げられてしまった。

 

『相変わらずなんて速さしてやがんだ。単騎じゃマトモに当てらんねぇぞ』

「分かっている。別れて奴を追い詰め――」

『ロックオンされています!』

「散開!」

 

 会話のために近づいていた各機が、一斉にその場から離れる。直前までいた空間が、赤白い光に飲まれた。

 

「ディアッカと俺で三つ首をやる!ニコルとアスランは母艦を落とせ!」

 

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『いい腕ですね』

「避けられましたけど…」

 

 主砲『アグニ』の冷却を行いながら、ヤマトはイロンデルに答える。ストライクは今、『アークエンジェル』のカタパルトの上に張り付いている状態だ。供給ケーブルを使って母艦から直接電力を補充しているため、バッテリーは減らない。

 残弾を気にせず砲撃できる。砲身が溶けないよう、過度の連射は避けるように言われたが。

 

『大事なのは警戒させる事ですよ。民間人に初めての射撃で当てられたら、それこそ軍人の立場が無くなってしまいます。…あー』

「どうかしました?」

『先程、デュエルの気を引いたんですが、バスターもこっちに来ました。予定変更です。貴方はイージスの相手をお願いします』

 

 頭によぎったのは、イージスに乗っているだろう友人の事。彼を撃たねばならぬのか。いや、撃つのだ。でなければ、後ろの船が。皆の乗る船を守れない。守ると決めたのだ。

 緊張から唾を飲む。

 

『『スキュラ』はかなりバッテリーを消費しますから、気安く撃てる物ではありません。牽制してくれれば十分です』

 

 その音が聞こえたかどうかは定かではないが、そんな事を言ってくれる。

 

『もし無理なら言ってください。助けに行きますので』

「…いえ、やってみます」

 

 ヤマトは操縦桿を握り直した。きっとできる。自分なら、皆を守れる。

 

◣◥◣◥◣◥◣◥◣◥◣◥

 

「キラ!…キラ・ヤマト!」

『アスラン!』

 

 ストライクへの個人通信。返ってきたのは、やはり彼の声だった。

 

『どうして君がその機体に!』

「お前こそ何故そこにいる!同じコーディネイターだろう!地球軍の味方をしているのは何故だ!」

『…あの船には友達がいるんだ!君こそなんでザフトなんかに!戦争は嫌だって…君も言ってたじゃないか』

 

 当てる気の無い砲撃を躱す。ビームが近くを通るだけで、計器にノイズが混じる。直撃すればタダでは済まない。

 

「キラ…!」

『アスラン!手伝ってください!』

 

 ロックオン波を知らせるアラート。敵艦からの銃撃が、イージスの装甲を叩く。アークエンジェルを攻めあぐねたアマルフィの声が、通信に割り込んだ。

 

『皆を…守りたいんだ!』

 

 赤白い光が機体の周囲に走る。牽制が目的か、はたまた当てたくないのか。それでも念の為に距離を取る。

 

「キラ…」

 

 まるで拒絶するかのような攻撃に、ザラは友人の名を呟くだけだった。

 

◣◥◣◥◣◥◣◥◣◥◣◥

 

「ディアッカ、上だ!」

『分かってるよ!』

 

 そう言ってバスターが砲口を向けるが、ソコに既に三つ首の姿は無い。気を取られた隙に、ガンバレルの射撃ががら空きの背中に直撃した。

 

『クソ、鬱陶しい!』

 

 先程からずっとこの調子だ。警戒すべきは本体のビーム兵器のみ。なのにそちらに集中すると、意識外からガンバレルが刺してくる。表面上は何の問題も無いが、それはフェイズシフト装甲が稼働しているからで。少しずつだが確実にバッテリーを消耗させられている。

 かと言ってガンバレルを狙うと、本体のビームが放たれる。

 

 まるで3機のMAを同時に相手にしている気分だ。その全てがエース級の動きをする。やられることは無いが、落とすにはこちらの手が足りない。

 

『ニコルかアスランを呼ぶか?』

「こっちは本命じゃない。これ以上手はかけられない」

 

 どちらかのガンバレルさえ落とせれば、この関係は崩れる。だがそれをやるのは簡単じゃない。相手の一手…いや、三手先を読まなければ、三つ首は仕留められない。

 

「俺に合わせろ」

『いい案でも?』

 

 ニヤリと、ヘルメットの下でジュールが笑う。伊達に何度も交戦してきた訳ではない。今日こそ落とす。ナチュラルごときに良い様にやられてなるものか。

 

 そもそもガンバレルは長時間展開できる装備ではない。スラスターと銃身、燃料、弾薬、センサーを詰め込めば、バッテリーの容量は必然的に小さくなる。射撃の度に、という程ではないが攻撃が終わると充電の為に本体に接続する必要がある。

 

 その際に一瞬、足が止まる。その隙を突く。

 

 スラスターの出力を最大にして、一気に距離を詰める。元々武装の少ないデュエルは、スラスターの量に比較して高い機動性を持つ。流石に三つ首相手ともなれば追い詰めるとまではいかずとも、喰らいつくだけの性能はある。

 

「ぐ…うぅ!」

 

 もっとも、それができるパイロットは身体が座席に押し付けられるのに耐えられる者に限られるが。自動照準に任せる事しかできず、引き金を引いても避けられる。

 

 それでいい。今は相手の動きを制限する事。三つ首の目的は艦の防衛。故にこちらから離れる事は無い。

 

 ここだ。ジュールはそう判断し、機体の向きを敵母艦へ向けた。急な方向転換に、体に横向きのGがかかる。だが敵の虚をつく事ができた。MAは速度に反して旋回性能は低い。

 

 そして今、ガンバレルが展開した。左右から挟むようにこちらを狙う。艦には行かせないということか。

 

 狙い通りだ。

 

「今だディアッカ!」

『任せろ!』

 

 バスターの射撃を躱すために、三つ首が機体を上昇させた。立て直しを計るため、ガンバレルが接続される。

 

「もらったぁぁああ!!」

 

 その硬直は逃さない。ビームサーベルを抜き、一息に斬りかかる。狙いは機首だったがサーベルが触れる直前にゼロ式が動き、実際にはガンバレルの1つを斬るに留まった。爆炎で視界が塞がれ、センサーにノイズが混じる。

 

 その時、確かに油断したのだろう。炎の向こうから迫るビームに気づかなかった。僅かに逸れた一撃が、デュエルの脇腹を掠める。

 

「――ッ!?」

 

 ロックオン波は感知していない。手動(アナログ)で当てたのか。装甲の切れ目から激しいスパークが散る。バルカン『イーゲルシュテルン』で弾幕を張り、三つ首を追い払う。バスターの砲撃が差し込まれると、破損したガンバレルをそのままに離れていった。

 

『イザーク、被弾したのか?』

「継続戦闘に問題は無い。装甲の一部が溶けただけだ。だがバッテリー残量が少ない。先にストライクを落とすぞ」

『りょーかい』

 

 敵のG兵器さえ討てば戦果としては申し分ない。三つ首の挙動が気になるが、4対1の速攻でストライクを殺る。

 

◣◥◣◥◣◥◣◥◣◥◣◥

 

 その時アークエンジェルのブリッチで、通信士が待ちに待った声をあげた。

 

「レーザー照準、来ました!」

「了解!『ローエングリン』、一番、二番、発射準備!」

 

 すかさずバジルールの号令が発せられる。

 

「陽電子バンクチェンバー臨界、マズルチョーク電位安定しました!」

 

 アークエンジェルの両舷機種にあるローエングリンの発射口が展開する。

 

「目標、前方敵母艦。撃てぇ!」

 

 その言葉と同時に、特装砲が火を噴く。ビームとは違う、プラズマの渦が宇宙を貫く。

 それは直前でロックオン波に勘づいたヴェサリウスの右舷を掠める。

 

「二番、敵艦右舷に命中。エンジンに被弾したと思われます」

 

 敵のナスカ級が向きを変え、この宙域を離脱していく。作戦は成功だ。

 

「展開中のXナンバーを追い払え。敵も引いていくはずだ」

 

 ブリッチの空気が弛緩する。当然だろう。だか、実際はそう甘くない。今も尚、目の前でイージスとストライクが接近している。

 

◣◥◣◥◣◥◣◥◣◥◣◥

 

 既にレーザー通信でガモフへの撤退命令が出ている。

 

『皆を守りたいんだ!だから僕は!…君を……!!』

 

 アグニがこちらを向く。本当に撃つのか。どうしてお前が。操縦席のアラートが、ロックオンされた事を告げる。

 

「キラ…!」

 

 とにかく距離を。そう考えた所で、操縦席に重い衝撃が走る。どうやらアークエンジェルのミサイルが直撃したようだ。イージスの姿勢が崩れる。

 

 目の前の砲口に光が入る。…躱せない。……やられる!

 

『アスラン!危ない!』

 

 ブリッツが突っ込み、ストライクの胴体が弾かれカタパルトから投げ出される。供給コードが張り、外れる。そしてアグニが的外れの方向に、赤白い直線を描いた。

 

◣◥◣◥◣◥◣◥◣◥◣◥

 

 操縦席のアラートが、バッテリーの残量低下を知らせる。フルパワーのビーム照射は、たった一撃でほとんどの電力を持っていった。撃つつもりなどなかった。

 

 イロンデルに言われた通りに、牽制だけ。なのにブリッツに蹴られ、咄嗟に操縦桿を握ってしまった。

 

 引き金を引いてしまった。

 

 暗い感情に溢れるヤマトに、更にロックオンの警告を告げる音が聞こえる。ブリッツのビームが、アグニを撃ち抜く。

 

「しま…っ!」

 

 アグニが爆発を起こし、ストライクが巻き込まれる。その衝撃で機体が揺さぶられる。

 直接のダメージは、フェイズシフト装甲のおかげで防がれた。しかしその反動でバッテリーの残量はゼロに。ストライクの装甲が、トリコロールから鈍い灰色に変色する。

 

 ――フェイズシフトダウン。

 

 その防御性能は無くなり、今の機体は無防備に近い。主砲を失い、まともな戦闘はできない。

 

『キラ!アークエンジェルに戻って!』

 

 ハウの無線が響く。まともな機動力も無いのにどう戻れと言うのか。そう叫びたいのを堪え、向きだけはアークエンジェルへと直す。

 だがモニターの向こうに、デュエルがライフルを構えるのが見えた。白い煙を引き、グレネードが発射される。あれが当たれば―。

 恐怖から思わず目を瞑る。

 

 その間に蒼い影が割り込んだ。

 

「イロンデルさん!?」

 

 損傷し黒煙の尾を引くゼロ式の機首が、グレネードの直撃を受ける。

 

「そんな!」

 

 ひしゃげた機体が、慣性のままに流れていく。スラスターの光が消え、パイロットが生きているかも伺えない。

 

「イロンデルさん!…イロンデルさん!!答えてください!」

 

 通信モニターは砂嵐を映すだけ。操縦席にまで爆発が届いているのか。

 

「嘘だ…イロンデルさん!聞こえてるんでしょ!…うわっ!」

 

 鈍い音ともに、機体に急加速のGがかかる。ストライクはMA形態に変形したイージスのアームに、がっちりと捕らえられていた。

 

「アスラン!」

『お前をガモフに…俺たちの母艦に連行する』

「嫌だ!僕はザフトになんか行かない!」

『いい加減にしろ!来るんだキラ。でないと、俺は…お前を撃たなきゃならなくなるんだぞ!』

「アスラン…!」

 

 その苦渋の混じった怒号に、ヤマトは何も言えなくなる。

 

◣◥◣◥◣◥◣◥◣◥◣◥

 

「キラ!キラ!」

 

 ハウが必死に呼びかけるが、ストライクはイージスから逃れられない。

 

「彼を援護できないの!?」

「あれだけ密着されては無理です!ポワソン大尉は?」

「未だ連絡取れず。生死不明!」

 

 ブリッチでは緊張が高まる。こちらからは何も出来ないのか。

 

「そうだ、フラガ大尉。彼はどこにいる!」

 

 交戦状態ではない彼のゼロ式なら、この状況を打開できるのでは。

 

「まだこちらへの到達には時間が掛かります!敵が逃げるのが早いですよ!」

「クソ!」

 

 何か手は無いのか。見ているしかできないのか。拳を握りしめ、バジルールはモニターを睨む。

 

 その時、ハウが声の雰囲気を変えた。

 

「イロンデル大尉からレーザー通信です!」

「内容は!」

 

 生きていたのか。胸を撫で下ろすラミアスとは異なり、バジルールが冷静に通信の詳細を求める。ハウが通信の内容に目をやり、困惑しながらも言う。

 

「…『目を離すな』と」

「…それだけか?」

「は、はい。こちらからの通信には応答ありません」

 

 どういう事なのか。何をすれば良いかもわからず、ただモニターの中のストライクに、視線をやるばかりだ。

 

◣◥◣◥◣◥◣◥◣◥◣◥

 

『ヽ(`Д´)ノ』

「やるしか…ないの…よ。けん…権限を…ポワソンからエルピーへ移行。パスワード…『M80S』…セーフティ…解除」

『(´;――LP approval. Ready to accept.』

 

 血の付いた指で、キーボードを叩く。破損したパーツがスーツを突き破って肌に刺さっている。本当は抜きたい所だが、今はその時間すら惜しい。

 

「映像共有開始。…ネクサス、フルコネクト。仮想マップ形成。メインスラスター、リミッター解除。破損したガンバレルをパージ。余剰出力を『バルルス』へ譲渡。ターゲット…識別。シミュレート開始」

 

 割れたヘルメットを脱ぎ捨て、血を吐き出す。気管の何処かが出血しているのかもしれない。一度大きく息を吸って、ゆっくりと呼吸する。どろりと、目に流れ込んだ血を拭う。

 

「…フフッ。嫌な感触ね」

 

 今までに無いほど、鮮明に感じる。戦場で何度かあった、モニターではなく、気配で敵を探る感覚。液晶が壊れ、今は何も見えないが。それでも、どこに敵がいるか分かる。

 

「私には、敵が見える…」

《あんたにはそういう才能…みたいなのがあるのかもね》

「うるさい…黙っててよ」

 

 かつての戦友との会話を思い出した。人の苦悩を才能とは…お気楽なものだ。いや、彼女らしい…と言うべきか。

 操縦桿を握る。

 ならその才能を見せてろう。知るがいい、『瑠璃星の燕』の本領を。

 

「……『限界凌駕(オーバーアチーブ)』、起動(アクティベート)!」

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