~主人公視点~
目が覚めるとベッドの上にいた。起きて周りを見てみると、どうやら寝室のようだ。
私は、あの女のことを思い出して苛つきながらも、この世界には魔女と呼ばれる人食いの化け物という脅威があることも思い出す。
……魔女がどんな存在かは知らないが、魔女と言うからには魔法を使ってくるのだろう。ならば、忌々しいがあの女から貰った物質創造とやらを試して対抗手段を作るしかない。
私は手にM686が出るように思い浮かべた。すると、手から目を開けられない程の光が溢れ出した。
思わず目を瞑ったが次第に発光が収まっていき、目を開くと、そこにはM686が一丁あった。
「ふーむ……」
その銃を脇において、自分の体を観察するが特に何も異変はなく、創造したことによる代償はないらしい。
今度は銃を手に取り、マガジンを横にスライドすると、中には弾が一発も入っていなかった。
どうやら弾は別途、作らねばならないらしい。
そこで、ふと思い付いたことがあり、銃弾入りのM686を想像して手に出るように念じる。
再度、手から光が放たれ、その光が収まるとそこには新たなSAA が現れた。早速、その銃のマガジンを見てみると、今度は銃弾が装填されていた。
……正直この実験をやった意味はあんまりないが、とりあえず中身がない状態で作られる物もあることを覚えておこう。
私は銃弾が入ってないM686 に銃弾を作り、入れる。
そしてホルスターを二つ作り、自分の腰に装着し、何時でも抜けるようにした。
そういえば、物質創造のことで夢中になっていたがここは何だろうか。
周りを見渡すとベッド以外に机がありその上には紙があった。
紙を見てみると私の戸籍情報の書かれており、私の新しい名前も載っていた。
「……赤月
……夏逢って女性の名前では。私は男性なのだが……。
まあ、いいか。気にするような内容ではない。
そのまま探索を続けたが、寝室にはもう目ぼしい物はなさそうだ。ならこの部屋の外の探索でもするか。
♢♢♢♢♢
部屋から出ると車椅子に座った一人の老人がいた。
私は見えないように片手をM686 に伸ばしながら近づいた。
「なにをそんなに警戒している」
私はその言葉を聞いて銃を手に持ち、老人に向けた。
「一人の老いぼれがそんなに怖いか? 小僧」
「ああ、怖いとも。私はとても怖い」
「ふむ……。まあ、このまま話すのもあれじゃな。座りなさい」
そう言って老人は木製のテーブルとイスを指差した。
私は怪訝な顔をしながらも、老人の言うことを無視する。
「……」
「それなら、こうすればいいのかね?」
その言葉の後に老人の手が一瞬ぶれた。
それと同時に銃 がバラバラに切断され、地に落ちた。
「なっ……」
「この通り君は今、私の攻撃範囲にいる。素直に言うことを聞いた方が賢明だと思うぞ」
……私は見えない速度で振るわれた老人の武器に恐怖した。
あの女に記憶を消したと言われた時、確かにエピソード記憶を消された。だが、私は一つだけ忘れられないものがあった。
それは恐怖だ。
死自体には恐れはあまりない。だが、自分はまだ何もできていない。それなのにこんな場所で、誰の記憶にも留まることなく何も残せずに死ぬ。そんな死に方は嫌だ。
そういう記憶が脳に、いや、魂にこべりつき離れない。
それが今、この老人によって刺激されていた。
死にたくない。否、まだ死ねない。
私はまだ、納得していない。
……仕方なく私は、この老人の言うことを聞くことにした。
イスに座ると、この老人は話始める。
「まず、わしは君の世話を任された部下じゃよ」
「部下? ……ああ、あの女のか」
「そうじゃよ」
なら、少なくとも私に対して危害を及ぼすつもりは無いと見て良さそうか。
「なあ、あいつは一体なんなんだ? 私に力をくれたり、人を蘇らせたり。これではまるで神ではないか」
「すまんが、解答することは許可されてないのじゃ」
「……そうか」
「そも、わしの役割は中学生が独り暮らしするのは世間体的に不味いから、用意された保護者じゃよ」
「なら、魔女とやらの戦闘は手伝ってくれるのか?」
「流石にそれはせんよ。あくまでお主に強くなってもらわねばならんからの。鍛える程度ならしてやるぞ」
鍛える……。と言うことは、先の老人の動きについていけるレベルにまでしてくれるのだろうか。
「何処まで鍛えてくれるんだ?」
「それは勿論、魔女を一人で殺せるまでじゃよ。先だってこれをやろう」
そう言って老人は、一本の古い骨をテーブルに置いた。
「これは一体?」
「これにこの銃弾を使うと一時的にじゃが、移動速度を速くできるのじゃ」
そういうと爺さんは懐から一発のライフル弾のような形をした銀色に鈍く光る銃弾を取り出した。
こんなもので移動速度を速くできる? この骨に、そんな魔法まがいのことができるとはとても思えないが、貰えるものはありがたくいただくことにする。
「さてと、鍛えるとは言ったものの。わしの本質は助言者でしかない。故に助言してやるわい」
「鍛えるって筋トレとかではなく実戦のみなのか……」
鍛えて貰えると思ったのに、直ぐにそれを撤回してきた老人を見て呆れたが、それを老人は無視した。
「今日、一日。街を散歩してみると良い」
「……それだけか?」
「それだけじゃ。あ、財布をあげるから何か買ってくると良い。ほれ」
そう言って老人に財布を渡された。中を見ると一万円札が五枚、入っていた。
「それくらいあれば、夜ご飯ぐらいは足りるじゃろ?」
「まあ、余裕で足りるだろうな」
「ならほれ、行った行った」
「せっかちな爺さんなこって」
「何か行ったかの?」
老人が問い詰めてきたが、私は逃げるように玄関まで行って、外に出た。