一般人の行くまどまぎ世界   作:エスカリボルグ

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第6話

~夏逢視点~

 

大きな毛玉は一本の腕で網を掴んで、二本の足を網に引っ掻けて器用にぶら下がっていた。そして残った腕で人間を掴んで毛玉の中心にある大きな口に向かって投げ入れようとしていた。

 

それを見て、私は直ぐ様二丁のM686で狙う。そして照準があった瞬間、引き金を引く。

 

弾丸は化け物の腕へと二発とも当たった。あの毛玉は慢心していたのか、それとも銃声が聞こえなかったのか、回避をしようともしなかったのだ。

 

そのせいか、なんの邪魔もなく当たり、毛玉は驚いたのか補食しようとしていた人間を落とした。そして、目が有るわけでもないのにこちらに向いて両手を伸ばしてきた。

私は伸ばしてきた腕を大きく回避して、銃を撃ち続けながら、敵を観察する。

 

「あいつがこの場所の主っぽいな。とすると、あれが魔女か? 人間よりも遥かに強い力を使うとは思っていたが、動物の形すらしてない化物とはな」

 

見た限りだと弱点という弱点は特にわからない。ならば、工夫して戦うしかないか。やつが拳を振り上げて、私に向かって振り下ろしてくる。

 

私はそれをその場から飛んで回避した。そして、やつの拳に向かって全弾撃ち込むが、毛玉は特に痛がる素振りも見せずに私を掴もうとしてきた。

 

「チッ。この銃じゃ、威力が低いか」

 

相手の攻撃を回避しながら思考する。

この銃では駄目なら、更に威力の強いものを作るしかない。

 

何がいいだろうか。ここは、やはりDE辺りか? いや、敵を見る限りそれだと傷しか与えられない可能性が高い。ならば、いっそのこと爆発物にでもするか? だが、爆発物の使い方なんざスイッチを押すぐらいしかわからん私だ。下手に使うと危険すぎる。

 

なら、やはりDEだな。私は弾を撃ち尽くしたM686をホルスターの中に入れ、50AE弾入りのDEを一丁造り出す。

 

そして、奴に向かって試し撃ちをする。すると、M686の時とは違い、暗闇で見えにくいが傷がついているのがわかった。

 

「なーるほど、これなら効くわけだ」

 

やつは痛がりながらも私を潰そうと(かかと)落としをしてくる。

それを大きく横に逃げて攻撃してきたやつの足に向かって撃ち尽くす。

すると、何発か貫通して穴だらけになり、穴から赤い血が滝のように溢れ出す。

 

「化物の血も赤いんだな」

 

そんなどうでもいいことを呟きながら、リロードした銃で更に足を追撃する。数ヶ所、穴が増えると化物は痛がりながら上から落ちてきた。

 

「やっと同じ舞台に立ったか。遅いぞ化物……っと」

 

奴に弱い筈の人間に地に落とされたせいか、憤慨しているらしく、こちらの台詞を言い終える前に襲いかかる。

それを回避したら、今度はその回避先に向かってローキックをしてきた。成る程、化物も化物なりに学習しているらしい。

私はそれを回避して奴に向かって撃とうとした。

 

「……なっ!?」

 

だが、化物の方が上手だった。奴は残った両手を使って私を掴もうとした。気付くのに遅れた私は回避しようとして捕まってしまう。

そして、片手で私を掴んで動けなくし、もう片方の手で私の足を掴む。

 

「……お前、まさか!?」

 

次の瞬間、足が裂けたかと勘違う程の痛みがくる。堪らず、絶叫をあげる。やつはそれを見て口を大きく歪めて笑っていた。

 

足を見ると両足とも変な方向へと曲がっており、地を這うことしかできない様になっていた。

 

「こいつ、楽しんでやがる……!!」

 

こんな化物に拷問されて死ぬ? なぶられ、食われ、なんの意味もなく死ぬ? ふざけるな。そんな結末を味わうくらいなら。

 

「お前のような、何の意思も持たない化物風情に負けるぐらいなら……。知ってるか、化物。追い込まれた獣は何よりも恐ろしいってな」

 

私は数十個のC4を造り出す。奴はそれを見て感づいたのか、私の頭を潰そうとしてきた。が、もう遅い。私は潰される前にボタンを押した。

 

私はそれを最後に意識を失った。

 

 

♢♢♢♢♢

 

「……ん? ここは」

 

気が付くと目の前にあの女がいた。女は優雅に紅茶を飲んでいる。

それを認識した瞬間、直ぐ様ナイフを創造しようとした。だが、何も反応しなかった。

 

「茶ぐらい飲ませろ。このアホが。そんなに飲みたいならくれてやる」

 

そう言うと目の前が光り、その光が止むとそこには紅茶があった。

……まあお茶の一杯くらいなら。そう思って席に付き私も飲む。

その紅茶はとにかく甘く、砂糖がかなり入っていることが窺える。

 

「それで? ある程度サービスしてやったが。魔女との戦いはどうだったかね?」

「……サービス?」

「おや? 気付いてなかったのか。痛覚をある程度制限してやったろ?」

 

そう言われて初めて気が付いた。普通、腕を失えば思考することなんて、戦闘訓練もしてない人間には不可能な筈。それなのに思考できるだけの余裕が残されていた。

 

「だが、そのサービスも無駄だったな。私は死んだぞ」

「ああ、そうだな。だが、それがどうした?」

「……は?」

「は、ではない。私が決めたんだ。最後までやらせるに決まっているだろう。例え貴様の精神が壊れようとも、例え貴様の大事な人が死のうとも、何が起きても最後までやらせるぞ。異論は認めん。断じて認めん」

 

その台詞に寒気が走る。自分が殺される為なら、何でもするというその姿勢が理解できない。

 

「そら、そろそろ時間だぞ?」

 

そう言われると、次第に視界が歪み始める。

 

「痛覚の制限に、蘇生のサービス。ここまでやって無理だったら消すぞ。お前。やるべき事ぐらいやり遂げて見せろよ。いや、このままお前が育つのを待つのも暇だな。私も舞台に上がるとしよう」

 

舞台に上がるとはどういうことだ、と返そうとした所で私の意識は落ちた。

 

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