一般人の行くまどまぎ世界   作:エスカリボルグ

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第8話

~夏逢視点~

 

翌日、起きて爺さんと朝食をとっていると、今度はこう言われた。

 

「せっかくじゃから、お主。学校にでも通うか?」

「学校ね。やけに唐突だな」

 

正直、魔女との戦いやあの女との戦いのためにやることは沢山あるのだが。

 

「先に言っておくが別に他意はないからの。ただ、あの女性を倒した後。どうするつもりじゃ?」

「どうするって、そんなの普通に生きて寿命で死ぬ予定だが」

「なら、人付き合いのやり方を理解してきたらええと思うぞ。お主、忘れておるじゃろ」

 

爺さんの言う通り、過去になにをしていたのか、そういう記憶がない。なので人付き合いに不安になる気持ちは確かにある。だが、今やる必要性が感じられない。

 

「それに、学校の噂話とかを聞くのもええと思うぞい。そこから魔女を辿る事ができるかもしれんじゃろ?」

 

そう言われるとその通りだと思った。私はやるべき事と学校に行くことを考えた結果、行くことに決める。

 

「なら、手続きはしとくわい。まあ、時間がかかるからの。それまでは好きにするといい」

「あ、そういや爺さん。昨日の魔女の被害者の人達はどうなったか知ってるか?」

「爆発で数人死んだぞ。だが、生き残りはかなりおっての。めんどくさいから救急車だけ呼んで放置したわい」

「そうか、ならばいいか」

 

爺さんはその返答を聞いた後、私の顔を見て、しわをよせ何かを言おうとしている。

だが、それを聞いて心残りが無くなった私は、爺さんを無視して支度を始めるのだった。

 

 

♢♢♢♢♢

 

昨日の戦闘中にコートが左腕ごと切れて破損していたので、新しく同じコートを創造した。そして、左腕を隠せるように無地の手袋も作り出す。自分の姿を確認して、昨日と同じ姿で外にでた。

 

「……寒いな」

 

今日は曇っているせいか、昨日よりも幾らか肌寒く感じる。

 

「まあ、雨が降るなら傘を用意すればいいか」

 

私は昨日と同じ方へと歩きだした。

今回の外出の目的は左腕を使いこなす為の練習である。

その為に昨日の魔女と戦った廃墟付近にいくつもりだ。あそこは、廃墟が固まっていて人気がなく、隠れて行動するには都合がいい。

流石に銃を撃つつもりはないが、左腕を使うぐらいならそこまで音も出ないだろう。

 

そう考えているとぽつぽつと雨が降り始めた。

 

ポーチの中に手を入れて折り畳み傘を創り、それを使う。

雨は段々と強くなっていき、私の思考は今朝の出来事へと移っていく。

 

あの時、爺さんは私に何を言うつもりだったのだろうか。人の死に無頓着すぎることに対しての軽蔑か、あるいは人間性が低いことに対しての警告か。どちらにしても、私は聞かないだろう。

ああ、爺さんのあの表情から察するにどっちにしろ治せとは言うのだろう。だが、無理だ。

 

私には何もない。

 

力も、技術も、思考も、何もかもが足りていない。いてもいなくても変わらない。そういう一般人に過ぎないのだから。ならば、どうすればいいか。簡単な話だ。

 

()()()()()()()()()()()()

 

大事な人も、私を心から心配するような人もいない。他人との繋がりが薄い私だからこそできる方法だ。まあ、やけくそと言ってしまえばそれまでだがな。

 

他人から恨まれようと知ったことか。私には時間がない。あの女が何時までも私に構うか? 否だ。私の代替えなぞ、幾らでも作れるだろう。あの女が私に飽きた瞬間に殺されないと何故言い切れる。

 

故に、故にだ。私は全てを踏破して見せる。人間だろうと、魔女だろうと、あの女だろうと、私の前に立ち塞がる者は殺し尽くしてやろう。

 

 

 

~○○○視点~

 

「……ははっ」

 

私の口から乾いた笑いがでる。

なんでなの。なんで、()()()()()が感知できるの。

魔女は、魔法少女の成れの果て。そして、魔女へと変化する魔法少女は彼女によって導かれる。

 

彼女は……。彼女は、自分を犠牲にしてそういう概念と成り果てた筈。

 

「……ふざけるな」

 

何故、魔法少女にとっての絶望が存在している。

彼女の願いは、彼女の自己犠牲によって叶えられた。

 

許さない、ゆるさない、ユルサナイ。

 

彼女の願いを(おとし)める存在を私は一人残さず許さない。

絶対に許してなるものか。それが私の意志と知れ。

 

 

 

~夏逢視点~

 

私は警察の立ち入り禁止のテープが張ってあるビルを見ながら、予想通りだと頷く。

そして、その入れないビルから少し離れた廃墟ビルへと入っていった。

 

中に入ってしばらく歩いていると、黒髪の少女が立っていた。

彼女は隣の魔女がいたビルを見下ろしながら爪を噛んで、苛立ちの表情をうかべていた。

私はここで練習することはできないだろうと思い、(きびす)を返そうとする。

 

「……ねぇ、貴女」

 

少女に背を向けた所で話しかけられた。再び少女の方を向くと、彼女は先ほどは無かった筈なのに、左腕に盾を付けていた。

 

「なんでしょうか?」

「匂うわね」

 

匂い? ひょっとして臭いとでも言いたいのかと思い、自分の腕に鼻を近づけて臭いを嗅いでみる。

 

「……自分では感じないんですがね。そんなに臭いますか?」

「えぇ。絶望の臭いがするわ」

 

そう言うと彼女は左腕の盾に右手を入れて中から拳銃を取り出した。

私は彼女が私に照準を合わせる前に、自分のホルスターからM686を抜いて彼女に向ける。

 

「何のつもりかな。いきなり銃を向けるだなんて」

「匂うのよね。魔女の臭いが」

 

私はそれを聞いた瞬間に、思考するよりも早く銃を撃ったのだった。

 

 

 

 

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