一般人の行くまどまぎ世界   作:エスカリボルグ

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第9話

~夏逢視点~

 

私が撃った弾は彼女がいた筈の場所を通過していった。そう、目の前にいた筈の彼女がいきなり消えたのだ。消えた彼女を探そうとしたとき、背中に何かが突きつけられた感触があった。

 

「答えなさい、貴方は何者なの」

 

どうやって移動したのか、何故私の後ろにいるのか、気になることは沢山ある。だが、とりあえず理解できない事は置いておこう。彼女は人間だ。会話して銃を突きつけられたこの状況を良くすることができるかもしれない。

 

……よく考えろ。考えに、考えろ。そもそも何故、彼女は私に銃を向けたのか。

 

簡単だ。彼女にしか分からない方法で魔女に対する何かを、私から感知したんだ。なら何故、感知なんてする必要がある。魔女から逃げるため?

 

違う。先程の動きを瞬間移動と仮定して、あのような動きをするのだ。魔女からなぞ、簡単に逃げ切れる。

 

……ならば、魔女退治する人間なのではないか?

瞬間移動が出来るなら魔女の攻撃を避けるのは容易い。

その可能性が高いな。

 

「もう一度聞くわ。貴女は何者なの?」

「……一般人では通せる段階を過ぎたな」

「ええ、そうね。その銃。少なくとも警察の物ではないわ。だから、警察の者だったという言い訳も要らないわよ」

 

さて、どうする。素直に吐くか。いや、違うな。情報を小出しにして、様子を見るか。

 

「私はあることを成し遂げるために魔女退治をしている者だ」

「あること?」

「流石にそれは言えんな。信頼に値しない」

「……なら、それはいいわ。魔女を倒すというならこの付近の魔女を倒した時に物を落とさなかったかしら」

「物? そんなもの無かったが」

 

……そう言うと彼女は黙ってしまった。

相手から動きが無いのならばこちらから動いてみるか。

 

「なあ、質問いいか」

「……なによ」

「お前は魔女を退治する側でいいんだよな」

「……ええ、そうよ」

 

彼女は魔女側の人間ではないと言っているが、まあこの状況が状況だ。私の生殺与奪の権利を握っているような状況で嘘をつくデメリットは少ないだろうし、とりあえずは信じていいか。

 

「……一応聞くけど、貴女って男よね?」

「見れば分かるだろ。男だよ」

「なら白い猫見たいな人語を喋る生き物と遭遇したことは?」

「ないな、一度もない」

「……」

 

彼女はそれを聞いてまた黙ってしまう。この状況が何時まで続くのだろうと、冷や汗をかきながら私は左腕を手首までを液体にしてコート越しに背中の銃口を突きつけられている場所まで伸ばす。そして、突きつけられている場所に薄く硬い金属の板のようなものを作り、万が一に備える。

 

だが、その必要はなかった。彼女はゆっくりと銃を下ろし、話しかけてくる。

 

「……少し話をしない?」

「ああ、そうだな。お互いに知る必要がありそうだ」

 

懐に銃を仕舞いながら後ろへ振り向くと、彼女も盾の中へ銃を閉まっていた。

 

「ここで立ったまま会話するのもなんだ。どこか店にでも行くか?」

「いいえ、このままでいいわ」

「女性に立たせたままは失礼だな。ならこうしよう」

 

私は両手を目の前に付きだして折り畳み式のパイプ椅子を想像する。

両手から光が溢れ、それが止むと想像通りのパイプ椅子が二つ現れた。彼女へ渡そうとしたが、光に警戒したのか銃を向けていた。それを見て苦笑しながらも、椅子を渡す。

片方を彼女に渡すと、戸惑いながらも受け取ってそれに座った。

 

自分も椅子を広げそれに座る。

 

「それで何から話そうか」

「貴女は魔女について何処まで知ってるの?」

「人を食らう化物ってことと、人を化物にするってことまでだな。それ以上は知らん」

「……そう」

 

私だけが情報を出していても不利なので、こちらからも質問してみる。

 

「君はどういった人間だ?」

「どう、とは?」

「詳しくなくてもいい。個人なのか、集団なのか?」

「そう、ね……。私達、魔法少女は個人で動く場合もあれば集団で動くこともあるわね。少なくとも私は個人よ」

 

なるほど。つまり、交渉するならまだ集団に属していない彼女の方がやりやすいかもしれない。私は彼女にあることを頼もうとしていた。

 

「なあ、共同戦線を張らないか?」

「……共同、戦線?」

「ああ、そうだ」

 

私はそう言って片手を前に出して、あるものを作り出す。光が止み、そこには彼女が使っていた銃、ベレッタ M92の弾薬箱があった。

 

「私は道具を無尽蔵に()()することができる」

 

ここで私は彼女に嘘をついた。確かに彼女は魔女と戦う側ではあるのだろう。だが、その人間性までは判断できてない。もし、道具を作り出せる事がばれたら捕まえて物を吐き出すだけの機械にしようとしてくるかもしれない。そういう仮定の話をしだしたらきりがないが、要はまだ信用できないというだけのこと。

 

「……その収納とやらに限界は?」

「ないな、だからこそ魔女となんとか戦えるレベルにまで道具を入れられる」

「あれは、そんなに甘くないわ」

「知ってるさ、昨日倒したのだから」

 

それを聞いて思案する彼女。少なくとも魔女を倒せるだけの実力は持っているからこそ、扱いに困っているのだろう。そもそも、魔女を倒せる男という時点で私はイレギュラーなのだと思う。性別を聞いたということは魔法少女とやらになれるのは女性限定なようだし。

 

「……わかったわ」

 

そう返事をしてメモを渡してきた。いきなりだった為、危うく落としそうになったがなんとか受けとる。中には電話番号が記されていた、

 

「なにかあればそれに連絡してちょうだい。私は私でやることがあるの」

「了解した」

 

そう言って彼女は立ち上がりビルの出口へ向う。階段を降りようとしたところで、立ち止まって私へ向く。

 

「そう言えば名前を聞いてなかったわね」

「赤月だ。赤月夏逢」

「そう、私は暁美ほむら。どうなるかは分からないけど、とりあえずよろしくと言っておくわ」

 

そう言い終えると彼女は階段を降りていった。

 

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