あの日見た鈍らの刀身を僕たちはまだ知らない   作:nyasu

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今のは瞬歩ではない、ただの踏み込みだ

八千流が運んだのか、俺はずっと宿舎にいた。

ズルして休めるんだから、楽でいい。

うるせぇ八千流もいつの間にかやってきた旅禍と遊んでやがるので、ずっと寝てられる。

 

「銀ちゃん、銀ちゃん、銀ちゃん!」

「うるせぇな、俺は寝てんだよ」

「あのねあのね、織姫ちゃんがイッチーに会いたいんだって」

「会えばいいじゃねぇか、俺は忙しいんだ」

「もーう、リベンジしたくないの!イッチーに会いに行こうよ!行こうよ、行こうよ!」

「うるせぇな」

 

延々と半刻ほど、行こうよコールが部屋に響いていた。

頭がどうにかなりそうなので、仕方なく外に出る。

久しぶりに陽の光を浴びた。

 

「娑婆の空気か」

「何いってんですか隊長」

「斑目達か、いたのか」

「アンタ、一緒に治療中だったのに気付いてなかったのかよ!」

 

うるせぇな、こちとら瞼の裏を見るのに集中してたんだよ。

身体も動かさないように脱力する修行だったんだよ、寝返りというなの高度な技術が必要だったんだよ。

 

「なんか増えてねぇか、おいアンタ。どっかで会わなかったか?」

「俺を忘れたのか、まぁ包帯グルグルで分からねぇのも無理はねぇ。俺の名前は」

「あぁ、三人組の一人か。旅禍だったか」

 

どうして旅禍がいるのか、そう言えば八千流の面倒を見ていたのも旅禍だったか。

面倒だな、考えるのは面倒だ。

取り敢えず、外に出たら良いんだろ、もういいよそれで。

 

「八千流、お前の指示には従わない」

「何で、何で、何で」

「そりゃ、副隊長に従ったら道に迷うからでしょ」

「煩い、パチンコ玉が、ペッ!」

「き、汚ねぇ、このガキ唾吐きやがった!ブッ殺す」

「やんのか、やんのかハゲ頭、ハーゲハーゲ、うわ眩しい」

 

今日も十一番隊は元気です。

 

 

 

暫く歩いてると、道に迷った。

しまった、なんか強そうな気配を辿りに歩いてたら行き止まりだ。

 

「どこに行こうと言うのかね、旅禍を連れて敗れて誇りを失ったか銀閣」

「えっと、誰だったか。あぁ、東仙だったか」

「貴様」

「剣客がコソコソ隠れなさんなって、そういうのは忍者のやることだろ。隊長格がやることじゃねぇ」

 

屋根瓦が踏み砕かれる。

壁の上、そこに四人の人影があった。

それは九番隊隊長東仙要、七番隊隊長狛村左陣だ。あと、入れ墨があるから前科持ちとチンピラみたいな部下だ。

 

「四人か、来な」

「来い……だと!宇練銀閣、貴公驕りが過ぎるぞ」

「ごちゃごちゃ煩せぇな、四人同時に来い。一撃くらい入れられるかもしれんぞ」

「じゃあ銀ちゃん、私達先に行ってるね!行くよ」

 

俺は鞘を握って、構えた。

居合は、立ったままでも出来る。

何故なら、抜刀術だからだ。

 

「四人か、正気とは思えんな」

「正気の沙汰で刀が振るえるか。剣士なんざ気狂い。狂気の沙汰で刀を振るう狂人よ」

「ここは俺達まず行かせて下さい」

「おいおい、耳が詰まってんのか。俺は四人で来いって言ってるんだ」

 

まぁ、部下を殺せば少しくらい本気になるかと一考すると背後に見知った気配があった。

 

「やっぱりそういう事か」

「なんだお前達、戻ってきたのか」

「隊長、水臭いじゃないですか。俺達も戦わせて貰いますよ、許可貰えるまで騒ぎますよ」

「ソイツは面倒だなぁ、譲ってやるから他所でやってくれ」

「了解。さぁ、聞いてただろ、来いよ」

 

部下が部下を連れてどっかに行った。

まぁ、足手纏いが減った分だけ残った二人も本気を出せるかもしれない。

さぁ、仕切り直しといこうか。

 

「来いよ」

「まだ言うか、だから貴公は驕りが過ぎると、言っておるのだ!」

「驕り、これは余裕だ」

 

突如、巨大な風圧が地面を削る。

頭上からは幾重にも重なった刀身が何故か飛んでくる、忍術か?いや、斬魄刀の能力って奴か。

 

「終わりだ」

「何が終わったってんだい」

「ば、馬鹿な!儂と東仙の攻撃は確実に捉えたはず、なぜ無傷で立っている!」

「斬った」

 

見てから居合で斬り捨てた。

遅すぎて、欠伸が出るような攻撃だった。

 

「ふぁ……太刀筋が寝惚けてるぜ」

「欠伸……だと、貴様ァ!」

「このぐらいで気後れしないで欲しいぜ、秘剣・零閃!」

 

鍔鳴りの音と同時、東仙が吹っ飛ぶ。

 

「東仙!?」

「余所見するな、卍解とやら、持ってるんだろ。使えよ」

「自惚れるな、貴公のような裏切り者に卍解など」

「待て狛村。私がやる」

 

ブン、ブゥゥゥンと何故か剣を振り回しながら東仙要が歩いてきた。

何故、剣を振り回しているんだ。

 

「護廷十三隊の隊長の座に付く方法は三つある、一つ目は隊首試験を合格すること、他の隊長格に承認される事、最後は現行の隊長を一騎打ちで倒すこと。宇練銀閣、私は最後の方法で貴様が隊長になることに、確信にも似た強い不安を覚えていた。お前は魔物だ、いつか平和を破壊すると思っていた。事実、我々と敵対しこの瀞霊廷を混乱させている。お前は戦いを望んでいる、違うか?」

「話が長い、平和なんざ口にする奴にろくな奴はいねぇよ」

「許し難いな。怨みはない、だが、平和のために消すも已む無し!卍解・清虫終式・閻魔蟋蟀」

 

世界から音が消えた。

何だこれは、何も見えないし何も聞こえねぇ。

気配も感じられねぇ、どうなってるんだ。

 

身体に熱が生まれ、血飛沫が上がる。

血だ、斬られたということが理解させられる。

五感を奪う能力か、そういうのもあるのか。

 

剣を振るう、振るうがしかし手応えはない。

いや、地面を斬った感覚がある。

どうやら触覚は残っているらしい。

 

何も感じない俺の身体を、撫でるように風が触れる。

同時に引きながらに刀を振るう。

今のは当たったな、少しずつだが適応してきた。

普段から見てないし、霊圧も感じちゃいないから問題ない。

勘で振るえば、だいたい当たるようになってきた。

神経を研ぎ澄まし、風を感じた。

 

「よぉ、久しぶり。そして、さようなら」

「バ、馬鹿な!何故、私の刀を掴んで、ぐはぁぁ!?」

 

 

目の前の真っ暗な空間が崩れて景色が戻ってくる。

どうやら卍解とやらが解けたようだ。

 

「くっ、殺せ」

「分かった」

「待て!卍解・黒縄天譴明王!」

 

それは、剣と言うにはあまりにも大きすぎた。

大きく、ぶ厚く、重く、そして巨人だった。

それは正に鎧武者とでも言う巨人だった。

 

「おいおい、卍解とやらは巨人を呼ぶのか?」

「喜べ、貴公の好きな殺し合いだ!」

「良いぜ、巨人を斬る機会なんざ、ねぇからな。零閃は何時何時でも出撃可能だ。光速超えた零閃を見るが良い」

 

巨大な剣が空を覆う、真っ暗闇が、影によって生じたそれが迫りくる。

逃げる場所はない、あるとするならば、敵である狛村と東仙の近くのみ。

なるほど、臆せば死ぬとでも言うのかな。

踏み込み、と同時に前に出る。

 

「馬鹿な、早い!」

「どれ、面を割らせて貰おうか。零閃!」

「何という速さ、瞬歩か!」

「いいや、今のはただの踏み込みだ。いつから、瞬歩だと思っていた」

「なん……だと……」

「高速で剣を振り抜けるのだ。走るのだって、それぐらい可能だ」

「そ、その理屈は可笑しい」

 

鍔鳴りと同時に、狛村の面が落ちる。

そして、そこには、なんと獣の頭が現れた。

 

「ば、馬鹿な!物の怪の類だと!?」

「初めて貴公の驚いた顔を見たな。死ねぇ!」

「くっ、零閃艦隊・五機!」

 

巨大な剣に向かって、同じ箇所目掛けて刀傷を重ねる。

だが、すこし罅が入るだけで断ち切れない。

ならばと、寸前の所で回避するべく真横に飛んだ。

 

「ならば、横薙ぎならばどうだ!」

「骨が折れる相手だ」

 

巨大な剣が真横から飛んでくる。

地面を削りながら、剣が来る。

だが、タネは割れた。

 

「ぐあぁぁぁ!?」

「やっぱり、繋がってるって訳だ」

 

剣が、地面に落ちていた。

理由は、狛村の手首の筋を切り裂いたからだ。

持っていた刀を狛村が落とすと、巨人も持っていた剣を落とした。

同じ動きをしているから、まさかと思ったがな。

 

「まだだ、まだ……総隊長殿の霊圧、だと!?」

「あぁ、山本の爺さんが何だって?」

「決着はいずれ、覚えていろ!」

「あっ、おい、どこに行くんだ……」

 

……逃げられた。

 

 

 

 

 

 

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