あの日見た鈍らの刀身を僕たちはまだ知らない   作:nyasu

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十刃最強の破面。その名は、ヤミー・リヤルゴ

護廷十三隊から裏切り者が出たらしい。

だからなんだ、そう思ったのだが大事のようだ。

色々とあったそうだが、十一番隊は今日も元気である。

虚とかいう動物を狩るのが死神の仕事らしいのだが、それが最近人形になったらしい。

まぁ、猿も人も似たような物なのでそういう事もあるのだろう。

 

それで、働かないから仕事ですと山本の爺さんに言われて、寝てる間に砂漠に連れてこられた。

そう、砂漠である。

生まれ故郷を思い出し、懐かしさを覚える。

 

「それで、俺はどうしたら良いんだ」

「兄は本当に話を聞かない御仁だな」

 

お目付け役に朽木何たら隊長が一緒にいた。

朽木隊長とみんなが呼ぶので下の名前は知らんのだが、別にいいだろ問題ない。

公家の人間らしく、気品に溢れている。

 

「銀ちゃん、銀ちゃん、銀ちゃん」

「うるせぇよ、八千流。そう、何度も呼ばなくたって馬鹿じゃねぇんだから、はぁ……」

「あれ、イッチーじゃない?なんか死にそうじゃない?」

「ソイツは穏やかじゃねぇな」

「助けに行かないのか?」

「行ったほうがいいのか?」

「あぁ」

「はぁ、やれやれだ……」

 

朽木隊長は口数が少なくて、楽なのだが口下手な所がある。

砂漠に連れてきた理由とか聞きたかったんだが、取り敢えず助けたほうが良いらしいので死神代行の兄ちゃんの所に行く。

無論、面倒なので歩いてだ。

 

「何者だ、貴様!」

「驚いた。最近の獣は口が聞けるのか」

 

目の前にいたのは猪の頭を持った物の怪、最近だが犬頭の奴を見たので慣れた。

しかし、いつから世の中は魑魅魍魎が跋扈する世界になったのか。

 

「馬鹿野郎!逃げろ、テスラァァァ!」

「秘剣・零閃」

「お前がどこの誰だか知らないが、俺を侮ったことを後悔するが良い。我が帰刃である牙鎧士の前には――」

「ひょっとしてアンタの、れすれくしおんべるーがとやらは……一刀両断にされてもなお、喋り続けることができるという技なのか?」

「お、俺の首が!?」

「次」

 

首を狩って死なない化物はいないだろうという考えは、間違ってなかった。

猪頭はその頭蓋を足元に転がして、息絶えた。

それにしても、最近の獣は南蛮人みたいな横文字を使うんだからスゲェなぁ、オランダ生まれか?

 

「そんで、お次はあんちゃんか。あんちゃんは、人っぽいな?」

「テメェ、死神舐めてんのかぁ!」

「舐めてる、いやいや、ちゃんと警戒してるさ。震えて一歩も動けねぇ、ちょいとこっちまで来てくれねぇか」

「茶番に付き合うつもりは、ねぇーんだよぉぉぉ!」

 

三日月型の刃を二つ合わせ8の字のようにした大鎌状の武器が、此方に向かって飛んでくる。

どうやら先に鎖が付いてるようで、振り回して運用するらしい。

難なく居合で弾くが、相手も当たり前のように弾かれた武器を掴み直す。

此方の実力を見切ったとでもいう嘲るような顔、油断の表れは隙を生む。

その隙、意識と意識の間、隙間に差し込むように刀を滑らせ。

 

「ッ!?」

「何だよ、まさかこんな程度で驚いたって訳じゃねぇーだろ」

「お前さん、何かしたのか?」

「その言葉、そのまま返すぜ死神!俺の鋼皮は歴代全十刃最高硬度、つまり斬れねぇって事だ」

「イエロ、黄色ってことか。俺は詳しいんだ、英語だろ?」

「スペイン語だ、ボケェ!」

 

なん……だと……蘭学について学んだことがあったのだが、違うのか。

まぁいい、今までで一番硬い敵だ。

コイツを斬れれば、俺はもっと強くなれる。

 

「秘剣・零閃!」

「ハッ、無駄だ!」

「斬れないなら、斬れるまで、斬り続ける」

 

脱力、鯉口を切る、柄に手を掛ける、抜刀、居合抜き、納刀、脱力、鯉口を切る、柄に手を掛ける、抜刀、居合抜き、納刀。

もっと早く、効率を上げていく。

抜刀、居合抜き、納刀、抜刀、居合抜き、納刀。

もっと早く、速く、疾く。

抜刀、納刀、抜刀、納刀。

 

「テメェの、くっ!剣じゃ、うっ!斬れねぇ、ぐっ!テメェ、な、何遍ッ!おい、喋ってる間はやめろ!話し辛いだろうがっ!」

「うるせぇよ、やってみなきゃ分かんねぇだろ」

「だから、斬れねぇって言ってんだよ!斬れねぇけど、弾かれてうぜぇんだよ!別に痛いとかそんなんじゃねぇーけど」

「えー本当でござるかぁ?」

「ブッ殺ッ!」

 

八千流が煽ったせいで、敵が余計に怒った。

どうでもいいが、妙にイラつく言い方はどこで覚えたのか。

だが、もう少し力を込めれば斬れそうだ。

 

「だから、ぐあぁぁぁ!?」

「やっとか、お前さんの硬さに筋が縮こまってたようだ」

「ば、馬鹿な!何で斬れんだ!うわぁぁぁ!」

「ぬっ」

 

敵の刃が、俺の眼帯を切り裂いていく。

馬鹿が、拘束具を外すなんて、もう振り抜いた刀は急には止まれないんだぞ。

 

「ぐぎゃぁぁぁぁ!?」

「手加減、しそこねた」

「ハァハァ……舐めんじゃねぇ、祈れ聖哭螳蜋」

「さんたてれさ、また横文字か……」

 

強者特有の気配が爆発するかのように増える。

その気迫に、一瞬目の前が真っ白になる。

その間にか、敵の腕が四本になっていた。

 

「ど、どういうことだ……」

「俺に本気を出させたのは褒めてやるぜ死神、だが終わりだぜ」

「零閃艦隊・五機!」

「ぐあぁぁぁぁ!?クソぉぉぉぉ!」

 

急に腕が増えたので、取り敢えず全部斬ることにしたのだがおかしなことに腕がまた生えた。

あれ、いつの間にか六本になってないか、なってる。

 

「なん……だと……」

「ハァハァ、無駄だ死神!俺の腕を斬ろうが、俺の腕は再生する!」

「零閃艦隊・五機!」

「ぐあぁぁぁぁ!?は、話を聞いてたのかお前!」

「零閃艦隊・五機!再生するなら、出来なくなるまで斬るだけだ」

「馬鹿が、やめろ、頭湧いてんのか!」

 

右腕が飛ぶ、二本目の右腕、三本目の右腕、一本目の右腕が生えてくる、右足が飛ぶ、左足も斬り飛ばす。

左腕を三本、斬り飛ばす。

右半身は既に再生を終えていた。

また生えたそれを同じように切断、右半身に生えた腕三本と右足が飛ぶ、しかし左足だけで立っていた。

左半身が再生し終えていたので、左腕全てを斬り飛ばす。

右半身が完全に再生、鬱陶しいので右半身と右足を切り裂く、返す刃で左足と左半身を全て切り落とす。

少し再生の速度が遅くなってきたか、右腕三本と両足を斬り飛ばす、右腕がまた生えてきた。

左腕三本と右腕二本を斬り飛ばす、くそ終わりが見えない。

右上、右、右下、右足、左足、左下、左、左上、上。

 

「あっ……」

「ネルエル……」

「しまったな、間違えて首を飛ばしちまった」

 

生えてくると同時に切り飛ばすのが段々楽しかったのだが、如何せん首が飛んだら死ぬらしい。

斬っても斬っても、すぐに治るので斬り続けられると思ってただけに残念だ。

 

「アンタ、エゲツねぇな……」

「銀ちゃんすごーい!」

 

山のようになった手足の上で、八千流が笑顔を振りまいていた。

 

 

 

それはまたしても巨大な存在だった。

エスパーダ最強と名乗るソイツは、ヤミーと呼ばれていた。

姿は巨大な芋虫、だが強者の気配である霊圧は恐ろしいほどに莫大だ。

まぁ、勝ったが。

 

「実に紙一重の勝利だった、アンタの千本桜と奇策が無けりゃ死んでいた」

「兄の剣技があればこそ、首の皮一枚の勝利とはまさに先程の戦いの事を言うだろう」

「しかし、あの特殊な歩法を織り交ぜた、そにーどとかいう技、あの巨体が縦横無尽に動ける技があるとは思わなかった」

「技と言うなら霊圧を固める虚弾と霊圧を集中される虚閃の複合技、奴の話ではその技を会得することで十刃入りしたという、まさに然り」

「いやいや、周囲の魂魄を吸収する魂吸、その応用こそ脅威だった。なにせこの世界を構成する物質とやらを吸い込まれちまう、あの時足場が崩れていなければと思うとぞっとするねぇ……」

「決まると思った兄の零閃、その後の変身と全回復は虚ながら見事であった。アレで帰刃の一部も実力を出し切れていないというのだから不死身かと感じた」

「正直言って、今回勝てたのは運としか思えねぇ、奴が近くにいた犬に対して躊躇しなければ最終形態に変身してやられていたかもしれない」

「あの溜め込んだ霊圧を一点に集中させる技、奴は最後の帰刃と言っていたが変身していたなら、愛染すら超えるという。一体、どういった技だったのか、気になるくらいだ」

 

仕事を終え、同僚と仲良く話しながら、瀞霊廷へと帰るのだった。

 

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