サトラレ八幡   作:149

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#6 提案

結局あの後教室に帰っても相模が悪意の目でさらされていることはなかった。しいて言えば俺が奇妙な視線と殺気のこもった視線で見られたくらいだろうか。いやほんとこわかったねうん。そうこうしているうちに掃除は終わり、部活の時間がやってくる。

 

「ヒッキー!一緒に部室いこ!」

 

ホームルームが終わるなり由比ヶ浜は直ぐ俺の席にやってくるなり俺の腕を両手でつかみそう告げる。

 

「あの由比ヶ浜さん?それって拒否権って存在します?」

 

提案してる風にそう言うが俺の腕はしっかりホールドされ逃げられないようになっていた。

 

「うっ…もしかして嫌だった…?」

 

拒否されると思った由比ヶ浜は上目遣いで悲しそうに問いかけてくる。

 

「い、いや別に嫌じゃないけど…」

 

(逆に由比ヶ浜に抱きつかれて嫌だなんて言う男子居ないだろ…)

 

「えへへ…ならいっしょに行こう!」

 

「わかったわかったからそう引っ張るなよ…」

 

半ば強引に腕を引かれ教室を出て部室まで一緒に向かう。腕を組みながら。

 

(殺す気?俺のこと殺す気なの?さっきから凄い見られてるんですけど。ボッチにこの視線はきついんですけど…)

 

恨めしく由比ヶ浜の方を見るがさっき同様顔を真っ赤にしている事に気付く。

 

(…顔赤くするくらいならするなよ…勘違いしちゃうだろ…)

 

顔を真っ赤にしている由比ヶ浜をみたことで嫌でも腕に当たっているそれのことを意識させられてしまう。

 

(…勘違いしてもいいのにヒッキーの馬鹿)

 

結局顔を真っ赤にした二人は大した会話もせず部室の前に到着する。

 

「由比ヶ浜もう部室についたし離してくれ」

 

「え!?…ああうんそうだよねついたもんね…」

 

名残惜しそうに俺の腕から離れる由比ヶ浜には気付かないふりをして部室へと入る。

 

「うーっす」

 

「こんにちはさっきぶりね」

 

「お兄ちゃんやっほー!」

 

扉を開けると雪ノ下と小町が挨拶を返す。そう晴れてこの学校に入学した小町は入学式があったその日にもう入部届をかき奉仕部への入部を果たしていた。

 

「やっはろー!小町ちゃん!ゆきのん!」

 

「やっはろーです!結衣先輩!」

 

「ええ由比ヶ浜さんこんにちは」

 

由比ヶ浜が部室に入るなり小町は立ち上がり由比ヶ浜へとちかよりはぐをしている。

 

(いつの間にそんなに仲良くなってたの?てか俺の時と反応違いすぎない?)

 

そんなことを思い少しダメージを受けながらいつもの定位置へと移動しカバンから本を取り出す。

 

「ところで比企谷君その…体は大丈夫なのかしら?」

 

席に着くなり雪ノ下は俺の方を覗き込みながら問いかけてくる。気になるのか由比ヶ浜と小町も俺の方を向いている。実は八幡は面会ができないようになっていたため小町ですら担当医からしか状況を聞いていなかったのだ。

 

「まあ大丈夫だぞ。特に後遺症とかあるわけでもないし」

 

それを証明するかのように骨折していた方の腕を軽く回す。

 

「流石の再生能力ねゾンビ谷君。とても真似できないわ」

 

「誰がゾンビだ誰が。俺が腐ってるのは目と性根だけだ」

 

「そこは認めるんだ…」

 

(…ああ久しぶりだな)

 

そんな他愛もない会話日常でありふれたようなそんな会話を八幡は懐かしく感じていた。面会謝絶状態だったため三週間ぶりのこの会話を心から楽しんでいた。

 

「まあお兄ちゃんが無事でよかったよ!あ、これ小町的にポイント高い!」

 

「はいはい高い高い」

 

俺はそう言いながら横にいる小町の頭に手を伸ばしなでる。ちなみに席順は俺ら三人は前と変わりなく俺と由比ヶ浜の間に小町がいる形になっている。

 

「もうお兄ちゃん小町もう高校生なんだけどな…」

 

そう悪態をつきながらもまんざらでもなさそうに身をよじる小町。そんな小町を羨ましそうに見る人影が二つ。

 

(むう…小町ちゃんずるい…私だって撫でられたい…)

 

(別に羨ましいわけじゃないけれど…私もやってもらえないかしら)

 

ひとしきり撫で終わると八幡は小町の頭から手を放す。小町は名残惜しそうな表情を浮かべるがそれも一瞬ですぐに由比ヶ浜たちと話し始めていた。八幡はそんな三人から視線を逸らし本へと向ける。そこから静かな時間が…。

 

「どうもー!!かわいい後輩のいろはちゃんが遊びにきましたよー!」

 

やってくることはなかった。扉を勢いよく開け元気に一色は入ってくる。そしてすぐに俺を見つけ俺に声をかける。

 

「あ、先輩久しぶりです!もう体は大丈夫なんですか?」

 

「おうもう大丈夫だぞ。要件は終わったか?なら出口はそこだ」

 

(こいつが来る時って基本仕事もってくる時だからな…)

 

「ひどい…先輩ったら可愛い可愛い後輩が心配してたって来たって言うのに…」

 

「うそつけ」

 

「…でもほんとに心配したんですよ?」

 

先程までの媚びるような声音とは違い真剣みを帯びた声でそう言う。流石にそんな声で言われると嘘だと言うことも出来ず

 

「…そうか…そのありがとな」

 

八幡はそっぽを向きながら感謝を述べる。

 

「ふふ~んいえいえ~!」

 

それで満足したのか真剣な表情から楽しそうな表情に変わっている。

 

「それで今日は雪乃先輩達に用があってきたんですけど…」

 

「達ってことは私達も?」

 

「はい!取り敢えず女子たちだけで話したいことがあるんですけど…」

 

一色はちらちらと俺の方に視線を送ってくる。

 

(はいはい分かりましたよ…)

 

「ちょっと飲み物買ってくるわ」

 

俺はそう言うと部室を後にした。

 

***

 

「それで一色さん話って言うのは?」

 

八幡の声が聞こえなくなったあたりで雪ノ下が話を切り出す。

 

「その事なんですけど…ぶっちゃけこれってチャンスだと思うんですよね」

 

「その…何のかしら」

 

「先輩って結構めんどくさいし全然自分の好みとか全然話さないじゃないですか」

 

「確かにヒッキーの好みって聞いたことないかも…」

 

「ええ、どうせ聞いたところで小町さんか戸塚君の名前を出すだけでしょうしね追及してものらりくらりとかわすでしょうね」

 

「まあ、お兄ちゃんですしねー」

 

「でもですよ、今あの先輩の本音が簡単に引き出せちゃうんですよ?」

 

「…つまりこの状況を利用して色々聞きだそうってことかしら」

 

「そうです!この機会を生かす手はないと思うんですよ!」

 

「ええっ!?でもそれってヒッキーに悪いんじゃ…」

 

「そんなこと言って結衣先輩、先輩の心が聞こえるのをいいことにその凶暴なものを押し付けて楽しんでたんですよね?全部筒抜けでしたよ?」

 

「いや…でも…ううっ…」

 

そのことを思い出したの由比ヶ浜は顔を染める。

 

「それじゃあ逆に聞きますけどあの先輩が正攻法で落ちると思いますか?」

 

「…それは…多分…無理だと思う…」

 

「…私は賛成ね」

 

「ゆきのんっ!?」

 

「だってあの男絶対に本音を漏らさないし誰の好意に気付くこともないじゃない。ええ悪いのは全部あの男よふふふっ」

 

雪ノ下が怖い感じの笑みを浮かべる。その様子に若干全員引いていた。実は雪ノ下は八幡への好意を自覚してから八幡の前では本人なりにアピールをしていたのだが全く意に返さないその様子に業を煮やしていた。周りから見れば軽いツンデレみたいなものなんだが本人は全く気づいていない。

 

「ま、まあとにかく依頼と称して色々聞きだそうって話ですよ」

 

「なるほど…でも…。んー…」

 

「結衣先輩よく考えてみてください。どっちにしろどう足掻いても本音は聞こえちゃうんですよ。私は単に奉仕部に依頼をするだけでその時に先輩の本音が聞こえちゃうのは不可抗力だと思うんですよ」

 

「…な、なんかいろはちゃんの思考がヒッキーに似てきてる気が…」

 

「それは誉め言葉として受け取っておきます。…それに確かに不特定多数にそれを聞かせるなら流石に気が引けますけど、なんとここは特別棟のしかも人通りは少ないと来ました。てことは…」

 

「聞いてるのは私達だけ…」

 

「そう言うことです!」

 

(うう…なんかいろはちゃんにいいように言いくるめられてる気がする…でも気になることには気になるし…)

 

「…なら私も賛成…かな?」

 

「よくぞ言ってくれました!お米ちゃんは?」

 

「…え?私はまあ…いいですけど…」

 

「小町ちゃんどうしたの?」

 

いつもより元気がなさげに見える小町を心配そうにのぞき込む。

 

「…大丈夫ですよ!ちょっと考え事してただけです!」

 

明らかに空元気なのだが本人がそう言ってるのもあり由比ヶ浜はそれ以上の追及をやめた。

 

「それにしても何でこんなことを私たちに提案したのかしら。正直あなたにメリットはないと思うのだけれど」

 

「ゆきのんメリットがないってどういうこと?ヒッキーの本音を聞けるしメリットはあると思うんだけど…」

 

「ええ確かにその点で言えばメリットでしょうけど私たちにそれを提案する理由はないのよ。別に一人で生徒会の仕事がと言って呼び出してさりげなく聞けば私たちに対して大きなアドバンテージになるのよ。実際一色さんに言われるまでこんなこと思いつきもしなかったもの」

 

「…そっか確かにいわれてみれば…」

 

「…正直私も一人でやることも考えました。でもちょっと考えてみたんです。先輩って割と言ってることは辛辣で不器用ですけど優しいじゃないですか」

 

「ええ、そうね」

 

「その優しさって深くかかわらないとわからないんですけど先輩ってあんなだから人を寄せ付けずこれまではそれに気づく人もごく少数でした。でも…」

 

「これからはそれが前面に出るから気づく人がでると…」

 

「ええそれでライバルが増える可能性ってかなり上がると思うんですよね。実際周りの先輩を見る目ってかなり変わってると思いますし、それにぶっちゃけ雪乃先輩や結衣先輩だけでも危ないのにこれ以上増えるのはあまり望ましくないんですよ。現時点でもあの誑しまだ何人か誑かしてるっぽいですし」

 

「誑かすって…でも確かにヒッキーのいいところが認知されるのはいいことだけどそれは嫌かなあ…」

 

「でしょう?なのでここは協力関係を持ち掛けます」

 

二人は少し考える素振りを見せ賛成の意を述べた。

 

「じゃあ誰が選ばれても文句はなしってことで」

 

話がまとまった一色たちは八幡の帰りを待った。一人表情に陰りを見さながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも149です。久しぶりに投稿してこんなにコメントがもらえると思ってなくて嬉しかったです本当にありがとうございます。コメントにもあったのですかどの作品もこのまま一生放置する気はありません。ただほんとにその時モチベがある作品しか書かないのでその辺はご了承いただけるとありがたいです。あと続けるとは言いましたが割と路線を変えているのである程度のところまで急ピッチで進めています。展開が早くて読みにくかったらすいません。それでは閲覧ありがとうございました。次回またお会いしましょう。
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