やあ、はじめまして、になります。
私、このたびこの奇妙な世界へと放り込まれた。
いわゆるひとつの、オリ主でございます。
いわゆるひとつの、でお馴染みだったあのミスタープロ野球と呼ばれた方も、存在が遠くなりましたな。
今ではもう、若い方々にはミスターの息子の方が知名度があるかもしれません。
おっと、話がズレましたか。
放り込まれた私ですが、一応の理由というものはあったようで、説明をしてくれました。
世界を一つ、神様のような存在が創り上げたそうです。
ですが観測者無き世界は、存在を消失するらしく。
外部から、常に観測しておくか。
あるいは、異世界出身の知性ある者を世界に放り込んでおくか。
そのいずれかが必要になるのだそうです。
「読者がいない小説や、視聴率がアレな番組が打ち切られるようなもんだよ」
あの奇妙な、ですがどこか愛嬌の有った黒い何かは、私にそう語ったものです。
いや、何か違うとは思いましたが。
どう違うのか上手く言えないので、ツッコミは入れませんでしたよ。
それでまあ、私が放り込まれることになったのは、元ネタがある世界だそうで。
なんでもBLEACHなる世界だと聞きました。
ただ。様々な所から頂いてきた、余りモノで作ったあくまでそれらしい世界だそうですが。
それに前任者も居たそうです。
残念ながら、すでに亡くなっているらしいですけれども。
なんでも、世界の問題を概ね解決して、その代わりに死んでしまったのだそうです。
それは立派な主人公でしたね。
そう言ったところ。
「いや、どっちかと言うと脇役だったなあ。助演男優賞取れそうな、いい役者だったよ」
感慨深そうに、そんな答えが返ってまいりました。
いい人生だったようですね。
と、その時に、名も知らぬ前任者の人生に敬意を覚えたのですが。
「でも問題全部クリアされちゃったら、世界終わるからね! リセットしちゃうんだけどね!」
ぽちっとな。
そんな軽い言葉と共に、無かった事にされてしまって。
せめて私は、そういう事があったのだと。
この世界のために、命を捨てた存在が確かに居て。しかもそれは成功したのだと。
覚えていようと思いました。
人は二度死ぬ。
命を失った時と。忘れられた時に。
だからせめて、私は覚えていようと思います。
さいわいな事に、私は長く生きられるようですから。
前任者も、死神という寿命が無い存在に生まれ変わって、長く世界を存在させる観測者になるはずでした。
ですが、意思を持って行動した結果。
こうして私が二人目として用意される事になったわけでして。
つまり。
私からは、自分の意思で行動する自由は。
最初から、取り上げられてしまっているのです。
私は、死神ではありません。
もちろん人間でも、虚と呼ばれる存在でもなく。
私は、刀です。
ただ一振りの。魂をあるべき場所へと送り、魄を斬る。
いわゆるひとつの、斬魄刀ですね。
なお解号は「泳げ」です。
始解の銘は『たい焼きくん』です。
持ち主は【四番隊員の山田花太郎】です。
限りなくモブに近い、某炎の紋章なアレで言う
原作では、治療部隊である四番隊にピッタリな、傷を癒す能力の刀だった気がします。
本体ともども、地味すぎて覚えていませんが。
しかもこの世界。余りモノで作ったというだけあって、様々なキャラやら何やらが異なるのが普通なのですが。
彼、そのまんまなんですよ。
まさかとは思いますが。
彼は、花太郎は。
原作的にも、すでに余っ……
なぜでしょう。涙があふれて止まりません。
私に出来る事として、せめて卍解でも教えて差し上げたいのですが、それも出来ません。
なにせ、最初から 設定されていない ので。
前任者がイレギュラーを起こしすぎたので、縛りを入れた結果だそうです。
あと、卍解の名前が思いつかなかったからでもあるそうです。ですよね。
たい焼きくんの真名って何だよ……
たい焼きくんアイスにでもなるんでしょうか。
と言うか。始解の時点で、オチがついていてそれで終わっていると言いますか。
え? 能力?
たい焼き機になります。
たい焼きを作ります。
食べたら、回復します。
たい焼きを海に投げ込んで、釣り上げた後に食べたら、もっと回復します。
………………………………さて。
主といい、この能力といい。
何か出来そうな気が、欠片も無いのですが。
何を、どうしたら良いのでしょうかねえ。
とりあえず、主に死神辞めてたい焼き屋になろうと、持ちかけてみましょうか。
押してダメなら、引いてみろ。
原作に介入できないなら、いっそ原作から完全に消えてみます。
それで何も変わらなかったとしても。
まあ、使命である長生きだけはできるでしょう。
さて。
花太郎が、私の声を聞けるようになるまで、まずは待たねばならないのですけれども。
あと何年先でしょうかねえ。