続いてシリアス回です。今回はオリジナル設定の説明が多いので、見てる皆様がつまらないと思わないよう頑張りましたので、どうか読み進んでいただけると嬉しいです。…ですが、ここの内容を理解しないと、次回以降所々チンプンカンプンになるかもしれません。
話は変わりますが、コラボが決定しました。今回も私から依頼しました。今回コラボを受けて下さった方の作品も、私の作品よりもずっと面白いので、(名前とコラボ先の作品はコラボ回投稿時にお伝えしますが)是非見に行ってみて下さい。
そして、SNOWRoelia推しさん、黒の迷い猫団長 サクヤさん、お気に入り登録ありがとうございます。
では、本編を開始します。
「…………」
言葉が出ない、とはこのことだろうか。知り合いがそこまでの重症だったこと以上に、こんな施設が実在することの方が驚きだった。目の前にある物々のほとんどが、都市伝説で語られるようなものばかりで、それこそ、研究・監視施設と謳った方が納得がいきそうなまである。
そんな呆然と立ち尽くす俺を置いて、東さんは続けて言う。
「言ってしまえば夏さんにとって最後の砦と言ってもいい施設よ。ここがないと、夏さんの治療は不可能に等しくなるわ。そうでないにしろ、治療は大幅に遅れてしまいかねない。医学界で認められた、合法的なものではあるけどね」
…正直、本当かと思ってしまう。SF世界の中にいるような錯覚をしてしまうこんな施設、合法だとは到底思えない。…まぁ、暗黙の了解的ジャンルなのだろうとは想像がつくが。
「私達がいるこの部屋は、所謂夏専用治療室監視室ってやつよ。このマイクもモニターも、夏さんが今いる治療室に繋がってるわ」
淡々と説明している。これではプライバシーなんてあったものじゃない、と最初は思ったが、あの状態の夏と対峙したからだろうか、次第に仕方ない処置なのだろうかと思っていた。
「…私も、本当はこんなことしたくなかったのよ?ただ、あの病気は、わからないことが多すぎて危険なのよ。あれを普通の病室に置こうものなら、人が死ぬわ。それは、医者として看過できない」
最もな正論だ。職業柄、仕方の無いことなのだろう。見てくれこそ褒められたものではないかもしれないが、動機が真っ当なものなのは、その一言で十分理解できる。
「…夏の病気の研究も、ここで?」
「一応、専門のところがあるけれど、こっちでもやってるわ。…進捗こそないけどね」
新種の病の研究がどれくらいの速さで進むのかは、一般人からしたら知らないはずだが、その表情から察するに、進みが悪いのだろう。精神が絡んでくる病気は、大体複雑なイメージがあるが、今回もそうなのだろうか。
すると、東さんがマイクの電源に手をかけ始める。夏の様子が気になり、電源がついていたモニターを見やる。どうやら、さっきまでの狂人染みた様子ではなくなってるように見える。
「…今から放送をかけるから、静かにしてもらっていいかしら?」
「わかりました」
俺の返事を聞いた東さんは、マイクとスピーカーの電源をつけた。
〔夏さん、聞こえるかしら?聞こえるなら、返事をしてちょうだい?〕
「……聞こえ、ます」
夏の言葉には、今までのような活気はなく、今にも消えてしまいそうな声量だった。きっと、何をしたのか、大雑把に察しているのだろう。
〔…疲れているでしょう、しっかり休んでおきなさい。症状が良くなったら面会と退院も視野に入れるから〕
「…はい」
そんな短い会話を最後に、モニターと部屋の電気以外が切られた。
「…色々と疲れたでしょう?今日は帰って休むと良いわ。面会は…出来るようになったら知らせるわ」
「…わかりました。色々ありがとうございました」
俺も正直疲れていたので、帰ることにした。…夏、頑張ってくれ。
[治療室]
「…………」
再発してしまった。この部屋にいることが、それを表す最大の証拠だ。…誰かを傷つけてないだろうかと、自身の心配より他人の心配をしてしまうのは、相変わらずだ。自分の方が、余程重症だというのに。
「……はぁ」
溜め息しか出ない。さっきの放送で、東さんが私を気遣ってくれるのがわかったが、そんな親切ですら真に受けれない。…寝た方が良いのだろうか。
「……前も、こんな感じだったっけ…」
ふと、昔同じ事になった時の事を思い出す。中学生だった頃、一度だけこうなった事がある。…場所は覚えてないが。昔は確か、皆の悪口がトリガーだった。我慢してきた私も、限界を迎え、狂ってしまったんだ…と思う。何分、私自身記憶がないので、確信して言えることも少ない。
そして今回は、それのフラッシュバックがトリガーだった。こっちは覚えている。何故かはわからないが。
「……うっ」
頭痛と目眩、吐き気が襲う。精神が磨り減っているのだろうか、それとも嫌な事をわざわざ思い出したからだろうか。…これ以上考えるのは止めた方が良い、そんな気がしてくる。
「…寝よう、うん…」
現状と自身の精神の惨状から目をそらさんとばかりに、私は眠りについた。
──夢なら、覚めて欲しい
[羽沢珈琲店]
「…遅いな、夏」
「何かあったのかしら…?」
店も終わり、片付けが今さっき終わったところで、お姉ちゃんがまだ帰ってきていなかったことを知る。
そんな私達の心配を煽るように、店の電話が鳴る。何故だか、不気味な音に感じてしまう。お父さんが出たのだが…
「……本当ですか!?」
尋常じゃない程の焦りを見せる。それを見守る私とお母さんも、次第に焦りが強まる。そうして電話を切ったお父さんが、私達を絶望に陥れる一言を、悲しい表情をしながら告げた。
「……夏が、花咲川病院に搬送された」
[治療室]
「…………」
昼に寝入ってしまったため、夜になっても眠気が来ない。精神面が云々とかではなく、ただ単に眠くないだけなのだ。
「……暇だなぁ」
夜に出かける…というよりも、この部屋から出ることなど、到底出来やしない。そのため、こういう時間は暇で仕方ないのだ。どうしようもない事ではあるのだが。
「……ホント、夢だったら…どれだけ良い事か」
こうして、何かを考えるまでには良くなっている…というのは、私の強がりに過ぎない。けれど、今の言葉には強がり等は一切無い、紛れも無い本音だ。夢なら、いつか覚める。けれど、無情にもこれは現実。治るかもわからない病気に苦しんでいる今は、未だに覚める気配が無い。
「…こういう時に望む夢が、その人の真の夢だったり…なんて」
つくづく、そう思ってしまう。…いけない、またネガティブになってきている。自分でわかるのに、無意識にそう考えてしまう。私の悪い癖だ。
「こういう時こそ、気をしっかり持たないと…」
またすぐにそうなってしまうのが目に見えている。それでも、こうして言葉にして、どうにか頑張ろうと自分を奮い立たせる。…明日は、何をするのだろうか。
「…寝よう、多分…寝れるはず…うん」
またしても自分に言い聞かせ、ようやくベッドの上で眠りにつく。明日への一抹の不安を胸に抱きながら…
ということで、第22話が終わりました。
次回も本編…と言いたいところなのですが、コラボ回を導入しようと思います。このタイミングで書かないと書くタイミングがないと思いましたので、本編を期待していた方には申し訳ないですが、ご了承下さい。
次回『束の間の憩い』