今回は夏以外の人物の目線の話になります。そして、前回と前々回と同じ時間帯の夏以外のキャラの回です(全員は出ません)。誰がどう動き、何を思うのか、そこに注目して、見ていただけると、より楽しめるかと思います。
そして、お気に入り登録:kazusanさん、ドコカに居る他人さん、彩染 空さん、お気に入り登録ありがとうございます。もうすぐ完結しますが、最後までご愛読いただけると幸いです。
では、本編を開始します。
夏が搬送されてから少し経った頃
[花咲川病院]
「…夏は無事なんですか?」
「はい、安全を考慮した結果、再び隔離にはなっていますが…」
「…そうですか」ホッ…
時は少し遡り、夏が花咲川病院に搬送されて少し時間が経過した頃、病院には羽沢家の3人が来ていた。3人は少し特別な部屋に通されており、そこで話をしている。夏の方は、今は寝ている頃だろうか。
「最低でも退院には1ヶ月かかる見込みですが…場合によっては延びるかもしれません」
「あ、あの!」
そんな会話にしびれが切れたのか、つぐみが覚束ない様子で修一に尋ねた。「どうしたの?」と優しく聞く修一に、つぐみは間髪を入れずに聞く。
「面会とかは…出来ないんですか?」
「面会…ね。今はまだ無理ね、少なくとも2週間は面会謝絶の方針だから」
「…そうですか」
希望が断たれたかの如くショックを隠せないつぐみを他所に、修一は続ける。
「今は多少落ち着いてる方ですが、いつ変化するかこちらも検討がつかないので…退院や面会が可能になるのは遅くなるつもりでいて下さい」
「…わかりました」
その後は、また細かいことについて話をし、今日のところは帰ることにした羽沢家一行。
「…お姉ちゃん……」
そんな弱々しいつぐみの一言は、誰にも届くことなく虚空に消えていった。
[CiRCLE 2番スタジオ]
「…ふぅ」
「…ダメね。私含めて、音にいつもの覇気がないわ」
「…夏がいないだけで、僕達がこうなるなんてね…」
羽沢家一行の件から時間が経った頃、CiRCLEではTTDWが(やるかは未定だが)次のライブに向けて音を合わせていた。…が、そこに彼女の姿はない。
「皆さん、心配なのはわかりますが、私達が元気でいないと、夏さんに怒られますよ!…私も心配で仕方ないのは同じですが、夏さんが帰ってきた時に笑って迎えられるように、私達がシャンとしないと!」
桜はこう言っているものの、彼女自身も3人と同じ気持ちなのには変わりない。…所謂空元気だろう。せめて上辺だけでも元気に振る舞って、夏をいつも通りに迎えようという魂胆から来ているものと思える。
「…それもそうね。私達だけ引きずってたら、夏も良い気持になれないわよね」
「…そうだね」
そんな見え透いた空元気も、今だからこそなのか効果があったようで、各々が活力を取り戻していく。…そんな中、とある発言により、この雰囲気が崩壊する。
「そういえば躑躅、まだ夏に告白してないのか?」
「!?」カァァ///
「え?貴方まだ言ってないの?」
そう、躑躅は夏の事が
「相変わらずのヘタレですね…」
「ウッ…ぼ、僕だって言いたいさ!でも…」
「断られたらって考えると言い出せない…と?」
図星だったのか、再び情けない声を出してしまう躑躅。3人は呆れているのか、溜め息を漏らしていた。
「しばらくは面会出来ないらしいからな、面会出来る時までに覚悟を決めておけ、躑躅。夏は男性受けが良いから言い寄ってくる奴が出てきてもおかしくはないぞ?」
「嘘!?」
「普通に考えてわかるでしょ?…寧ろ今まで誰にも言い寄られてないのが不思議なのよね」
親友というフィルターを抜きにしても、夏は美形であり活気もある。店の手伝い(厨房での料理)もしていることから、料理も出来ると推測される。それ以外の家事の出来はわからないが、ここまで出来るなら男としては理想に近いという者も多いだろう。
「やはり、バンドをやってるから下手に言い寄れない人が多いのでしょうか?」
「恐らくはな。そういう点においては躑躅の方が有利だな。バンドをやってるうちは言い寄る輩も少ないだろうしな」
例外がいないとは言い切れないが、と付け加え、話すことを止める竜胆。一方で、考えている様な雰囲気を醸している人が1人。しかし、いい加減しびれが切れたのか、楓が声を大きくして言い放つ。
「いい加減に覚悟を決めなさい、躑躅。貴方の思いは、断られるからって言うのを止めるようなそんなちっぽけなものなのかしら?」
「ッ!」
いつもの楓からは想像もつかないその一言に、思わずたじろぐ様子の躑躅。それに続けるように言ったのは、桜だった。
「何だかんだ言って貴方の1番悪いところは、そういうところです。本当に言いたい事を言わないで、最終的にお茶を濁す。いつもならここまでは言いませんが、今回のは見ていられません。一度、伝えて下さい。貴方は、もう少し勇気を持つべきです」
日頃から躑躅に注意してきた桜の一言も、彼に響いたのか、躑躅もより一層険しそうな表情になる。そして、竜胆も口を開いた。
「お前はこのバンドで、様々な事を学んだはずだ。時にはリスクの高い事もやってきた。バンドで出来て、個人になったら出来なくなる程、お前は弱くないはずだ」
「…僕が、弱くない…?」
「当たり前でしょ?何だかんだ、貴方は色々な事をこなしてきた。FWFだって、誰かが欠けていたら優勝出来なかったわ。勿論、貴方も例外じゃないわよ」
「私もそう思ってます。貴方は強いです。だからこそ、貴方はTTDWに欠かせないくらいの人になったんです」
皆の言葉が意外だったのか、強い衝撃を顔に出す躑躅。そんな彼に、最後の一言が。
「伝えてこい。お前なら、出来るはずだ。…とは言っても、まだ面会は出来ないからな。今のお前の課題は、伝えるという気持ちを、面会する時まで持ち続ける事だ」
「……わかった、伝えるよ」
躑躅を除く面々は、疲弊した様子だった。躑躅が夏を好きだという事は、態度を見て察せたため、見てる側としてはもどかしい事この上なかったのだろう。それに、伝えると、彼の口から言わせるのにこれだけの時間を要したのだ。肩の荷が下りた、といったところだろうか。
「なら丁度いいし、今日はこれで解散にしましょう。しばらくは自主練ですから、しっかり取り組んで下さいね」
その問いかけに、三者三様の答えが返った。それを最後に、4人はこのスタジオを後にした。
[羽沢珈琲店]
「どうしたの~つぐ~?元気ないね~」
「そうだぞ、つぐ。何かあったなら相談に乗るぞ?」
病院での一件から一夜明け、ある一軒の一角では、気が沈み切っているつぐみを筆頭としたAfterglowもとい幼馴染み集団が話をしていた。
「実は……お姉ちゃんが入院しちゃって…」
「え!?夏さんが!?」
「うん…」
初めて知ったのか、つぐみ以外の面々は驚愕の表情を浮かべている。その会話に間髪を入れずに、巴が問いかける。
「夏さんには会ったのか…?」
「…ううん、しばらくは面会できないんだって」
「しばらくって、どのくらい…?」
「…少なくても2週間はダメだって」
「…長くない?普通数日とかじゃないの?」
と、不思議そうに問いかけるのは、蘭だった。というのも、一般的に面会謝絶の期間というものは、そこまで長くないものだ。…病状の重くない限り、ではあるが。
「…夏さん、症状が酷いの?つぐ」
「……」コクリ
肯定するように小さく頷くのを視認すると、4人は表情を暗くした。5人のいる場所は、次第に店の賑わいとは異質の空間へと変貌していった。
「…でも!いつかは面会は出来るんだよね!?」
「…うん、多分ね」
「ならさ!私達がしょげてたらダメだよ!夏さんの前で今みたいな表情してたら、夏さんだって余計に悲しむかもしれないじゃん!」
ひまりがかけたその一言に、一同は納得したかの表情を浮かべる。そして、段々と表情に明るさが灯っていった。
「…そうだな!ダメだダメだ!夏さんだって不安だろうしな!アタシらまで不安がってたら、夏さんにも気を遣わせるかもしれないし!」
「…そうだね。ひまりにしては、良い事言うじゃん」
「ちょっと蘭~!?どういう事~!?」
気付けばいつも通りに逆戻り。…とはいかない様子。未だに暗いままの人物が1人。
「つぐ~?」
「…モカちゃん」
そんなつぐみに声をかけたのは、意外や意外、モカだった。相も変わらずいつものようなおっとりした声で、つぐみに話す。
「夏さんの事、信じて待とう~?」
「…そう、だね」
その一言が少し効いたのか、つぐみの雰囲気が多少和らいだ。他の皆も、ホッと胸をなでおろしている。
「…大丈夫、お姉ちゃんだもん!」
そんな見え透いた空元気を口に出し、つぐみは最愛の姉を信じて待つことを決心したのだった。
ということで、第24話が終わりました。
今回は、夏の身近にいる人達の回でした。衝撃の事実も発覚しましたね。勿論、伏線は貼っていましたが。そして、アンケートも締め切りが近くなってきました。ご回答がまだの方は、是非ご回答下さい。
次回『思いを乗せて、音は行く』