羽沢家の長女   作:Cross Alcanna

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どうも、Cross Alcannaです。

後何話で完結するかの目途は立っていませんが、3~5話くらいになるかと思います。新作の執筆も進めていますので、そちらもお楽しみ下さい。このジャンルとは違った描写を心がけておりますので、新鮮な感じで楽しめると思いますので。

そして、お気に入り登録:ほっきーさん、カラス先生さん、ポテトヘッダーさん、TAKAHIRO1さん、げねぽさん、龍狼さん、ピエトロ Type RSさん、お気に入り登録ありがとうございます。他小説から来て下さる方が増えてきた印象ですね。

では、本編を開始します。



【本編】ワタシという1ピース

2週間後

 

 

[治療室]

 

 

〔じゃあ今日はこれで終わりね。…あ、そうそう、今日から面会OKになったわよ〕

 

 

「…あ、もうそんな経ったんですね」

 

 

彼女が入院してから2週間経った頃、症状も言う程悪くならなかった事もあり、面会を許可する方針になった。夏の方はというと、実感がなかったような調子で軽く呟いた。

 

 

〔今日は…家族の皆が面会したいって来たわよ。…一応、貴女の許可を取ろうと思ってね。…良いかしら?〕

 

 

「え、別に許可はいらないのでは…?」

 

 

〔…あらそう?じゃあ面会時間になったら連絡するわね〕

 

 

そう淡々と一言告げた後、静かにプツリとスピーカーを切る音が響く。ふぅ…とボソリ溜め息をつく。その溜め息には何の念が籠っているのか、まさに夏のみぞ知るところだろうか。

 

 

「…とりあえず、キーボードでも弾いてようかな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[診察室]

 

 

あれから時間は経過し、病院に羽沢家一行がやってきていた。少し話をしたのだろうか、今は面会をする為に移動しようとしているように見える。

 

 

「…じゃあ行きましょうか」

 

 

『…はい』

 

 

そうして少々気まずい雰囲気の中、羽沢家一行と修一は例の厚い鉄扉の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[面会室]

 

 

「夏……!」

 

 

「良かった…!」

 

 

面会室に通された一行は、夏の姿を見るなり様々な反応を見せる。嬉しかったのか安堵の息を漏らしたり、方やヘナヘナと地面にペタリと尻もちをついてしまったり、泣く者まで現れる始末。

 

 

「…とりあえず、落ち着かない?」

 

 

周りがこうだと取り残された者は冷静になる、などとは言うが、今の夏がまさにそれにあたるだろうか。困惑の表情を多少含みながら言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…落ち着いた?」

 

 

「……ええ」

 

 

混乱がようやく収まってきた所で夏がそう尋ね、それに代表して答えたのは、彼女の母だった。

 

それに続くように、父も言葉を1つ2つと紡ぎ出す。

 

 

「……苦しくないか?退屈してないか?」

 

 

「うん、部屋にキーボード置いて貰ったから多少は…ね」

 

 

無理はするなよ、と心配の声を続けてかける父に、夏はうんと一言言っただけだった。その後には、沈黙が空間を支配していたが、それを破ったのは、つぐみだった。

 

 

「お姉ちゃん…皆心配してるから、早く戻って来てね…?」

 

 

「…うん、勿論だよ」

 

 

いつもの癖か、夏の手は無意識のうちにつぐみの方へと向かうも、透明な仕切りに手が当たってしまい、その手はつぐみに届くことはなかった。

 

それをようやく自覚したのか、ハッとした表情で夏は行き場所を失った手を自身の方へと戻す。それを傍から見ていた家族は、悲しそうな、辛そうな、そんな顔をしている。

 

 

「…お姉ちゃん……」

 

 

〔…面会の時間は終わりね。今そちらに向かいますので〕

 

 

そんな一時の会合も、時間によって無情にも終止符を打たれた。その後、面会室の空間が静寂に包まれたのは、言うまでもないだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別日

 

 

[面会室]

 

 

「…夏さん」

 

 

ある日の面会。今日はTTDWのメンバーが来ていた。開始早々桜が心配の声を1つ。それに答える声は、あまりにも衰弱していた。

 

 

「…大丈夫だよ…うん」

 

 

「全然大丈夫そうに聞こえないぞ」

 

 

自身の状態をここまで露わにしているその一言は、当然のことながら、親友によって一蹴される結果に。他の面々も、心配しているような表情を浮かべているのは、火を見るよりも明らかである。

 

 

「キーボードも置いてもらってるし…大丈夫だって」

 

 

「…そんな顔で言われて納得する阿呆はいないわよ」

 

 

今にも死にそう、と言えば十分伝わるだろうか。修一曰く、栄養や運動不足等ではないらしく、どうやら精神が参ってきているのではないのか、との事。病院側も早く退院させたいのだろうが、何分抱えている病気が病気で、慎重に対応しなくてはならないのだろう。それがわかっているからか、TTDWの面々の表情が悔しさで満たされている。

 

 

「…夏」

 

 

「……何?」

 

 

やはり弱々しい声は健在の模様。今も尚衰弱しているように感ぜられるのは、気のせいなのだろうと思わざるを得ない一行。

 

 

「…いや、ごめん。何でもない…」

 

 

「……」

 

 

おいおいとでも言わん表情を浮かべているのを見る限り、まだ少しの余裕はあるようだ。そうして、面会の時間も終わり、TTDWの面々は去っていく。後に来た職員によって、夏は面会室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[治療室]

 

 

「……」

 

 

治療室に連れられ帰ってから、彼女はずっとこの調子。上の空ともとれるような、考えるのを止めているような。一向に衰弱し続けているのを、隠す気もない彼女に、元気なんてあったものではないだろう。最早今の彼女に、キーボードを弾くことも視野にないようだ。

 

 

「……はぁ」

 

 

ふと零れたその溜め息は、まるで鉄塊のような質量を帯びているように感ぜられる程重いものだった。表情との相乗効果によって、雰囲気までもが重くなっていく。夏以外がここにいたら、なんて感じるのだろうか。気まずすぎて吐いてしまうだろうか、それとも夏がトラウマになってしまうのだろうか。

 

 

「……寝よう…かな」

 

 

今こそ現実から逃げようと、早々とベッドに潜り、眠りに落ちようと試みる夏。その思いが届いたのか、すぐさま彼女は寝息を立て、深い深い眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[院長室]

 

 

「…これはマズいと思いますよ」

 

 

「…ふむ、そっちの方でか…起きてほしくなかった事態が起きたね……」

 

 

病院の中でも極めて広いその一室で、とある2人が重い雰囲気の中で会話を繰り広げていた。言わずもがな、その内容は夏の話に他ならない。

 

 

「…そろそろ仕切りを取っても良いかと思ってるんですけど」

 

 

「そうだね…状態から察するに、取った方が良いかもね」

 

 

病の再発はしっかり防いでいるものの、その弊害として精神に限界が来ている事を確信し、今後の対応をどうするかを相談している、といったところだろうか。慎重に対処しないといけないと思っていても、今の状態では、別の方向で大変な事になりかねないとの判断と取れる。

 

 

「じゃあ明日からはそうしますね」

 

 

失礼しますと言って去っていく彼女の背を見送る院長。それを見ていると、これから嫌な事が起こるのではないのだろうかと思ってしまう。

 

 

「…何もないと良いんだけどね」

 

 

不穏な空気の中、彼は仕事を再開し始めた。

 




ということで、第26話が終わりました。

残り数話での完結も本当になりそうですね。不穏な空気がバチバチですが、どういった結末になるのか、是非最後までお楽しみ下さい。完結後、たまにアンケートでも貼るかを検討中です。

次回『思いを込めて、君に贈る』
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