最近体の調子が優れない日が多いですが、完結までは頑張って投稿します。シリアスも頂点になっているところで、今回はどうなるのか、是非お楽しみに。
では、本編を開始します。
[治療室]
「……はぁ」
あれから少々日は経ち、今も尚私の精神は参ったまま。自分でわかってて尚、そうなっていく事を、最早自身も止められないのがもどかしい。そうして葛藤して一日が終わってしまうのが、最近の私の生活。堕落しきっているのが、小学生でもわかりそうな程わかりきっている。
「…キーボード」
ふと、結局さほど触らなかったそれに、私の目は行った。あの時弾いて以来、触れる気になれなかったそれは、少々埃をかぶってしまっていた。私もそれに初めて気付いたからか、ちょっと驚いてしまった。こうなってから感情の起伏がほとんどなかったため、多少の新鮮さを抱いた。
「……今なら」
…その気になったらその時の内に、なんて言ったり言わなかったりするし、今弾いたらどうなるのだろう。そんな微量の好奇心が勝り、ついに私はそれに手をかける。ふと、懐かしさが湧いた気がした。
「……これ、かな?」
そうして私が弾き始めたのは、『DANCE DANCE BUNNY』。ダーティーな曲調と歌詞が、私の感性に訴えかける。そうしていつの間にか、私の好きな曲の1つになっていた。
「……♪」
楽しい。他の感情は何も無いのに、どうしてか楽しさだけが私を支配している。目に見えないナニカが弾き続けろと訴えてきているのかはわからないが、それに任せて私の手は、弾くことを止めない。
「……楽しいなぁ」フフ…
その楽しさ故に、思わず久々に笑みを浮かべる。何だかんだ言って、好きなんだなぁ…キーボード。
「……ふぅ」
感傷にふけっていると、既に曲が終わっており、やり切ったという思いと共に、息を漏らす。何のしがらみも感じず、こうして弾く事も無くなったからか、今も尚新鮮な感覚だ。
「…もっと弾いちゃおうかな」
気付けばあれだけズタズタだった精神も、次第に和らいでいく。完全にって訳でもないけど、大分楽になっている感覚がある。
「…今日はゆっくり寝れるかな」
ポツリと一言。そんな小さな幸せを未来に願いながら、私は音を奏で続けた。…うん、
[面会室]
「あまり無かったんじゃない?躑躅と私の2人っきりって」
「…だね、何だかんだ誰かがいたしね」
仕切り無しで面会が出来るようになって、僕の予定もない今日、少し遅くはなったけどようやく来れた。夏に言われてから思ったけど、夏と2人っきりなのって、何気に初めてな気がする。
「…大丈夫なの?前は酷く参ってたみたいだけど」
「うん、今は多少マシにはなったよ」
当たり障りのない会話をする。僕にとってこの会話は、夏の様子を知る為のものだけど、見た感じと喋り方からして、あれから持ち直したみたいだ。…良かった。
「そっちは大丈夫なの?」
「うん、バンドの方は特段問題も無いよ」
「…ううん、違う」
「…?」
違う?どういう事だ?バンドの心配じゃなかったら一体何の……と思考に暮れていると、夏の方から答え合わせがなされた。
「躑躅の方だよ。何かいつもと違う感じがするから、何かあったのかなって」
「……」
驚いた。僕の事を心配していたという事にも驚きだけど、何かある事を見破られる位僕の顔がわかり易かった事に、驚きを隠せなかった。
夏は人の変化に敏感な方だけど、ここまで早く気付いたって事は、恐らく僕の方がわかり易い顔をしていた事になる。…顔に出さない練習とかした方が良いかな…?
「…今日はさ、夏に言いたい事が合ったから1人で来たんだ」
「言いたい事?」
「うん、ちょっと待って」
そうして夏に待ってもらい、僕は1つ大きな深呼吸をする。……よし、覚悟は出来た。……言おう。
その一言は、私の脳内を真っ白にするには十分過ぎるものだった。予想云々よりも、自分が告白される事も眼中に無い位だったから、驚きしか出ない。…今の私の顔、変じゃないよね?
…で、告白されたからには返事をしないといけないわけだけど……そもそもの問題よ?
「…どうして私?」
「……一目…惚れ……」
「へ?」
「…一目惚れだったんだよ!」
「…うぇぇ!?」
嘘ん!?じゃあ何?あのからかいとかって"好きな人程いじめたくなる"理論の典型的なやつ!?……そう考えると、何か恥ずかしいなぁ……顔もきっと真っ赤だよね、私。…躑躅の表情からして、本気みたいだし…
「…躑躅」
「……」
…待ってる、私の答えを。それを示すかのように、躑躅の双眸が私を捉えて離さない。…私の思うことをそのまま言おう、うん。
「…私ね、付き合うとか結婚するとかさ、出来ないって思ってるの。こんな体だしさ、かける迷惑が過ぎるって考えてるの」
「……」
この答えが果たして躑躅の望む答えかはわからない。でも、ここで遠慮した答えを出すのも、違う気がする。だからと心に言い聞かせ、私は言葉を紡ぐ。
「最近こうなってからね、その事ばっかり考えてね…先の事が心配に…なって…ぇ…」ヒック…
私の頬に伝うのは、私の意識とは乖離した大粒の涙。それも沢山。それがわかってから、私の中のモノが全部吐き出そうになってるのがわかった。それでも、私の自制心では止められないのもわかってしまっていた。
「だからぁ……嬉しいけど…躑躅に迷惑……かけられないからぁ……」エグ…
そう言った瞬間だった。私を、温かい何かが包んでいた。流石の今の私でも、それが躑躅のハグだったと理解はできた。そんな状態に、私は思わず「ぇ……?」と零す。抱く力は強くなっているものの、私を気遣ってくれているのか、どこか優しさがあった。
「…僕が、一緒にいるから。夏を、支えるから…」
その一言に、私の心は限界を迎え、私は人生で初めて大声を上げて、泣いた。他の誰でもない、躑躅の温かい胸の中で。躑躅もそれを受け入れてくれて、泣く私の背中を、ずっとさすってくれた。……ありがとう。
「……ねぇ、躑躅?」
「…どうした?」
あれからどれだけの時間が経ったのだろうかわからないが、私が泣き止んで躑躅の肩に頭を乗せている今、私は尋ねる。
「…ホントに、私で良いの?」
「当たり前だろ?夏の事情全部を加味しても、夏が良かったんだ」
「……♪」
躑躅が言ってくれる一言一言が、私の心を満たしてくれる。…この短時間で躑躅に入れ込んでるなぁ、私。…メンヘラとかヤンデレとかにならないと良いんだけど。そう考えている私に向けて、躑躅が一言。
「夏、そろそろ面会時間終わるんじゃないか?そろそろ離れ…」
「…もう少し、このままでいさせて?」
「……もう少しだけな」
「……♪」
今日は躑躅に一杯食わされたからね、今日くらい甘えても…良いよね。…まぁ、結局この状態を東さんに見られたのは、言うまでもないだろうけど。
ということで、第27話が終わりました。
遂に結ばれましたね。夏の心持も、ここいらから変化してきているのでしょうか。それは後にわかってきますので、最後まで見て行って下さると、嬉しい限りです。後、この小説の本編後のストーリーが見たいかのアンケートを新設しますので、良ければご回答お願いします。期限はアンケートに記載します。
次回『トンネルを抜けるとそこは』