羽沢家の長女   作:Cross Alcanna

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どうも、Cross Alcannaです。

さて、何回も言っていますが、完結まで後少しです。新小説の方が進んでいきますので、そちらも是非読んで下さると嬉しいです。尚、まだバンドリ小説は書きますので、そこはご心配なく。

そして、お気に入り登録:フユニャンさん、お気に入り登録ありがとうございます。

では、本編を開始します。



【本編】トンネルを抜けるとそこは

[休憩室]

 

 

「凄いわね、精神も回復してるどころか、寧ろ調子も良くなってる…」

 

 

夏さんの退院も近くなった某日、私は休憩室で1人そう呟いていた。夏さんはある日を境に体調や病状がガラリと豹変し、一般人と同等の健康状態にまで回復していた。…十中八九あれが原因なのだろうけど。

 

 

「…まぁ、元気になったのなら何よりね」

 

 

…私と夏は、()()()()()()()()()()。言ってしまえば、私の従姉妹に当たる関係になる。尤も、私は忙しいし、夏も忙しい(らしい)のも相まって、私達が会うのは、いつも実家でなく病院になってはしまうのだが。

 

 

「……良かったわね、夏」

 

 

私は夏より歳上なので、仕事でない時はわざわざさん付で呼びはしない。…まぁ、あっちはせいしんなトラウマのせいか、私にも線引きして接しているのだけれど。

 

担当医として寄り添っているからそれは承知の上ではあるけれど、従姉妹とお互いに親しく接せれないのは、少々思う所があるのも、また事実。

 

 

「…いつか、貴女と……」

 

 

いつ叶うかも分からないそんな願いも、次第に口に出す事を止め、中途半端な言葉が響く。

 

 

 

 

 

──いつか、貴女と……心の底から笑って…話したいわね…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

退院当日

 

 

[花咲川病院 入口]

 

 

「すっかり元気になって良かったわ、こっちも内心ヒヤヒヤしっぱなしだったのよ」

 

 

「せっかくの退院なのに、そんな湿気た事言わないで下さいよー」( *¯ ³¯*)ブ-

 

 

「そこまで言う余裕があるなら、大丈夫そうだね」

 

 

「躑躅まで〜!?病み上がりの人に対して辛辣過ぎでしょ〜!」ε٩(๑>ω<)۶зモー!!

 

 

夏が退院する日になって、私が躑躅君と夏を見送る事になり、こうして冗談を交わしながら、(私だけかもしれないけど)別れを惜しむ。

 

病人に対して、もっと一緒にいたいと思うのは病人に失礼だとわかっていても、どうしてもそう思ってしまう。…私も、人が恋しいのかしらね。

 

 

「…躑躅君、夏の事…宜しくね」

 

 

「……はい」

 

 

真剣な面持ちで行われたたった二言の会話は、その短さとは裏腹に、互いの想いが交差したものとなる。目線だけで、固い握手が交わされたみたいに。

 

 

「……元気でね、夏」

 

 

私には仕事がある。このままずっと話していたいと思っていても、時間や仕事がそれを許さない。それを知っているから、別れを惜しみながら、夏の多幸を祈る一言を言う。

 

……私が傍にいれるのは、夏が病人である時だけ。傍にいたくても、やはり互いの仕事が阻んでくる。…結局、夏の壁はそのままだったわね。それも、心残りかしら。

 

 

 

 

 

──そう思っていた刹那だった。

 

 

「…うん、またね!しゅーさん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……夏」

 

 

夏が病院を後にしてどれくらい経ったのか。私は、その場でずっと立ち尽くしていた。…ここにいると、他の人に迷惑になるのだけど、その時の私には、それを自覚する程の余裕はなかった。

 

最後の一言。言ってしまえば他愛のない別れの言葉に過ぎない。だけど、私にとって、その解釈は違うものだった。

 

 

「……しゅーさん」

 

 

そう、()()()()()()()()()()のだ。先述した通り、夏は人と接する時、ほぼ全ての人に一線を引いて接する。それは、私も例外でない。……筈だった。

 

夏が一線を引かないのは、父母と妹、そしてバンド仲間だったりする。もっと増えているかもしれないけど、生憎私はそれ以上を知らない。

 

そんな中で、私に対しての一線がなくなった。それが何を意味していたのか知るには、思考能力を取り戻しつつある私の頭なら、十分過ぎた。

 

 

「…夏……」

 

 

そう呼びかける私の頬に滴っていくモノが、1つ2つと、次第に数を増していく。そして私は、止まりそうもないソレを、数え切れなくなった。

 

 

「……夏……ぅぅ…」

 

 

人目も気にせず泣く私は、周りから見ると、さぞ滑稽だっただろう。それでも尚、私は数多流れ落ちるソレを止めることも無く、唯々静かに泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[羽沢珈琲店]

 

 

「つぐ、元気になったみたいだね〜」

 

 

「だな!」

 

 

所変わって羽沢珈琲店。いつもの様にある一角に座るAfterglowの面々。少し前のあの雰囲気とは打って変わって、今日はいつも通りな様子。

 

つぐみの方も、仕事がある為せっせと動いているが、その姿にはどこか元気そうな雰囲気が感ぜられる。時折見せる笑顔が、それを物語っているとも取れようか。

 

 

「今日は夏さんの退院日、だっけ」

 

 

「うん!何だか私も楽しみ〜!」

 

 

通常運転な喋り方をする蘭も、今日は何処か優しい雰囲気を感じる。対するひまりの方は、読んで字のごとく、いつも通りである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから少し経ち、客の波も一段落し、つぐみも幼馴染の席に着いていた時だった。

 

幼馴染5人組だけがいるこの店の扉のベルが鳴る。客が来たのかと立ち上がるつぐみを余所に、扉が開く。そうして入って来た人はと言うと……

 

 

「ただいま!つぐ!」

 

 

「やっぱ落ち着く雰囲気だね、ここ」

 

 

彼女らが待ち望んでいた人物その人と、その番だった。皆が皆、様々な反応を示すものの、そのどれもが嬉しさを持っていたのは、言うまでもない。

 

 

「元気だったみたいだね!」

 

 

「夏さんの方こそ、体調はどうなんですか?」

 

 

そう心配そうに尋ねる蘭に対し、「大丈夫だよ!」と元気に返す姿を見て、一同はホッと安堵の息を零す。

 

 

「あれ?夏さん、どうして躑躅さんと一緒に?」

 

 

「……そうだね…実は……」

 

 

そう切り出したのは躑躅の方だった。少々しどろもどろになっている彼の姿を見て、夏は笑っていた。

 

 

「私達、付き合う事になったんだ!」

 

 

躑躅の説明までの隙間時間に我慢できなかったのか、本題の方を切り出した夏。躑躅の方はと言うと、やり切れないといった表情をしている。

 

 

『えぇぇぇぇ!?!?』

 

 

一同驚愕。奥の方からも聞こえる事を加味すると、父母も聞いていた模様。…退院してきた者が、いきなり彼氏を連れて来たのだ、無理もない。

 

 

「本当なのか!?夏!」

 

 

「うん!因みに相手は躑躅だよ!」

 

 

「どうも、夏のお父さん、お母さん」

 

 

優しい声色でペコリと一礼。反射的に、ペコリと一礼を返す父母。しかし、一瞬でその雰囲気は変わり果てた。

 

 

「……君は、本気で夏を支えられるのか?」

 

 

父の刃物のようなその一言に、思わず息を飲む一同。躑躅も例外ではないが、彼の目は、真剣な眼差しそのものだった。そうして放たれた一言は──

 

 

「はい、支えてみせます」

 

 

──肯定の意を持ったモノだった。真っ直ぐな、芯の太いその一言に、彼もどうやら問題ないと思ったのか、「…夏を、宜しく頼む」と、いつもの雰囲気に戻って言った。

 

 

「ヤッタネ!これで親公認だね!」

 

 

「…はは、そうだね」

 

 

そう一言ずつ交わす2人は、いままでのどの瞬間よりも、輝いていた。

 




ということで、第28話が終わりました。

いよいよ完結間近です。というより、もしかしたら次回で完結するかもしれません。私の執筆具合によって変わりますが、どの道次々回には完結しているかと。ともかく、バンドリ小説は一旦あの日に絞ります。

次回『夢の世界へ』
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