そんなロドスの幕間話   作:がりる

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サリア×サイレンス

※何だかんだあって2人の仲修復時空とお考え下さい


願いの先を、一緒に

 観光都市シエスタ。

 ミュージックフェス中人知れず滅亡の危機に晒されたその都市は市長の娘セイロンとロドス・アイランドのオペレーター達の活躍により救われた。その後、事件に関わったオペレーター達も、関わらなかったオペレーター達も残り少ないバカンスの時間を満喫していた。

 

 都市を照らす太陽が頂点を通過した頃。とあるホテルの一室、キングサイズのベッドの上でもぞもぞと起き上がる影が一つ。

 

 彼女は重たい目蓋を軽く擦り周囲を見渡す。予想通りではあったが、昨晩ベッドで身を寄せ合って寝た二人は既にそこにいなかった。大方、あの子が待ちきれずビーチへ飛び出していったのだろう。昨日もホテルに到着して早々に街へ向かいビーチを満喫し、BBQセットでの屋台の手伝いでは肉を次から次へと焼き観光客が多く立ち寄ったのだとか。一方私はあの子の水着を作る為の連日の徹夜で完全にグロッキー状態。その日は残念ながらホテルで留守番となった。

 

『___明日は絶対ビーチに来てくれよな! オレサマが焼いた肉絶対美味しいからさ!』

 

 昨晩ホテルに戻って来たあの子が興奮気味にビーチやBBQの話をしていた様子を思い出し、思わず笑みが溢れる。眠気を飛ばす為バスルームへシャワーを浴び外出の準備を始める。持っていく物は粗方揃え、後は着替えるだけなのだが...ふと、彼女の手が止まる。

 視線の先には一枚の衣服。昨日友人から半ば無理やり渡された物だ。

 

「......」

 

 その時の会話を思い出し小さく溜息を吐く。

 

『___水着を持って来ていないのですか?』

『まぁね。そもそも私泳げないし、泳いだ経験もないし。この歳で浮き輪とかを使うのもね』

『いけません』

 

 ずいっ、と無表情を崩さぬまま友人がこちらに迫る。

 

『な、何が...?』

『これはイベントフラグのチャンスなのです。滅多に無いであろう纏った休息の時間、今攻めなければイベントCGの開放の条件は達成し得ないでしょう。ですがどうかご安心を。フィリオプシス、こんな事もあろうかと事前に水着を用意しておきました』

 

 彼女はそう言ってこちらに水着らしき衣服を手渡す。

 

『フィリオプシス、最高の水着を入手しました。これを装着してビーチに赴けばサリアさんからの好感度も即MAX。重要イベント選択肢発生までスキップ確実でしょう』

 

 何を言っているんだろうかこの人は。

 

『...えーっと。色々と突っ込みたい所だけど、フィリオプシス』

『なんでしょう』

『これ何』

『勿論、水着ですが』

『ほとんど紐じゃない』

『.......』

『いや、何無言で親指立てるの。こんなの___ちょっと、フィリオプシス!? いらないから!持って帰って___』

 

 そのまま彼女は瞬く間に自室に戻っていき、際どすぎる水着を持たされたまま茫然とするサイレンスがその場に残されたのであった___。

 

「着れる訳無いでしょ...」

 

 あの子の教育にも悪いし、そもそもこんな水着を来てビーチに行けば間違いなく痴女だ何だと騒がれ最終的にビーチ監視員のご厄介になるだろう。論外である。

 とはいえ、流石にゴミ箱に叩き込む訳にもいかず帰りの荷物の中に仕舞い込む。ロドスに帰ったら丁重に返却しよう。

 昨晩ホテル内の売店で購入していたゼリー飲料を胃に流し込み、白のワンピースに着替え、日除け帽子を被る。最後に日焼け止めクリームを塗り太陽照りつける外の世界へと繰り出した。

 

「うっ...」

 

 冷房が効いた建物から一歩踏み出すとそこは真夏の世界。じりじりと纏わり付くような暑さが肌を熱する。普段研究室で一日を多く過ごしている身としては些か厳しい環境だが...早く向かうとしよう。マップ片手にビーチへ向かう途中、繁華街が目に入る。飲食店や土産店等が立ち並び、良く見るとロドスの見知った顔が何人もいた。

 

 あそこでお酒を見ている二人組は...ホシグマさんと、誰だろう。サングラスと帽子でよく顔が見えない。あの角はどこかで見たような記憶があるが、まぁいいか。お酒はラベルの絵柄を見るにリモンチェッロだろうか。随分と度数の高いお酒を飲むものだ。

 土産店では黒曜石を材料としたアクセサリーが売られている。高い物から安い物まで様々だ。商品を飾っているガラスケースの前ではとある親子連れの子供がアクセサリーが欲しいと親にねだっていた。

 

「......」

 

 思えば、あの子が私に何か物ををねだった事はあまり無かった気がする。私達が渡す物だけであの子はとても喜んでいた。ロドスに帰るまでにあの子に欲しい物がないか聞いてみるのもいいかもしれない。

 物ではなく超激辛唐辛子チップスがいい、と言われるかもしれないが。

 

 そうこう考えている内にビーチが見えてきた。ビーチでは泳ぎに来た人は勿論、ビーチ周りに立ち並ぶグルメエリア目的に集う観光客で溢れている。屋台も予想以上の数だ。そんな中で他の屋台より多く人が集まっている場所があった。

 

『だぁー!もう焼いても焼いても終わらねぇ!どうなってんだ!?』

『お嬢ちゃん、串焼き肉のAセット2個で!』

『またかよ!今幾つ注文来てるんだ!?えーっとAセットは......』

『落ち着いて下さい。記憶領域内データ確認...現在受付中の注文は15件となっています。注文とお金の受付は私達が行うのでイフリータさんはそのまま調理に集中を』

『ふむ...美味しいけど海鮮が欲しいわね』

『おいスカジ!お前さっきから注文しては食って注文しては食ってばっかじゃねーか!暇なら手伝えよ!』

 

 どうやら怱忙を極めてる様子だった。今あの子の所に行くのは悪いかもしれない。

 運良く少し離れた位置に食事用に設置されたパラソル付きのテーブルがあったので腰を置き一息つく事にする。お客の波が落ち着くまでここで待つとしよう。潮風も程よく吹いて心地よい。

 

「ふぅ...」

 

 しかしそう遠くない場所だったとはいえ流石に少し喉が渇いた。途中で何か買っておけば良かったか。そう思い周囲の屋台を確認しようとした時、背後から聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「サイレンス、来ていたのか」

 

 思わぬ突然の呼び掛けに一瞬ビクリと反応し、声の方に振り向く。

 

「すまない、驚かせるつもりはなかったんだ...。空いているなら座ってもいいか?」

 

 そこに立っていたのは朝あの子と一緒にビーチに行った筈のサリアだった。両手にはストローが付いたヤシの実のような形のコップを持ち、私のいるテーブルの空いた席を見ている。

 

「どうぞ。どこに行ってたの?」

「さっきまで私もイフリータ達の手伝いをしていたんだ。交代で休憩に入っていいと言われてね、もうすぐサイレンスが来るだろうと思って飲み物でも買いに行ってたんだ」

 

 そう言って隣の椅子に座ったサリアは手に持っていたヤシの実型のコップをこちらに渡す。

 

「ありがとう。...どこで買ったのこれ」

「少し離れた辺りの屋台だな。龍門の所の人が出していた」

 

 成程、如何にもこういったイベントでありそうな商品だ。取り敢えず一口飲んでみる。

 よく冷えており喉も潤ったがやはりというかなんというか、味は普通のジュースだった。

 

「ちなみに値段はひとつ1800龍門」

「...高くない?」

「容器も入れればまぁこんなものだろう。それに、こんな時でないと中々財布の中身を使う機会が無いからな。...物珍しさに興味を惹かれたのもあるが」

「サリアは休日はトレーニングばかりだからね。煙草もやめたみたいだし何か別の趣味でも見つけてみたら?」

「考えとくよ」

 

 たわいもない会話をしながら未だ忙しそうにしてるあの子を方を見る。どうやら先程よりお客の波が落ち着いてきたようだ。

 

「行かないのか?」

 

 あの子を見ている私に気付いたのかサリアが声をかける。

 

「まだあの子もまだ忙しそうだしね。それに___」

 

 お客の波に一杯一杯になりながらも教えられた通りに食材を串に刺し、網に乗せ焼いていく。焦がさない様焼き加減に気を付け、塩やスパイスを振りかけ。焼き上がったものを容器に入れ一緒にいるメンバーに渡していく。

 忙しい忙しいと愚痴を零しながらも、その顔はとても楽しそうで、微笑ましくて。

 

「あの子が楽しそうな顔を、この光景を、もう少しだけ目に焼き付けておきたいから」

「...そうか」

 

 そう言ってサリアは薄く笑みを見せた。

 

「...ねぇ、サリア」

「ん?」

「私さ、少し前までこんな光景が見れるなんて...想像すらしてなかった」

「......」

「あの子が暴走して、サリアがいなくなって、私とフィリオプシスと一緒にあの子を連れてロドスに向かって...」

 

 私の言葉にサリアはばつが悪い表情を浮かべる。

 

「すまない」

「別に責めてる訳じゃないよ。...それに、その言葉は少し前に散々言い合ったでしょ」

 

 シエスタに来る以前、私達は面と向かってお互いの事を話した。想いをぶつけた、想いを伝え合った。

 その結果、今の私達がいる。

 

「あの時は凄かったな。大声で泣きながら私の胸倉を掴んで...あんなサイレンス知り合ってから一度も見た事が無かったぞ」

「そっちこそ、昔から不器用で頑固な所はあったけどより一層酷くなってた」

 

 まるで懐かしい思い出話に花を咲かせるかのように、互いに軽口を叩き合う。

 

「まさかイフリータから殴られる日が来るとは。いや...サイレンスもイフリータからもいつかはと覚悟していたが、あんなに早くとは思ってなかった」

「あの時は...私も唖然としたな。『もう守られるばかりなのは嫌なんだよ』...か」

 

 正直、最初あの子をここに連れて行く提案をドクターにされた時、私は反対した。直前にロドス内の通路を燃やす事件を起こしていたし、何より不安だったのだ。

 あの子を任務以外で人が多く集まる場所へ連れても大丈夫なのか。あの子の心がまた傷つく事が起きるんじゃないか、と。

 

 しかし、ドクターはこう言った。

 

「彼女...イフリータは日々変わっているんです。自分から、変わろうとしている」

「信じてあげませんか、彼女の成長を」

 

 最終的に、彼とあの子自身の説得に私は折れた。

 

「子供の成長とは、早いものだな」

「...そうだね」

 

 そんな話をしていると、砂浜を駆け屋台の方から誰かがこちらに向かって来るのに気付く。

 

「サイレンス!サリア!ここにいたのかよ!」

 

 息を切らしながらこちらに駆け寄ってきたのは両手に串焼き肉を持ったイフリータだった。

 

「何で来てくれなかったんだ!ちょくちょく周り見ながら待ってたんだぞ!」

 

 どうやらイフリータもこちらを探していたらしい。多少ご立腹の様で膨れた表情を見せる。

 

「ごめん。イフリータが忙しそうにしてたから少し待ってから行こうと思って」

「私が手伝ってた時もそうだったが、あの後からも大勢客が来ていたな」

「あったりまえだ!オレサマが焼いた肉だからな。焼き加減も味付けもバッチリだぜ!...で、そうだそうだ」

 

 そう言い、イフリータは両手に持った串焼き肉を私達に渡す。

 

「い、一番上手く焼けたやつなんだ...。良かったら...食ってみてくれないか?」

 

「勿論。イフリータが私達に用意してくれたものだからね」

「昨日は...焼き加減を見極めるまで大変だったな」

 

 ふふっ、と何かを思い出したのかサリアが微笑ましい物を見る目でイフリータを見る。イフリータは余計な事は言うなとばかりに顔を赤くしサリアに反論した。

 

「う、うるせぇ...!もう炭の塊の事はいいだろ!笑ってないでサリアも早く食えよ!」

 

 イフリータから串を受け取り、焼き上がった肉を一口食べる。口の中に肉汁とスパイス辛さが広がる。少し焦げている箇所もあったがご愛敬というものだろう。美味しい。サリアの顔を横目で見るに私と同じ感想のようだ。

 

「うん、焼き加減も味付けも合格点だ」

「美味しいよ。ありがとうイフリータ」

 

「____っ!」

 

 私達の感想に、ぱぁっと歯を見せ嬉しそうにイフリータが笑う。

 

「へへっ、やった!昨日メイヤーやマゼラン達と特訓したかいあったぜ!」

 

「......」

 

 イフリータの楽しげな表情に、サイレンスは思う。ロドスに来てからドクターと話したあの子の事。

 

 

『あの子の事を、どうか』

『どうか...あの子がこの先の未来___』

 

 

 今、彼女はロドスでの生活を、自分の人生をどう思っているのだろうか。

 

「ねぇ、イフリータ」

「ん、なんだサイレンス?」

「...今、楽しい?」

「ん、んー...?」

 

 サイレンスの問いかけに、腕を組み考えるような素振りをする。

 

「楽しい、確かに楽しいのもあるんだけどー...今はちょっと違うかな」

「えっ...?」

「......」

 

「いやさ、前にドクターと勉強やってた時に教わったんだ。ロドスに来てさ、ドクターや他の色んなヤツらと会って、色んな事を知ってさ。サリアとまた会えて、サイレンスとサリアが仲直りして...。

何かこう...今まで嫌な事やモヤモヤした事ばっかだったのが、段々減ってきて。代わりに別のよく分からない気持ちが増えてきて...。それでドクターに聞いたんだ。この気持ちは何なんだ、って。...多分、その時教わったのが今のその気持ちなんだと思う」

 

「今のオレサマはそう___」

 

 イフリータは満面の笑みを見せ、その答えを口にした。

 

「『幸せ』だな!」

 

「_________イフリータ」

 

 サリアが私達の前から去って、ライン生命を離れる決意をした。フィリオプシスも付いて来てくれてロドスを目指し出発したが、道のりは厳しいものだった。

 

『もう...いいよ』

 

 道中、ぽつりとイフリータが呟いた。

 

『どこ行ったってオレサマは化物扱いだ。サイレンス達がいれば、もうどこだっていい』

 

 暗く沈んだ、諦観の瞳をしていた。

 

 そんな事はない。そう言いたかった。

 だけどその時の私はあの子に何も言えず、ただ抱きしめてあげる事しか出来なかった。

 

 その時、私は願った。

 ほんの少しだけでいい。どうかこの先彼女が希望を感じられる、夢見られる未来を...どうか___と。

 

「......っ」

 

 視界が滲み、暖かいものが溢れそうになる。

 

 イフリータ。

 貴女は今、幸せなんだね。

 

「お、おいどうしたんだサイレンス!?もしかして塩振りすぎてしょっぱかったか!?それともやっぱりコガしちまってたか!?」

 

 突然目元を手で覆い隠すサイレンスにイフリータは驚き狼狽した様子を見せる。

 

「...大丈夫っ、だよ。潮風が強くて...ちょっと、砂が目に入っちゃっただけだから」

「お、おう?そうなの...か?」

 

 その時、屋台の方から声が聞こえた。

 

『イフちゃーん戻ってきてー!スカジさんがでっかいタコっぽい生き物獲ってきたから焼いて欲しいってー!』

 

「ほら、イフリータ。出番みたいだぞ。サイレンスは後から私と一緒に向かうから先に行っててくれ」

 

 渡りに船とばかりにサリアがフォローを入れる。

 

「あー!?全くしょうがねぇなぁ...。サリア!サイレンス!まだ食べさせたい物一杯あるからな!絶対来てくれよ!」

 

 踵を返しイフリータが屋台へ戻ったのを見届けると、サリアが苦笑を浮かべた。

 

「潮風が強くて砂が目に入った...は流石に無理があるんじゃないか?」

「うるさい...」

 

「...サイレンス」

 

 サリアの声に目を向けようとする。

 すると彼女は私の目元を隠す手を取り、彼女の指でそっと零れそうになる雫を拭ってくれた。

 

「すぐには無理かもしれない。だけど、またイフリータを連れてここに来よう。ここだけじゃなく、色んな場所にも行こう。許されるなら私も一緒に」

「...寧ろ、サリアも来ないとあの子が動かないよ」

「はは、ありがたいな」

 

「......」

「......」

 

 私の手を取ったサリアの手の指と、私の指とを絡ませる。

 潮風が二人の髪を撫でる。周りの人々の声が、喧噪が薄らいでいく。

 自然と、頬が熱くなっていくのを感じる。

 サリアと私は互いの顔を見つめあう。

 そして、互いに幸せな笑顔を見せあう。

 

「...もうどこにも行かないでよ、サリア」

「あぁ、もうお前達の傍から離れたりしない。どんな事があろうと私が必ず守るよ、オリヴィア」

 

 

 私達は一緒に歩き続ける。

 

 あの子の幸せを、終わらせない為に。

 

 願いの先を、一緒に見続ける為に。

 

 

 

 

ーーーーー

余談ではあるが。

ロドスに帰還した3人の荷物をサリアが整理していた際、サイレンスの荷物から普段の彼女から想像出来ないような際どい水着が発見され、それをきっかけに一騒動が起きるのだが。

 

それはまた別のお話___




最近アークナイツ始めました。
世界観やキャラ設定・関係性が面白いですね。

ライン生命は沼。
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