※キャラブレ、崩壊、解釈違い注意
※イベント「ヴォルモンドの薄暮」ネタバレ注意
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フォリニックには悲しみを乗り越えてホント幸せになって欲しい...
ロドス艦内。
多くのオペレーター達が眠りにつく頃、フォリニックはとある階層へと足を運んでいた。
深く、深く。最も大地に近い下層、その内の一室。彼女が入ると照明が自動で点灯し部屋を明るく照らした。
その部屋の左右の壁にはこの部屋に刻まれている者達のかつての故郷を象徴する様々なシンボルが刻まれており、正面の壁にはそんな彼ら彼女らが第二の故郷としてくれたロドス・アイランドのシンボルが同様に刻まれていた。そしてその直下の壁には一冊の本が設置されている。
ロドスの仲間達と共に戦い、その半ばで倒れた者達。
夢見た未来を、見られなかった者達。
この部屋はそんな彼ら彼女らの戦いを讃える為の、犠牲を忘れぬ為の、追悼壁であった。
フォリニックは設置された一冊の本を開く。本に刻まれているのはもう二度と再会する事叶わない仲間達の名前。一枚、一枚、噛み締めるように頁を捲っていく。
___お願い。
高まる心臓の音、震える指先。
どうか、どうか、新しい名が刻まれてませんように。
湧き上がる恐怖心を抑え、"彼女"の名が刻まれた頁を開いた。
「......」
フォリニックが見たその頁、"彼女"の後に刻まれた名は___無かった。
小さく、安堵の溜息を吐く。
そうしてフォリニックはその頁にそっと指を乗せ、優しく、撫でるように刻まれた"彼女"の名をなぞっていく。
今この時、その部屋にはフォリニック以外誰も居ない。居る筈が無い。
分かっている、理解している。
だけど___
「...久しぶり、でいいのかしら」
「ごめんなさい。こんな時間に起こしてしまって」
「今日はね、伝えたい事があってここに来たの」
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「あれからもう随分時が経ったわ。早いものね」
フォリニックは"彼女"へ語り掛ける。
「あれから私戦場医療任務にも参加するようになって、ドクターの健康管理も任される様になったの」
「前よりも忙しくなったわ。戦場任務も勿論だけど、ドクターがまた曲者でね」
「私が口酸っぱくして何度言っても夜更かし暴飲暴食運動不足、全く改善しようとする傾向無し。一度頭が沸騰しかけたわ」
"彼女"が来られなかった。
「天災の被害を受けた街での救助は骨が折れたわ。...だけど、多くの人を助けられた」
「命を...救えた」
「あの時はまだ堪えてたのか少し無茶して、先生に怒られちゃったけどね」
"彼女"と一緒に見られなかった。
「この前はロドスでハロウィンの催し物をしたの。リサと一緒にお化けの衣装に着替えて、お菓子を持って子供達に配ったりして。...ワルファリン先生の血糊を使った演技が迫真すぎて大騒ぎになっちゃった所もあったけどね」
未来の話を。
「それから___」
「ニェンって人とラヴァが___」
「シエスタでミュージックフェスがあって___」
「ブレイズとグレースロートが___」
"彼女"に話していく。
「色々...ええ、色々な事があったわ」
「...」
「...それでね___私」
次第と、口を紡ぐ時間が多くなっていく。
「伝えたかったの」
尽きていく話題と入れ替わり、浮かび上がっていく。
「もう___」
アントとの、思い出
もう二度とこの部屋を訪れる事は無いと思っていた
「...あぁ」
耐えられそうに無いと思っていたから
「せめて、これだけは我慢しようって思ってたんだけど...」
そんな情けない姿
「あぁ...やっぱり、ダメね...っ」
貴女はきっと心配してしまうだろうから
「うっ...うぁぁ......っ」
フォリニックの頬を伝い、床へ雫が落ちていく。
何度も、何度も。
止まってと願っても、歯を食いしばっても、手で覆っても、その傍から零れ落ちていく。
彼女への想いは、未練は、後悔は、悲しみは、怒りは。
あの日から、ずっとずっと湧き上がり続けていた。
貴女への未練は、ずっと断ち切れなかった。
でも、それがいけない事だと分かっていたから。
私が抱く正義と信念がそれを許さなかったから。
ずっと蓋してがむしゃらに動いていた。
貴女の為にと、そう思っていた。
だけど私の中の炎は燻り続けていた。
許せない、許せない、許せない。
憎い、憎い、憎い。
ふざけるな、何で、どうして、アントが犠牲にならないといけなかったの。
あの子はあんなに優しかったのに。
皆を助けたいと、救いたいと。
夢を、語っていたのに。
一緒に、その夢を歩んでいきたかったのに。
何で、何で、何で......
もしあの場所に居たのが自分だったら、アントの代わりになってあげられたら。
もし、もし、もし__
無意味な後悔と仮定が頭の中を延々と巡り続けている。
その度に湧き上がる怒りと悲しみ。
真犯人へのどうしようもない恨みの炎。
同じ様に大切な人を救えなかった無力な自分が情けなくて、許せなくて。
だけどその真犯人がもう裁けない事は分かっている。
真相が霧の中へ消えた事も分かっている。
だけど___それでも諦められる訳が無かった。
そうして、無理やり蓋をしていた心は次第とすり減ってきて。
立ち止まりそうになって、それでも動こうとして。
無茶して、危うく___なって。
「......」
少しして、落ち続けていた雫がようやく止まった。
「...ごめんね、みっともない姿見せちゃって」
ぽつぽつと、フォリニックはまた語り始める。
「さっき話した無茶した件、後から先生に呼び出されて説教されて。その時、私にこう言ってくれたの」
『___君が恥ずべきだと思っているソレは、全てが悪いと言う訳では無い』
『生きる為に、進み続ける為に、必要な時もある』
『無理やり蓋をする必要は無いんだ』
『泣いてもいいんだ。みっともない姿を見せてもいいんだ』
『私の知っている大馬鹿者はずっと蓋をし続けて。結果、自分を...殺し続ける事になった』
『...これは私の我儘だが』
『彼女の為の復讐ではなく』
『______』
フォリニックは赤く腫れた目元を拭う。
「泣いちゃったものは、しょうがないわよね」
「...ねぇ、アント」
「多分、ずっと貴女への未練を捨てられないと思う」
「先生にも、ドクターにも、皆にも...また、迷惑を掛けると思う」
「だけどね」
「私、進むよ」
「貴女が見れなかった未来を」
「私が見る」
「そして、貴女が叶えられなかった夢を」
「私が持って進み続ける」
「...それで」
「またここに来て、貴女に話をして」
「___また、涙を流すと思う」
貴女の生きていた意味を、無意味にしない為に。
「だから___もう、私は大丈夫だよ」
「アント」
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「さて、そろそろ戻らないと。ドクターに時間を頂いて来たけど、また無理して夜更かし残業してるでしょうしね」
本を閉じ、フォリニックは追悼壁に背を向け開いた扉へ来た道を戻っていく。
「またここに来るわ。お土産話期待しててね」
そうして扉が閉まる直前、一度だけ振り向く。
誰も居ない部屋に向けフォリニックは笑顔を見せ言葉を放った。
「お休み、アント」
扉が閉まり、部屋を灯していた照明が消える。
後には再び訪れた暗闇と静寂だけが残っていた___
進んで、
立ち止まって、
みっともなく泣いて、
また私は進み始める