フィリップ・来人は検索したい~魔少年の高校生活~   作:ディルオン

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いつも感想、評価、メッセージ等々、ありがとうござます。
応援、これからも是非よろしくお願いします。

前回より、少し間が開きました。
申し訳ありません。
この話を書き終り次第、もう一つのSSを再開するつもりです。



13話【Cがある日突然に/白銀御行は応援したい】

 

「会長」

 

 朝。

 一足早く、生徒会室を訪ねたフィリップ。

 その理由は、一番乗りしていた生徒会長・白銀御行に会うためである。

 

「ん、どうしたフィリップ?」

「僕の下駄箱に、こんな物が入っていたんだ」

 

 そう言ってフィリップが取り出したのは、白い横型の封筒であった。珍しいものではない。ごくありふれたタイプのレターセットだった。

 

「これは……」

「手紙だ。これ自体に怪しいところは特にない。けど……」

 

 フィリップは封を開ける。

 白銀は、封を閉じるハート形のシールを確認。その瞬間に白銀は、『これ』がなんであるかを察した。

 

「っう……!?」

 

 そしてフィリップが中身を空け、見せた瞬間、一気に白銀の顔は蒼白となった。

 思わず口元を手で覆ってしまう程である。

 悪寒とサブイボが全身を駆け巡る。

 

「『放課後、校舎裏で待ってます』とあるんだ」

「あーその、なんだ。それはだな……」

 

 フィリップは封筒に入っている真っ赤な便箋を取り出して、そこに書かれた文章を読み上げた。

 

「差出人の名前もない。誰かと間違えたのか……興味深いね。これは僕に対する……」

 

 意図も分からず、じっと便箋を見つめるフィリップ。

 

 白銀は必死に言葉を探った。

 これをどう説明するべきかと。

 

 彼にとって、これは『謎』でも何でもない。それどころか、殆どの人が知っている光景。

 だが、フィリップにとっては恐らく初めてであろうことは容易に想像できる。

 

(本当の事を言って良いものか……フィリップはショックを受けるかもしれん)

 

 一瞬、踏みとどまる生徒会長。

 彼もこの手の手紙を受け取ることは、何度も経験している。

 しかし真実を知らないままに弄ばれるのは、フィリップとしても不幸。

 

 そう判断し、白銀は真実を告げることにした。

 

「フィリップ」

「ん?」

「悪い事は言わん。これに関しては興味を持つな」

「……どういうことだい?」

「それはだな……」

 

 この、フィリップの下駄箱に届けられた一通の手紙が、今回の話のキッカケとなる。

 

 

 

 

【Cがある日突然に/白銀御行は応援したい】

 

 

 

 

 数日後。

 会長の助言通り、フィリップは手紙のことを忘れて、今日の作業に取り掛かっていた。

 

 これには、白銀もにっこり。

 役員の健康と平和は守られた筈。そう考えていた。

 

「どうだ、フィリップ庶務。直りそうか?」

「ただの断線だね。冷却装置部分と……あと電源コードも中で切れかかってる。この位なら30分もあれば充分だ」

「そうか。助かる」

「向こうのスペースを借りるよ」

 

 言ってフィリップは、据え置き型の冷房機を眺めつつ、鞄から修理道具を一式取り出した。

 その後、いそいそと入口右手──ソファの後ろ側にビニールシートを引き、それらを並べていく。

 

 その時、藤原がソファから顔を覗かせて言った。

 

「フィリップ君が来てくれてホント良かったですよねえ。こうして壊れた備品を直してくれるってんで、あちこち引っ張りだこですよ。ねえ、会長?」

「確かに。これだけで大幅なコスト削減に繋がる。買い替えるとなると、一つ認めたら最後、次々に自分も買いたいと言う奴等で溢れるからな」

 

『生徒会の庶務が修理修復の達人』という噂は瞬く間に全校に広まった。

 

 わざわざ買い直す手間を惜しみ、依頼をする部や委員会が殺到。これを期に、67期生徒会は次々と各部に貸しを与える形となり、支持率も上昇した。

 

 フィリップの提案した作戦は順調に進行していたのである。

 

「同じ時期に購入してたから、同じ時期に壊れやすいってのもあると思いますけど……でもこれ、何だか便利屋扱いされてません?」

 

 石上が、藤原と向かい合う形で、パソコンを打ちながら愚痴った。

 

 凡そ好評となったこの『フィリップ修理作戦』。だが中にはフィリップを、体の良い代行業者のように見る上流階級も存在していた。

 

「会長を敵視する奴らが増長しませんかね?」

「なに、俺と四宮で目を光らせておく。相手が付け上がる様な事にはならんさ」

 

 白銀は、そう言って石上の肩を叩く。

 

「石上会計の意見も否定はせんが、学園の利益に繋がるなら、これも立派な生徒会活動の一環だ。確かにフィリップ庶務にだけ、しわ寄せが行ってしまうのは申し訳ないが……」

「気にしなくていい。僕もこの方が性に合ってる」

 

 フィリップは人の心を理解するのは苦手だが、悪意には敏感である。一部がそういう目で自分を見るであろうことは予想できた。

 

 しかし、生徒会や皆の為と思えば、不思議とそれは苦にならなかったのである。

 

「……まぁ、フィリップがそういうんなら、僕は良いけどね」

「ありがとう、優」

「え?」

「僕を心配してくれたんだろう? それ位は分かるさ」

「……」

 

 目を丸くして、パソコンから顔を上げる。同級生で、友人となった男は、飄々と修理に勤しんでいる。

 やはりフィリップ・来人と言う少年は、どこか変わっていた。

 

「ただ、確かに欲を言えば……もう少し大がかりな修理をやってみたいところだけどね。あまりに簡単すぎる」

「大きいってどんな?」

「巨大装甲車とか特殊音波探知機とか、あと自律変形機能を備えた自動二輪…」

「ねえよそんなん」

 

 即座に石上は否定。

 確認した。

 やはりこの友人、どこかズレている。

 

 その時、フィリップが顔を上げて白銀を見た。

 

「それで、出来たらどこへ持っていけばいいんだい?」

「ああ、弓ど……」

 

 白銀、一瞬硬直。

 

「いや、俺が持って行こう」

「会長は忙しいんじゃないのかい?」

「いや、確かに忙しいが、実は映画部のカメラが破損しているらしくてな。良ければそれを見てもらえると助かるんだ。これは明日の早朝練習に合わせて、俺が持って行こう」

「分かった。映画部だね」

 

 特に疑問を挟むことなく、機械のカバーを外すフィリップ。

 白銀は、ホッと胸を撫で下ろす。

 

(危ない危ない……貴重な四宮の胴着姿を見る機会が失われるところだった)

 

 おもいっきり私情を挟んでいた白銀。

 そう。

 この冷房機は何を隠そう、かぐやの所属する弓道部の備品である。

 

(これは、またとないチャンスだからな)

 

 白銀が、何の用もなしに部活動へと顔は出せない。そんな事をすれば、『四宮かぐやを見たい!』と暴露しているに等しい。

 この降って湧いた冷房機の故障は、白銀にとっては正に天佑であった。

 

(何としても見てやるぞ……四宮、お前のポニーテールをな!)

 

 澄ました顔で、かなり煩悩に塗れていた。

 それだけではない。

 

(秘策も用意した。待っていろ四宮!)

 

 

「こんにちは、すみません遅れて」

「おお来たか、四宮」

「あ、かぐやさん、こんにちは」

 

 

 直後、遅れて入ってくるかぐや。

 すぐに彼女も、フィリップが床に座り込んで修理に勤しんでいるのが目に入った。

 

「あらフィリップ君、冷房機見てくれているのね?」

「うん」

「どうかしら? 直りそう?」

 

 かぐやはそう言って、フィリップへと向き直る。

 彼はドライバーをクルクル弄びながら答えた。

 

「問題ない。今日中には間に合うよ」

「助かるわ。この時期は冷房なしではとてもじゃないけど練習は乗り切れませんから」

「胴着って分厚いですもんねぇ」

 

 藤原が頷きながら同意する。

 

「でも大会も近いですし」

「大会?」

「ええ。弓道部の全国大会です」

 

 そのキーワードを聞いた瞬間、白銀の中でスイッチが入った。

 

(来たッ! ついに来たぞ……『全国大会』の話題!)

 

 大会! それは部活動に励む者たちにとっての一大イベント。

 

 漫画やドラマでも物語の中軸となる企画であり、部活に励む者たちにとって、まさに青春の半分以上を占める最大の催しである。

 かぐやは高校生にして弓道四段。中等部時代は個人戦全国一位の戦歴を誇っている。

 

「実は今回は、私も出場することになりまして」

「えっ、かぐやさん今年出るんですか!?」

「はい」

「うわぁ! かぐやさんの大会なんて久しぶりです!」

「ほう。四宮も大会に出るのか。去年は欠場したと聞いていたが?」

 

 いけしゃあしゃあと、今丁度聞いたかのような素振りをする白銀。

 

「四宮先輩、去年出てないんですか?」

「えっと、まあ……そ、そうなんです。ちょっと、家の都合とか色々とありまして」

 

 石上の問いに、かぐやは誤魔化した。

 

「そう言えば運動部の大会って、何故か年の節目ですもんね。正月とか、お盆とか」

「そ、そうなんですよ。家の行事と、被ることが多くて」

「人によっては面倒ですよね、ああいうの」

「はい、全く」

 

 嘘である。

 

 実際、かぐやが大会に出場しないのは、偏に白銀攻略に時間と余裕を回す為。その結果、なんだかんだと理由を付け、辞退していた。

 

 だが石上も中等部の時は陸上部に所属していた為、何となく運動部系のスケジューリングは察しが付く。

 その為、かぐやの言い訳に疑問を持たずに自然と受け入れていた。

 

「今年は大丈夫なんですか?」

「まぁ、正直言うと初めは断ったのですが……一人、怪我で辞退してしまって。それで、今回は予選だけということで」

「そうなんですか……じゃあ、その人の分まで頑張って下さい!」

「ありがとう。ベストを尽くしますね」

 

 微笑みながら答えるかぐや。

 

(……ふっ、やはりな。仕入れた情報通りだ)

 

 その横で、一人ほくそ笑む白銀。

 そう。

 白銀は、かぐやがこの団体戦、予選限定で大会に出場するのは事前情報として仕入れている。

 

(四宮の朝の胴着姿は見逃したが……本番はここからだ! 何としても、今年は弓道部の応援に行く!)

 

 応援!

 

 この『応援』こそ、太古より語り継がれし、『部活動は青春の一ページ』と言われたる所以である。

 部活動で応援してくれる人がいれば、それはモチベーションの上昇に繋がる。勝率も上がり、より良い成績が出るのは火を見るより明らか。

 

 そして更に!

 

(俺が応援に行けば……好感度アップは間違いない。つまり……)

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

『四宮、後は決勝だけだな』

『はい、ですが……私、不安です。会長が見ている前で、結果を上手く出せるかどうか……』

『大丈夫だ。お前の努力は、俺が一番知っている。自分を信じろ。そしてお前を信じている俺をな』

『会長……あの、もし私が優勝できたら、お願いがあります。私を……会長の恋人にして下さい!』

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・

 

(と、言うことになる!)

 

 応援してもらって不快になる者はまずいない。確実なアピールに繋がる。

 かぐやを応援することで、自分に対する印象を確固たるものにしようと画策していた。

 

 しかし、この作戦には一つ欠陥があった。

 

(問題は……『如何にして四宮の応援に行く口実をつくるか』だ)

 

 これが普通に付き合うカップルならば

『私、次の大会応援に行くからね』

『ああ。お前がいたら、もっと頑張れる気がするぜ』

 みたいなラブコメ特有のオーラを出しつつ約束を取り付けることは可能。実に簡単である。

 

 だが白銀が四宮に対し、露骨に応援に行くと言えば、それは相手に好意を持っているという宣言にも等しくなってしまう!

 

(もし俺が応援に行ってやる、なんて言えば……)

 

 ・・・・・・・・・・・・・・

 

『あらあら。会長はそんなに私の胴着姿を見たいんですか?』

『そ、それは…』

『わざわざ貴重な休日を潰してまで、私の活躍する場を見たかったんですね? そうですか、そんなに私が気がかりだなんて……全く』

『う、うぅ…っ』

 

『お可愛いこと』

 

 ・・・・・・・・・・・・・・

 

(確実に終わりだ!)

 

 なんとしても、自然な形で会場に行く段取りを取り付けなければならなかった。

 その為、白銀は今日という日に備え、様々なシミュレーションを脳内に展開。日々策を練っていたのだ。

 

(以前、不確定要素が多く、諦めざるを得ないと思っていたが、しかし今は違う! 今年は何と言ってもフィリップ庶務がいるからな!)

 

 白銀の視線の先には、引き続き冷房機を分解しているフィリップがいた。

 彼の作戦を、簡潔に説明すると、こうである。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

『フィリップ、弓道の大会を見たことはあるか?』

『いや、無いけれど』

『そうか。生徒会の一員として、部の実態を把握することはとても大切だ。お前も色々な大会を見学に行くと良い』

『ところで、弓道とはなんだい?』

『その名の通り、弓を使った武道の一つだ。遠く離れた的に命中させられるかどうかを競う競技のことさ』

『それは、とても面白そうだ! 会長、今度弓道を見に行こう!』

『仕方ないな。では今度の大会、俺も付き合ってやるとするか。知識の暴走が起こらないか心配だからな』

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 白銀は、フィリップが部活動について、実際に目で確認したことは無いという情報を本人の口から直接聞いており、弓道に関しては興味を示すであろうことを察知。

 

 こうして今日の計画を立案した。

 

(フィリップならば確実に未知の出来事には興味を示す。そうなれば俺と言う保護者の存在は必要不可欠になるだろう。イケる!)

 

 計画は順調であった。

 しかし、それもここまでである。

 

「そう言えばフィリップ。今回は『弓道ってなに?』とか言わないんだな」

「ああ。『弓道』に関しては既に検索を終えているからね」

「え…」

 

 何気ない石上の質問。その答えに、白銀は固まる。

 

「四宮さんから教えてもらっていたんだ。実に興味深い検索対象だったよ」

「っ…!?」

 

(なにい!? し、四宮貴様…!)

 

 慌てて白銀は、かぐやを凝視する。一瞬、彼女の口元がニヤリとするのを見逃さなかった。

 

(ふふ、甘いですよ会長。その程度の戦法……私が見抜けないとお思いですか?)

 

 そう。

 天才である四宮かぐやが、こんな策を見逃す筈がない。

 

 白銀が部活動の応援に来ることを予想したかぐやは、彼が思いつくであろう策を逐次シミュレート。

 その結果、カギになるのは今年参入したばかりのフィリップであることを見抜き、先手を打ったのである。

 

「ありがとう四宮さん。僕が分からない所も的確にアドバイスしてくれて」

「いいんですよ。こうして備品も直してくれてますし、興味を持ってもらえるのは嬉しいですから」

「ぅ…くっ…」

 

 脂汗が滲む白銀。

 今度は、かぐやがほくそ笑んだ。

 

(焦りが目に見えていますね、会長らしくもない。けれど、この程度では終わりません)

 

「かぐやさんが出場するなら、チームの予選突破は間違いナシですね」

「…だと良いのですけれど」

「え?」

「最近、不安なんです。無事に結果が残せるのかどうか」

「そんな、かぐやさんが?」

「はい」

 

 シュンと落ち込むかぐやの表情。ハッタリなのは言うまでもない。

 

「弓道は自分との戦い…そうはいっても、やはり不安は残るもの。本番で、しっかりと練習通りの実力が出せるかどうか」

「だ、大丈夫ですよ。かぐやさんなら。中等部の頃だって……」

「その活躍が足枷になっているんです。逆にプレッシャーになって……」

 

 無論、かぐやにとってプレッシャーなど一切ない。天才の彼女にとって、中るのはただの結果である。

 

 しかし、四宮家伝統の必勝法『嘘の顔』を駆使すれば、周囲の期待故に圧しかかる不安を浮かべることは容易。

 

「誰か、応援にでも来てもらえれば……」

 

(うっ!?)

 

 うるんだ瞳!

 それはかぐやの必殺テンプレの一つであり、心揺れない男子はいない!

 

「大会はいつですか?」

「二週間後の日曜日です」

「あっちゃあ……私、応援したかったんですけど、その日は用事が」

「いいんですよ、藤原さん。その気持ちだけで充分よ」

 

(しまった! 藤原書記は応援に行かないだと!? 万一に備えて取っておいた保険が…!)

 

 白銀はもう一つ策を練っていた。それは生徒会全員で応援に行くという、仲間と言う間柄でぼかしつつも、一応は目的を達成できるという便利なもの。しかし、この中で一番親しい藤原を除いたメンバーで行くのは明らかに不自然。この作戦は実質、実行不能となってしまった。

 

「はぁ…私不安で不安で、実を言うと射も安定しなくて…」

「そんな風にまでなってたんですか?」

「ええ。四宮の長女として、恥ずかしい限りですけど……私、もうどうしていいのか」

 

 揺れる白銀の頭脳と心。彼の優しさをかぐやは利用した。

 

 もし行かなければ、彼には『あの時行っていれば』と言う未練が残り、かぐやにとって心理的優位に立てるキッカケともなる。

 逆に来ると宣言すれば、彼が好意を持っているのが確定する。

 

(弓道部の大会には毎年多くのギャラリーが駈け付ける。まあ私の姿を見に来る輩が大半でしょうけど。その人達が会長の姿を目撃すれば)

 

 ・・・・・・・・・・・・・・

 

『あれ、会長じゃない?』

『四宮さんの応援に来たってこと?』

『やだ。じゃあ白銀会長がかぐや様を好きって噂は本当だったのね!』

 

 ・・・・・・・・・・・・・・

 

(詰みです、会長!)

 

 ここにきて、かぐやの戦略は実を結びつつあった。

 最早白銀は逃げられない。さながら詰将棋の様相である。

 

(ふふっ……なにか返しの策があるならどうぞ? まぁ……尤もここからの巻き返しは実質不可能ですが)

 

 かぐや、勝利を確信。

 しかし…!

 

(あら…メール? これは、早坂から……)

 

 侍従である早坂愛からのメール。

 ポケットから携帯を取り出して、中身を見る。

 

 その時、かぐやの表情は一瞬、険しいものとなった。

 すぐに携帯を仕舞い、生徒会室を見渡すと、全員に向かって言った。

 

「皆さんすみません、ちょっと失礼します」

「どうかしたんですか?」

「いえ。ちょっと電話を……」

 

 そう言ってかぐやは最後、白銀に向き直る。

 

「会長、如何しました?」

「い、いや、何でも無い……っ!」

「そうですか。では、すぐに戻りますので」

「あ、ああっ」

 

 白銀は、ロクにかぐやと顔を合わせようともしない。

 動揺が浮かんでいるのが、手に取るように解る。

 

(命拾いしましたね、会長。ですが、既に布石は打たれました。せいぜい、私を間近で応援できる喜びを噛み締めると良いでしょう。フフッ……)

 

 生徒会室を出る際、かぐやの心は勝利の喜びで満ちていた。

 

 

「……会長」

「ん……何だ、フィリップ庶務」

「一つ、僕から頼みがあるんだ」

「頼み?」

 

 

 今まで修理に熱中していたフィリップが、ふと立ち上がって白銀に話しかけるのを、かぐやは見落としてしまった。

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 そして。

 何故、勝ちを目前にしたかぐやが、わざわざリングを降りたのか。

 

 余裕か、油断か、或いは哀れみなのか。

 どれも違う。

 彼らの登場を、いち早く察知した早坂が、かぐやに緊急コールを送ったためである。

 

 

「よし、行くぜ、亜樹子」

「おう」

「いざ潜入だ……私立秀知院学園にな!」

 

 

 鳴海探偵事務所・所属探偵……左翔太郎

 同事務所・所長……鳴海亜樹子

 二人が、秀知院学園の校舎前に立っていようなど、フィリップの頭脳も流石に検索できていなかった。

 

 

 次回、『ハーフボイルドの潜入捜査編』に続く。

 




ハーフボイルドは勝てるのか。
そもそも何と戦うつもりなのか……
そもそも勝負が成立するのか、お楽しみに。
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