フィリップ・来人は検索したい~魔少年の高校生活~ 作:ディルオン
アニメも体育祭編でテンション上がってます。
これからもどうか応援よろしくお願いします。
「フィリップ?」
高等部へ戻り、藤原の言う心当たりの場所へと移動する時。意外な顔と
「何やってんの?」
「おや、優じゃないか」
生徒会にいなかったメンバー、石上優が生徒会室の真下に立っていた。
「藤原先輩、四宮先輩も……あれ? そっち前に来た、会長の」
「あ、こんにちは」
恭しくお辞儀をする圭。
「優は、彼女を知っているのかい?」
「ああ。3、4日前くらいに生徒会室へ来たから」
「あれ? 石上君、帰ったんじゃなかったんですか?」
「いや、四宮先輩から……」
「私が呼んだんです。会長を手伝って欲しいと」
そう言って微笑むかぐや。
かぐやも、会長のヘルプとして、既に帰り支度をしているであろう石上を呼び寄せるのは多少の心苦しさがあった。
しかし圭と親密になるため、敢えて心を鬼にして石上を再召喚したのである。
「ごめんなさい、石上君。無理を言ってしまって」
「いえ。四宮先輩にはテストの時にもお世話になりましたから、これくらいは」
そういう石上の顔には、陰った様子は見られない。
誤解されがちな石上ではあるが、彼も義理堅い性格だった。
石上自身、先週かぐやに勉強を見てもらい、赤点を回避できたことがある。いずれ、かぐやに報いたい気持ちがあったので、ちょうど良かった。
「でも何があったんです?」
「よくぞ聞いてくれました石上君! 私たちは今、迷える子羊を導いている真っ最中なんです!」
「千花姉ぇ、羊じゃないよ。ネコだよ」
「ネコ?」
「ここにネコが迷い込んだらしくてね。白銀圭の依頼で、探してる真っ最中なのさ」
得意げに語るフィリップ。
ここまでのあらましを簡単に説明した。
かぐやも、一緒になって経緯を話す。
「なるほど。その化け猫の正体が、行方不明の猫じゃないかってことですね」
「石上君は聞いたことあるかしら? ネコの声。いつもこの辺りで休んでいるわよね?」
「いや……特にそういうのは」
首を傾げながら答える優。
彼も生徒会の一員。その注意力や記憶力は相当なもの。ゲームに熱中していても、ここ数日で聞いていないということは確かであった。
「あ、でも」
ふと顔を上げる石上。そうして裏にある林の方を指差しながら言った。
「なんか2、3日前あたり、そこの奥で草木が動いたような……何か横切った気がします」
「それって、このネコですか?」
「どうだろう……チラッと見ただけだから」
圭から渡されたチラシを見ても、イマイチぴんと来ない様子ではある。しかし、彼の言葉を受け、藤原はポンと手を叩いて顔を輝かせた。
「もしかすると、これは私の推理を裏付ける証言かもしれません」
「どう言うことです、藤原さん?」
「向こうへ行ってみましょう!」
そう言って、藤原は石上が指差した林の奥へとずんずん進んでいく。
慌てて後を追う圭。かぐやもフィリップと顔を見合わせる。
「では済みませんが、石上君……」
「はい、会長の手伝いは僕がしますので」
「よろしく頼むよ、優」
「……」
だが石上、ジッとフィリップを凝視する。
「フィリップ」
「ん?」
「頭のそれ、何?」
彼は冷静に突っ込んだ。
フィリップはキャスケットを弄りながら得意げに答える。
「フフッ、君は知らないようだね? これは校内で謎を解く時の必須アイテムさ」
「おい藤原先輩になに吹き込まれた」
石上、コンマ2秒で犯人を特定。
「どうして藤原さんに渡されたと見抜いたんだい?」
「そんな謎アイテム持ち歩くのあの人ぐらいしかいないから」
「なるほど!」
「お前を友達だと思ってるから言うけど、今すぐ外した方がいいよ」
「そうか。藤原さんは『謎アイテム』と『ネコの謎』を掛けてたんだね。興味深い」
「あの四宮先輩、コレ止められなかったんですか?」
心底憐みの表情を浮かべたまま、石上はかぐやに尋ねる。
流石にかぐやも申し訳なかったのか、気まずそうに答えた。
「私にだって、出来ないことはあるんです」
かぐや、己の保身のため、フィリップを売る。
「と、とにかく石上君、会長のことはお任せしましたからね」
「分かりました……じゃあ、フィリップ」
「ああ」
石上が生徒会室へ向かったのを見て、二人も藤原たちの後を追う。
道中、フィリップはかぐやに尋ねた。
「四宮さん、優はどうして眉間に皺を寄せていたんだい?」
「さあ? 私にはとんとわかりません。彼も思春期ですから、日々鬱屈した何かを抱えているんでしょう」
さも無関係を決め込むかぐや。
数日後、思わぬ形でしっぺ返しを食らうことになるが、それはいつもの光景である。
「あ、かぐやさーん、フィリップくーん! ここです、ここーっ!」
数分後、四人は目的の林の奥……その突き当りへと移動していた。
かぐやとフィリップも合流し、改めて藤原の言う心当たりの場所へ来たことになる。
「私が掴んだ情報を纏めると、ネコの鳴き声がするのはこの辺りです」
両手を広げて言う藤原。
生徒会室の真下……その更に奥側は沢山の常緑樹が植えられて、ちょっとした林の様になっていた。
「そして、これを見て下さい!」
藤原が指差した行き止まりの場所を、三人は見た。
「あら……こんな穴が空いてたんですね」
「丁度、中等部の敷地とを繋ぐフェンスなんです。恐らくネコちゃんは、ここを通って高等部へ逃げ込んだに違いありません」
皆がまじまじと穴を見る。
確かに、何かの拍子に切れたのか、フェンスには動物が入れそうな穴が一ヵ所空いている。このフェンスの向こう側が、ちょうどさっきまでフィリップたちがいたプレハブ小屋の裏手になる。
となると、藤原の説も真実味を帯びてくる。
フィリップは持っている大型の携帯ガジェット、『スタッグフォン』でフェンスの穴を撮影した。
(『デンデン』と『バット』を持ってくれば良かった……)
二つとも、フィリップや翔太郎が探偵として仕事をする際に使う道具である。学園では使う機会も無いと踏んでいたのだが、まさかこんな形で探し物をすることになろうとは思わなかった。
「まずはこの辺りを探してみましょう」
「そうだね」
(今は虱潰しに探すしかない)
藤原の言葉に、フィリップは頷く。
圭とかぐやも同意し、ネコ捜索隊は活動を開始した。
しかしフィリップはこの後で、相棒のペット探しのセンスを見直すことになる。
【となりのK/フィリップ・来人には分からない】
「……中々見つかりませんね」
「ま、まだまだですっ。次はあっちを探してみましょう!」
捜索を開始して、数時間が経過した。
だが、やはりネコの姿は見当たらない。
(参ったな……翔太郎のネコ探しの腕前を軽く見ていた)
実はフィリップには、この手のペット探しの経験が殆ど無い。
というのも、フィリップが力を貸すのは基本的に、相棒である翔太郎の手に負えない事態となってからである。
そしてペット探しに於いては、フィリップの頭脳を借りるまでもなく、翔太郎が一人で全て解決していた。
(君なら、ものの数秒で見付け出すんだろうけど)
相棒である左翔太郎は、ネコの目線で行動を分析・追求することにかけては天下一品である。
鳴海探偵事務所の生計は、彼のペット探しによって成り立っていると言っても過言ではない。
だが風都にいる翔太郎をここに呼び寄せるわけにもいかない。いつ翔太郎が……いや、『翔太郎と自分』が必要とされるかどうか分からない。
今回、フィリップは自分の力と、この先輩や先輩の妹と共に、事件を解決せねばならなかった。
「……どうしたものか」
とは言え、八方塞がりである。
自分の能力──『地球の本棚』は使えない。
これは本当に最悪の事態になった時だけだ。
それに、使ったとしてもそもそも手掛かりが足りない。
せめてあと一つか二つ……ネコに迫れる『キーワード』が欲しかった。
「……もう日が暮れてきましたね」
かぐやの言葉に、一同は黙り込む。
流石に防犯上、これ以上捜索は難しい。学園も深夜まで門を開くわけにもいかず、帰らなければならない時刻が近づいている。
事実上、タイムリミットであった。
「……」
俯く圭。
普段、圭は外では表情を滅多に変えない。
涼しげな顔が、男女問わず人気を集める部分でもあるのだが、この時ばかりは陰りと不安、そして焦りが目に見えていた。
「大丈夫です、きっと見つかりますよ」
「四宮さん…」
「明日は、もう少し範囲を広げてみましょう。チラシも貼りますし、もしかしたら有益な情報が出てくるかもしれません」
「……はい。ありがとうございます」
かぐやの言葉に、改めて礼を言う圭。
「大丈夫、絶対に見つけようね!」
「うん。千花姉ぇもありがとう」
「……」
一歩離れた場所から、フィリップはそれを見た。
生徒会の面々は、少し自分の仲間達に似ていた。
他人から見たらどうでもいいことでも、我がことのように全力を尽くす。特に今日の藤原は、どことなく亜樹子を彷彿とさせる。
(今のは……僕も、彼女を慰めるべきだったか)
謎にばかり拘っていた自分を、少しだけ恥じた。
「フィリップさん」
「え」
「明日も手伝って頂けますか?」
「……」
素直な目で問いかける圭の顔が目に入った。
知り合って一日足らず、交わした会話の量もまだ少ない。
だがそれでも、圭はフィリップを信頼し始めていた。
「……ああ、もちろん。見つかるまで付き合うさ。白銀圭」
「すみません、よろしくお願いします」
それはフィリップにも、何となく伝わる。
ならば自分も全力を尽くそう。
フィリップはそう決意した。
・・・・・・・・・・・・・・・
『バット』
翌日の昼休み。秀知院高等部、裏庭。
フィリップは誰もいないところで、戻って来たコウモリの形状をした小型ドローン──『バットショット』を待機形態であるデジカメの状態へと戻す。
バットショットは、ドローンとデジカメの機能を一体化させた小型メカで、他にも超音波発生装置や、プログラミングされた物体を探索する機能などを持つ、探偵業務には必須のアイテムである。
翔太郎に事情を話し、無理を言って借りてきたのだ。
しかし……
「……何も写っていない」
デジカメの中身を確認して、フィリップは溜息をついた。今朝からバットショットにこの辺りの探索を頼んだが、収穫はゼロであった。
文字通り、ネコの子一匹いないとはこの事である。
フィリップはもう一度、状況を整理するために、例の抜け穴のある林まで移動する。
道中、ネコの行方について考えを巡らせた。
(バットショットでも見つけられないと言うことは、校内には既に居ないのか? けど……)
この一両日中、フィリップたちは様々な場所を巡り、相当な人間に話を聞いた。しかし、誰もチラシのネコは見ていないという。
(僕達は何かを見落としているんだろうか……?)
頭の中で、これまで得た情報を整理する。
即ち……
1、ネコは飼われていたプレハブ小屋に戻っていない。
2、襲われた形跡はない、或いは第三者による略取も考えにくい。
3、高等部へと侵入した形跡は見られるが、誰も姿を見ていない。
4、ネコは怪我をしており、臆病な性格の為、学園外へは出ていない。
(ネコが学校の敷地内にいるのは間違いない筈なんだ……けれど見つからないのは……)
先日、微かによぎった予感を思い出す。
(考えたくはないが……最悪の場合)
もう一度中等部の方を探すべきだろうか。ともフィリップは考えた。
その時である。
「……あ、フィリップさん」
「ん?」
穴の開いているフェンスへと辿り着いた時だった。
金網の向こう側で、緑の林の中で一点の白。
中等部の白い夏服を着た圭が、フェンス越しにこちらを見ていた。
「白銀圭」
「どうも」
「ひょっとして、君もネコを探しているのかい?」
「はい。もしかしたら、まだ中等部にいる可能性もあるんじゃないかって」
圭は真顔で頷く。
どうやら向こうも同じ様な考えに至っていたらしい。
「その様子だと、あまり成果は無いようだね?」
「……」
「あ……す、すまない。僕の言い方が悪かった」
落ち込む圭に、フィリップは頭を下げた。
今一番不安なのは、依頼人である彼女だ。それを傷つけることは許されない。それでも圭は、首を横に振った。
「フィリップさんが謝ることないです。今だって探してくれてるんですから」
圭の表情と言葉に、偽りは無かった。
(翔太郎の優しさが、今になって羨ましいなんて……)
あれだけ大見栄を切って、小動物一匹見つけられない。
翔太郎の力を借りられない時は何度かあったが、やはり自分自身も、こういう時は半人前なのだということを思い知らされる。
少し、情けなさを覚えた。
「……あの」
「え?」
「ネコはもう、ここにはいないんでしょうか?」
じっと見ていたフィリップだったが、圭の言葉で我に返る。
「それとも……もう」
「……」
フィリップは一瞬、言葉に詰まった。
あまり考えたくは無かったが、現状で最も確率の高い答えである。
ネコと言うのは、そもそも外敵が多い。
カラスや他の鳥類。野良犬や、同じネコ同士の縄張り争い。
ネコの敏捷な動きや仕草は、それらの危険を回避するためのものである。
おまけに白ネコは目立ちやすいというデメリットが存在する。更に件のネコは後ろ脚を負傷し、敵に襲われた場合まず逃げられない。
『ネコは学園の敷地外へ飛び出し、そこでカラスか何かに襲われた。だから姿も見えず、痕跡も見当たらない』
「いいや」
今までの自分なら、そう言って結論付け、捜査を打ち切っただろう。
だが、できない。
圭の心配している顔を見て、それだけはどうしても言えない。
「ネコは外へは行ってないよ」
「本当ですか?」
「ああ。藤原さんも言っていただろう?」
フィリップは努めて、笑いながら言った。
「きっとどこかで、君を待ってるよ。だから……気を落とさないで」
「……はい」
どれくらいの効果があったのか。
圭は僅かに微笑んで頷く。
(助けてあげたい)
ガイアメモリさえ絡んでいない。ただの動物探し。
それでも、フィリップは強く思った。
(このまま、何も出来ないままでいたくない)
そして今、こうして逆に頼りにしてくれている人間がいる。
自分から首を突っ込んだとはいえ、それを泣かせたくはなかった。
(……見つけたい。何としても)
そうフィリップが強く決意したのは、数えるほどしか覚えが無い。
そうした新鮮な体験が脳や体に負荷をかけた影響か。
フィリップの腹の虫が盛大に鳴る。
「……あ」
「……」
「えっと……すまない、今朝から食べてないんだ」
ネコの行きそうな場所を順次脳内で考えていたせいで、今朝は食事を抜いてしまった。
何か口に入れようにも、今日は弁当も持ってきていない。
と、その時。
圭がポケットからある物を取り出した。
「あの、これよろしければ」
「ん?」
「私も、外で食べようと思ってたので。どうぞ」
そう言って、和風の手拭いで包まれたサンドイッチをフィリップに見せる。
フィリップは目を丸くして圭を見つめる。
「どうぞ」
目の前の少女は大真面目に頷いて言った。
「いや、これは君のものだろう? 僕はいい」
「気にしないで下さい」
「けど、君の分が無くなってしまう」
「じゃあ、半分こしましょう」
「でも……」
「どうぞ」
「……」
有無を言わさず、圭はサンドイッチの片方を、フェンスの穴からこちらへと差し出してくる。
フィリップは困惑した。
圭は見た目と違い、グイグイくるタイプだった。一度決めたことはやり抜く芯の強さは、兄譲りであった。
昨日、兄がいかにダメ人間であるかを力説していたが、他人を慮ろうとするこの心構えは、間違いなく白銀御行から伝播したものであった。
「わ……分かった、貰うよ」
「はい、どうぞ」
フェンスの向こうから差し出されたサンドイッチを口に運ぶ。パンの風味と、濃いめに味付けされた具の味わいが口いっぱいに広がった。
「美味い。下拵え、味付け、どれも丁寧だ」
「……どうも」
「手作りのようだけど、これは君が作ったのかい?」
「いえ、兄が作りました」
「会長が?」
出掛ける直前、兄である白銀御行が、圭に持たせたものだった。
圭はいつまでも甘やかされた気がして断る時もあるが、ネコを探す片手間に食べられるという利点から受け取った。
当然、これは白銀がそう予測した上で手渡したサンドイッチである。
「会長は料理上手なんだね。そう言えば、以前料理を教えてくれると言っていたっけ」
「そうなんですか?」
「ああ」
圭とフィリップはフェンス越しに会話をしながら、サンドイッチを口に運んだ。
「君は、会長に料理を教わったりしないのかい?」
「……私たち、家ではあまり会話とかしないです」
「そう言えば、昨日そう言っていたね」
「はい」
不満そうな表情を顔に浮かべる圭。
家の中では、白銀兄はあれやこれやと何かにつけて指図するので、兄妹関係は冷え切っていた。
その様子を見て、フィリップは少し寂しそうに圭を見て尋ねた。
「ねえ」
「はい?」
「兄弟や姉妹は……仲が悪くなるものなのかな?」
「え?」
「そういう普通の関係が、僕にはよく分からなくてね」
フィリップはここへ来て初めて、何故自分が圭に興味を抱いたのか、その理由に突き当たった気がした。
「えっと……その家次第じゃないでしょうか。千花姉ぇのところは三人姉妹ですけど、とっても仲良いですよ」
「となると、兄妹や姉弟だと仲良くなれないケースが多いのか……」
「フィリップさんは、ご兄弟とかいるんですか?」
圭は恐る恐る尋ねる。
フィリップは空を見上げながら、事もなげに言った。
「姉が2人いたよ」
「……そうなんですか」
「うん」
過去形の表現。
圭は何となく悟る。そしてその予想は当たっていた。
フィリップの二人の姉──冴子と若菜は、既にこの世の人ではない。
「あまり仲良くなかったけどね」
両者とも魔物に憑りつかれ、互いを憎み合いながら生きていた。
その根底にある物は紛れもない家族の愛情であったが、それでも生きている間は、終ぞ和解は叶わなかった。
『兄弟姉妹とは何ぞや』……その疑念が、常に心底にこびりついていたフィリップ。
白銀兄妹を見て興味を惹かれたのは、何を隠そう、それを知りたいという欲求が第一であった。
「別に」
「え」
「無理に、仲良しじゃなくても良いと思います」
「どう言うこと?」
「だって……それでも、家族は家族ですから。喧嘩しても、やっぱり兄は兄ですし……そもそも、好きとか嫌いじゃないと思います」
「好きや嫌いではない…」
「はい。だから無理矢理好きって言う必要ないですよ。どっちにしたって、近くにいるのは変わらないですから」
言われて、フィリップは二人を想う。
過去の記憶が無いフィリップは、亡くなる直前の姿でしか姉を知らない。
嫌い、憎み、それでも互いは離れようとはしなかった。まるで引かれ合うかのように、意識し続けた。
奇妙で、奇怪で、歪だった家族。
それでも断ち切ることは出来なかった。
「……そうか。家族の関係性は、好悪で決められる単純なものではないんだね」
「私は……そう思います」
「面白い考えだ。ありがとう」
圭の言葉で、フィリップは何処か、つかえが取れる気分だった。
丁度、昼の授業再開を告げる予鈴が鳴る。
「ご馳走様。美味しかったよ」
「いえ。お口に合ってよかったです」
「ネコはまた放課後に探そう。今度は敷地全体に範囲を広げてみよう」
「はい」
続きは改めて、メンバー全員で行うしかない。
改めて、放課後に生徒会室で落ち合う約束を確認し、二人は別れることにした。
その際、念の為に連絡先を交換しようとした時のことである。
「白銀圭は……」
「圭です」
「え?」
「圭、でいいですよ。兄と同じ白銀だし、白銀圭だと長いですし」
「……」
フィリップは目を丸くした。
名前はお互いの距離感を測る目安である、というのは以前検索した本に書いてあった。だからフィリップは初対面の人間や、仕事上の付き合いの人間をフルネームで呼ぶ癖があった。
逆に親しい人間は、下の名で呼ぶこともあるが、フィリップの場合それは滅多にない。
「圭……で、いいのかな?」
「はい」
フィリップは知る由もない。
この秀知院学園で、白銀圭とお近付きになりたいと考える少年がどれだけいるか。
そして彼女を名前で呼ぶなど、どれほどの対価を支払っても叶わない出来事であることなど。
「それじゃあ圭、放課後にまた」
「よろしくお願いします」
しかし、重要な事実が一つある。
フィリップには、未だ人の心は分からないのである。
予想より長くなってしまいました。
だって圭ちゃん書きたいんだもん。
次回……いよいよフィリップ最後の封印を解除します。
マジである。
ちなみに、ここまででほぼヒントは出揃っています。
ガイアメモリは関係ありません。
もしネコの居場所が分かった方で
『繋がった!脳細胞がトップギアだぜ!』
って私にメッセージを送って下さるとテンションがエスクトリィィィムッ