フィリップ・来人は検索したい~魔少年の高校生活~   作:ディルオン

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だいぶお待たせして申し訳ありません。
どのくらいの頻度で上げられるかは分かりませんが、
こんな拙作を待っていただけるのでしたら、応援よろしくお願いします。




二学期編
1話【Hな遭遇/フィリップ・来人は改善したい】


 

 

 人を好きになり、

 告白し、

 結ばれる。

 

 それはとても素晴らしい事だと誰もが言う。

 

「……あ」

 

 しかし、少年には分からない

 

「どうかした、フィリップ?」

「いや、修理のパーツが足りなくなりそうなんだ。僕としたことが……」

 

 彼はかつて、『ただの少年』だった。

 次いで、『ただの道具』と呼ばれた。

 とある出会いを経て、『魔少年』と。

 数々の事件を潜り抜け、ある男からは『相棒』と。

 そこで出会った仲間からは『家族』と。

 

「へぇ、確かに珍しい……何かあった?」

「ああ……昨日、夢中で【紙おむつとパンパースの歴史】を検索していたのが原因だと思う」

「いつも通りじゃねーか」

 

 そして、この場所で……私立秀知院学園で知り合った者たちからは、『友達』と。

 

「仕方ない、買ってこよう」

「あ、それなら僕が行こうか? こっちはもう仕事ないし。フィリップは他の修理とかすれば無駄がないだろ」

 

 都内港区三田・私立秀知院学園の生徒会室にて、機械の修復に没頭する一人の高校生……名を、フィリップ・来人。

 この春、風都より編入し、瞬く間に生徒会員として抜擢され、多くの生徒より人気を集める天才児である。

 

「すまない、助かる」

「いいよ別に。今日は先輩達も課外授業で、ここにいるのは僕たち二人だもんな。たまにはこういうのも気楽でいいよ。じゃあ行ってくる」

「ああ、頼む」

 

 だが、暗く澱んだ陰に潜み、街を泣かせる悪党からは、こうも呼ばれる。

 

『仮面ライダー』……と。

 

「さて……あと残る修理は……パソコン3台と冷暖房機2台か」

 

 しかしそれは間違いである!

 少なくとも、この場にいる彼は、そんなモノとは一切無縁、ただの高校生であった!

 ただ、ちょっと新たな知識に目がなくて、好奇心が抑えられず!

 知性と引き換えに理性を!

 知識と引き換えに常識が!

 ほんのちょびっとだけぶっ飛んでしまった、一人の少年の物語!!

 

「ここまで古い型の修理は初めてだ……興味深いね」

 

 二学期編!スタート!!

 

 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 

 

「げっ……」

「おや、伊井野さんじゃないか」

 

 私立秀知院学園。

 9月上旬、その日の放課後……突如、激震の走る生徒会室!

 

「君がここに来るとは珍しいね。興味深いよ」

 

 その日の放課後、部屋の門を開けた一年生風紀委員、伊井野ミコ!

 中で待ち構えるは一年生生徒会庶務、フィリップ・来人!

 

 一人しかいない生徒会室。

 そこの事務机に作業用マットを広げ、工具をいじくり回していたフィリップは、諸手を広げて立ち上がり、彼女を歓迎しようとする。

 

「どうぞ。僕以外のメンバーは留守だが」

「うっ……!!」

 

 この二人、転校初日に校則を巡って火花を散らし、それ以来犬猿の仲として、一年生の間では恐れられてる関係である。

 

 だがそれは真実とはやや食い違っていた。

 

「こ、これ、今期の風紀委員の活動報告書、確かに届けたからね!」

「まぁ待ちたまえよ伊井野さん」

「な、なによ、私は忙しいの!」

「ならここで少し休憩していきたまえ」

 

 怪しげな笑みを浮かべ、引き留めるフィリップ。

 それに対して伊井野ミコは……

 

「そ、そんなことをしたって、私は靡かないんだからね!」

 

 結構な誤解を抱えていた。

 

「?まるで僕に悪意があるような言い方だね?」

「わ、私を懐柔するつもりなんでしょ!?甘い手を使っても絆されないんだから!」

 

 伊井野にしてみれば、初日から壁ドンをされ、更に気があるようなフリをして乙女心を弄んだ上、勝手に捨てると言う男の風上にも置けない存在!

 

『好きになられる』は必ずしも幸福とは言えない!

『彼女』はそう考える!

 それだけではない。

 

(私がどれだけ頑張っても選ばれなかった生徒会……その席にアッサリ収まった挙句に、定期考査でも上位……!)

 

 伊井野ミコには目標がある。

 それは、この秀知院学園の生徒会長になり、自身の信じる正義を実行するというもの。

 

 だが、彼女の頑なさや生真面目さが諸々に作用し、未だ目標に至るまでの信頼は勝ち得てないのが実情であった。

 

 そこへ旋風のように現れ、彼女の欲してやまない生徒会の地位を当然のように掻っ攫い、自分に比肩しうる成績まで残し、一年どころか上級生の信頼まで獲得した謎の編入生フィリップ・来人!

 

 彼女にしてみれば不倶戴天!正に仇敵とも呼べる存在!

 

(こんな人、私は絶対に認めない!)

 

 対して、フィリップの彼女に対する印象といえばそう悪い物ではない。

 

(ふむ……1学期も終わったと言うのに、彼女の態度は軟化するどころか益々悪いものとなっている……)

 

 初めはフィリップも、より良い学園生活を送るため、最初に出会って怒らせてしまった彼女に対し、ただ友好的な関係性を築くことのみ考えていた。

 

(実に興味深い……彼女の人となりについてここはじっくり検証したいところだ)

 

 ただ、それも夏休みまでの話!

 複雑な人間心理や関係性について、生徒会でのやり取り等を経て、やや自信のついてきたフィリップ。

 ここにきて、彼は再び、伊井野ミコの内面を詳しく『検索』してみようと思い立っていた!

 

 とはいえ。

 

(いや、ここは彼女との関係改善を優先するべきだ……僕もそれ位は分かってきているさ)

 

 フィリップ・来人は、日々成長しているのである。

 転校初日以来、次々と生徒の地雷を踏み抜き続け、その度に自問自答を繰り返して、彼の中では、ある種の良心が育ちつつある。

 

(それに、ここで関係改善をしておけば、彼女の複雑怪奇な心理模様は閲覧しやすくなる……フフッ、ゾクゾクするね)

 

 ある種の良心である!

 決して怪しい感情ではない!

 

「じゃあ、そう言うことだから」

「そう急ぐことはない」

「しつこ」

「風紀委員会で使っているパソコンの修理がもうすぐだ。あと10分程度で終わるから、持っていくといい」

「え?」

 

 フィリップの予期せぬ言葉、返そうとした踵の止まる伊井野。

 

「それ……この間壊れてた……」

「遅くなってしまったけどね。単純な故障さ。すぐに済むから待っていたまえ」

 

 言うとフィリップ、すぐさま広げたビニールシートの上に黒い型落ちのノートパソコンを置くと、慣れた手付きでそれを分解し始めた。

 

「わ、わざわざ修理してるの?」

「この方が予算が抑えられるだろう。僕としても機械弄りは嫌いではない」

「……へえ」

「伊井野さん達の日々の努力が分かるね」

「え?」

「毎日使い続けた跡がある。それに埃や傷が全くと言って良いほどにない。ずっと前から、君達が丁寧、かつ適切な使い方を心掛けていた証拠さ」

「ま、まあ……が、学校の備品なんだから、大切に使うのは当たり前でしょ」

 

 顔を背ける伊井野。

 しかし、その頬には僅かに赤味が差している。

 

「しかし、ここまで長く使っている備品は、僕もそれほど見ていない。やはり伊井野さんの誠実さが活きているようだ」

「えっ……」

「普段のクラスの様子を見ても、身嗜みに乱れは見られないし、教科書やノートにも折れ曲がりや破損もない。君の性格がよく現れているね」

「そ、そんなこと……」

 

(やはりこの手が有効か……?)

 

 明らかに軟化する伊井野の態度。

 これまでの付き合いで、伊井野ミコに対して有効な手段はとにかく褒めちぎることである。

 彼女を立て続けることで、一定の信頼度を獲得することが既に保証されている。

 

「別に……私なんて、真面目すぎるとか、口煩いとか、色々言われてるし……」

「きめ細かく、誠実さが滲み出ている……と言うことだろう?気にすることではないよ」

「そ、そうかな……」

「短所も視点を変えれば長所になる。気の持ちようなのさ」

 

 立板に水を流すが如き褒め言葉の乱舞。

 無論、フィリップはここに至るまで『女性の喜ぶ文句』から、『相手に気に入られる言葉選び』まで全てを検索し、閲覧済み!

 その中から伊井野に効果的と思われる言葉をチョイスしているだけである!

 

「あ、ありがとう……フィリップ、くん……」

 

(色々と誤解していたけど……やっぱり本当はいい人なのかな……?)

 

 と、心の中であっという間に好感度が逆転しつつある伊井野ミコ。

 人はそれを『チョロい』という。

 

「い、いいわ、じゃあ終わるまで待たせてもらう……から」

「ああ、そうしたまえ」

 

(ここまでは完璧だ……しかしここからだ。何故か、この先が上手くいかない)

 

 フィリップは、伊井野ミコの好感度を上げること自体には何度か過去成功している。

 しかし、問題はここからであった。

 

(前回は『一緒に【オジサン】と【ヤリマンボウ】について検索してみないか』と誘ったら怒られた……)

 

 変わった名前の魚に好奇心を奪われていた時のフィリップの失態だった。

 

(さて、どんな手を使うのが正解なのか……)

 

 慎重に事を運ぼうとするフィリップ。

 その時である。

 手元の携帯……見るからに時代遅れで無骨な印象のガラケー……スタッグフォンが鳴る。

 徐にそれを手にし、画面を見ると見知った名前だった。

 

「もしもし?優かい?」

『ああ、フィリップ?頼まれてた店に行ったんだけど……場所がよく分からなくて』

 

 つい先頃、パーツ購入を買って出てくれた石上からであった。

 フィリップの求めるパーツショップは近所にあるものの、多少入り組んだ場所にあり、店の中も狭く複雑な構造で、一見には少し敷居の高い場所である。

 

「……石上?」

「ああ、僕の欲しい物を買いに行っているのさ」

「え?」

「もしもし?そこからなら、角を右に曲がって……」

 

 石上というワードは、伊井野にとって決して良い印象ではない。

 自他共に認める犬猿の仲というのは、まさに彼女たちに相応しい。

 

(石上……わざわざ買い出しに行くなんて……)

 

 しかし伊井野とて、殊更構えるつもりもない。

 友人のためにわざわざ合間を縫って買い出しに出るという行為は、少なからず彼女の中でプラスに働いた。

 

(ちゃんと生徒会の仕事やってるんだ……私、色々な事を誤解してたのかな)

 

 軽い自己嫌悪に陥ると同時に、どこか明るい気持ちになる伊井野。

 もしかすると、自身の地道な風紀の啓蒙活動が身を結んできたのではないか。石上を散々注意し、指導し、厳しく接したのは無駄ではなかったのだ。

 

 そう思い始めた矢先。

 

「そう、AVコーナーへ行ってくれ」

「…………」

「ああ、そうとも。なに?聞こえ辛い?AVだよ、エーヴイ」

 

 やはり真実とは捻じ曲げられるもの。

 そして運命とは捩れ狂うものである。

 

 

(……え、えええっっ、えええええ、えーぶいぃぃぃいいっっっ!!?)

 

 

 突如フィリップの口から出た衝撃の発言!

 しかし彼には当然悪意もなければ自覚もない!

 あくまで『オーディオビデオ』の略称、即ち『AV』を口にしただけである!

 

「ああ、それで頼むよ、じゃあね」

 

 通話を切り、何食わぬ顔で作業に戻るフィリップ。

 その様子を、伊井野ミコは唖然とした様子で見ていた。

 

「……」

「おや、伊井野さん、どうかしたのかな?」

「い、いい、今、あなた、何を……」

「ん?」

「い、い、石上と、何、な、なにを話して……!?」

「ああ、優に買い物を頼んだと言っただろう。これが上手く再生できないらしい。新しく、と言うことでね」

 

 そう言って、フィリップは部屋の隅にある小型のBDプレーヤーを指差した。

 無論、視聴覚室に置いてある学園の備品。

 

(せ、せ、せ、生徒会の中で、新発売のアダルトBDを買う約束を……!?)

 

 伊井野は間違った解釈のまま、顔を真っ赤にした。

 

「伊井野さん、顔が赤いが、どうかしたのかい?」

「ど、どど、どうもしないわよ!?」

 

 愕然とする伊井野。

 しかし、飄々としたまま爆弾発言を続けるフィリップ。

 その様子は、却って彼女の羞恥心と怒りに火をつけた。

 

「って言うか、学校でなんて破廉恥な会話をしてるの!?最低よあなた!」

「?何の話だい?」

「わ、分かってないっていうの!?」

 

 前言撤回!

 やはりこの編入生は何をしでかすか分かったものじゃない!

 風紀委員として、そして乙女として断じて平静ではいられない!

 

「神聖な学舎をなんだと思ってるの!?風紀委員として見過ごせないわ!」

「伊井野さん、ここは生徒会室、校則の届く範囲ではないよ」

「それ以前の問題だと言ってるのよ!」

 

 食い下がる彼女の様子に、どうにも要領を得ないフィリップ。

 彼の脳内を疑問符が埋め尽くしていく。

 知識の化身とも言えるフィリップにとって、これは予想外の出来事であった。

 

(まただ……!?一体僕は何をしてしまったんだ!?とにかく、彼女の気分を宥めないと……)

 

「伊井野さん、僕は生徒会の役員として仕事をしているだけだけさ」

「せ、生徒会の仕事!?」

「ああ、そうとも」

「生徒会の仕事でAVコーナーに行くの!?」

「普段は僕の役割だけどね」

 

 理知的に、冷静に、自身の正当性と、仕事に対する誠実さをアピールするフィリップ。

 

「あ、あなた、いつもそんな物探してるの!?」

「目ぼしい物を探すのが日課なのさ。週に6〜7回は行く」

「ほぼ毎日!?」

「店主がこだわりを持っている店でね、興味深い品が沢山ある」

「やめて!それ以上言わないで!!」

 

 しかし彼女にとっては倒錯嗜好に走る言動である。

 そして伊井野は愕然とした。

 常に生徒会の仕事と偽り、彼が性的欲求を満たす為に電気街を物色しているとしたら……

 

「ま、まさか、この中にあるって言うんじゃないでしょうね……!?」

「?この中、とは?」

「惚けないで!あ、ああ、あの、その……こ、この機器で、再生する、な、中身よ……!」

「中身……ああ、そういえば優から新しいアニメを借りていたね」

「えっ、アニメっ!?」

「ああ」

 

 フィリップの横にある自身のカバンには、優が大変感動すると太鼓判を押した名作アニメが入っている。

 

 伊井野は顔が真っ青になった。

 

「え、いや、あの、じっ、実写じゃないの!?」

「ふふっ、伊井野さん。君は知らないようだね、アニメの面白さというものを」

「知らないわよ!っていうか知りたくもない!!」

「ふむ……」

 

 ここまでのやりとりで、更にフィリップは首を傾げた。

 伊井野ミコの機嫌は良くなるどころか悪化の一途を辿っている。

 このままでは前回の二の舞どころか、益々関係修復は不可能になってしまう。

 

 フィリップは作業を一時中断し、急ぎ立ち上がった。

 そのまま生徒会室の壁際に置いてあるホワイトボードへ向かう。

 

「ひっ、な、なによ……っ!?」

「女性はオタク……いわゆるサブカル文化に対して往々にして抵抗感を示すことが多い……これは女性が男性に比べて社交性を重んじることが主な理由として挙げられる。何故なら……」

「フィ、フィリップ、くん……!?」

 

(ホ、ホワイトボードに何か書き出した……!?)

 

 怯える伊井野をよそに、フィリップは頭の中に浮かんだ情報を次々にボードに書き足していく。

『伊井野ミコの怒りの原因は何か?』

『自分達の関係修復の方法は?』

『アニメに対する忌避感を解消するべきか?』

 などなど、検討外れもいいところな検証を重ねるフィリップ。

 その様子に、伊井野は戦慄した。

 

(な、何、この人……変な話をし始めたと思ったら……!)

 

 いきなり下ネタを振られた挙句、本人は目の前で唐突に板書を始め、訳の分からない言葉をブツブツと呟いている。

 こんな行動を目の前に、理性を保つのは至難の業!

 

(に、逃げないと……このままじゃ何されるか……!)

 

「そうだ、伊井野さん、これを機に君も観てみないか?」

「え!?な、なんで私が!?」

 

 伊井野ミコは知らなかった。

 魔少年からは逃げられないと。

 

「結論から言おう。君は実態を知らずに判断し、自身の価値観で行動する傾向が強い。これを観れば、その頑なな行動指針も変化する可能性がある」

 

 フィリップ……『関係改善の為には、共通の趣味を持つことが大切である』……と言う情報を思い出し、これを当てはめる事を提案した。

 

「うん、それがいい。早速検証しよう!」

 

 いそいそと準備を始める。

 生徒会室備品の別の再生機器を用意し、そこにカバンから取り出したDVDを瞬く間にセット。

 

「い、いや!やめて!私をそっちに巻き込まないで!」

「安心したまえ、このアニメは生徒会長も観て太鼓判を押している」

「生徒会長も観てるの!?」

「ああ、この間皆で一斉鑑賞会を行ったよ。『芸術鑑賞会の日には全校生徒にコレを見せるべき』という意見まであった」

「あなた達正気!?」

 

 誤解が更に加速した。

 

「さあ、伊井野さんも座りたまえ」

「い、いいわよ!私、もう帰るから!」

「そう言わずに、さぁ」

「ひっ……!」

 

 立ち上がり、急ぎ出て行こうとする伊井野の腕を、フィリップの手が掴み取る。

 そして多少強引にソファに座らせる。

 彼は机の上に再生機器を置き、生徒会室備え付けの壁掛けテレビへと接続した。

 

「や、やだ、やめてよ……!」

「さあ、さあ、さあさあさあ」

「い……」

「ん?コートが絡まって……」

「いゃああああああ!!」

 

 フィリップがテレビの方向を向いた瞬間!

 最後の力を振り絞り、伊井野ミコは決死の覚悟で立ち上がる!

 フィリップの背中を強く押して彼を壁に叩きつけると、そのまま入り口まで猛然とダッシュ!

 

「私は清純だもぉおおおおんっっ!!」

 

 泣きながら生徒会室の廊下を走り去る伊井野。

 廊下を走るべからずという校則など守っている余裕はなかった!

 

「…………」

 

 彼女の泣き叫ぶ声と足音が鳴り響き、そして反響さえもなくなった時。

 後には思い切り壁に叩きつけられたフィリップだけが残されている。

 

 

「……彼女の行動はやはり意味不明だ。興味深いね」

 

 

 めり込んだまま、フィリップは、謎が謎を呼ぶ今の騒動に、未知の興奮を抑えきれずにいたのであった。

 

 

『本日の勝敗……フィリップの敗北』

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「おーす、お疲れ。パーツ買ってき……うわっ、なんだコレ!?どうしたフィリップ!?」

「伊井野さんにアニメを勧めたら突き飛ばされたのさ」

「え、マジで!?最低だな伊井野!」

 

 数分後、メチャクチャになった生徒会室に戻った石上は、またも伊井野への好感度を下げたのであった。

 





次回、生徒会が阿鼻叫喚!
そしてついに、天才同士の一騎打ちへ!
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