フィリップ・来人は検索したい~魔少年の高校生活~   作:ディルオン

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皆様、日が空いた……どころか歳を越えた投稿にも関わらず、数々の感想や、温かいコメントの数々、本当に嬉しく思います。
皆様の応援が本当に励みになります。
こんな長くお待たせしてしまったような私ですが、今後ともお付き合い頂ければと思います。
何卒宜しくお願いします。


2話【Uの言うとおり/フィリップ・来人は遊ばせたい】

 

「皆さん皆さーん!!」

 

 

 それは、一人の少女の言葉から始まった。

 

 

「TG部で新しいゲームを……」

「やらない」

「やりません」

「やるわけないだろ」

「早過ぎる酷すぎる!?」

 

 

 生徒会メンバーが作業に勤しみ、今日のノルマもほぼ完了していた時のことである。

 生徒会書記・藤原千花は、満面の笑みを浮かべながら、仲間を見回しながら朗らかに言い放とうとする。

 

 が、生徒会メンバー総出で藤原のトンデモ行動を完封。

 カッと目を見開いた藤原は、慌てて続けた。

 

「ノーが早過ぎますよー! 私じゃなきゃ見逃しちゃいます!」

「お前な……前に俺達の精神ライフを根こそぎ持っていったのを忘れたのか」

「あれはテストプレイだったからですよー! 今回のは絶対に面白いですからー!」

「絶対にやらん!」

 

 甲高い声でお誘いをかけるも、生徒会長・白銀御行はにべもなく断る。

 

「か、かぐやざぁ〜んっ!!」

「藤原さん、前もそう言って散々なゲームをやらされましたよね?」

 

 四大財閥のトップに君臨する四宮家の長女は、その才能と持ち前の頭脳で、これから迫り来る事態を察知していた。

 流れるような端麗な黒い長髪を軽く漉きながら、麗らかかつ厳しい視線を投げかけた。

 

「あんな妙にリアルで生々しい人生追想録のようなゲームで、逆にストレスを増やしてどうするんですか」

「そういうの今回は無しですから! 信じてください!」

 

「あのですねえ」

 

 カタカタとパソコンを弄りながら横目で藤原を観るのは、会計・石上優である。

 冷徹な顔と口調で、彼は言い放った。

 

「そもそも藤原先輩、ゲームってものを分かってないんですよ。クリエイターが製作段階で感じているワクワクを、ユーザーの楽しむ感情と混同しているからそういう事態になるんです作ってる本人はウキウキしててもプレイヤーにクソゲー扱いされればそんなモンなんの価値もないんですって」

「ぅ、ぐぅ、ぅあう……!」

 

 石上殺法『言葉の暴力』に晒される藤原。

 元より歯に衣着せぬ発言を数々繰り返し、その度に心の心臓を刺し貫いてきた石上。

 このところ、その切れ味はとみに破壊力を増していた! 

 

「い、いいもん! 石上くんにはやらせてあげないもん!」

「はいはい、結構ですよ」

 

 呆れた顔で手を振る石上。

 目に涙を溜めながら、藤原は残るメンバー二人を振り返る。

 

「そ、そういうわけで、かぐやさん、会長……!」

「だからやらないっての」

「うう……!」

 

 側から見れば冷たくあしらわれている藤原。

 しかしそれも致し方ないこと。

 数日前、藤原達TG部の考案したゲームをテストプレイした生徒会メンバーは、散々な目に遭わされていた。

 精神衛生上、関わりたくないのは当然! 

 

 

「予想通りの反応だったね、藤原さん。しかし心配には及ばないよ」

「はっ! その声は!?」

 

 

 だが……彼らはやらざるを得ないのである。

 何故ならば、今期生徒会には、紛れもない、暴風が存在するのだから! 

 

「会長、四宮さん、そして優。今回のゲームは、前回までとは桁違いさ。僕が保証しよう……フフフフッ」

「な、何……!? この笑い声は……」

「ま、まさか……フィリップくん!?」

「フィリップ……藤原先輩に何された……!?」

「フフッ……! 君たちは知らないだろう……すごろくというものを!」

 

 突如扉を開け放ち、生徒会の面々の前に堂々と相対する生徒会庶務……フィリップ・来人! 

 その姿を見て、生徒会は愕然とした! 

 

「藤原さんから協力を依頼されてね。『すごろく』を検索したところ、とても興味深い。ゾクゾクするよ」

「……」

「そ、そうなんです! フィリップ君の協力のもと、新たなハッピーライフゲームを開発したんです! これは絶対にウケますよ〜!!」

 

(((イヤな予感しかしない!!?)))

 

 ハッピーライフゲーム! 

 

 それは藤原が、自身の所属するTG部の面々と共に生み出した闇のゲーム! 

 カードをマス目に見立てて配置し、賽の目の数だけ進んでいく一般的な双六に近いルール。

 しかし藤原の生み出した多種多様、混沌極まるイベント内容によって、生徒会メンバーの心は擦り切れんばかりであった! 

 

 もう二度とやりたくない負の遺産。

 しかしそれは、新たな闇の力を得て、今再び彼らを恐怖の底に突き落とそうとしていた! 

 

「か、会長、如何しますか?」

 

 慌てて3人、頭を擦り合わせて作戦会議を開始。

 

「べ、別に断ってもいいのでは……」

「待て。ここで断った場合、恐らくフィリップは別のターゲットを求めて生徒達に声を掛けるだろう。そうなれば……」

 

 何かしらの理由を付けて切り抜けることは可能。

 しかしそれは、同時に他の生徒を彼らの餌食にすることを意味していた。

 普通の感性の人間が、藤原・フィリップのカオスについていけるわけがない。

 それだけではない。

 

「藤原先輩だけならただの変わった趣味の一つで済みますけどね」

「フィリップ君の場合、変わった頭の人にされます。間違いなく」

 

 かぐや、歯噛みをする。

 多少、その場の勢いもあったとはいえ、かぐやはフィリップがマトモな高校生活を送れるように尽力してきた経緯がある。

 おまけに当人に内緒で様子を見に来た家族にも、彼を守ると約束した手前、放っておくわけにもいかない! 

 何より、フィリップが変態扱いされれば、それは自分達への沽券にも関わる! 

 

「ここで正体を突き止めなくては……!」

 

 そして、人の良い白銀も同様である。

 なんやかんやと言っても、フィリップ・来人は善人である。ただ無邪気さ故に暴走しているのみである。

 放っておくことはどうしてもできない。

 

「いいだろう、一回だけなら付き合おうじゃないか」

「やったー!」

「フフッ、ゾクゾクしてきたよ」

 

 白銀の言葉に、諸手を挙げて喜ぶ両名。

 それを見た一同に重い何かがのしかかる感触がした。

 

 

 

【Uの言うとおり/フィリップ・来人は遊ばせたい】

 

 

 

「では今回はこれを使います。よいしょっと!」

「うお!?」

 

 藤原が嬉々として用意したのは、前回のハッピーライフゲームとほぼ同じ、カードをマス目に見立てたボードゲームフィールド。

 更に今回、別の趣向も用意される。

 藤原はどこからともなく、ソレを取り出し、机の上に置くと、白銀は目を丸くして尋ねた。

 

「これは……あれか? カジノとかで見るような……?」

「はい。ルーレット盤です!」

 

 ルーレット盤! 

 

 回転する円盤状のドームに銀の球体を投げ入れ、中に設置されたポケットの落ちた位置で出目を決定する、カジノギャンブルの女王とまで言われる定番賭博! 

 今回、用意されたのは通常よりも出目ポケットを減らし、赤or黒の1〜10までのマス目に球を入れる、簡易版とも言える物である。

 

「人生ゲームのルーレットあるじゃないですか。あれをもっと本格的にしてみようって、フィリップ君が一晩でやってくれました!」

「ほ、ほぉ……これは中々本格的だな」

「以前、カジノについて検索したことがあったからね。風都の雑貨屋にあった物を改造したのさ」

「お前ってホント才能無駄遣いしてるよな……」

 

 石上、最早尊敬の眼差しでフィリップを見る。

 変人と天才は紙一重とは、まさに彼のことである。

 

「では、皆さん用意はいいですかー?」

「あ、ああ……」

「ゴクリ……」

「……」

 

「スタートですっ!!」

 

 今ここに、ハッピーライフゲームver.2が始まった! 

 しかし、いざ始まるとなると、天才達と言えども二の足を踏んでしまいたくなるもの。

 

「さて、どうしたもんかな……」

「様子を見ようにも、どうすれば良いか……」

 

 思案を巡らせようとする白銀とかぐや。

 と、そこで石上が手を挙げた。

 

「先輩方、ここは僕が……」

「い、石上会計」

「ハッキリ言ってこのゲーム、何が起こるか分かりません。まずは僕が先行して様子を見ます。お二人はその後で対策を練ってください」

 

 かつて3コマ進めただけで無情にもゲームオーバーとなり、藤原の毒牙にかかってしまった石上。

 今回も同様の罠が待ち構える可能性を予期しつつも、敢えて受け入れた! 

 

「石上、お前……!」

「あとは頼みます……っ!」

「石上くん……!!」

 

 石上の目に宿るのは、暗闇の荒野を進まんとする勇敢な光! 黄金の精神である! 

 

「コマを進める時には、色は関係ありません。数字分進んでくださいね。あと、テーブルから球を落としてしまうと、ファンブルで失敗扱いですから、気をつけてください」

「分かりました……いくぞ……!」

 

 シュッ! 

 と、勢いよく内縁のレール部分に球を転がし入れると、独特の摩擦音が生徒会室に響く。

 やがて、『赤の3』のポケットに球が入り、石上は恐る恐る駒を進めた。

 

 止まったマス目カードをめくると……。

 

「……えーっと、コレは……?」

「転生マスですね」

「は?」

「優はアイドルを追いかけていた謎のストーカーに刺されて死んでしまい、異世界へと転生される」

「まさかの二段マップ!?」

「はい、パラメータを設定し直してください。この表記に従って」

「パラメータ!?」

 

 前提条件が一気に崩れた! 

 気付いた時にはもう遅い! 常に最悪のケースを想定しようとも、このコンビは更にその斜め上を行く! 

 藤原、嬉々として新しいカードを箱から用意。

 更にお手製のプレイングシートと、ファンタジックなデザインを施されたイラストマップを取り出して広げる。

 

「異世界では再び別の能力を持つことになるんだよ。攻撃力、守備力、魔力を振り分けてくれ」

「すごろくじゃねえよTRPGだろコレ! しかもイチから決め直しとか!」

 

 TRPG! 

 

 テーブル・トーク・ロール・プレイング・ゲームの略称であり、コンピュータを使わず、サイコロや紙に書かれたルールと設定のみで進行するRPGである。

 1970年代にアメリカで生まれたとされ、その自由度・拡張性の広さから、世界中に愛好家が存在するジャンルである! 

 

「さぁ、会長たちもキャラを作ってくれたまえ」

「おい、俺たちも巻き込まれるのか?」

「勿論です。一人別世界じゃ悲しすぎますから」

「今までの時間は何だったんだよ!?」

 

 白銀、頭を抱えつつもツッコむ。

 娯楽に疎いかぐやは、ぽかんとして置いてけぼり気味であった。

 

「なんなんですか、このグダグダした空気は……」

「さあ、かぐやさんもルーレットを回して下さい。キャラメイキングを始めますよ」

「は、はぁ……」

 

 戸惑い気味になりつつも、藤原の指示に従い、かぐやもルーレットを回し、各々のステータスを振り分けていく。

 

 その間、藤原も自身のキャラクターを設定。

 フィリップはいそいそと二段階目へと変身を遂げたゲームの用意を整えていった。

 

「つまり、さっきとはゲームのジャンルそのものが変わっていると?」

「まあ、簡単にいうとそうなりますね」

「……」

 

 途中、石上からの説明を受け、唖然とするかぐや。

 藤原の実家ではクリスマスと正月を合体させた謎の祭日が存在することもあった。

 やはりこの二人は何者をも予測できないカオスの権化である。

 

「このマップに移ると、競争ではなくチーム戦となる。それぞれマス目に止まってイベントをこなして能力を上げ、最終コマで待ち構える魔王に勝てばクリアだ」

「ますますTRPGみたいになってきたな……」

 

 石上、顔が青ざめるも、いまさらやめるわけにもいかない。ひとまず一同は、ゲームを改めて続けることを決意した。

 

「石上、TRPGって何なんだ? 俺はよく知らんのだが……」

「まぁ、基本はすごろくみたいなモノですよ。あれにRPGの要素を足して、目的を達成すればOKです。まぁ、僕も実際にやったことは少ないんですけど……」

「安心したまえ。僕が進行役を務める。初心者が簡単に負ける構成にはしていないよ」

「じゃあフィリップがGMか」

 

 GM…即ちゲームマスター。

 TRPGはその形態状、ルールに基づいて判定を行う審判・進行役が必要不可欠であり、それを担うのがゲームマスターである。

 一般的には、ルールを一番把握している作り手側が務めることが多く、ラスボス役を担うこともある。

 

 即ちTRPGとは、プレイヤー対GMの戦いとも言えるのだ。

 

「マスに沢山止まることで、よりパラメータが上昇する確率が上がる」

「ってことは、少ない目を出し続けた方が有利ってことか?」

「いいえ、大きい目を出して止まった場合、強力な武器やアイテムカードが手に入るマスも沢山あります。どちらが有利かは戦術とキャラメイキング次第です」

「なるほど……バランスは取れていますね」

 

 かぐや、最初は戸惑ったものの、持ち前の思考の速さで次第に状況を飲み込む。

 各々も、改めてマップを見直し、改めてゲームに臨もうと言う気概が湧いてきた。

 

「ふーん……コレはコレで別物としては面白いかもですね」

「やったあ! フィリップ君、アイデア大成功ですよ!」

「フッ、当然さ」

「だから別物にしろって」

 

 石上の冷徹なツッコミも届かず、二人ははしゃいでいる。

 だが、これはのちに続く更なる渾沌の幕開けに過ぎない。

 道中、様々な試練が彼らを待ち受けるのである。

 

「で、藤原書記、今回も、止まったマスのカードは取り除くのか?」

「いいえ、このマップでは、そのままプレイヤーの持ち物となります」

「持ち物?」

「例えばコレ、裏に書いてあるのは『防御』のカードです。敵の攻撃や、バッドイベントの効果を回避することができます」

「なるほど」

 

 白銀、全体を見渡しながらルールを把握。

 他にも、敵を妨害するカード、体力を回復させるカードなどがあるようだ。

 確かにフィリップが監修についたと言うことで、多少は面白くなっているような気がした。

 

 否……あくまで、そんな『気がした』だけである。

 

「ええと……あとは体力の値をルーレットで決めるんですね……えい」

「あ! かぐやさん、パラメータ決定で全てゾロ目を出しました! 神様ボーナス発生です!!」

「神様ボーナスですか?」

「四宮さんは神から特殊な才能を与えられる。全パラメータに+100と、マスの内容を先に見られる『予言』スキルを手に入れた」

「なんだその反則ルールは!?」

「異世界チートかよ!? そんなとこまで流行に乗るな!」

 

 異世界チート! 

 

 日本の漫画・アニメ・小説に於いて言わずと知れたギミック。

 主人公が、物語冒頭にて超越した存在から与えられる特殊技能や能力であり、他のキャラクターとは一線を画す反則級の力を手に入れるのである。

 

「えーっと、つまり私は他の方より有利なんですね?」

「それどころか何でもし放題です! 無双できますよ!」

「こんなとこまで現実的にしなくてもいいだろ……異世界に行った意味ねえよ……」

 

 石上、冷めた目でツッコむ。

 

 異世界チートとは、社会的に恵まれない者や、不慮に理不尽を被った人間が得ることで、カタルシスが発生する概念。

 財閥のお嬢様であり、本人自らも天才であるかぐやが手に入れたところで、それはただの現実のトレースに過ぎない! 

 

「なんか初っ端からクソゲー臭ハンパねえ……」

「ま、まぁ、チーム戦ということだしな。俺達に害はないし、それどころか心強いじゃないか」

 

 学校においてカースト最下級に位置する石上にとって、チートを見せつけられる程えげつない行為はない。

 早くもモチベーションが下がるも、白銀は必死にフォローしていた。

 

「なんだか、私が不条理に責められている気がするのですけど……本当に得してるんですか?」

「はい! かぐやさんが神様ボーナスを得たおかげで、より心強い味方ができました!」

 

 世俗の娯楽を知らないかぐやにしてみれば、自分の行動の結果が何故石上の溜息に結びつくのか要領を得ない。

 とはいえ、彼の時折生み出される負のエネルギーにイチイチ付き合っていては身が持たない。

 

「四宮さんが神様ボーナスを、得たことでゲームマスターとして張り合いが出てきた。興味深いゲームになりそうだよ」

「興味出てるのお前と藤原先輩だけだからな」

 

 そんなフィリップに対する石上のツッコミなども届かないまま、着々とゲームの準備が進行する。

 それぞれパラメータを振り分け、キャラメンキングが完了。

 と、各々が不安や不満、そして憧憬を胸に、スタートラインのマスに改めてコマを置く。

 

「さて、会長達は魔王ステージにて、僕の作る魔王を倒せるかな?」

「行きますよ〜……スタートッッ!!」

 

 藤原が堂々と宣言したところで幕が開がる! 

 果たして、白銀一行は無事にフィリップの作り上げた魔王を倒し、日常の世界へ普通に復帰できるのだろうか!? 

 

 真・ハッピーライフゲームver.2、怒涛の後半へ続く!! 

 





さぁて、来週の『フィリップ・来人は検索したい』は……

「ついにここまで来ましたね」
「さぁ、かかってきたまえ」

「うう……酷いよ、皆……」
「こうなったら、僕がお前を倒す…!」

「あとは頼んだぞ……四宮…!」
「会長…!」

「四宮の名にかけて……勝負です。フィリップ君」
「まぁ……すぐに詰んであげよう」

「ふははははははーーっ!!」
「こんな……ことが…!?」


【Uの言うとおり/かぐや様は託された】


これで決まりだ
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