中世フランスへ
翌日 サッカー棟
「よーし!それでは今回のタイムジャンプに向かうメンバーを発表する!」
タイムジャンプ当日の朝、部室に集合していた。ちなみに他のみんなも昨日サッカーバトルを仕掛けられたらしい。プロトコル・オメガの仕業だろう。
雷門の面々を前に今回タイムジャンプするメンバーが大介さんから発表される。みんな固唾を呑む。そんな中、霧野先輩と狩屋は二人で何やら話していた。
「まずは松風、赤峰、剣城、神童、西園、錦、フェイ、黄名子!」
まず前回から参加していた俺たち7人と大介さんから指名された黄名子が呼ばれる。内心選ばれるとは思いつつもこうして呼ばれるとホッとする。
「わ~い!ウチ、頑張るやんね~」
黄名子はワクワクを隠しきれないといった様子だ。
「そして影山、速水、浜野、狩屋、以上だ!」
「え!?」
選ばれるだろうと思っていた霧野先輩の名前が無く思わず声を上げてしまう。
「ん?どうした?」
「あ、あの「待ってください!!」
俺が口を挟もうとした時、当の霧野先輩が大介さんの元に駆け寄る。
「俺も連れて行ってください!俺も行きたいんです!」
霧野先輩がここまで自分の意見を主張することを見たことがない。けど
「俺も霧野先輩がいてくれると助かると思います。」
「翼・・・」
俺たち雷門のDFのリーダーは霧野先輩だ。黄名子が候補とは言え、選択肢は多いに越したことはない。
「けどこれは決定で…」
しかし大介さんの反応は芳しくない。
「あの~」
そんな中、狩屋が手を上げた。
「実は俺、朝から体調悪くって。霧野先輩が変わってくれるなら助かるんですけど。」
「う~む。分かった。では狩屋と交代だ!」
大介さんは狩屋の申し出を受け霧野先輩の同行を承諾した。
「ありがとう、ございます!!」
「では、出発は一時間後だ!各自準備を頼む。」
大介さんがみんなに指示を出している中、狩屋の隣に立つ。
「いいとこあるじゃん。」
「なんの事?俺、体調悪いんだけど。」
「ま、そういうことでいいや。けど、良かったのか?もしかしたら狩屋が力を受け取るかもしれなかったのに。」
「いいんだよ。俺、カリスマってガラじゃないし。…それに、こうみえて感謝してるんだ、あの人に。」
軽い調子で言う狩屋だが霧野先輩を見るその目は柔らかかった。この2人、初めはいろいろあったけど今となってはいい先輩と後輩って感じだ。
「そうか。」
「うん。それに、俺たちのリーダーはあの人だろ。向こうでは頼むぜ。色々悩んでるみたいだからさ。」
「…ああ、任せろ。」
「よし、みんな乗り込んだか?」
一時間後、俺たちはTMキャラバンに乗り込みタイムジャンプの瞬間を待っていた、
「う~ん、ウチ、楽しみやんね~ジャンヌさん、どんな人なんだろ~。ね、翼、どう思う?」
「俺に聞くなよ、詳しくないし。まぁ勇ましい人なんじゃないか?」
ほっぺたをツンツンしながら聞いてくる黄名子。
「むう、なんか適当やんね。もしかして翼っておバカやんね?」
「人が気にしてることを言うのはこの口かな~?」
「いひゃいいひゃい~ほへんなふぁひひゃんね~」
気にしてることを抉られた仕返しに黄名子の頬をつまんでやる。てか、餅みたいに柔らかいなおい。クセになりそうだ。
「分かればよろしい。ほら、もうすぐうごくから早く座れ。」
「む~女の子に対してひどいやんね。フェイ~一緒に座るやんね~」
少し頬を晴らしながらフェイの方へかけていく黄名子。
「ちょ、ちょっとくっつきすぎだよ///」
「気にしない気にしない!」
なんかやけにフェイに対して距離感が近い黄名子であった。いや、ほかの人にも人懐っこいんだけどね。
「では行くぞ。タイムジャーーーーンプ!!!」
いつもどおりワンダバの合図でタイムジャンプが始まった。
中世フランス ある森の中
「では、これよりミッションを開始する。」
「「「はっ!」」」
ガンマ率いるプロトコル・オメガ3.0は先回りしてタイムジャンプし、雷門の妨害任務を開始しようとしていた。
「!?」
その時森の中からサッカーボールが蹴り込まれガンマがなんとかガードする。
「誰だ!?」
「誰だ?そう言うと思ったぜ。お前は誰だ、なぜこんなことをする?そう言いたいんだろ?」
そう言いながら森の中から褐色の男が姿を現した。
「俺はザナーク・アバロニク。名も無き小市民だ。名前はあるが名も無き小市民。ククッ、いいだろ?」
独特な言い回しを交えながら名乗るザナーク。
「聞いたことがあります。S級の危険人物としてエルドラドに監視されているとか。」
ガンマの脇に控えるエイナムが言う。
「ふん。犯罪者か。いいだろう、僕が倒す!」
「僕が倒す、そう言うと思ったぜ。いいだろう、だが…全員で来い!」
ザナークは全員を一斉に相手すると豪語する。
傲岸不遜なザナークにプライドの高いガンマは激怒する。
「堕ちろ!!」
ザナークを中心に囲んだプロトコル・オメガの面々がザナークにボールをおもいっきり蹴り込み続ける。しかし、ザナークには全く応えた様子がない。
「これで、終わりだ!」
ガンマが止めとばかりに渾身の力で蹴り込むが
「ふん。かああああああ!!」
「なっ!?」
ザナークが口からビームのようなものを吐き出しボールごと周囲を吹き飛ばす。
衝撃でプロトコル・オメガの面々は気を失った。
「ふん。エルドラドのジジイども、俺を監視しているんだろ?」
プロトコル・オメガをなぎ倒したザナークは未来から自分を監視しているであろうエルドラドの首脳陣に語りかける。
「提案がある。お前たちが手を焼いている奴らを俺が片付けてやる。そうすれば俺の罪は帳消し。どうだ?」
『議長!この者の話に乗る必要はありません!』
議員の一人が拒否するように言うが
『よかろう。交渉に応じよう。』
議長のトウドウ・ヘイキチは承諾した。
彼にとってはサッカーを消し、セカンドステージチルドレンの驚異を退けることが最優先である。そのために利用できるならば危険人物でも利用しようという考えだ。
「そう言うと思ったぜ。」
トウドウの返答を受けたザナークはもう話すつもりは無いとばかりに眼下に伏すプロトコル・オメガを見下ろす。
「さぁ、お目覚めの時間だ!」
先ほどのように口からビームのように自身の力を吐き出しプロトコル・オメガの面々に注ぐ。その光を浴びた面々はゆっくりと立ち上がる。その姿は髪や肌がザナークの影響を受け、ミキシマックスした状態となっていた。
「まずはお前たちに働いてもらう。」
「かしこまりました、ザナーク様。」
「着いたぞ!」
俺たちはワームホールを抜け、ジャンヌ・ダルクの世界に来ていた。
「ここがジャンヌ・ダルクの世界…」
「1427年、ヴォークルール付近だ。」
「ここがフランスか。」
「あれってワイン畑かな?」
「飲んでみたいやんね!」
「俺たちまだ未成年だろ!」
みんな遠足のような気分でワイワイとしている。
「あれは…」
ふと天馬が遠くに火の手が上がっているのを見つけた。
「もしかして、戦場!?」
「ジャンヌ・ダルクがいるかもしれん。行ってみよう。」
ワンダバがキャラバンを操縦し、戦場に向かう。
天馬たちがこの時代に姿を現したとき山奥で一人の少女が空に光を見た。
「あれは…」
一団を率いて山を進んでいると遠くから火の手が上がる。
「敵が、来る・・・!」
「本物の戦場だ…」
俺たちは火の手が上がっていたところの近くの森から戦場の惨状を見ていた。
「本物の剣に鎧だ。」
「ちゅーか、HPはいくつな訳?」
戦争とは無縁の現代の日本に生きる俺たちは完全に圧倒されていた。
「これ、ジャンヌ・ダルクに会えるのか?」
「会う前に巻き込まれそう…」
信長の時代でも危ない時はあったけど、これはやばい…
「弱気になっちゃダメだ!必ずジャンヌを探し当てるんだ!」
霧野先輩がビビっているみんなを鼓舞するように言う。
「ジャンヌはヴォークルールという街に居るらしい。まずはそこを目指そう。」
「分かった、それじゃあ」
ワンダバの情報を頼りにヴォークルールを目指そうと動き出そうとした瞬間
「ん?貴様達何者だ!」
森の中から鎧を着た兵士が出てきた。
「ま、まずいっすよ…」
な、何とかして切り抜けないと。
「戦いから逃げてきたら道が分からなくなってしまったんです。ヴォークルールに行きたいのですが。」
神童先輩があの時と同じように咄嗟にごまかす。
「何?ヴォークルールに?お前たち、異国の者か!」
しかし疑いは晴れず、兵士の声に呼ばれ、他の兵士たちも寄ってきて囲まれてしまった。
「この者らは?」
「道に迷ったと言っていますが、どうも怪しい。ヴォークルールに行きたいそうですが…」
「まさか、ジャンヌを狙って。」
完全に怪しまれてしまい、剣を構えられる。
「え~っと、それはどうでしょうね。」
そんな緊張が走る中、草の影からおっとりとした女性の声が聞こえる。
「ジャンヌ!」
声の方を向くと鎧を纏い、メガネをかけた少しくすんだ金髪の少女が立っていた。
「こ、この人が!?」
「ジャンヌ・ダルク!?」
まさかこんなに早く会えるなんて。
「へ?なんで私の名前を?」
俺たちが驚いているのに対して当の本人は自分が知られていることに困惑している。
なんというか
「イメージと違うね。」
「メガネっ子。」
「ちゅーか、戦う乙女って感じじゃないね。」
うん。バリバリのカリスマってイメージだったけど、なんかホワホワしてて天然みたいな雰囲気が出てる。
「ふわあ!?」
「チーッス!ウチ、黄名子、よろしく!」
みんながギャップに少し呆気に取られているなか、黄名子がひょこっとジャンヌに挨拶し握手の手を差し出す。
「な!ジャンヌから離れろ!」
「な、なんか大袈裟やんね。」
そりゃこの状況でいきなりあれはそうなるだろ。
「ジャンヌ、やはりこいつらイングランドのスパイだ。」
「ち、違います!」
「俺たちは未来からやってきたんです。あなたの力を借りに。」
慌てて天馬と神童先輩が弁明する。
「未来?未来とはどういうことです?」
兵士たちの制止をよそにジャンヌは霧野先輩の方に歩み寄りながら聞いてくる。
今、発言したの天馬と神童先輩なんだけど…霧野先輩も困惑してるし。
「メガネの度が合ってないみたいだね。」
「答えてください!」
メガネを調整しながら詰め寄るジャンヌ。
「あの…その…」
「何とか言ってみろ!」
「タイムジャンプしてきたこと正直に言うやんね?」
「いや、不思議なことは悪魔の仕業と信じられていた時代だ。信じてもらえないと思うよ。」
霧野先輩が混乱して答えれずにいると痺れを切らした兵士たちがスパイだと断定しようとする。
「ま、待ってください!…そうだ。」
そんな兵士たちを止めジャンヌが腰に下げた巾着から何かを取り出す。
「これは?」
「キャンディです。どうぞ。」
「どうぞって…」
「ん。」
「い、いただきます。」
ジャンヌの押しに負けた霧野先輩がキャンディを受け取り口に含む。
「ん、美味しい!」
どうやら美味しかったようだ。ちなみに霧野先輩はキャンディは噛む派だった。
「良かった~。みなさんもどうぞ!」
「は、はい!」
「おれもおれも」
霧野先輩に続いてみんなもジャンヌからキャンディを受け取り、明るい空気に包まれる。
「ジャンヌ、とにかくこいつらをどうするか決めてくれ。」
ワイワイしている俺たちを見かねた兵士がジャンヌに判断を仰ぐ。
「とにかくこのままにする訳には行きません。連れて行きましょう、ヴォークルールへ。」
「ふぅ、着いたわね。ここが中世フランスかぁ。」
翼たちがジャンヌと出会った頃、メイアも同じ時代に来ていた。メイアはヴォークルールやオルレアンと違い戦場から離れた栄えた街にやってきていた。
「やっぱり本で見たみたいに綺麗な国ね。私たちの時代や戦国時代とは違った良さがあるわね。」
フランスといえばフランス料理や絵画、城など絢爛としたイメージがあったがそれに違わない町並みに心が弾むメイアだった。
「流石に戦時中というのもあって多少は苦しそうではあるけど、このあたりはあまり影響は出てなさそうね。」
ジャンヌ・ダルクの拠点はヴォークルールだったわよね。ここからは少し距離がありそうだけどどうしようかしら。
「ま、彼らがジャンヌと合流してからでいいか!あ、すいません!これとこれ一つください♪」
「はいよ。」
雷門とジャンヌの状況も気になるが後回しにしつつ街を歩きながら見かけた果物屋でいくつか果物を買う。
ちなみに戦国時代とは違い、この時代ではメイアの外見は周囲に溶け込んでいるため、特に偽装などはしていなかった。
「ん~美味しい!本場の味って感じ♪」
この新鮮さと自然な味は私たちの時代には無いわね。
「ワ〇ンとかも飲んでみたいけど、流石にまずいかしら…でも、この時代にそういった法律とか無さそうだし…う~ん…」
元の時代じゃ未成年は飲めないし。それに私は成人は迎えられないでしょうし…
少し先のことに思いを馳せ、少し暗い気持ちになるメイアだったが
「ならこういう時くらいいいわよね。すいません、試飲したいんですけど…」
今更自分の寿命を嘆くのに意味はないと割り切り引き続きフランスを満喫するメイアだった。
いかがでしたでしょうか。
黄名子とザナークが、喋らせるの楽しすぎる。ザナークは難しいけど。
日本人と女子、とりあえずフランスに憧れがち説。あると思います。
最後にメイアが飲んだ飲み物、何なんやろなぁ。多分ある果物から出来た美味しくて気分が良くなるジュースじゃないですかね。