雷門の面々が時代を去った後、メイアと諸葛孔明が孔明の園で対峙していた。
諸葛孔明。歴史上最高の頭脳と言われる人間。まさか女性だったのは驚いたわ。あの時感じた不快な感覚。まさか翼に色目使ってたんじゃないでしょうね。
それより
「私が迷ってる?どういうことかしら?」
私に迷いなんてあるはずも無い。私が、私たちフェーダが為すべきことは決まっている。
私たちセカンドステージチルドレンと並ぶと言われる。
「あなたは自分が進んでいる道が正しいのか信じきれていない。」
「・・・たった今会ったばかりのあなたに何故そんなことが分かるの?」
「これまで私の力を求めてやってきた人間を数多見てきました。その中には迷いや引け目を感じている人間もいました。そのような人間は皆共通する雰囲気や仕草、そして同じような目をしていました。今のあなたからは彼らと同じものを感じます。先ほどの彼と同じように。」
「彼?」
「私と劉備様を訪ねてきた先の世の者たち、その中にいた赤い髪の少年。」
赤い髪・・・翼のことね。
「彼もまた内に秘めたものを抱えていました。彼とあなたはとても似たものを感じます。」
「・・・私にそんなもの無い。」
彼との出会いとここ最近のタイムジャンプを通しても気持ちは固まってる。
この全てを見透かしたような目、気に入らない。
「彼もあなたも心の奥底では気づいている。ですがそれを自覚してしまえば自分自身の根底を揺るがしかねないが故に目を背けている。」
「あなたに何が分かるのよ!私のことも、彼のことも!・・・!?」
自然と声を荒らげて食いかかってしまう。その時ポケットの中でデバイスが震えた。
「SARUから?」
画面を見るとSARUからの着信だった。こんな時に。
「もしもし、なんの用?今ちょっと『ごめんごめん。ただ急ぎの連絡なんだ、落ち着いて聞いてほしい。』もう、何?」
『ギリスが倒れた。すぐに戻ってきて欲しい。』
「・・・え?」
現代
「え~~~!?諸葛孔明って女の人だったんですか~~!?」
俺たち三国志時代から帰ってきたのを出迎えてくれた居残り組に向こうで会った出来事を説明していた。三国志ファンの速水先輩は大興奮といった感じだ。
「俺たちも流石にびっくりしましたよ。しかも孔明さんは化身使いだったんですよ!あ、あと曹操も。」
「化身使いぃ!?さすが諸葛孔明!あ、劉玄徳はどうでした?どんな方だったんですか?」
「あ~劉備さんはその・・・とても面白い人でしたよ。」
劉備さんのことを聞かれた天馬は返答に困る。まぁ、あれはね。
「劉備さんは一度決めたら絶対に自分の意思を曲げなくて、絶対に諦めずにやり抜く、本当にすごい人でした!ボク、劉備さんに出会えて強くなれたと思います。」
そんななか実際に一番深く劉備さんと触れ合い、ミキシマックスを果たした信助が言う。
「やっぱりそうだったんですね!良いなぁ僕も会いたかったな~・・・あっ、翼くん劉備のサインもらってきてくれましたか?」
「あ・・・忘れてました・・・」
「そんなぁ~~~!?」
試合から別れまでにいろいろありすぎたから完全に忘れてた。
そう、いろいろ・・・
そんなこんなであらかた話し終えると今日は解散になった。
また明日タイムジャンプするようだ。
「それじゃ帰ろっか、翼。」
「あ、すまん。ちょっと寄るところがあるから先に帰っててくれ。」
いつも一緒に帰ってる天馬がいつもどおり誘ってくるが断りを入れる。
「え?寄るところって?俺は着いていってもいいけど。」
「いやいいよ。できれば一人で行きたいし。秋ねぇには夕飯までには戻るって言っといてくれ。」
「翼がそういうなら・・・うん、分かった!それじゃあまた後で!」
「おう。」
天馬と別れた俺は河川敷のグラウンドに来ていた。
「この時間帯なら誰もいないし大丈夫だろ。・・・よし。」
周囲に人がいないのを確認しユニフォームの上から来ていたジャージを脱ぐ。
「はああああ!破壊神デスロス!」
誰もいないグラウンドで化身を呼び出す。
目立つかもしれないけど何とかなってくれ。
ここからだ。
「アームド!!」
デスロスを身にまとうイメージを浮かべながら力を高め化身アームドを試みる。
デスロスが光に姿を変え俺の体に集まっていく。が
「んがっ!?・・・くそっ、やっぱダメか。」
これまで皆が失敗してきたときのように光が弾けアームドは失敗に終わる。
メイアのおかげでデスロスをコントロール出来るようになってから化身の力が高まっているのも分かる。これまでのエルドラドのエージェントたちにも太刀打ち出来ていた。
「けど、ザナークには全く通じなかった。」
あいつには歯が立たなかった。これからどんな強敵が現れるかも分からない。
みんなはミキシマックスや化身アームドをどんどん身につけていってる。
「俺ももっと強くならなきゃいけんだ・・・」
俺だけ立ち止まってばっかいられない。時空最強イレブンに選ばれるかもまだ分からない。でも、今やれることをやっていかなきゃ。
「ってもうこんな時間か。遅くなったら秋ねぇ怖いし、そろそろ帰るか。」
荷物をまとめて帰路につく。
木枯らし荘に向かって歩いていると別れ際孔明さんに言われたことを思い出す。
「俺がみんなから引いたところから見てる、か・・・」
そんなことはない。天馬や雷門のみんなとはこの世界に生まれ変わってずっと一緒に戦ってきて、フェイや黄名子、太陽たちとだって・・・
そう思ってるはずなのにどうしても孔明さんの言葉が頭から離れない。心のどこかに引っ掛かりを覚えている。
「おかあさ~ん!」
「こら、ちゃんと前向いて歩かなきゃ危ないわよ。」
「昨日のイナレンジャー見た?」
「見た見た!」
木枯らし荘の近くの公園では親子や子供たちが笑顔で戯れている。
そんな光景がなぜかとても眩しく見えてしまった。
そこから目をそらし歩いていると木枯らし荘に着いた。
200年後の未来
フェーダのアジト
「ギリス!!大丈夫!?」
SARUからの連絡を受けたメイアは大急ぎで元の時代に戻ってきてアジトのギリスの部屋の扉を勢いよく開き入ってきた。
「あ、メイア。おかえり。」
「早かったね。」
そこにはSARUとギルのメンバー数人、そしてその中心にはベッドに腰掛けるギリスがいた。
ギリスは見たところ特に苦しそうな様子は見られない。
「ギリス、倒れたって聞いたけどもう大丈夫なの?」
「うん、今はもう大丈夫さ。心配かけてごめんね。」
「さっき目を覚ましたところだよ。」
メイアが戻ってくる少し前に意識を取り戻したことをギリスとSARUから説明を受ける。
「そう・・・なら良かったけど。」
とりあえずの無事を確認し胸をなでおろす。
「けど、何があったの?まさかエルドラドに・・・」
ギリスがエルドラドの連中に遅れを取るとは思えない。
「いや違うよ。ただ・・・」
少し言いよどむギリス。他のみんなの表情もどこか暗く見える。
「ただ・・・突然僕たちセカンドステージの力を抑えきれなくなったんだ。・・・それで気を失ったんだ。」
「そんな!?今までそんなこと・・・」
力が目覚め始めてる段階のザナークと違い力をコントロール出来るようになってからは一度も無かった。けどそれが急に起きた。
「みんなと話したんだけど、寿命が近づいてる予兆かもしれない。」
「・・・!?20歳まではまだ時間は残ってるわ!」
「うん。今すぐってことは無いはずだよ。けど、こういうことがこれから起きる子も出てくるかもしれない。」
「そんな・・・」
ギリスの言葉が遠くに聞こえる。頭に入ってこない。いや、理解するのを拒否してる。
私たちセカンドステージチルドレンが大人になれないことは知っていて受け入れていた。
なのに、ギリスの言葉を受け入れたくない。
この力に目覚める前から一緒に遊んでて、力に目覚めて親に捨てられ世間に迫害されて、SARUと出会ってフェーダを立ち上げて今までずっと一緒に過ごしてきた親友。そんなギリスが倒れたことが、私の心を強制的に揺さぶる。
「おいおい、どうしたギルの軟弱モノが雁首そろえて。」
俯いて固まっていると廊下から無粋な男の声が聞こえてきた。
「ガロ、何か用かしら?」
そこにいたのはザンのリーダーのガロだった。
ガロとは当初からソリが合わない。粗暴だし、暴力と破壊しか頭にない。あくまで私たちの目的は私たちがどれだけ優れた存在かを知らしめること。戦闘はあくまでそのための手段に過ぎない。なのにガロを含めザンのメンバーは破壊を楽しんでいる。
「作戦から帰ってきたらギリスが力を暴走させてぶっ倒れたって聞いたからよ。へへっ。」
「何がおかしい。」
輪の中にいたザットが食ってかかる。
「別に。ただ自分の力も制御できないような奴がいるとは思いもしなかったからよ。つい笑っちまった。」
普段なら聞き流せるようなことも今日は何故かいちいち癪に障る。
「何だと?ギリスはな「ザット!もういいわ。」・メイア?」
「相手にするだけ無駄よ。それで、今回の作戦の首尾はどうだったの?」
これ以上この話をしても不快なだけ。なら私たちにとって必要な話をしたほうがマシ。
「チッ・・・。別にいつもどおりだよ。建物破壊して、邪魔してくる雑魚どもを掃除して終わりだ。ま、そのあとは好きに暴れさせてもらったがな。」
「その破壊活動に意味はあったの?あくまで私たちの標的は世界意思決定機関のエルドラドとその関連組織よ。一般人を巻き込む必要はないはずよ。」
ザンはいつも任務が終わったあと周囲の人や建物を気ままに破壊する。
その行動に日頃から嫌悪感を抱いていた私はつい言ってしまった。
「はっ!いずれ俺たちによって淘汰されるんだ、早いか遅いかの話だろ?それともなんだ、あいつらに情でも湧いたか?」
「なんですって?」
「最近よく過去の時代に飛んでるらしいじゃねえか。そこで古い人類を見すぎたんじゃねぇか?」
「・・・そんなことないわ。」
「どうだか。まぁどちらにせよ古い人類なんざ何の力も持たない奴らばっかだろうが。お前が監視してるやつらもよ。」
「・・・!!」
ガロの言葉を聞いた瞬間、これまでにないくらいの怒りがこみ上げガロを睨みつける。
「っ!?なんだよ。」
確かに殆どの人間は私たちより劣った存在。けど、これまでのタイムジャンプで見てきた織田信長やジャンヌ・ダルク、諸葛孔明。彼らはエルドラドから派遣されたエージェントやこの時代の道具のミキシマックスガン以上の力を持っていた。そんな彼らの力を得た雷門のメンバー。そして何よりも翼、初めて出会ったときから目が離せない、今ではギリスやSARU達と同じくらい心を許せる不思議な子。セカンドステージチルドレンでは無くとも目を見張る力を持つ人間はいることを知った。そんな彼らを馬鹿にされたことが自分でも驚く程に腹立たしかった。
「はいはい。二人ともそこまでにしときなよ。僕たちは同志なんだから。」
一触即発な私とガロの間にSARUが割って入ってきた。
SARUの一声で血が上りかけていた頭が冷静になっていく。
「ガロにザンのみんな、ご苦労さま。次の作戦までゆっくり休むといい。」
「チッ・・・分かったよ。」
「ギルのみんなも、というか次は遂にエルドラド本部への攻撃だ。それまではゆっくり準備を進めておいてくれ。ギリスはしばらく安静にね。」
テキパキとみんなに有無を言わせず指示を出すSARU。普段はあんな調子だけどこういうところは頼りになる皇帝といったところかしら。
「メイアも、しばらくはこっちに身をおいておいてもいいと思うけどどうする?」
「私は・・・」
確かにザナークが私たちと同じ力に目覚めている確証も得られた。雷門も力をつけてきているしフェイの方も大丈夫そう。本部襲撃が近いならわざわざ過去に飛ぶ意味は無いかもしれない。けれど
「私はまたフェイたちと同じ時代に飛ぶわ。」
私の中の何かがそうさせる。諸葛孔明に乱されたものが、こっちに戻ってきてから渦巻いているこの焦燥感を取り除く答えがそこにある気がしたからか。
「・・・そう。それじゃあよろしく頼むよ。決行の日までには戻ってきてね。」
「ええ。分かってる。それとザナークの件だけど、私たちの同族と見て間違いないわ。」
「そうかい、ありがとう。それじゃあ機を見て勧誘しておいて。あのおじさんにも言っておくから。」
「了解。それじゃあ私はもう戻るわ。彼らも動き始めたみたいだし。ギリス、体には気をつけてね。また何かあったらすぐに戻ってくるわ。」
「分かったよ。メイアも気をつけて。」
ギリスが笑顔で送り出してくれる。その笑顔をみて少し安心した。
「メイア。」
ギルのみんなにも一声かけ終えて部屋を出ようとしたとき背後から声がかけられた。
「くれぐれも彼らに入れ込み過ぎないようにね。あくまで利用してるだけ。・・・僕たちはセカンドステージチルドレンなんだから。」
「・・・言われなくても分かってるわ。」
言い残し部屋を出た。そう、分かってる。
現代
サッカー棟
次なる時代へのタイムジャンプのために俺たちはいつもどおり部室に集合していた。
「よし、全員集まったな。では次なるターゲットを発表する!5の力、海のように広い心で攻守をつなぐ架け橋となる、スーパートリッキーミッドフィールダー!そして6の力、稲妻のように素早く切り込む速さ、電光石火のスピードストライカーだ!」
「MFにストライカーか。」
今回も俺の番は回ってこなさそうだな~
「それで、誰なんですか?その力を持つのは?」
「うむ。5の力は坂本龍馬じゃ!」
坂本龍馬といえば幕末の人だよな。ぜよの人。
ん?龍馬?ぜよ?
「何!?龍馬じゃと!それならこのワシ、錦龍馬に任せるぜよ!!」
やっぱりね。錦先輩、好きそうだもんね。
「よし。ならば5の力は錦、お前に任せる!」
「うおおおお!燃えてきたぜよ!!」
「で、もうひとりの6の力の方は?」
「そうじゃった。6の力は沖田総司じゃ!」
「沖田だって!?」
今度は水鳥先輩が声を張り上げる。
「沖田といえば新選組一の剣の使い手じゃねえか!」
「そんなにすごい人なんですか?」
名前は聞いたことあるけど・・・
「ああ。沖田は剣の腕は新選組でも最強と言われてたんだが、沖田は胸の病を抱えてて短命だったらしい。けど、命尽きるその時まで幕府に仕え、人々を守ろうとした男の中の男だぜ!ちなみにイケメン。」
絶対最後のが重要なんでしょ、あなた。けど大体のことは分かったぞ!
短命だった、か・・・
「ふん!新選組なんぞ龍馬たちの邪魔ばかりしておった卑怯者じゃろうが。」
「何を!?命尽きるまで幕府に尽くし、時代の終わりとともに姿を消した新選組の男気が分からねえのか!?」
「「ギャーギャー!!」」
話そっちのけで錦先輩と水鳥先輩が龍馬と新撰組を巡り喧嘩を始めた。あまりにも不毛なり。
「あの二人はほっておいて、沖田総司の力は誰が受け取るんですか?」
天馬、君たまに辛辣だよね。
「「ん~」」
「剣・・・ストライカー・・・」
「「「あっ!」」」
全員が同じ人間に思い至りそちらを向く。
「ん?」
「「よし!では6の力は剣城に任せる!」
ま、雷門のエースストライカーは剣城だし妥当だよな。
「よ~しみんな乗り込んだか?」
力を受け取る役目も決まりいざタイムジャンプの準備。
今回のメンバーは俺、天馬、信助、フェイ、黄名子、剣城、錦先輩、神童先輩、霧野先輩、太陽、狩屋、輝になった。
「それでは行くぞ!3、2、1、タイムジャーンプ!!」
いかがでしたでしょうか。
ふたりの葛藤を描けているといいのですが・・・
翼に関しては置いておきます。
メイアは大前提としてSSCの方が優れた存在という認識は原作と同じく持っています。ただタイムジャンプや翼との触れ合いを経て価値観が少し変わってきていて自分自身も気づいてなかったけどガロとのやり取りで自覚したという感じでしょう。
アニメの方でもザンの不必要な戦闘や破壊を咎めていたので本質のところで良い子なんだろうなぁ。
孔明さん使い易すぎるし、ガロ含めザンのメンバーには悪いことをしたな。
次回から幕末編になります。幕末編以降は展開の関係で翼視点に加えて天馬視点と三人称視点が増えてくると思います。